お泊まりって言ったらやっぱ、ねえ!
れいかとやってきたのは近所のスーパーだ。ここら辺では一番大きな店だし、小町に頼まれたものは全てそろうだろう。
「八幡君、このひき肉は合い挽きの方がいいんでしょうか?」
「おう、そうだな。うちは普段から合い挽きだからそうしてくれ」
「はい!」
やはり八人分だからか普段買う量よりも幾分多く感じる。
「後は人参と玉ねぎだな」
「そうですね、では野菜コーナーの方へ行きましょうか」
こうやってれいかと買い物をしていると少しだけ
「あ、八幡君、じゃがいもがお安くなってますよ!少し多めに買ってマッシュドポテトも添えましょう!」
こうした、ただの買い物でもれいかといると楽しく感じる。
「……れいか」
「どうしましたか?」
「楽しいか?」
「ええ、もちろんです!そう聞いてくる八幡君はどうなんですか?」
「俺も……楽しいぞ」
だけど、そんな事を考えてしまっている俺が……嫌いになりそうだ……
「………八幡君、実は私は今、とても悪い事を考えているんです」
「……え?」
「八幡君と入れ替わって良かったなって……この指輪のお陰で恥ずかしい事もありますけど、今はこんなにも楽しいんです」
れいかも……
「八幡君はどうですか?」
「……俺も、そんな悪い事を考えてたよ」
まるで見透かされてる様だな、前にれいかは俺の目の事を見透かす様な瞳だなんて言ったことがあったが見透かされてるのは俺の方じゃないか……
「では、今は二人で、この悪いことを楽しんじゃいましょう……ね?」
「……そうだな。楽しんじまおう」
胸の奥に、泥のように溜まっていたものが一気に軽くなっていくようだった。
人参と玉ねぎもカゴに入れてメモを確認する。
「これで買う物は全部ですか?」
「いや、あと一個あったな」
「なにかありましたっけ?」
「れいかの歯ブラシだよ」
「あ、そうでしたね。すっかり忘れていました」
使い捨ての歯ブラシをカゴに入れ、れいかと目的も無しに店内を見て回る。
「もう少し見て回りたいなんて、わがままを言ってしまいすみません」
「いや、俺もそう思ってたから気にしないでくれ」
小町に頼まれたものは全てカゴに入れたが、まだもう少しだけこの時間を楽しみたかったから、れいかの提案は俺にとっても渡りに船だった。
「あら、鮭も少し安くなっていますね。この時間だからでしょうか?」
「……あ、そうです!明日の朝食は私に作らせて下さい!」
「……れいかに?」
「ええ、これでも私、毎朝お母様の朝食作りのお手伝いをしているんです」
「……それじゃあ、頼めるか」
「ええ、よろこんで!」
「八幡君、大丈夫ですか?重いものばかり持たせてしまって」
「いや、大丈夫だ」
そう答えるが重いものは重い……けど普段これくらいのモノを持つ時よりは軽く感じるんだよな……もしかしなくても俺よりれいかの方が力が強いんじゃないか……
「それでは、せめて持ち手の片方を持たせてください。こうした方が重さが分散して軽く感じる筈です」
「……そうだな、助かる」
れいかにレジ袋の持ち手を片方を持ってもらう。すると、あれほど重かった荷物がそんなに力を入れなくても持っていられる様になった。
もうそろそろ家が見えてくる所まで来た時の事だ。
「八幡君、お買い物……楽しかったですね」
「……そうだな。また一緒に行くのもいいかもしれないな」
「はい!……でも次は八幡君から誘って下さいね」
無理ゲー……俺にそんな甲斐性がある筈がっていうな……
「ははは……気が向いたらな」
「もう、そういうところですよ」
「たでーまー」 「ただ今戻りました」
「おかえりー、上がってきてー!」
れいかと荷物を持って小町の元へと向かう。
「ほれ、肉とか材料買ってきたぞー」
「じゃがいもがお安くなっていたので、買ってきてしまいました。マッシュドポテトにしてもう一品増やしませんか?」
「お!良いですね!マッシュしちゃいましょう!」
意味は合ってるが果たして分かってて使ってるのかね……いや、多分わかってねーな……
「およ?他にも結構入ってますね?」
