因みに今回の章タイトルは適当です。
(1)
休み時間。先程までぐっすり……とまではいかないが数学教師の魔の手により意識が途切れ途切れになっていた授業を終え、少し眠ろうかと腕を枕にしたところで笑顔のれいかに捕まりった。
「もう、最近は成績も伸びてきているのにどうしてそう居眠りをしてしまうのですか?」
れいかのありがたいお説教を聞きながら先程の授業の復習を行う。『復習をしないともう口を聞きませんからね!』と頬を膨らませるれいかに慌てて謝り、しまっていた教科書とノートを開いたのがついさっき。
ちょっと問題に詰まると、その部分を丁寧に解説してくれるれいか。もう教師は全員れいかに変わって良いんじゃないだろうか?それなら俺は居眠りをしない自信があるぞ!
『あら?みゆきさん達、あれは一体何をしているのでしょうか?」
「んあ?」
きょうかの口から突然出てきたみゆき達という言葉に、一瞬変な声が出たが、れいか達が気にした様子も無いので気にせず教室を見回し、件のみゆき達を探す。……居た。
やよいを除いた何時ものメンバーがやよいを囲む様に、それで居て隠れるようにやよいの手元を覗き込んでいる。
あれは……やよいの描いている絵を見てるのか?……あっ、みゆきが動いた。
「やよいちゃん、なに描いてるの?」
「へ?ひゃぁぁ?!見ちゃだめぇぇ!!」
突然の事に驚いたのか、やよいは悲鳴をあげながら描いていたスケッチブックを胸元に抱え込む。
「やよいめっちゃ上手いやん、なんで隠すん?」
「うん、やよいちゃんすごく上手だと思うよ」
みゆきの動きに隠れるのを諦めたのか、あかねとなおもやよいに声をかけながら近付いていく。
れいかの方へ目を向けると目が合った。れいか達も考えている事は同じなようで一つ頷くと二人で席を立ち、輪の中へ入っていく。
「やよいさんが普段よく絵を描いているのは知っていましたが、ちゃんと見せてもらった事はありませんでしたね」
『私達にももっとよく見せてもらって良いですか?」
「やよいさんが描いている絵、私も気になっていたんです」
「れいかちゃん達まで……う、うん。いいよ」
やよいは抱え込んでいたスケッチブックを俺達みんなが見られるようにそっと机の上に置いた。
『わああああぁ!!』
やよいのスケッチブックに描かれている絵を見て自然と歓声が上がる。
「すごいすごい!」
「流石やなぁ、これ何を描いてんの?」
「えっとね、この子はわたしが考えた正義のスーパーヒロインなんだけど……」
「えっ?!これ自分で考えたの!?」
「すごい……まるでプロの漫画家さんが描いたみたいです」
「えへへ……そうかな?」
れいかの言葉にやよいが照れたように笑うが、れいかの言うように俺もマジで上手いと思う。
そもそもオリジナルのキャラってだけでも凄いと思うし、絵自体も色がついていれば書店で売っている漫画雑誌の表紙と言われても違和感がない程だ。
「本当に上手いな、やよいは将来漫画家になるのか?」
「え?わたしが……漫画家」
俺の言葉に反応したやよいの顔は、なにか、キラキラと輝いて見えた。
「ええやん!漫画家、黄瀬やよい」
「漫画家って先生とか呼ばれちゃうんでしょ?」
『人気になればアニメやドラマにもなったりするんですよね!」
「うーんでも無理だよわたしなんて……漫画家になれるのはほんのひと握りの人達なんだもん」
「うーんそうだけど」
「なあなあ!話が聞こえちまったんだけど、黄瀬は漫画家描くのか?」
突然話に入って来たのは隣で集まっていた男子達の一人、井上だ。
「だったらさ漫画コンクールに応募して見たらいんじゃね。……っとこれこれ」
井上は集まって読んでいた漫画雑誌から目当てのページを見つけると黄瀬に差し出した。
「漫画コンクール……新人賞」
「黄瀬なら良いとこまでいけると思うぜ」
「うんうん、黄瀬!プロになったら俺にサインくれよ!」
「いいね!俺もサイン予約!」
