「ふう、こんなもんかね」
修学旅行のしおりはプリントを纏めて背表紙の部分に液体糊を少し多めに着けて表紙で挟み乾かせば完成だ。意外と簡単なようだがこれを学年全員分やるとなるとかなりの時間が掛かるだろう。これをクラス委員だけでやるとなるとかなりの負担になる。それを各自にやらせたのは正解だったのかもしれないな。
「わあ……比企谷くんはやーい」
「……それに綺麗だよね」
「ん……そうか?」
まぁ、褒められて悪い気はしねぇな。
「わたしも早く終わらせてお菓子買いに行きた〜い」
「皆さんもあと少しですから、気を抜かずに頑張りましょう?」
早々に終わらせた俺は、カップに入れた緑茶を飲みながらみんなの作業を眺める。今使っているカップはこのメンバーでお揃いで揃えてあり中央に重なった羽の模様の入ったマグカップだ。各員で羽以外の部分の色が分かれていて俺は黒色だ。正直こういう仲間内でのお揃いって言うのは初めてなのでかなり嬉しかったりする。
そうして俺が緑茶を飲んでいると珍しくキャンディが俺の方へ近づいてきた。言葉は悪いが、なんだが普段のバカみたいな陽気さが感じられない。
「……八幡」
「……どうした?」
「ちょっとお話したいクル……」
「……ん、わかった」
キャンディの雰囲気から、星空たちに余り聞かせたくない話のようだったので外に出る事にした。
「……悪い、少し外でキャンディと話してくる。俺が戻らなかったら先にお菓子を買いに行って良いからな」
「……?わかったー」
「……八幡君、キャンディの事お願いしますね。どうやら私では力になれなかったみたいです」
すれ違いざまにれいかに頼まれた。こうやって周りの事も気にかけられるのは流石だなと、改めて思うわ。
本の扉を通って近くの噴水にやってきた。この時間帯は余り人が通らないので前はよく涼みに来ていたのを思い出す。
噴水に腰掛けてキャンディの言葉を待つ。
「……八幡は、どうしてあんなにみんなの役に立てるクル?」
役に立てる……ねぇ。別にそんなつもりじゃなかったんだがな。
「キャンディは昨日、修学旅行の事を言ったらお兄ちゃんに怒られちゃったクル。みんなに迷惑掛けちゃダメだって。そりに八幡に感謝しなさいって」
まぁ、ポップは熱血っぽいところもあるみたいだったしなぁ……
「だから今日、キャンディは八幡の事を見てたクル。そしたられいかが困ってる時もみんなが困ってる時も八幡が直ぐになんとかしてたクル。それに比べて……キャンディはダメな妖精クル。みゆき達には迷惑かけちゃうし、なんの役にも立ててないクル」
「キャンディは、役に立ちたいのか?それともそうやって感謝されて褒められたいのか?」
ちと言い方がきつかったかねぇ……
「そうじゃないクル!キャンディは……何か、みんなに何かしてあげたいだクル!」
……んー、その考えは少し傲慢だな。
「……キャンディ、そういう事じゃ無ぇんだよ」
「……クル?」
「してあげたいって……相手に理由を求めるなよ?俺がれいかや星空達に何かをするのは俺の為だ。俺がれいかの困っている顔を見たくないから、俺が気に入っている仲間の不和を見たくないから、だから行動するんだよ。俺は俺の為に行動してるだけだ。それがキャンディから見たら役にたっているように見えたんだろ」
「……クルゥ」
「……つまりはだ。キャンディは星空たちの笑顔が見たいか?」
「見たいクル!」
「じゃあ、その為に行動しなきゃな。どうすれば、何をすれば相手が笑ってくれるか……それを考えて行動するんだ。そうすればいつの間にかキャンディもあいつらの為に何か出来てるさ」
……うわぁ、何語ってんだろ。めちゃくちゃ恥ずくなってきたわぁ……
「……八幡。キャンディ頑張ってみるクル!キャンディもみゆき達を笑顔にするクル!」
「……おう、その意気だ。それじゃあ俺達もお菓子を買いに行くぞ」
「お菓子クルゥ!」
おっと?!急に肩に飛びついて来たな……まあ、キャンディの元気も戻ったみたいだし一件落着かね?
