俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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やべぇ……そろそろクルッポーの新作出るやん

またストック減るわ……

…………頑張ります!


(2)

 自分の部屋に入ると机の横に鞄を置き、制服を脱ぎ捨てる。小町が選んでくれた、外行き用の服に急いで着替えて、必要最低限のモノを手提げにしまったら直ぐに玄関へ向かう。

 

 玄関に着くと何か考え事をしていたのか、人差し指を頬に宛て、少しだけ上を見上げ、ぼーっとしているれいかが居た。

 

「……あら?随分と早かったですね。そんなに急がなくても良かったんですよ?」

 

「いや、れいかを待たせる訳にはいかないしな」

 

「……では、私も急がなくてはいけませんね」

 

「や、れいかは急がなくてもいいだろ。俺は待たされても大丈夫だし……」

 

「私も同じ気持ちですよ……」

 

 れいかは少しだけ不満げに零した。

 

「あ……、その、気づかなかった。すまん……」

 

「八幡君が、私の為を思ってしてくれているのは分かります。とっても嬉しいです。……ですが、私も貴方の負担にはなりたくないんです」

 

「これからは()()時の様に、お互いに負担を掛け合って、助け合っていきましょう……ね?」

 

 諭すような、語りかけるような口調のれいかにゆっくりと頷きを返す。

 

 俺がれいかの事を想っているように、れいかも俺の事を想ってくれているのを再認識出来て、反省する気持ちの中に、少しだけ……幸せな気持ちが湧いてきた。

 

「……わかった。これからは気をつけるわ」

 

「ええ、では次は私のお家に向かいましょう」

 

 フッと、普段の調子に戻ったれいかはスルリと指を絡ませると、俺の手を引いて行く。

 

 

 

 

 れいかの着替えの為に青木家を訪れたが……

 

 ……くっそ緊張する。

 

 れいかも女性らしく着替えに少し時間がかかるとのことで、客間に案内されそこでお茶を飲んでいる。

 

 女性どころか友達――あまりいた事はないが――の家にも上がった事は無いのにいきなり彼女の家とか緊張しないわけが無い。

 

 それに、今飲んでいるお茶だって淹れてくれたのはれいかの母ちゃんだ。しかも座卓を挟んで反対側で絶賛お茶を飲んでいる……

 

 俺が、()()()()()お茶をちびちびと啜ってれいかを待っていると。

 

 コトッと、れいかの母ちゃんが飲んでいた湯呑みを置く音が、一際大きく聞こえた。

 

「比企谷さん、と言いましたね?」

 

「ひゃ、は、はい……」

 

 いきなり話しかけられ速攻吃る。

 

「緊張はしなくて大丈夫です。何か文句をつけようという訳ではありませんので」

 

 そう言われても緊張しない訳ないんだよなぁ……

 

「れいかと交際をしているとか……」

 

「は、はい、交際させて頂いております……」

 

「それはどちらから申し込んだのですか?」

 

 ……いきなり切り込んでくるじゃん

 

「それは、れいか……さん、からです……」

 

「……そうですか。まあ、先程も言いましたが、別に貴方にとやかく言うつもりはありません。れいかの人を見る目は信用していますし、貴方の事は……前かられいかに聞いていましたので」

 

 えぇ……れいか俺の事なんて言ってたんだよ。れいかの母ちゃん、今一瞬遠い目をしてたぞ……

 

「あの子は少しばかり……いえ、だいぶ常識に疎い所がありますがこれからもよろしくお願いしますね」

 

「あ、もちろんです。俺の方こそ助けられているので……」

 

「そうですか……ふふっ。それでは私はこれで失礼しますね」

 

 そう言って、れいかの母ちゃんは部屋から出ていった。席を立つ間際に見せた笑顔は、なるほど……母娘(おやこ)なんだなぁと思う程にれいかと似ていた。

 

 

 れいかの母ちゃんが部屋を出て緊張が抜けたのか、急に周りの音がはっきりしたように感じる。からからにかわいた喉を潤すためにお茶を飲むと、渋みの中にある甘みと、鼻から抜ける香りに、思わず息を(こぼ)してしまう。

 

「こんなに美味かったんだな……このお茶」

 

 さっきまでは緊張のせいか全く味を感じずに白湯を飲んでいる様な感覚すらあった。前に緊張のし過ぎで味が感じなくなるなんて迷信じゃーん、なんて思った事があったが緊張の度合いが違ったわ……感じなくなったよ、うん。

 

「色々あったがまぁ、初めての挨拶にしては……」

 

 よく出来たんじゃないだろうか?向こうも思っていたよりは此方に良い印象を抱いていた様だし。

 

