俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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最近Excelでこの小説専用のカレンダーを作りました
時系列が確認しやすくてもっと早く作っておけば……ってなりました!


第11話 どうして?!愛しの彼女は手のひらサイズ
(1)


 今日も清々しい朝だ。れいかからの告白や、町内会長さんの食事会を巡る日野の大奮闘等波乱に満ちた先週と違って、なんだか今週は穏やかな週になりそうな気がする。……気がするだけだが。

 

 今日も今日とて俺は花への水やりや雑草抜きといった、花壇の世話をするために少し早めに学校に向かっている。この時間に学校に行く奴は、基本的に部活の朝練がある生徒か先生くらいなものだが、遂に俺もその末席に名を連ねる事になってしまったのだ。

 

「……まぁ、最近は土いじりが楽しくなってきたのと、れいかと一緒に居られるから苦ではないけどな……」

 

「おはようございます。私がどうかしましたか?」

 

「にゃ?!」

 

 いきなり考えていた相手に声をかけられたからか変な声が出てしまった。

 

「ふふっ、すみません。八幡君の後ろ姿が見えたので近づいていたら私の名前が聞こえましたので」

 

「……い、いや大丈夫だ」

 

 ビビったぁ……聞かれたか?

 

「聞いたか?」

 

「ええ、私も好きな事ですし、八幡君と居られるのでとっても楽しいです!」

 

 聞かれてたかぁ……まぁ、別にいいけど。

 

「あ、ところで今日は少しお早いですね。なにかありましたか?」

 

「いや、特に何も無いな。今日は偶然早く家を出ただけだし……」

 

 小町が普段より早く目が覚めたとかで俺まで叩き起されたんだよな……

 

「そうですか。では、一緒に行きましょう!」

 

「ああ」

 

 返事を返すとスルりと手を握られ、並んで学校へ向かう。

 

 

 学校へ近づいてきて人通りが多くなると周りの登校中の生徒達が此方を見ながらコソコソと話をしているのが目につく。

れいかは男子からかなり人気なのもあって、俺とれいかが付き合ったという話は、先週の二日間だけでもかなり広まったらしい。

 

「……やっぱこう、注目を集めるのは慣れねぇなぁ」

 

 れいかと付き合うことへの有名税だと思えばしょうがないんだろうけどな。

 

「あまり気にしない様にしましょう。例え誰になんと言われようとも、私の好きな人は八幡君……貴方なんですから」

 

「お、おう///」

 

 やばい、れいかが男前過ぎる///……惚れ直すわ

 

「ふふっ……ああ、可愛いですね///

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、なんとか物置小屋前に着いた。

 

「では今日も水やりをしましょうか。私の予想ではもう新しく植えたお花も芽を出してもいい頃なんですが……」

 

「了解。まぁ、見てみれば分かる事だろ。行ってみようぜ」

 

「ええ、そうですね。では行きましょう」

 

 

 

 

 

「あ!見て下さい八幡君!芽が出て来ていますよ!」

 

 はしゃぐれいかが見ている所を覗くと、確かに種を植えたところから双葉が顔を出していた。

 

「へぇ、ちゃんと育って来てるんだな」

 

「ええ、上手く育ってきていますね。まだマリーゴールドしか芽を出していませんが、来週にはダリアやグラジオラスも芽を出していそうですね」

 

 ダリアとグラジオラスはまだ先なんだな。なんだか待ち遠しくなってきたぜ。

 

「ではマリーゴールドの発芽も確認できましたし、水やりの前に一つだけやってしまいましょうか」

 

「やるって?水やり以外にもなにかあるのか?」

 

「はい、少々心苦しいですが、葉っぱ同士が重なっていたりするように密集して生えているところは、一番育ちの良いものを残して他は間引きます。そうしないと結果的に全ての芽の育ちが悪くなってしまいますので」

 

