ちょっとアニメそのまま過ぎたかなーと後悔ちょっぴり
キュアハッピーは逃げ出した。それは某国民的RPGの金属質の半液状モンスターとの戦闘を思い出してしまうような逃げっぷりであった。
「なんだアイツは?アカンベェ!」
ワーウルフは怪物に指示を出すと自らもハッピーを追いかけて行く。関係ないがハッピーを追いかけるって青春しているみたいだな……
閑話休題
「ふぅ……もう安心みたいだな」
落ち着いて来ると急に俺の中の野次馬根性がムクムクと膨らんでくる。
「ここまで巻き込まれてんだし最後まで見届けたいよな」
安全のために一つ横の道から追いかけていき、声が聞こえてきた辺りでまた脇道から顔を出す。丁度そのタイミングで
「ハッピーシャワー!」
………何もハッピーの手からは出ていない。しかしハッピーは何かを出すように両手を前に突き出していた。
「ちょっと、どうなってんのよ!ハッピーシャワー!ハッピーシャワー!ハッピーシャワー、ハッピーシャワー!!」
ポーズを変えたりしながらハッピーシャワーと叫んでいるが一向に何も出ない。傍から見るとマジで痛い奴にしか見えなくなってきたな……
「なんだこりゃ?」 ほんとにな
『アカンベェ!!』
またハッピーと怪物の追いかけっこが始まった
「何も出ないじゃない!」 「気合いが足りないクル!」
「絶対うそ!あたし超やる気だったもん!だから今超恥ずかしいもーん!!」
悲痛な叫びが遠ざかっていく。それにしても凄いな、後ろから怪物に舌で攻撃されているのに上手くジャンプで躱しながらにげていく
あ、コケた……
ワーウルフと怪物が追いつく
「絶対負けたくない!!」
ハッピーが叫ぶと腰にぶら下がっていたポーチの様なものが淡く光り出す。
「スマイルパクトに気合いを込めるクルー!」
キャンディに言われると急にハッピーが叫び出した。
「気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!」
叫ぶ毎に光は強くなっていく。……なにこれアニマルさんかな?アニマルさんってこんな場面に出てくる程、女子の間に広まってたのかよ……
「茶番は終わりだ!アカンベェ!」
『アカンベェ!』
「気合いだ!気合いだ!気合いだァ!!」
ハッピーが一際大きな声で叫んだ時、強い光が放たれた。
「今クル!!」
「プリキュア・ハッピーシャワー!!」
両手で大きくハートを描き、今度こそハッピーのその両手からピンク色の光の奔流が解き放たれた。ワーウルフは何かを察したのか飛び退き、消え去る。しかし、光の奔流はそのまま怪物に直撃した。
『アカンベェェ』
浄化、と言って良いのだろうかその光は怪物のピエロの様な赤い鼻を起点に怪物を消し去って行き、後には怪物の元になった塀だけが道端に取り残されている。……知らね。
「はぁ、はぁ、ナニコレものすっごい疲れた……」
「ハッピーシャワーはとてもパワーを使うクル」
「先に言ってよ……あぁ、怖かったぁ」
その時、上から何かが降って来たのか、ハッピーが片手で受け止める。
「なにこれ?」 「キュアデコルクル!」
「なに?あれ!そういえばあのオオカミさんとさっきの人は?」
俺の事も覚えていた様だ、バレない内に帰ろうとすると、光に包まれハッピーの変身が解ける。
「なっ?!いや、あー……」
光の中から姿を表したのは俺も知る人物だった。変身していたのは星空だったのだ。最初は驚いたがどことなくあの残念な感じは記憶に新しかったので納得と言えば納得である。上を見上げると満月も消え、普段通りの景色に戻っている。
「バレない内にずらかろう」
星空にバレないように出来るだけ足音を消して帰路に着いた。
「たでーまー」
無事、バレずに家に辿り着いた。あの騒動で結構時間が経っていたのか、小町ももう帰ってきているようで玄関に靴が揃えてあった。リビングに入ると小町が珍しく宿題をしていた。
「あー、お兄ちゃんお帰りー」
「へいへい、たでーま」
このなんでもないやり取りが日常帰って来たのだと実感する。いや、俺が特に何かしてたって訳でも無いんだけどね。実際に戦ってたの星空だし。それでもあの非日常はそうそう体験したくはない。今回は初めてだったが星空はこれからもあんな戦いを続けて行くんだろうか?
