「おー……」 「ひ……や!」
誰かが読んでる気がする……けど眠いし後でいいか。
「……い!……か……よ!」 「……起き……!」
……眠い………あと五分……
「八……!……て……さい!」
あれ?れいかの声が聞こえた気がする……
「……失礼しますね」
……やっぱれいかの声だ。起きないとだな……無視したりすると後が怖いし……
そうして俺が起きようとした瞬間……!
「……ふぅ〜」
「わひゃぁぁぁ?!」 ガタッ!
「きゃっ?!」 『わぁぁ?!』
急に耳に感じた、ゾワゾワっとした感覚に変な声を上げて飛び起きてしまった。
「はっ……な、何事だよ……れいか?あれ?いない?」
また、れいかが悪戯で耳に息を吹きかけてきたんだと思ったのだが、周りにれいかの姿は無い。
「気のせい……なのか?」
首を傾げ、もう一眠りしようかと机に目を向けると……?!
「……れいか……か?それに……お前らも……」
俺の机の上には、尻もちを着いて此方を見上げているれいかと、その少し後ろで固まっている星空達が居たのだ。……だいぶ小さいが……
取り敢えず席に座り直してれいか達に耳を傾ける。
「おはようございます。八幡君、目は覚めましたか?」
「お、おう、おはよう。流石にあんな事されたら目も覚め……てっ、今はそれどころじゃないだろ……どうしたんだ?何があった?」
普通に挨拶されたんもだから返しちまったが、今はそんな事よりもれいか達の状態の方が重要だ。
「ええ、実は………」
説明された話をまとめると、緑川が拾った打出の小槌の様な木槌を、キャンディが振るった際に誤って星空の顔面を叩いてしまったらしい。すると木槌から光が放たれ、気づいたら今のような状態になってしまっていたらしい。
「……なんか似たような事がつい最近もあった気がするな……」
「あ、それってもしかして!」
「れいかと比企谷が入れ替わった時やな」
「……じゃあ、これもマジョリーナの仕業なのかな?」
「まぁ言い切れはしないがそうなんじゃないか?」
おかしな事が起こったら大抵はあの迷惑魔女のせいだろう。……もう一回被害にあってるしな。
「……そうだとすると、またマジョリーナが持っている薬を使わないと、元に戻れないのでしょうか?」
「どうだろうな?今回は前の指輪と違うから同じ光を浴びれば戻れる可能性もあるんじゃないか?」
「でもやっぱり原因の木槌がないと何もわからないままだよね」
緑川の言うように現物がないとどうにもならんな。
「よし、じゃあ俺がキャンディを連れて来るからそこで木槌の効果も確かめてみよう」
「八幡君、ありがとうございます!」
「比企谷君!ありがとー!」
キャンディを探しに行こうとして、はたと気づいた……
「流石にお前らをそのままにしておく訳にはいかないわな……」
他の奴に見つかったりしたらどうなるか想像もつかない……
「鞄と上着を置いていくから、もし誰か教室に来たらその影にでも隠れててくれ」
机を揺らさないように静かに鞄を置き、上着を脱いで隙間ができるような形で鞄の上にかける。
「それじゃあ行ってくるから、大人しくしてろよ!」
『………………!』
れいか達の小さな声に見送られながら小走り気味に廊下へ駆け出す。
先ずは窓から探してみるか?流石にキャンディも普通の奴に見つからないように移動してるとは思うが……
窓から中庭を見下ろすと、中庭の中央付近を跳ねるように小さな影が横切って行った……
「……いるし」
直ぐに階段を駆け下りて、外に向かう。
「中庭を横切ってたしこっちの方だと思うんだがなぁ」
グラウンド近くに来てみたがキャンディの姿は見当たらない暫く周囲を見回していると、グラウンドの反対側で小さな影が動いているのが目に入った。
「今度は向こうかよ……」
そこから俺とキャンディの壮絶な追いかけっこが始まったのだった。
「……はぁ、……はぁ、げっほ……ひぃ、ひぃ」
……全然追いつけない。もう限界だわ、そもそも俺、そんなに走れねーし……
俺は校舎に背を預け、座り込む。
「……キャンディ、はえぇ……」
度々見かけることは出来たのだが一向に捕まえることは出来なかった。あの小さい体の何処にあんな体力があるんだよ……
