というわけでどうぞ!
「れいかちゃんが子供を産むのか!?」
俺達の話を近くで聞いていた八百屋のおっちゃんの叫びは思いのほか大きく響いた。
「え?緑川さんの話じゃないの?」
「れいかちゃんって青木さん家の娘さんよね」
「ちょっと!どうなの?」
近くで買い物をしていたおばちゃん達も続々と集まって来た。
なんか、やばくないか?
「あ、アタシ達は帰って早くお母ちゃんカレーの準備をしなきゃ行けないからもう行くね……みんな!早く帰るよ!」
「ええ〜!俺もっとお兄ちゃんとお姉ちゃんの話聞きたい!」
「わがまま言うとけいたの分のお肉がどんどん減ってくよ〜」
「姉ちゃんそれはずりぃよ!」
「それじゃあ、そういう事で八幡!頑張ってね〜!」
『頑張ってねー!』
アイツら逃げやがった!!
俺達がそんなことをしている間にも八百屋のおっちゃんはおばちゃん達に追い詰められていく。
なんだこの絵面……
「いや、俺もさっき聞いただけだから……」
「なんだいはっきりしないね……あら!れいかちゃん!」
おっちゃんに詰め寄るおばちゃん達という誰得な絵面もおばちゃんの一人がれいかに気が付いた事で終わりを迎えた。
「ほんと、久しぶりね!」
「こんなに可愛くなっちゃってもう」
「こんにちは、おば様達は買い物ですか?」
寄ってきたおばちゃん達にもれいかは普段通り丁寧に対応する。
「そうなのよ!うちの子なんて野菜は食べないクセに肉肉ってうるさいんだから」
「って、ちょっと!あんたの話なんていつも同じなんだからみんな知ってるわよ!それよりもれいかちゃんでしょ!」
「そうだったわ!さっきの八百屋さんが言ってた事は本当なの?」
「そんなに若いのに大丈夫?」
すっげぇな……おばちゃん達の口が止まらねぇぞ……あ、れいかがあわあわしてる……可愛いなぁ。
「ちょっとアンタ、さっき見たわよ!れいかちゃんとラブラブで手ぇ繋いでたでしょ!」
おっと矛先がこっちに向いてきたぞぉ?
「あらほんと?」
「この子が?」
「でもなかなかイケメンじゃない?」
「美男美女ってこと?良いじゃない!」
「あの、そのへんで……」
やべぇ、このおばちゃん達俺に話しかけてるってよりも勝手に自分たちで話して納得してるから俺の話とか聞いてねぇ……
「こらこら!れいかちゃんとあんちゃんが困ってるだろ!散った散った!」
おお!アンタは肉屋のおっちゃん!助けに来てくれたのか!
「ちょっと!邪魔しないでくれる!」
「お肉もうちょっと安くならないの!」
「最近コロッケのおイモ変えたの?」
おばちゃん達からの口撃が肉屋のおっちゃんへ降りそそぐ。
「だぁー!いつも言ってるけどそんなに一斉に話しかけられても聞き取れないんだよ!」
ごもっともで……俺も正直何言ってるのか全然分かんなかったわ……
「俺かられいかちゃんの彼氏の事を教えてやるから一回話を聞け!」
『……………………』
肉屋のおっちゃんが怒鳴ると辺りがシーンと静まり返った。
「……おお、まさかこんなに静かになるとは思わなかったわ……」
自分でびっくりすんなよ……
「それで?早くれいかちゃんの彼氏の話を教えてくれよ」
びっくりしていて何も話し出さない肉屋のおっちゃんに八百屋のおっちゃんが声をかけた。……この騒ぎの原因アンタなんだけどね?
「よぉーし!」
「お?」
なんか肉屋のおっちゃんに思いっきり引き寄せられたんだが……
「このあんちゃんがれいかちゃんの彼氏だ!」
『おおおお!!』
「そして!こまっちゃんの兄ちゃんでもある!」
『おおおおおおお!!!!』
……小町ちゃん、マジで商店街で何したの?すげぇ人気なんだけど……君まだ引っ越して来てから一年半位しか経ってないんだけど?
でもまぁ、これでこの騒ぎも少しは落ち着きそうだし、ここには居ない小町ちゃんと肉屋のおっちゃんには感謝だな。
「……それじゃあ、最後にあんちゃんに一言いだだこうと思う」
おいこら肉屋……
「…………」
え?そんなにシーンってなる?そんなに俺の言葉が気になるのん?
「すみません、通して下さい!……ぷはっ!八幡君!」
俺が固まって居るとおばちゃん達の肉の壁を越え、女神が現れた!