「ほぉ、やっぱ手入れも必要なんだな。じゃあここはこの育ちの良い奴以外は間引いちゃえばいいのか?」

 

 俺は芽が少し重なり合っている所を指してれいかに確認する。

 

「ええ、そうですね。ここだと八幡君の言うようにこの育ちの良い芽以外は間引いて下さい」

 

「わかった。じゃあ始めるか」

 

 

 

 れいかと二人で手分けしてマリーゴールドの間引きをする。育ちの悪い芽を摘むついでに、少し生えていた雑草も一緒に摘んで置いた。

 

「こんなもんか?」

 

「ええ、葉っぱ同士の感覚も空いてますし丁度いいくらいだと思います。あとは水やりをして教室に行きましょうか」

 

「おう、そうだな」

 

 

 

 

 

 水やりを終え、れいかとクラスに入ると少しだけざわめきが増す。流石に先週は日野の事があったので余り大っぴらに二人で居ることは無かったのだが、噂は学校中を駆け巡ったらしい。緑川が結構苦労して大事にならないようにしてくれていたと聞いたのは、昨日の食事会の後の、打ち上げでの事だった。

 

 もう広まりきっている事だし、れいかと付き合おうと思った時に俺も覚悟は決めていたため、れいかと話し合って隠そうとしない事に決めた。その時に大喜びしたれいかに抱きしめられた事は今思い出しても顔が赤くなる。

 

 

比企谷の奴、青木さんと付き合ってるらしいぜ。いいよなぁ

 

俺も青木さんに告ればいけたかさぁ?

 

無理無理、あれだって青木さんから告ったらしいぞ

 

え?それほんと?アタシは聞いた話だと、昔から許嫁で………

 

 

 噂には尾ひれが付くものだってのは常識だが、流石に許嫁はねーだろ……

 

「八幡君、大丈夫ですか?」

 

 れいかも有象無象ならともかく、クラスの奴らも俺たちに注目しているとあっては心配してくれるようだ。

 

「いや、大丈夫だこういうのは慣れてるし」

 

 実際に慣れている訳では無いが、こういう攻撃されそうな雰囲気というのには慣れているつもりだ。

 

「そうですか?なら、いいのですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男子共の物欲しそうな視線に、一日中晒され続けていた為か今日はなんだか異様に疲れたぞ。

 

「八幡君、私達はもうこれで帰りますが八幡君はどうしますか?一緒に帰ります?」

 

 帰りのHRも無事終わり、帰りの支度を終えたれいかが話しかけてきた。

 

「いや、今日は少しやろうと思ってた事があってな」

 

 昨日読んでいた本が読み終わった事を思い出す。今日は新しい本を探す為に図書室に行こうと思っていたのでれいかの誘いは遠慮させてもらった。

 

「そうですか……。それはちょっと残念ではありますがしょうがないですね。それでは八幡君、また明日」

 

「おう、また明日な」

 

 

 

 

 

 

 

 図書室で見つけた面白そうな本を借りて、荷物を取りに教室に戻ってくる。

 

 偶に、まだこの時間でも教室にたむろしている奴らがいる時もあるが今日は教室にはもう誰も残ってはいないようだ。

 

 席に着いてさっき借りてきた本を開く。

 

 まだ読み始めてから、それほど時間は経っていない筈だが、読書で気が休まったからかなんだが異様に眠くなってきた……

 

「まだ時間もあるし、ひと眠りだけでもするかね……遅くなっても見回りの先生が起こしてくれるだろうし……ふわぁ……」

 

 

 

 

 

 

side:れいか

 

「キャンディー!待ってー!!」

 

「みんなー!どこクルー?!」

 

 ドスン! ドスン! ドスン!

