急遽マラソンが始まって数十分……この三週間で大分慣れてきたとは言っても全身に疲れが襲いかかって来ている。
「あっ!バス停見えて来たで!」
あかねの声に顔を上げると確かにバス停が見えて来ていた……うっすらと……
「……遠ぉ」
マジで見えてきただけじゃん……
「あっ、かねちゃん……もっと……近づいてから……ふひっ」
あ、ダメだこれ、やよいが壊れかけてる。
「おい、流石にやよいがやべぇぞ」
今変な笑い方してたし……
「やよいちゃん頑張って!ロボッターはこんな所じゃ諦めないよ!」
「ロボッターは……諦めない!!」
え?、それで復活するの?めっちやロボッター便利じゃん。
そして……
「とうちゃーく!!」
遂に、俺達はバス停にたどり着き、俺達ひ弱組は一斉にベンチに寄りかかる。
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」
「……ロボッター……わたし、もう疲れちゃったよ」
「ぢかれたー……」
大して運動部組はまだまだ余裕が伺える。
「うん、次のバスに乗れば間に合いそうだね」
「どうしましょうか?皆さんお疲れのようですし次のバスが来るまでは休みましょうか?」
「そうやなぁ……焦ったところでどうにかなるもんでもないし……」
「無理はかえって効率を落とすしね」
「では、休憩という事で」
「やっ!」
れいか言葉にみゆきが嬉しげに手を振りあげた瞬間…………満月が登った。「たー!!……あ?」
「この気配は!?」
「ウルフルン……」
「みんな!行くよ!」
「休憩はっ?!」
「そんなの後回しだよ!」
「そんなぁぁぁぁ!?」
「…………ロボッター」
幸か不幸か、バッドエンド空間が展開されたのはバス停から少し坂を登った先の公園だった。しかし珍しくその公園には人が少なく、居るのはウルフルンとベンチに腰掛けるカップル?くらいだ。
「あんた!こんな人が少ない所で何してん!」
そう、普段ならもっと多くの人をバッドエンドにしてバッドエナジーを集める為に人の多い所でバッドエンド空間を展開することが多いのだが……
「はぁぁ!?プリキュアかよ!こっちは目の前でイチャコラされて頭に来てんだよ!」
それ完全に僻みじゃねーかよ!
「そんな理由で……みんな!」
『うん!』 「…………う、うん」
やべ……やよい回復してねぇじゃん……
あかねの号令でスマイルパクトを構えた四人……と一人遅れてやよいが光に包まれた。
そして光が収まってくると五人の姿が現れる。
「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!」
「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!」
「ぴ、ぴかぴかぴかりん!……ゲホゲホッ!キュアピース!」
「勇気凛々、直球勝負!キュアマーチ!」
「しんしんと降り積もる、清き心!キュアビューティ!」
『五つの光が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!』……「けほっ」
「チッ!出てよ!ハイパーアカンベェ!!」
ウルフルンの掲げた黒い絵の具玉が怪しい光を放ち、ウルフルンの後ろに黒い鼻のハイパーアカンベェが現れる。
ハートを元にした様な姿のハイパーアカンベェが大きく口を開くと、その口の中へと後ろ飛びでウルフルンが飛び込む。
『ハイパーアカンベェ!!』
ウルフルンを呑み込んだハイパーアカンベェの額には狼の様なマークが浮かび上がり、狼の耳と尻尾まで生える。
「舐めるなやぁぁぁ!!!」
若干、何時もよりも暴走気味のサニーの炎を纏った拳撃から戦闘は始まった。
「おいおい、今回の元になったもんはなんだ?ハートだと?」
俺は支え合うようにして座り込んでいるカップルを避難させようと近付きながら、ふと湧いた疑問について考えていると……
チャリッ……
「マジかよ……」
割とガチで腹が立ってきたかもしれん。
『ハイパー!!』
ハイパーアカンベェは両手から伸ばした鎖を振り回し、たまに中心からハートのエネルギー弾を飛ばして大暴れしていた。
「ビューティ!!」
「八幡君?!」
そんな戦場に危険も承知でやって来た俺は何時も首から下げているネックレスを服の中から掴みだし、ビューティに向けて掲げる。
「奴の元になったのはさっきのカップルの
俺が掲げて居るのは修学旅行の時にれいかと二人でお揃いで買ったネックレスだ。
先程カップルをできるだけ安全な場所に運んでいる時に気付いたのだが、男性の方は首からハートのネックレスを下げているのに女性の方は何も付けていない。ただそれだけなら俺も気付けなかったが女性の首には首を回るように細く日焼けの跡もあったのだ 。そこで俺は確信した。ウルフルンがハイパーアカンベェの元にしたのがこのカップルのお揃いのネックレスだったのだと。
ビキビキビキビキッッ!!!
