俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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修学旅行はだいぶ長くなるかもしれないですねぇ

原作アニメでも修学旅行を二話に分けてましたしね

こうやって自分の好きなキャラの事を文字に起こしていると改めて、よりそのキャラの事が好きになっていくことを最近感じ始めています


(3)

 改札を抜け駅の出入口が見えてくる。二時間以上揺られていた訳だが体感はもっと早く感じた。俺も珍しくおしゃべりの輪の中に入っていたし、少し早かったが昼飯も食ったし。

やっぱ楽しい時間は時間が経つのが早く感じるって言うしな。 

 

 ただ、昼飯の駅弁では中にトマトが入っているのには参った。残すつもりで端の方へ寄けていたら、目敏く見つけたれいかに『好き嫌いはいけません!』って口につっこまれたらからな……後でマジで嫌いなんだって説明したら、謝りながらも、美味しく食べられる様に工夫して見るからまた食べて欲しいって頼まれたし……。嬉しいんだが……こう、なんか喜べねーよなトマト嫌いだし……

 

 そんなことを思い出しながら京都駅の駅舎から外へ出ると、丁度目の前には京都タワーが建っていた。

 

「……ほう」

 

いきなりの出迎えに、先程までの雑念は吹き飛び、知らなかったやつらの――俺も含め――感嘆の息が漏れる。

 

「わー!高ーい!あれが通天閣か〜!」

 

 ……えっ?

 

「……京都タワーよ、みゆきさん」

 

「あ、そっかー!ありがとうれいかちゃん!」

 

 いつから通天閣が京都に移ったんだよ………ほら、れいかも若干苦笑いじゃねーか……

 

 

 

 

「修学旅行は遊びではありません。くれぐれも周りの人達に迷惑をかけないように、いいわね?」 

 

『はい!』

 

 交通の妨げにならないようにバスターミナルの端に集まり、佐々木先生から今日これからの予定の説明と諸注意を受けている。しおりにも書いてあったが、先ずこれからバスで金閣寺に向かってそこで集団行動をしながらの見学。

 

 そこからまたバスで嵐山公園へ移動となる。嵐山公園ではグループ毎の自由行動になっているので今から楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ金閣寺だ!」

 

 星空は金閣寺が佇む池の周りを囲っている柵に手を置き、身を乗り出してはしゃいでいる。この興奮ぶりはいつも以上だな……やっぱり修学旅行だと楽しさの度合いが桁ひとつくらい違うんだろうな……まぁ、かくいう俺も修学旅行を楽しみにしていたことには変わりはないんだがな。

 

「お寺の正式な名前は鹿苑寺と言うんですよ」

 

「あれって本物の(きん)やろ?幾らかかったんかなぁ?」

 

 日野、お前なんて顔してんだよ……仮にもってつけたら悪いかもだが女子だろ……

 

「1985年から87年にかけてのお色直しで約二十万枚の金箔を使いました。掛かった費用は七億円以上です」

 

『七億円?!』

 

 マジか……めちゃくちゃ(かね)掛かってたんだな……

 

「ってれいか。どんだけ予習してきたの……」

 

「ええ、楽しみでしたから……つい///」

 

 二時過ぎまで起きてたみたいだもんなぁ

 

「ははぁん。さてはれいか、そのせいで朝は比企谷を枕にして寝てたんでしょ?」

 

「へぇ、そうなんれいか?」 「れいかほんとクル?」

 

「うぅ///はい、実は……」

 

「比企谷が枕やって!まくら!まくら!」 

 

「八幡がまくらクル!クゥル!クゥル!」

 

 うーん、このとばっちり……んむ///

 

「もう!皆さんもからかわないで下さい///」

 

「んふふー、比企谷くんもれいかちゃんも相変わらず仲良しでウルトラハッピー!…………て、キャンディ?!集団行動中はあんまり出てこないでって言ったでしょ!?ほら!早く隠れて!」

 

「わ?!みゆき!そんな急に動かないで欲しいクル!?」

 

 鞄からいつの間にやら出てきて、星空の頭に移動していたキャンディを隠そうと星空は大慌てでキャンディの周りに手を出し視線を遮ろうとする。……まぁ、見てる限り誰もこっちなんか気にして無いんだけどな。…………あ

 

「あっ……」 「クル?」

 

 頭上のキャンディの事にばかり意識が向いていたせいか、星空は足を滑らせ、隠そうと手に掴んだキャンディごと綺麗に柵を越えて池へと身を躍らせていった。

 

 

 

 

 

 

 

「撮りますよー!」 カシャ!