 

「あかん、全然聞こえてへん」

 

 私達は今、巨大化した……いえ、私達が小さくなってしまい結果的に大きく見えるキャンディを追っています。目的はキャンディが今に手に持っている木槌。あの木槌が今の状態の原因なのでしょう。

 

 兎にも角にもキャンディに先ずは気づいてもらえないことにはどうにもなりませんね。

 

 ここまで追いかけて来るだけでも湖のような水たまりを渡ったり、崖のような階段を越えたりと本が一冊ほど書けるのではないかという程の道程(みちのり)でした。

 

「今度は教室みたい」

 

「キャンディー!私はここだよー!」

 

 キャンディを追いかけ教室に入ると、そこには巨大な椅子と机が大量に並べられています。普通の事ではあるのですが私自身が小さくなった今では異様な光景に映ります。

 

「……これ、どうやって登るの?」

 

「キャンディはやよいちゃんの机の上いるみたいだよ」

 

「よし!キャンディ今行くからね!」

 

 みゆきさんは机の横に吊るされていた体操服入れを足場にし、持ち手をロープの様にして登っていきます。

 

「今はみゆきさんに続きましょう。私たちの存在をキャンディに気付いて貰えなければ元に戻る事が出来なくなってしまいます」

 

「……う、うん!」

 

 あら?意外と登れるものですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やっと……登れました」

 

 ようやく机の上に着き、先に登っていたみゆきさんの方を見ると両手を机について項垂れていました。

 

「みゆきさん?どうしたんですか?」

 

「……キャンディがぁ、窓の外に行っちゃったぁ……」

 

 入れ違いになってしまったようですね……どうしましょうか……

 

「ねえ、れいか」

 

 どうしようか考えていると、なおに呼ばれ顔をあげます。

 

「どうしました?」

 

「あそこで寝てるの……比企谷だよね?」

 

「え?!」

 

 なおの指す方を見ると、確かに八幡が机にもたれて眠っていました。……これは……チャンスかもしれません!

 

「皆さん!八幡君の所へ行きましょう!八幡君ならきっと力になってくれます!きゃっ?!」

 

 八幡君の元へ直ぐに向かおうと駆け出しましたが、机と机の間の隙間に気づき飛び退いてしまいました……

 

「……高い……ですね……」

 

「こんなんどうすんねん……」

 

「あ!わたしにいい考えがあるよ!」

 

 そう言うと、やよいさんは机の上に出ていた筆箱から定規を取り出すと、机と机の間に橋のようにかけてしまいました。

 

「これなら渡れそうでますね。やよいさんありがとうございます!」

 

「えへへ、それじゃあ行こっか!」

 

「……足元が透けとる」 

 

「意識しない様にしてるんだから言わないでよ!」

 

 なおはともかく、あかねさんも高いところが苦手だったんですね。

 

 

 

 

 

「着いたー!」

 

「比企谷って寝てると結構格好良いね」

 

「確かに、顔は整ってるんやなぁ」

 

 ふふっ、よく寝ていますね。とっても可愛いです。

 

「……はっ、見蕩(みと)れている場合ではありませんね。気持ち良さそう寝ているのを起こすのはかなり胸が痛みますが、仕方ありません後で謝りましょう」

 

 

 

 

「おーい!比企谷くーん!」

 

「比企谷ー!」

 

「おーい!れいかがここにいるよー!」

 

「比企谷くーん!起きてー!」

 

「八幡くーん!起きてくださーい!」

 

 ……起きませんね。仕方ありません。

 

「……皆さん、今から最後の手段を使います。あまり見られたくないので少しだけ後ろを向いていて下さい」

 

「……え?まぁいいけど」

 

「何するんやろ?」

 

「ねえ」

 

 

 

 近くで見ると本当に綺麗なお顔をしていますね。

 

「……失礼しますね」

 

 八幡君はここが弱いんですよね。

 

「……ふぅ〜

 

 

 




マリーゴールドの芽は本当はもっと早く出ます。ぶっちゃけグラジオラスとかダリアの事ばっか考えてたら芽を出させるのを忘れてました……サーセン!

……シェリンカーっていいですよね(あれ?私だけ?)
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