 

 

 

 

「八幡君、お待たせしました。先程までお母様が居たようですが、何かお話をしていたんですか?」

 

 お茶を啜りながら先程の事を思い返していると着替え終えたれいかが部屋に入ってきた。

 

「……ん、まぁ、れいかの事をよろしく頼むって」

 

「もう///お母様ったら……」

 

 話を聞くと、れいかは頬を染め狼狽えるが、こちらを見ると……

 

「……では八幡君、私の事よろしくお願いしますね///」

 

 それは反則だと思う。

 

「……お、おう」

 

「ふふっ、では言質も取れましたし、あかねさんのお家に向かいましょう!」

 

 そう言って笑う姿に、やはりこの母娘(おやこ)には敵わないなと改めて思い知らされた。

 

 

 

 

 青木家を出る際に、チラッと時計を見たら思ったよりも時間が経っていなかったことに驚いた。体感的にはもっと経ってると思ってたんだが……

 

「そういえば八幡君を家に入れたのは初めてでしたね」

 

「そうだな。俺もいきなりれいかの母ちゃんが部屋に来た時はすげぇ緊張したわ」

 

 れいかの母ちゃんも俺が居るとは知らなかったみたいで、始めに目が合った時はお互いに固まったし……

 

「ふふっ、でもお母様もそれ程理不尽な事を言う方では無いので緊張なさらなくても大丈夫ですよ」

 

「あ、でもまた後日改めて八幡君を招待するようにとは言っていましたね。その時にはお母様だけではなく他の家族も紹介しますね!」

 

「……ああ、ありがとうな」

 

 それはすげぇありがたいがその時の事を想像すると胃が痛くなりそうだな……

 

「あ、ここを曲がればあかねさんのお家が見えて来ますよ」

 

 その言葉通り、道を曲がると思いっきり看板に『あかね』と書いてある店が見えた。

 

「……もしかしなくてもあれか?」

 

「ええ、お好み焼き屋『あかね』あかねさんのお家のお店です」

 

「ほぉ、愛されてるねぇ」

 

 店の名前を自分の娘と同じにするって話はたまに聞くが日野の家もそうだとはな……

 

「良い御家族ですよね。さあ、入りましょう」

 

ガラッ「こんにちは」 「邪魔するぞ」

 

「いらっしゃーい!待っとったでー!」

 

 声をかけながら店に入ると日野の元気の良い声が返ってきた。中にはもう俺達以外全員揃っており、日野はカウンターの内側で手を振っていた。

 

「私達が最後みたいですね。お待たせしてしまいましたか?」

 

「そんなことないよ、れいかと比企谷が距離的に1番遠いしね」

 

「せやな、それに二人一緒に居たんやから二人分の時間が掛かるやろうしな」

 

「さあ、さあ!二人ともここに座って!」

 

 みんな特に気にして無いようで直ぐにカウンターに案内される。

 

「よっしゃ!じゃあ全員揃ったことやし、今から焼くでー!」

 

「待ってましたー!」

 

「あかねちゃん日本一!」

 

 材料は用意してあったのか日野は直ぐにお好み焼きを焼き始めた。やはり慣れている為か非常に手際が良い。

 

 

 

「もう焼けたかなー?」

 

「まだ早いんじゃない?」

 

「そやー、焦ったらあかーん」

 

 星空じゃないが俺も焼けるのを見てたら涎が出てきた。まだ焼けないのか?

 

「あかねさん」 「ん?」

 

「先程八幡君とも話していたのですがお店の名前、もしかして……」

 

 れいかはお好み焼きよりもこの店の由来が気になったらしい。

 

「ああ、うん、ウチの名前から取ったんやて。ウチが生まれた年に店始めたらしくって、娘の様に大事にしようって意味なんやて……えへへ」

 

「素晴らしい由来ですね」

 

 ほお、ただ娘の名前を付けただけじゃなかったんだな……

 

 

 

「いい匂い〜もう待ちきれな〜い」

 

「焼き方にもコツがあるんやで」

 

「こう、ちゅー、ちゅー、タコ、かいなっと!」

 

 日野は言葉に合わせてコテを使いお好み焼きを次々にひっくり返していく。

 

『わぁ……』 『おぉ……』 『おおおぉ!』

 

「どや!日野家奥義、コテ返しスペシャル!お好み焼きは……任しとき!」

 

 ネーミングセンスはさて置いておいて、コテ使いは素直に感心するわ。綺麗にお好み焼きをひっくり返している。

 

「凄いな……」

 

「えぇ、流石あかねさんですね」

 

「もう食べれる?!」

 