「れいか!」
『おおおおっ!!』
胸に飛び込んで来たれいかを受け止めると何故か拍手が起こった……
「……八幡君、もうこの際仕方がないですし皆さんにご紹介してしまいましょう!」
れいかは顔を上げると何故か、嬉しそうに口元を緩ませながら、そう提案してきた。そして、その瞬間俺は気付いてしまったのだ。この商店街デートの目的というモノに……つまりこれは商店街のおばちゃん達の井戸端ネットワークを使って俺達の関係を広める事なのだと!!
「……そうな」
「はい!」
まぁ気付いた所でどうにもならないんだけどな……
「皆さんこんにちは、青木れいかです。今日はいつもお世話になっている皆さんに私の大好きな彼を紹介しようと思います!」
「あー、ご紹介に預かりました。比企谷八幡と申します」
『わぁぁぁぁ!!』
なんで自己紹介でそんなに盛り上がれるん?
「八幡君の事はお母様からも認められております!」
「そりゃすげぇ!」
「青木さんも認めてるのなら安心ね!」
「緑川さんの所も産まれるらしいし、今日はお祝いだな!」
あれから結構際どい質問とか今の気持ちなんてことも聞かれたりしたがれいかは華麗にスルーしたり、熱心に答えたりとだいぶ時間が経った気がする。
「これからも、私達の事を温かく見守っていただけると幸いです」
れいかも同じ様に思っていた様で続いていた質問を遮り、締めの言葉を口にした。
ヒューヒュー!
ワー!ワー!
「それでは、私と八幡君はデートの続きに戻らせていただきますね」
れいかが頭を下げたので俺も下げる。
そして巻き起こる拍手!……なぜ?
あの後はおばちゃんとおっちゃん達が左右に別れて出来た道をれいかと手を繋いで歩いて商店街の入口にあるアーチの所まで戻って来た。………なんだったんだあれは?
「………」
「どうしました?不思議そうな顔をしていますけど……もしかして先程の事で気分を害してしまいましたか?」
アーチのところで先程の事を思い返していると、れいかが心配そうに尋ねてきた。
「あ、いや、特にそういうわけじゃないんだ。ただ、あんな風に盛り上がったり出来るのが不思議で……」
「ああ、そういう事ですか。八幡君は引っ越して来てまだそれ程多くの催しに参加した事がないんですものね」
「ああ、そもそも人混み自体あんまり好きじゃないしな」
引っ越してすぐの頃は基本家から出なかったし、何かの催しに参加するようになったのだって、れいかやみんなと遊ぶようになってからだ。
「実はこの商店街、と言うよりもこの地域?と言えばいいでのでしょうか?とても明るくてお祭り好きな方が多いんですよ。ですから、この前皆さんで行ったようなお祭りも派手ですし、七夕の様な季節の行事にも多くの人が参加するんです」
そうか、今考えて見れば射的の景品でグアム旅行とか豪華過ぎるし、七夕の時も結構な数の家族連れが星を見に来てたもんな……
「それであんな
「ええ、ですがとても祝福していただけました」
『皆さんとっても優しい人達です!」
きょうかの言葉が全てだろう。最初にあんなに集まって来たのもれいかの事心配してだったしな……まぁその後はおばちゃんパワーが爆発していた様には感じるが……っとそうだ。
「……商店街でデートをした理由」
「あら♪」
口にするとれいかは嬉しそうに口角を上げた。
「わかっちゃいましたか?」
「みんなに紹介しようって言った時……口元が緩んでたぞ?」
そう口にすれば、れいかは嬉しそうだった表情を一転させ、珍しく恥ずかしそうに頬を染め片手で目元を隠した。
『あはっ♪れいか、我慢出来なかったみたいですね」
「ええ///不覚です///」
その仕草に堪らなくなり、つい、れいかを抱き寄せてしまった。
「あっ、八幡君///」
「……れいか」
どんどん近付いてくるれいかの顔に目を瞑ろうかとした瞬間
「お姉ちゃん達?」
「何してるの?」
突然聞こえた声に俺達は弾かれた様にバッと離れ、声の主の方を見る。
するとそこには、不思議そうな顔をしてこちらを見上げる。なおの二人の弟妹の姿だった。
はーいという訳で勝手に生えてきた裏設定のお時間です。
皆さん、めちゃくちゃ関係ない話ですがfw〇nzaのスイートホームメイドと言うゲームがあるのを知っていますか?あのゲームストーリー、個人的にめちゃくちゃ好きなんですよね。はい、お察しの通りこのお話の商店街はあそこのゲームの商店街がモチーフです。ゲーム本編では全く言及されていませんが作者が勝手にお祭り好きっていう認識でいます。
長々と関係ないことを書いてしまいましたが次回はやっとマジョリーナが出てくる予定です。
それでは次回もお楽しみに!