俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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まだ一日が終わらないだと?!


活動報告の方でリクエストを受付ておりますのでチラっとでも見て頂けたら幸いです。



(6)

 先程ネックレスを買った土産物屋に戻ってきたが星空達の姿は見えない。

 

「そういえば、特に集合場所なんて決めてなかったんだよな……」

 

「皆さん、何処にいるんでしょうか?」

 

 まぁ奴らも俺達二人を置いて何処かへ先に行ってしまうことはないだろう。

 

「アイツらもそんな遠くに行くわけでもないだろうし、ゆっくり歩きながら探すか……」

 

「ええ、そうですね。皆さんとはここで、お土産を買うために一旦別れただけですものね」

 

 

 俺達は特に焦ることも無く、桂川の川沿いを手を繋いでゆっくりと歩いて行く。……実はちょっとした散歩気分だったりもする。

 

 

 

 ゆっくりと歩きながら渡月橋の近くまで戻ってきた時だった……

 

「おーい!!」

 

「れいかー!比企谷ー!」

 

 俺達の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「……この声は……なおとあかねさんのようですね」

 

 呼ぶ声を頼りに二人の姿を探すと、渡月橋の近くに設置されているベンチに日野、黄瀬、緑川の三人で座りこちらへ手を振っていた。

 

「黄瀬も居たみたいだな」

 

「私達も行きましょうか」

 

「おう」

 

 

 

 三人の近くまで来ると、三人が緑色のソフトクリームを食べているのが目に入った。

 

「……美味そうなもん食ってるじゃねーか」

 

「これか?ええやろ?美味いでぇ。そこの前の店で売ってるかられいかと買ってきたらええやん」

 

 日野の指差す方を見ると、確かに抹茶ソフトと書かれたのぼり旗が立つ店が出ている。俺は食いたいがれいかの方はどうだろうか?

 

「れいかはどうする?」

 

「そうですね……とても美味しそうですし、私達もいただきましょうか」

 

「……よし、じゃあ行くか」

 

 れいかの了解も取れたので抹茶ソフトを買いに向かうことにする。

 

「それじゃ、俺達も抹茶ソフト買ってくるから。……食いきっても移動しないで居てくれよ?」

 

「わかってるよ。ほら、早く行ってきなー」

 

 緑川に軽く手を上げて返事をし、れいかと店へと向かう。

 

 

 

 

「結構大きさの種類が多いな……」

 

 ミニ、スモール、ミディアム、ラージ、トール………計五種類あるが、なんか日本人が適当に聞きかじったサイズを並べただけに思えなくもない……

 

「そうですね。もしかしたら観光客が多いとその分客層も広くなって、色んなサイズが必要になったのかもしれませんね……」

 

「そういうもんか……」

 

 ご丁寧に五種類全てのサンプルが飾られている為、自分に合った量が選び易くなっているのも、そういう経緯があったのかもしれない。

 

「れいかはどのサイズにするんだ?」

 

「私はお夕飯の事も考えてスモールサイズにしようと思います。八幡君はもう決まっていますか?」

 

「俺は普通の量でって考えてたからミディアムだな」

 

 あー、でも夕飯の事とか全然考えてなかったなぁ。俺もスモールの方が良かったか?……いや、物足りなさを感じるよりかはいいか……

 

「二人とも決まってるなら注文しちまうか」

 

「ええ、すみませーん」

 

 

 

 出来上がったソフトクリームを店員から受け取ると、一瞬……抹茶の香りが鼻をくすぐった。。

 

「おお、美味そうだな」

 

「はい、とっても綺麗な緑色です」

 

 少し鼻を近付け匂いを嗅いでみると、先程よりも強く抹茶の優しい香りが鼻に抜けていく。

 

「……いい香りだな」

 

「ええ、食べると抹茶の香りが鼻に抜けていくようです。……あら?八幡君はまだ食べてなかったんですね」

 

「……ああ、食べる前にちょっと匂いを嗅いでたんだ。受け取った時にも少し香って来たから気になってな」

 

「そうだったんですね。香りも良いですがお味もとっても美味しいですよ」

 

「そうか、それじゃあ」

 