「あ、実は明日の朝食を作らせて頂こうと思いまして……お許しいただければですが……」
「お
まぁこの反応は分かりきってた事だわな……
「うちにあるものは好きに使ってもらって良いので、是非お願いします!」
「そう言っていただけて嬉しいです。これは私も小町さんのためにも頑張らなくちゃですね!」
「じゃあ小町もお
これは、今日の夕飯と明日の朝食は期待できそうだな……
「今出たでぇ」 「先に頂いたよ」
「きもちよかったぁ!」 「……小町ちゃん、ありがとね」
れいかと小町のご飯談義を眺めていると湯上りらしき四人がやってきた。
「あ、皆さんどうでした?狭くなかったですか?」
「まぁ、流石に四人いっぺんにやと少し狭かったけど……」
「その方がお泊まりらしくて何だかとっても楽しかったよ!」
「まぁ、たまにはこういうのも悪くないよね」
「……わたしもこういうの初めてで楽しかった」
「キャンディも楽しかったクル!」
「いや、一番楽しんでたのがキャンディやんか」
どーも静かだと思ってたら、みんなで風呂に入ってたのか……
「じゃあ、皆さんも上がったみたいだし、小町ハンバーグ作り始めちゃうから、次はお兄ちゃんとお
「………は?」 「………え?」
なんでもないような口調でとんでもない事を言い出しやがった……
「さっきお兄ちゃん達が買い物に行ってる間に、戻ってきたなおさん達と話したんだけど、ぶっちゃけ各自で入らせるより二人一緒に入れた方が健全そうっていう結論が出たんだよね」
……確かに……一理あるから言い返せねぇ……
「……れいかはいいのか?」
「もちろんです!先程は驚いてしまいましたが、本当は私の方から提案するつもりだったので」
は?まじで……
「仲を深めるには裸の付き合いが一番と言うじゃないですか」
……まじかぁ
「ちょっとこれは予想外なんやけど……」
「……アタシはあるかもって思ってたよ……れいかだし」
おい、緑川お前なんか目が諦めてるぞ!
「さぁ、八幡君行きましょう!」
「え?ちょっ!」
れいかに手を引かれるまま風呂場に連れられていく。
「お
「小町さーん、ありがとうございまーす!」
展開が速すぎてちょっと怖くなってきたかも……
「そんな顔をしないで下さい八幡君、さっきも言ったように、悪い事……楽しんでしまいましょ」
はうっ/////////
「男性は服が脱ぎやすくて良いですね」
れいかは脱衣所に着くなり、服をどんどん脱ぎ出し、あっという間に下着一枚になってしまった。
「入れ替わってるにしても、少しは恥らおうぜ……」
少し異性の体に思考が引っ張られているのだろうか?全てを知っている訳ではないにしてもそれは普段の行動から見て少しだけ異質だった。
「そうですね。私自身も少し違和感を感じますが、この体になってから肌を出すことに対して、余り羞恥心を感じない気がしますね」
「……それ結構やばくないか?」
思いっきり心が体に引っ張らてるじゃねーかよ……
「少し不味い気もしますが、今直ぐにどうこうできる問題でもないですし……」
「……まぁ、そうだよな。……っし!一旦悪い事は忘れて風呂で温まろうぜ」
「はい!では八幡君には難しいでしょうし、私が服を脱がせてしまいますね」
「……お手柔らかに頼む」
「……はぁ、やっぱり風呂は心の洗濯だよなぁ」
「そうですね、こうして湯船で体を伸ばしていると体だけでなく心からも悪いものが抜けていく気がします……」
脱衣所でれいかに服を脱がされた後も、れいかがお互いに背中を流したいと言い出し、結局、今こうして二人で湯船に浸かるまで、全てれいかのなすがままになっていた。
実際、今もれいかの胸に背を預け、膝の上に乗るような形で湯船に浸かっている。
「そろそろ出るか?」
湯船から出ようかと少し腰を浮かすと……
「あ、待ってください」
「わっ?!」
れいかに後ろから両手をお腹に回され、湯船に引き戻されてしまった。
「もう少しだけ、このままじゃダメですか?」
「じゃあ、あと少しな……」
「はい、ありがとうございます」
体の力を抜くと俺はまたれいかに体を預けた……
ゴオオオオオオオ!