「もー!比企谷くん遅いよー。しおりももう出来ちゃったんだからね。はっぷっぷー」
どうやら待たせちまってたみたいだな。
「言うても、しおり作り終わったんはみゆきが一番最後やったけどなぁー」
「もうあかねちゃん!それは言わないでって言ったでしょー!」
おーおー、仲のよろしい事で。
「ほぉら、二人とも落ち着いて、比企谷とキャンディが来たんだから、お菓子買いに行くよ」
「あ、そうだった!お菓子!」
一瞬で目の色変わったぞ……お菓子好き過ぎじゃね……
「みゆきぃ!」
「わっ?!どうしたのキャンディ?」
キャンディが俺の肩から星空へ飛びついていった。
「なんでもないクルゥ!」 「……そう?でもキャンディが嬉しそうだとわたしも嬉しい!!」
「そしたらキャンディも嬉しいクル!」
……早速笑顔に出来てるじゃねーかよ。
「……キャンディ、嬉しそうですね」
「……まぁな」
「うぅわぁぁああ!!いっぱいあるぅ!」
みんなで連れ立って駄菓子屋やって来たが、店の中に入るなやいなや星空が叫び出した。
「どれにしようかな!?五百円じゃ収まりきらないよぅ!」
確かに星空の言う様に、店の品揃えはかなりのものだ。……流石に俺は五百円で収まるがな。駄菓子屋の五百円って結構な量が買えると思うんだが……いったいどれだけ買うつもりなんだ……
「ねぇねぇ!キャンディはどれが良い?」
「キャンディは美味しいものが良いクル!」
「もうーん何それー!」
もう星空達はなんの心配も無さそうだな。……俺もお菓子でも選びますかね。
チョコ系統やめとくか……向こうで二泊三日の間に溶けたりしたら事だわ。同じ理由で飴もやめとこう。スナック系を中心に買ってげばいいか?
「あら、八幡君は何をk「見つけたぜ。プリキュアァ!」
『えっ?!』 「まさかっ……!」
れいかに話しかけられたと思ったら、どうにも聞き覚えのある声に遮られた。手に取っていたスナック菓子を棚に戻し、声が聞こえてから直ぐに店を飛び出して行ったれいか達を追うようにして店の外に出る。
店の外ではれいか達とウルフルンが
「今日のオレは一味違うぜ」
ウルフルンは何時もの赤い絵の具玉とは違い、青い絵の具玉を手で弄びながら笑みを見せる。
「いでよ!アカンベェ!!」
ウルフルンがその青い絵の具玉を掲げると駄菓子屋の前に並んでいたガチャガチャの一つがアカンベェに変化してしまった。
『アーカンベェ!』
ん?いつもとイントネーションが少し違うか?それにいつもは赤いはずの鼻も絵の具玉と同じ様に青色をしてるな……
「青い鼻のアカンベェ!?」
星空達も青い鼻のアカンベェと戦うのは初めてのようだ。
「世界よ!最悪の結末、バットエンドに染まれ!」
ウルフルンは叫びながら、黒い絵の具を手の中で握り潰す。
「白紙の未来を黒く塗り潰すのだ!」
そのまま本を開くと白紙のページに手の中の絵の具を叩きつけるように塗り付ける。
すると辺りに夜の帳が落ち、満月が昇る。周囲が重苦しい空気に包まれ、気分が落ち込んでくる。先程まで駄菓子屋の周りで騒いでいた子供達も力なく座り込んでしまっていた。
「ウルッフッフッ。人間共の発したバットエナジーが悪の皇帝ピエーロ様を、蘇らせていくのだ!」
「世界をバットエンドになんてさせない!みんな!」
『うん!』
星空の号令に合わせて、れいか達は変身の為の光に包まれた。
原作とは違い今回は八幡に相談に乗ってもらいました。
キャンディも原作よりは卑屈になっていないのでちゃんと会話はなりたつ状態です。
次回はバトルでラストですね。