「ああ!八幡クル!八幡!大変クルー!」
聞き覚えのある声に顔を上げると、キャンディが走り寄ってくるところだった。……走り損かよ……
「八幡!大変クル!みんなが居なくなっちゃったクルゥ!」
キャンディはれいか達の姿が見えなくなって余程心細かったのか俺に向かって飛びついて来た。
「おうおう、まぁ落ち着けよ。れいか達なら俺が場所を知ってるから」
「本当クル!?」
「本当だから落ち着け、ほれじゃあれいか達のところに行くぞ」
「クゥルゥ!」
キャンディを片手で抱え、れいか達の所へ戻る。
走り回って疲れ果てた体にムチ打ち、二年二組のプレートがようやく見えてきた。
「キャンディ、あの教室でれいか達が待ってるぞ」
「嬉しいクル。やっとみゆき達に会えるクル」
喜ぶキャンディの手の中では木槌がキャンディの体の動きに合わせて揺れている。……にしても、これが原因の木槌か……
キャンディの持っている木槌に視線を向ける。
「クルゥ?八幡はこりが気になるクル?」
俺の視線を敏感に感じ取ったのか、キャンディが腕の中で振り向き木槌を見せてくる。
「ああ、まぁな。それが原因で「こりは一寸法師の打出の小槌クル!」
遮んなって……
「こりをこうやって!」
「おま!?ばかやめっ!」
咄嗟に制止するも間に合わず、キャンディの振り上げた木槌を頭を傾けなんとか躱す。しかし、振り上げたという事は当然その勢いのまま振り下ろす訳で……
「大きくなーれ!」ピカァ!
辺りがキャンディが振り下ろした木槌から放たれた光に包み込まれる。
「クルゥ?……八幡も居なくなっちゃったクル!?」
現状を確かめる間も無く、上からキャンディの声が爆音となって降ってくる。
「おい!キャンディ!俺は「はちまーん!何処クゥルゥ!」
駄目だ……キャンディに気づかせようにもキャンディの声が大き過ぎて俺の声が掻き消されちまう。
「みんなぁー!何処クルー?」
必死の呼び掛け虚しく、キャンディは俺を置いて教室へ入っていった。
「教室でれいか達に気づいてくれればいいんだがなぁ……そんな上手くはいかないか?」
キャンディにだいぶ遅れて教室に入る。景色はいつも通りの筈なんだが、視点が変わるとこうまで違うとはな……
俺もこんな状態だ。れいか達に会うためにはこの机に登るしかないんだが……あいつらどうやって登ったんだよ……
「八幡くーん!」
机を目の前にして途方に暮れていると上から声が聞こえてた。
見上げると机の端かられいかが顔を出して手を振っている。
「机の上に上がるには!体操服入れを伝って登ってきてください!」
その手があったか。
「わかった!今行くぞ!」
れいかに言われた通りに体操服入れを伝っていくと、馬鹿正直に机の足から登るよりはだいぶ楽な様な気がする……比べてないから詳しくはわからんが。
「八幡君、手を」
「ああ、助かる。ありがとな」
机の上に手を掛けるとれいかが引き上げてくれ、上がるのを手伝ってくれた。
「……いやぁ、なんと言うか……すまん。キャンディをすぐそこまでは連れて来れたんだがな……」
「ええ、わかっていますよ。先程、キャンディが八幡君の名前を呼びながらこの教室に入ってきて、あの窓から外に出ていってしまいましたから……あ、別に責めている訳では無いですよ!少し言い方がきつくなってしまっていたかもしれませんが……」
「……くははっ、大丈夫わかってるよ」
れいかが慌てて弁明するのが可愛くて少し、笑いが漏れてしまった。
「……もう///」
最近は何時もれいかの方から攻めてきて、照れるのは此方だからか、こうして照れているれいかは凄く懐かしく感じる。
「……お二人共ー?楽しそうなとこ悪いけどさ、比企谷まで小さくなっちゃったんじゃあこれからどうするの?」
……確かに緑川の言う通りだわ。流石に自重しよう……
「そうですね……キャンディを追いかけるにしてもなにか方法はないでしょうか?また階段を降りていくようでは何時までも追いつけるとは思えませんし……」
どうしたもんかねぇ…
次回はバトルでラストにするつもりです
終わらなかったらごめんなさいです……