ビューティが怒りを表すよう強く一歩踏み出すと、その足元から氷が走りハイパーアカンベェを囲うように大きな氷壁が立ち上がる。
『アカ!?アカン!?』
ハイパーアカンベェも突然のビューティの豹変に氷壁とビューティを交互に見て若干後ずさって閉まっている。
「恋人達の思い出の品を穢すなんて……万死に値します!!」
ビューティがパァンと両の手を打ち鳴らすと……
ゴゴゴゴゴゴッッッ!!
ハイパーアカンベェを囲んでいた氷壁がハイパーアカンベェを推し潰そうと動き出す。
『アカン!?アカン!?』
ハイパーアカンベェも迫り来る氷壁を押しとどめるのに必死で身動きが取れなくなっている。
「今です!」
『……う、うん!』
ビューティの気迫に他のプリキュア達も呆然としていた様でビューティの声に慌ててステッキを構える。
『ペガサスよ!わたし達に力を!』
その言葉と共にステッキから黄金の光が放たれ、プリキュア達を包み込む。
そして黄金の光が弾けると装いを変えたプリキュア達が現れる。
『プリキュア!プリンセスフォーム!!』
そしてプリンセスフォームに返信したプリキュア達の前にロイヤルクロックが現れる。
「開け!ロイヤルクロック!」
ハッピーがロイヤルクロックに何かするとロイヤルクロックから吹き上がった黄金の光が弾け、不死鳥の様な姿をかたちどる。
「届け!希望の光!」
『羽ばたけ!光り輝く未来へ!』
『プリキュア・ロイヤルレインボーバースト!!』
五人の持つ蝋燭に見立てたステッキから溢れ出た光が合わさり、いつものペガサスでは無く先程の不死鳥の姿を模すとその口元から、輝く虹色の光の奔流を解き放つ。
『アカーンべェ…』
そうしてハイパーアカンベェは光の奔流に呑み込まれ浄化される。
「クソがっ!そう言えばテメェもカップルじゃねぇか!」
浄化の際に弾き出されたウルフルンは捨て台詞とも呼べない事を吐き捨てると逃げる様に立ち去っていった。
「ふぅ……悪は滅びました」
『あ、あははは……』
「あっ、もうすぐバスが来る時間だよ!」
「うそっ!?」
「みんな、走るで!」
「嘘でしょぉー!?」
……走った。
「もう、なおちゃんの嘘つき……バスが来るまで全然余裕があったじゃん」
「あはは、ごめんごめん、平日と休日の時刻表見間違えちゃって……」
「みなさん、そろそろ空港に着きますよ?なおも悪気はなかったのですから、やよいさんもそろそろ許して上げてくださいね」
「れいかちゃんがそう言うなら……」
そろそろ空港が見えてきた頃、バスの中で揺られながらふと、あかねに視線をやると何か真剣な顔着きをしていた。……こういうのってちょっと頬を指で突っつきたくなるよな……
そーっと指を伸ばしているとガシッ!と途中で手を掴まれる。
「……何をしようとしてたんですか?八幡君?」
れいかだった……しかも目が笑ってない……
「……ちゃうねん」
空港へあかねを送り出しあかねの帰りをバスターミナルで待つ。
「あかねちゃん一人で大丈夫かな?」
「大丈夫だって、寧ろアタシ達が行く方が邪魔になっちゃうよ」
「ええ、二人だからこそ出来るお話もあると思います。ねぇ、八幡君?」
「いやぁ……あはははは……」
あ、なんか握られてる手がギチギチいってる……
「すみません、私達も少し二人きりでお話をして来ますね」
「あっ、れいかちゃんと八幡くんも?行ってらっしゃーい!」
「……八幡くん、頑張っ!」
「れいかも程々にね〜」
帰り道、あかねとれいかの顔はすっきりと晴れやかだったが何故か若干一名げっそりとしていたという。
という訳であかねちゃんの初恋編終了です!
ほぼほぼ八幡くんとれかちゃんの体力作りの話になってましたね〜八幡くんとれかちゃんのおそろいネックレス、覚えている人はいたのだろうか……作者も最近思い出したんですけど……因みに八幡くんが最後にげっそりとしていたのはヤッてた訳では無いのであしからず……チューです。ディープな方で生気まで吸われ尽くしてただけです。
次回は生徒会選挙編ですねぇ
それでは次回もお楽しみに!