「悪いな、髪まで乾かして貰って」
今は風呂から出て、着替えてかられいかに髪を乾かして貰っている。
「いえ、元は私の髪ですし、慣れない事をやれなんて言えませんよ」
俺が髪を乾かすのに四苦八苦しているのを見たれいかが続きを引き受けてくれたのだ。
「やっぱり髪が長いと乾かすのも大変なんだな……」
「そうですかね?慣れればそう大変なことではありませんよ」
「そんなもんか?」
「ええ」
「はい、これで終わりです」
「ん、ありがとな」
髪もれいかにしっかりと乾かしてもらったからか、さらさらになっている。
「いえいえ、それでは皆さんの所に戻りましょうか」
「そうだな。小町のハンバーグも楽しみだ」
『いただきます!』
テーブルにはハンバーグに付け合せの人参、マッシュドポテトサラダが並んでいる。
「すっごーい!美味しい!」 「めっちゃ美味いな!」
「とっても美味しい!」
「うん!美味しいよ、凄いね小町ちゃん!」
「ええ、本当に美味しい。何か隠し味とか入れてるんですか?」
「えへへー、そんなに褒められたら小町照れちゃいますよ。隠し味にはりんごジャムを使って見たんです!テレビで果物の酵素と甘みがなんたら~って言ってたので、結果的には大成功でしたね!」
小町のハンバーグは皆から大絶賛だった。まぁ、小町の料理はなんでも美味しいし当然だな!
料理も食べ終わり、小町が風呂に入っている間にみんなで後片付けを終わらせた。星空が皿を割りそうになったが日野がギリギリ支えたお陰で何とか事なきを得た。
小町が上がってからはトランプをしたりして眠くなるまでの時間を過ごした。
「ふぁぁ……わたしもう眠くなってきちゃった……」
「みゆきちゃんも?アタシも少し眠いしそろそろ寝ようか」
星空の一言で場にお開きムード広がっていく。俺も眠くなってきたし丁度良かったな
「じゃあ、寝る部屋に小町が案内しますね。家はお客さん用の布団とかは無いので小町の両親のベッドで寝てもらう事になります」
あれ?かーちゃん達のベッドはある程度でかいとはいえ流石に五人は厳しくねーか?
「あと、両親のベッドでも流石に五人も寝られないので、なおさんとお
「アタシは何処でも構わないよ」
「ええ、私も泊めてもらう身ですから何処でも大丈夫です」
「あ、別に変なとこで寝ろって意味じゃないですよ。なおさんは小町と一緒に寝てもらうだけですし、お
だけじゃねぇ?!
「じゃ、そゆことでお兄ちゃん、お
「はい、皆さんおやすみなさい」
固まってる間に、皆部屋に入ってしまったので、仕方なくれいかを連れて自分の部屋に戻る。
「ここが八幡君のお部屋ですか……」
れいかは部屋を見回してしているが特に慌てることも無い。アレ系のものは全てパソコンの中にデータとしてしか入ってないからな!
「さっぱりとした部屋ですね。家族以外の男性の部屋に入ったのは初めてなのですが、皆こうなのですか?」
「……すまんが俺も家族以外の人の部屋に入った事ないからわからん」
「あ、ごめんなさい……」
「いや、惨めになるから謝らないでくれ……」
……人の部屋に入った事無いからなんだっていうんだよな。あ、もう教室も人の部屋って括りでいんじゃね?そしたら俺もう毎日のように入ってるわ。
「……で、では私達も寝ましょうか。明日も指輪を外す手掛かりを探さなくてはいけませんし」
「……そうだな、明日はもう一度学校の周りを調べてみるか……」
「……狭くないか?」
「ええ、大丈夫です。寧ろ温かくて丁度いいくらいです」
二人でベッドに入ると狭くはないが、身じろぎした際に体に触れるくらいには距離が近い。
「八幡君、手を握ってもいいですか?」
「ああ」
れいかにしては珍しいかもしれない。最近はいつの間にか手を握られている事が多いからな……
「……私たち、明日には元に戻れるでしょうか?」
その声は少しだけ震えている。今日は普段よりもスキンシップが激しいと思っていたが、あれはれいかなりに、不安を紛らわせようとしていたのかも知れないな……
「……大丈夫だろう。明日になれば解決する……そんな気がすんだよ」
確証なんてものはないが、そんな気がしているのは事実だ。
「……八幡君がそう言うなら、安心ですね」
言葉の通りに安心したのか。隣からは直ぐに規則的な寝息が聞こえ始める。
「……おやすみ」
れいかに一声かけ、右手から伝わってくる温もりを感じながら
作中時間で今日は異様に積極的だった理由がはっきりしましたねえ!
実は理由があったんですよ!作者が調子乗ってたとかじゃないんですよねぇこれが
正解は
体に心が引っ張られる(入れ替わりモノの鉄板ですよね)
れかちゃんの不安の現れ
の二つでした!(問題とか出てないですけど)
ああぁぁ!もっとお風呂シーンも書きたかったよぉぉ別にいいじゃねーか心の洗濯って事は入浴シーンは洗濯シーンと言い換えても過言ではないんじゃないだろうか?!
今章は次でラストです