井上以外の二人もやよいの漫画コンクールへの挑戦を歓迎しているようだ。
「……わたしやってみようかな」
『え?』
「コンクール、応募してみる!」
「よっしゃ!それなりその漫画は黄瀬に貸すから応募の仕方とかよく読めよな!」
「うん、ありがとう!」
「うおおぉ!自分の事やないのになんか燃えてきたで!」
「もうあかねったら、でもやよいちゃんが決めたんならアタシも応援するよ!」
「私達に出来ることがあったら言って下さいね」
『一肌脱いじゃいますよ!」
「……まぁ、無理だけはすんなよ」
「やよいちゃん、頑張ってね!」
「みんな……うん!!」
こうしてやよいの漫画コンクールへの挑戦が始まった。
翌日
『すごーい!』
「流石やよいちゃん!」
「むっちゃ上手いやーん!」
「一晩でよく描いたね!」
「完成が楽しみです」
『本当に漫画みたいです!」
「……すげぇな」
「えへへ、そんなに褒められると恥ずかしいよ。それに、まだ表紙だけだし」
やよいは一晩で漫画の表紙を仕上げて来た。
「おっ!ホントだすげぇ!」
「なぁ黄瀬、続き楽しみにしてるぜ!」
俺達の声に気付いて寄って来たのか井上たちが覗き込んで来た。
「う、うん、頑張って描くから楽しみにしてて」
「おう!」
井上達は肩を組んで自分の机の方へ戻って行く。
「なぁ、締切って何時までなんだ?」
ふと疑問が浮かんできたのでやよいに聞いてみる。
「え?今月末だけど……」
「……結構短いですね」
あと半月ってとこか……
「やよいちゃん、大丈夫?」
「うーん、何とかなるよ。大丈夫
「やよいちゃんならきっと大丈夫!頑張ってね!」
「うん、ありがとう」
問題は数日後に起こった。
「黄瀬さん……黄瀬さん?……………黄瀬さん!!」
「はい!?」
「ボーッとしないで!教科書読んで……82ページよ」
「はい!」
英語の授業中、佐々木先生に指されたやよいだったがボーッとしていて反応が遅れたようで怒られてしまったのだ。
「れいか、やよいのことどう思う?」
昼休み、俺とれいかは二人で屋上の隅に座って昼食をとっていた。
「そうですね……今日の様に先生に指摘されたのは初めてでしたが、最近ボーッとしている事が増えている気がしますね」
『なんだか疲れてる感じですよねぇー」
二人の言う通りだ。
「実際疲れてるんだろうな……今日気付いたんだが目元に薄く隈も出来てたし」
やよいの不調の原因はおそらく……
「漫画……少し無理をして書いているんでしょうか」
「全部一人で書いてるんだろうし、描く時間も学校があるから放課後と休日だけだ。相当大変だろうな」
本職の漫画家だって描く時間は一日使えるし、アシスタントを雇ったりしているんだ。やよいはかなり無理をしているのだろう。
『れいか、私達にも手伝えないでしょうか?」
「そう、ですね。今日の放課後、皆さんにお話してやよいさんにお手伝いを申し入れて見ましょうか」
放課後、みゆき達に話をすると直ぐに賛同しみんなでやよいを手伝おうという話になった。
「……そういえばやよいは?」
みゆき達に話をしている間にやよいの姿が見えなくなっていたので、なおに視線を向けると直ぐに答えが返ってきた。
「やよいちゃん、最近帰りのHRが終わったら直ぐに家に帰ってるみたいなんだよね」
「それって……」
「うん、漫画を描くためだと思う」
「……よし!追いかけよう!」
なおの言葉を聞いたみゆきが決める。
「みゆき?」
「今から走れば追いつけると思うし、わたしやよいちゃんになにかしてあげたいもん!」
「そか、ならすぐ行くで!」
「うん!」
「あ、ちょっと!」
教室を飛び出したみゆきとあかねを慌ててなおも追いかける。
「八幡君、私達も」
「……ああ」
内心自分でも珍しいと思いながらもみゆき達を追うように俺とれいかも走り出したのだった。
という訳でやよいちゃん回スタートです!
構想段階ではだいぶ短くなる予定なので次回かその次で終わる予定です!
それでは次回もお楽しみに!