 

 金閣寺で撮った集合写真。その中心には体操着に着替え、まだ水気の抜けない髪の星空と、その星空に抱えられ、いつもとは違い、耳を巻かずに横に垂らしたキャンディが微妙な表情を浮かべて写っていた。

 

 

 

 

「京都でジャージなんて悲しすぎる……」

 

「しゃーないやろ。制服水浸しなんやから」

 

「そーだ!あっちにおみくじあるんだよ」

 

「おみくじ!?ひこひこぉ!!」 『…………』

 

 切り替え早すぎだろ……日野も黄瀬も固まっちゃってるじゃん。………つか置いてくな。

 

 

 

 

 

 おみくじが引けるのは金閣寺の敷地内にある明王堂という不動明王を祀っている御堂であった。六人+キャンディで順番にクジを引く。

 

 引いたクジを広げると書かれていた文字は【大吉】これも日頃のおこないかね。

 

「やった!大吉」 「あら、私もです」 

 

「中吉かまあまあだね」 

 

「末吉って良いの?悪いの?どっちなん?」

 

「そうですね……末吉は今は良くないですが後に良い事がある。というような意味だったかと思います」

 

「流石れいか、物知りやわぁ」

 

 皆、続々とクジを広げていく。

 

「八幡君はどうでした………まぁ!大吉、お揃いですね!」

 

 広げたクジを渡すと、れいかは嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

「このようなクジの結果なら、これから先の予定も楽しく行えそうですね」

 

「そうだな、この旅行中はいい結果になるだろ。流石に大吉だしな」

 

 つか、おみくじ引けるってめちゃくちゃはしゃいでいた奴が急に静かなんだが……

 

「おい、星空?」

 

「………え?ああ、比企谷くんも大吉だったんだ!あはは!私もね!大吉だったんだ!ほら見て!大吉だよね!大吉!」

 

 そう言い、乾いた笑いを零しながら必死に大吉と言い張り見せてくるクジには……

 

 【大凶】

 

 と、大きく書かれていたのだった。

 

「……大凶」 「……大凶だ」

 

「大凶……初めて見ました」

 

「足元……食べ物……持ち物注意って不吉のオンパレードやな……」

 

 こりゃ、流石になんのフォローもできねーぞ……

 

「クル?あ!キャンディもみゆきとお揃いクル!嬉しいクル!」

 

 おおう……キャンディもか

 

「キャンディ……わたしは嬉しくないよォ!」

 

「クル?!」

 

「……キャンディも大凶」

 

「七回引いて大吉三人に大凶二人って……ウチらどんだけ極端なグループなん?!」

 

「……そういえばみゆきちゃん、新幹線で怒られてたよね」

 

「……キャンディも新幹線で勝手に菓子食ってるとこ、星空に見つかってたな」 

 

「……さっきは二人して池に落ちてたし」

 

「まさに大凶……ですね」

 

「あは……あはは……修学旅行すっごい楽しみにしてたし……大吉以外ありえないし……」

 

 ほ、星空が壊れかけてる……!?

 

「せやけど逆にすごいやん?!」

 

「今が一番悪いんだからこれから良くなるって事だよ!」

 

 日野と緑川がすげぇ頑張って星空を励ましてる……頼むぞぉ

 

「……八幡?」

 

「おん?」

 

 星空を日野と緑川が励ましてるのを見ているとキャンディが俺の肩に登ってきて話しかけてきた。

 

「大凶ってなにクル?」 

 

「……あー、なんというかだな」

 

 そういや星空とお揃いだってさっき喜んでたなぁ。大凶の意味を知らないから素直に喜べたんだろうなぁ。まぁ、でも教えとかないと星空に追い討ちとか、かけかねないしなぁ。しゃーねぇ教えるか。

 

「実はな……」

 

「一番悪い運勢……クル!?……だからみゆきも落ち込んでたんだクル……クルゥ……」

 

 キャンディは肩を落としながら自主的に星空の鞄の中へ入っていった。……うん、あれ避難してるだけだわ。キャンディ結構賢いな……

 

「そ、そうだよね?!きっとこれから楽しい事ばっかりだよね!」

 

「……うん」 

 

「ね!?」 「……う、うん」

 

 いつの間にか星空に生気が戻って来ていた……が、……おーい……目が合ってねーぞ。お前らが励ます時言ったんだから自信もって頷いてやれよ……まぁ、俺でも視線は逸らすと思うけど……

 

 星空がそんな空元気を振りまいてると……ピチャ!

 

 星空の頭へ何かが落ちてきた。

 

「雨かしら?」

 

「あ……鳥のフンだ」

 

「………いやぁぁぁあああ!!」

 

 うーん大凶……そしてキャンディの避難は正解だったわ……これで負の連鎖も収まってくれればいいんだがなぁ……

 

 

 




収まりません!

という事でキャンディにも大凶引いてもらいました☆

あの二人――二人って表記でいいのか?――ならきっと乗り越えてくれるでしょう!

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