幼女にだって、幼さゆえの純真なえっっな事だって!あるんだぜ!?
(1)
土曜の休み……ああ、なんて甘美な響だろうか。今日という休日が終わっても明日もまた休日なのだ。俺は一週間の中では土曜が一番好きだと断言出来る……まぁ別の曜日が好きになる時もあるかも知れんが……
「ふぁ……」
ぼりぼりと昼過ぎのベッドの上で寝転がりながら腹を掻いていると、まだ慣れない身体の変化に気付き手を止める。
「腹筋……割れてきたんだよなぁ」
先月から毎日行っているれいかとのジョギング――最近はランニングと言ってもいいくらいの速度が出ているが……――と護身術の指導の影響か今までの極力運動を避けようとしていた生活により、少し……いや僅かに付いていた脂肪が落ちるに留まらず、筋肉が付いてしまったのである。
この前も風呂に入る直前に偶々風呂上がりに着る上着を忘れているのに気付き、上裸でリビングに行った時に小町がチラッと此方を横目で見た後に飲んでいた牛乳を俺に向かって吹き出したのは今でも忘れてない。まぁ、まだ風呂に入る前だったから良かったが……
そんな事はさて置き、思い浮かぶのはれいかの顔だ。今朝も一緒に走ったので禁断症状とかでは無い。今朝聞いたところによれば、れいかは今日はみゆき達と買い物に行くらしい。
最初は俺も誘われたのだが、みんなで服を買うと聞いて断ったのだ。……流石に女性陣と服屋に入る勇気は無い……というか俺が居るのに新しい下着を買うとかそういう話は遠慮してもらいたい。れいかは此方をチラチラ見ながら良い笑顔を浮かべていたので気付いて敢えてやっていたのは間違えない。
そんな訳で、今日は一日ゴロゴロと一日中ベッドの上で過ごしているという訳だ。因みに俺の休日の安眠を高確率で妨害してくる小町ちゃんは今日から友達の家に泊まりに行くらしく、朝から出掛けていて居ないので、俺はこんな奇跡のようなぐーたライフを過ごす事が出来ているのである。
「つか、小町に家に泊まりに行く程の友達がいたとは……」
小町はアレで深い付き合いの友達を中々作らない。そんな小町に遂に深い付き合いの出来る友達が出来たとは……寂しいながらもめでたいことである。
「…………まさか男じゃないだろうなっ?!」
絶対に後で小町から詳しく聞かなければっ!!
ピンポーン
決意を固めていると玄関のインターホンが鳴った。
「誰だ?こんな時間に……」
勧誘か何かだろう……知り合いなら先に連絡を入れるだろうし……
という訳で二度寝に……
ピンポーン……ピンポンピンポンピンポーン
「……無視無視」
……カチャンッ
「ッッッ?!」
今鍵が開いた音がしたぞ!?
バクバクと鳴り出す心臓。ベッドからゆっくりと降り、静かにドアを開けて部屋から出ると玄関の方を覗き込む。
「れいかちゃんすごーい!」
「なんで鍵なんか持ってるん?」
「前に小町さんがくれたんです!」
「流石れいか!」
「ばぶぅクル」
「ねぇ、誰も居ないのかな?」
「んー?八幡君は居ると思ったんですが……」
ドアを開け、玄関でたむろしていたのは何処か見覚えのある五人の幼女達……と言うか聞き覚えのあり過ぎる名前がちらほらと聞こえて来たんだが……
「もしかして、れいかなのか?」
流石にこの状況に危険は無いと判断して、さっきまでは極力立てないようにしていた足音をむしろ立てながら階段を降り、声をかける。
「八幡君!!」
するとれいか似の幼女が直ぐさま抱き着いて来た。
「はちまんくんだ!」
「やっぱり居るやん」
「もー!ピンポンしたらちゃんと出ないとダメなんだよ!」
「寝てたんでしょ!」
れいか似の幼女を抱き留めたのを皮切りにワッと一斉に喋り出す幼女達。
「まてまてまて……一斉に喋るな、取り敢えず話を聞くから全員上がってリビングに行ってろ」
『はーい!!』
ドタドタドタッ!と騒がしく靴を脱ぎ散らかして
「わっ!?ふふっ!」
当たってしまったのであろう悪い予想に溜息を吐きながられいかを抱き上げ、四人の靴を揃えて玄関の鍵を改めてかける。
「私ってわかってくれたんですか?」
「まぁ……流石にな」
「嬉しいです!」
首元に頬を擦り寄せて喜ぶれいかを連れてリビング向かう。
リビングの扉を開けるとソファに座った四人が足をぷらぷらとさせながらも座って待っていた。
「あー!れいかちゃん抱っこしてもらってるー!」
「ええなー」
「次はわたしもして欲しいなぁ」
「みんな!八幡はれいかの彼氏なんだから我慢しなきゃだめだよ!」
途端にキャンキャンと騒がしくなる幼女達に頭痛を感じながらも対面のソファにれいかを下ろしてキッチンに向かう。
「全員オレンジジュースとミルクがあるがどっちが良い?」
「オレンジジュース!」
「ウチも!」
「わたしもー!」
「アタシもオレンジジュース!」
「あの、私はミルクを」
「あいよーちっと待ってろ」
グラスに伸び掛けた手を引っ込め、改めて紙コップを用意すると全員の希望通りに飲み物を注いでお盆に載せ、幼女達の元へと戻る。
「ありがとー!」
「おおきに!」
「ありがとう!」
「ありがとね!」
「ありがとうございます!」
全員の前に飲み物を置いてれいかの隣に腰を下ろす。
「……ん?」
「………んしょ」
するとれいかはスっと立ち上がり俺の脚を手で押し、広げさせると改めて股の間に腰を下ろした。
「んへへ///」
そして上目遣いで振り返り、少し照れた様な笑みを浮かべるれいかに俺は何も言えなくなる。
「……うっわ可愛いが過ぎるかよ……あっ」
いや、言っちゃったわ……声に出ちゃったよ。
『ひゅーひゅー!』
「えへへ、嬉しいです///」
んん゛!!!