「まーだーや!あとちっと焼いたら食べれるでぇー」

 

「楽しみ〜!」 

 

 

 

 

 

「出来たで〜!なおー、盛るからそこのお皿とってくれへん」

 

「はい、六枚で良いよね」

 

「おおきに、さあ、お待ちどーさん」

 

 日野は全員分のお好み焼きを盛り付けるとソースをハケで塗りマヨネーズと青のりをかけ遂に完成した。

 

『わぁ……いただきます!』

 

「んんん!美味しい!」

 

「幸せ〜!」

 

「美味しいよあかね!」

 

 はぁ〜、マジで美味いな。箸が止まらないわ。

 

「そやろ、そやろ!当店自慢、大阪風お好み焼きでございますぅ!」

 

 どこら辺が大阪風なのかは分からないが美味いことには変わりない。

 

「ふふっ、八幡君も夢中で食べてますね。焦って食べるのは良くないですよ。ほら、青のりが着いてしまってます。顔を上げてください」

 

「ん?んん……」

 

 れいかに言われ顔を上げると口の端をティッシュで拭ってくれる。

 

「ん///すまん」

 

「ええ、それにしても本当に美味しいですね」

 

「せ、せやろ!あはは……」

 

 目ぇ逸らすなよ……こっちが恥ずかしくなるだろ……

 

 

 

 ガラッ!「ただいまぁ」

 

 カウンターの奥から声が聞こえてきた。日野の家族でも帰ってきたのか?

 

 空いているドアから茶髪の少年が横切って見えた。

 

「げんき!」

 

 日野が声をかけると戻ってきて顔を覗かせる。

 

「なに?」

 

「お姉ちゃんの友達に紹介するからちょっと()い!」

 

「ええ?」

 

 

 

 

「弟のげんき」 「どーも」

 

 制服からして俺らの一個下みたいだな。

 

「ちゃんと挨拶しぃ」

 

「………いやぁ、お調子者の姉がいつも迷惑掛けてすんません!」

 

 日野の弟だけあって、おどけながらも姉への嫌味を言っている。

 

「なんか余計なんあるなぁこの!」

 

「ほんまのことやん!」

 

 仲の良いことで……

 

「あれ?これ姉ちゃんが焼いたん?いっただっきまーす!」

 

 何とか日野から逃げ出した弟君が、日野の分のお好み焼きに目をつけたようで手掴みで頬張った。

 

「あ、コラッ!行儀悪い!」

 

「まあまあ美味いやん。父ちゃんのとは味ちょっと違うけど」

 

「え?」

 

「まぁ、姉ちゃんっぽい味やな。ごちそーさん」

 

 弟君の言葉の何かが引っかかったのか、急に日野の顔色が変わり、直ぐにお好み焼きを口にする。

 

「あむ、ん……」

 

「……あかん」

 

「ん、なんで?」

 

「なんでもへちまもあらへん、会長さんは父ちゃんの味を楽しみにしてくれてんねや」

 

「これじゃ……喜んでもらわれへん……」

 

 なんか雲行きが怪しくなってきたな……

 

「なんでやろぉ……材料も焼き方も、おんなじに作ってるはずやのに……」

 

 あの日野が机に突っ伏して項垂れてしまっている。

 

「あ!そういえば父ちゃんが、秘密の隠し味があるって前言っとった」

 

「秘密の隠し味?」

 

 項垂れていた日野は直ぐに弟に詰め寄って行った。復活早いな……

 

「で?なんやの、それ?」

 

「うーん……それは」

 

『それは?』

 

「……知らん!」  ……だと思ったわ。

 

「はあ?……はぁ」

 

「隠し味か……それがわかれば父ちゃんの味が作れるんやな……ウチ、探してみる!父ちゃんの味を……再現したいんや!」

 

 何年もの研究の成果とかだろうし、なかなか難しそうだけどな……

 

「私も手伝うよ!」

 

「私も!」

 

「そうですね」

 

「アタシもね!」

 

 ……じーっ、と視線を感じて、見ればみんながこっちを見ていた。はぁ……

 

「……わかった。手伝おう……」

 

「みんな……比企谷まで……ありがとう!」

 

 

 

 こうしてお好み焼き屋『あかね』の隠し味を探すための研究が始まるのだった……

 

 

 




 今回はれかちゃんママンの登場でしたね
アニメだけだとうまく掴めなかったので結構オリジナル入ってます。

 負担を掛け合って、助け合って、相手のモノは例え苦しいモノすらも、共有して背負って上げたい……決して肩代わりとかではなく負担の分け合い。そんな関係って私は素晴らしいと思います。

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