今日はどうにかなっていた。しかしまた次にどうなるかは分からない。学校に行ってクラスで会った時に……あれ?俺、もしかして顔を覚えられてなくないか?確かに今日クラスで話はしなかった、だがハッピーとして会った時にクラスで見た顔なら、何かしら反応があってもいいものだが、実際には何の反応も無かったし、……なんか心配していたのがバカらしくなってきた。また次も今日みたいにノリでなんとかしてくれるだろう。
「お兄ちゃーん、何かあったの?なんか一人で考え込んでて、お兄ちゃん顔に結構出るから、傍目から見ると正直不気味だよ」
小町からなかなか心に来るお言葉を受け取ってしまった。前半は心配してくれているのに後半でお釣りが出ちゃうくらいに台無しだわ。
「小町ちゃん、お兄ちゃんを心配してくれるのは嬉しいんだけど、オブラートって知ってる?」
「お兄ちゃん何言ってんの、小町もオブラートぐらい知ってるよ。小町もね、こんな事言いたくないんだけどお兄ちゃんに現実を知ってもらうために敢えてキツい言い方をしてるの、わかってくれる?」
「小町ちゃんも、お兄ちゃんのメンタルがそこまで強くない事はわかって欲しいな?」
「あー、もーそういうの良いから、何かあったんでしょ?小町に話せそうな事?」
今のやり取りで落ち着いて来たのが分かったのか、小町が切り出して来る。
「いや、今はまだ話せそうにない」
「そっか、じゃあ今はまだ聞かないけどいつか言えるようになった時には教えてね。お兄ちゃん結構抱え込んじゃうけど、もっと小町の事頼って良いからね。えへっ、今の小町的にポイント高ーい」
「最後のがなけりゃ八幡的にポイント高かったんだけど。さんきゅな」
「うん!」
「じゃあ部屋に居るから何かあったら呼んでくれ」
「わかった、夕飯の時に呼ぶくらいだと思うけどちゃんと起きててね」
「おう」
「なうぅ……」
部屋に戻ろうと廊下を進んでいると、カマクラが擦り寄って来た。
「お前も心配してくれんのか?ありがとな」
撫でてやろうとすると、スルリと躱された。えっ?
そのまま歩き出し、振り向いて一鳴き「ふんすっ」
また少し歩くと振り向いて「ふんすっ」
え?なに、着いて来いってことなの?
よく分からないがカマクラに着いていく。
カマクラに連れて行かれたのはカマクラ専用の容器の前だった。
「なーう」たしっ、たしっ。
「飯の催促かよ……食ったらちゃんと動けよ」
エサを入れてやるとまた一鳴きして、モサモサと食べだした。
何気ないカマクラとのやりとりだったが少し癒される。
「ふぅ」
自分の部屋に戻ると大きなため息が出た、出てしまった。我ながら弱いなと思う。勝手に心配して、勝手に不安になって、挙句は小町にも心配を掛けてしまった。このまま行くと俺の目は更に淀んでしまうのでは?
布団に横になって目を瞑るそうすると………
「お……ちゃ…」 「お…ちゃん!」
「お兄ちゃん!!」
「ああ?あー起きてる、大丈夫」
「小町さっき起きててねって、言ったよね!呼んでも来ないから、来てみたら案の定寝てるんだもん!」
目を瞑ったら寝てしまっていたようだ。やばい小町怒ってるよ………
「お兄ちゃんはほんとにダメだね!制服のまま寝ちゃうしシワになっちゃうんだからね!それに靴下はひっくり返しのままだし…………!」
結局俺のネガティブな思考は小町の説教によって有耶無耶になったのだった。
ヒッキーは優しい
……逃げてるけど