「それで?なんでこんな状況になったのか説明してくれるか?」
あのあと、囃し立てる四人のガキを落ち着かせてクッキーを出して口に咥えさせた所で漸く話が聞ける様になった……おいもう一時間近く経つぞこれ……
「えっとねえっとね、空から雨じゃないんだけど水が降ってきて」
「そしたらウチら、急にちっちゃくなってたんや」
「それに心も子どもに戻っちゃってるの!」
「きっとこれもマジョリーナの仕業だよ!」
「それで八幡君の所に行こうってなったんです!」
「それでね!どんぐりが!」
「やよいちゃんの描いたマジョリーナが!」
「ウチが風船を見つけてな!」
「八幡君の事が頭に浮かんで!」
「〜〜〜〜〜!!」
「〜〜!!」
「〜!」
……………………幼女説中……………………
餌を貰おうとする雛鳥のように我先にと話し始め、時には盛大に脱線し、隣の子にちょっかいを掛け始め、また説明し、また脱線し……漸く大まかな状況が把握出来た。
マジで頭痛がしてきた頭を軽く抑えながら話を纏める。
「つまりは、推定マジョリーナ産の薬品を浴びて子供の時の姿になっている」
「うん!」
「身体の影響を受けてか思考や心の機微も年相応になってしまっている又は近づいている」
「せや!」
「れいかの発案で先ずは俺に助けを求めてここに来た」
「ええ!」
「……来るまでに電車ごっこをしながら来て、どんぐりも拾って来た」
「うん!これがそのどんぐりだよ!」
「……ぶっちゃけマジョリーナが見つからないとどうにもならない」
「アタシはそうだと思う!だから早くマジョリーナを見つけなきゃ!」
「そうさなぁ……」
話を聞いてマジョリーナを早く見つけなきゃ行けない事はわかったんだが……
「マジョリーナを探して元に戻るぞー!」
『おー!』
なおの掛け声で外に飛び出して行こうとする幼女達を慌てて抱き留める。
「待て待て待て!いいか?先ずはそこの窓から外を見ろ」
『あっ……』
外は俺達がわちゃわちゃと説明を聞いたり脱線したりとしている内に夕焼けを過ぎ、薄紫色の空になっていた。
「はぁ、流石にその姿で家には帰せねぇよなぁ……しょうがねぇ、今日は泊まって行け。親には俺が連絡するから携帯貸してくれ」
いきなり小さくなった子供から電話がかかってきたら困惑するだろうし、俺から掛けるしかねぇよなぁ……流石にこんだけつるんでるんだし親に俺の事話してるよな?
「んー?家に忘れた!」
「あるで!」
「わたしも!」
「アタシも!」
「はい!私の携帯です!」
「ん、みゆきはそこのメモに家の連絡先を書いとけ」
「はーい!」
各々から携帯を預かり、親に掛け、決して二人きりなどではなく五人で今日は俺の家に泊まる事を伝えて了承を得ていく。れいかの母ちゃんにだけは「家の娘をよろしくお願いします」とか言われたがナニを想像していらしたんでしょうねぇ……
改変祭りの時間だ!
一日で終わる筈の幼女回ですが、勿論延長さ!幼女がお泊まり……ヒャッハァー危険な匂いがぷんぷんするぜぇぇ!!
次回!八幡の八幡……勃つ!!デュエルスタンバイ!
それでは次回もお楽しみに!