 抹茶ソフトを一口食べると口に抹茶の味が広がる。ただ苦いだけではなく、アイスの甘さの中に程よく抹茶の苦味が溶け込んでいてとても美味しい。

 

「うん、美味しいな」

 

 

 

 ベンチまで戻って来ると日野と緑川は食べきっていたが黄瀬はまだ食べきっていなかった。

 

「日野と緑川はもう食べきったのか?」

 

 俺達が買いに行く前は残っていた量的に食べ始めたばかりだったと思ったのだが……

 

「なんやその目は……ウチらが食うのが早かったんやないで?その抹茶ソフトが美味かったからしゃーないんや!」

 

 なんも仕方なくねーじゃねーか……

 

「あー、でもミディアムじゃなくてラージにしておけば良かったかなぁ。まさかこんなに美味しいとは思わなかったよ」

 

 緑川に至ってはまだ食い足りねぇみたいだし……

 

「なお、この後はお夕飯もあるんですからそれ、くらいにしておきなさい」

 

「ああそっか!夕飯があるんだよね、楽しみだなぁ」

 

「せやったせやった。くぅー!想像したらまたお腹減ってきよったわ」

 

 さすがは運動部って言えばいいのか?……それとも今時の女子はそんなに食うもんなのか?チラっと黄瀬に視線をやると意味を察したのか、一緒にしないでくれと言わんばかりに首を振られた。

 

 

「あーっ!みんなやっと見つけた!」

 

 日野と緑川のモノ欲しげな視線を躱しながら三人で抹茶ソフトに舌鼓を打っていると、唯一まだ合流出来ていなかった星空がやって来た。

 

 しかも星空とその肩に乗るキャンディも、既に抹茶ソフトを手にしている……つか、ミニサイズってキャンディにはピッタリなサイズ感だな。

 

「あれ?みんなも抹茶ソフト買ってたんだ!すっごく美味しそうだよね!わたしもいただきまーす!」

 

「いただきますクル!」

 

 星空とキャンディは、まだ抹茶ソフトには口をつけていなかったらしい。先に食べていた俺達を羨ましく思ったのか、大口を開けてかぶりつこうとして……

 

『あ〜〜んぶぅ?!』 『……あっ』

 

 後ろから走って来ていた子供がぶつかり、星空とキャンディは仲良く二人で食べようとしていた抹茶ソフトを顔面で受け止めていた。ぶつかった子供たちは星空の状態に気付いて居ないのかそのまま笑いながら走っていく。

 

「……み、みゆきぃ?キャンディ?大丈夫……か?」

 

 日野の声に抹茶ソフトを顔面で受け止めたまま固まっていた二人がゆっくり動き出す。

 

『……んばっ』

 

 うわっ……二人とも顔中抹茶ソフトまみれでなんか緑の泥パックでもしたみたいになってるな……

 

「……顔が気持ち悪いよぉ。……でも美味しい」

 

「あーあー、ベタベタじゃん。みゆきちゃん、ソフトクリームは持っててあげるから顔洗いに行こ」

 

「なおちゃーん!」

 

「なおー!」

 

「あ、こらっキャンディ!引っ付かないのアタシにも着いちゃうでしょ。ほぉら二人とも顔洗うのが先でしょ」

 

 緑川が抹茶ソフトぬれの二人を手洗い場の方へと連れていく。

 

「……なんや、なおってやっぱりオカンみたいやなぁ」

 

「……うん、わたしのお母さんとは少し違うけど、でもなんかお母さんって感じがするよね」

 

「なおは昔から弟妹(きょうだい)の面倒を見ていましたからね。それが染み付いてしまっているのでしょう」

 

 そう語るれいかの顔は穏やかで緑川との付き合いの長さを(うかが)わせる。

 

 れいかにそんな顔をさせる事の出来る緑川に、ほんの少しだけ……もやもやした気持ちを抱えながら、最後のコーンを口に放り込んだ。

 

 

 

 

 

「おー!竹だらけや」

 

「素敵!京都って感じ」

 

 星空とキャンディが抹茶ソフトを食べ終わるのを待ち、みんなで竹林の小径までやってきた。

 

「かぐや姫クルー!」

 

 星空の肩に乗っていたキャンディが竹林を見てはしゃぎながら一本の竹に登りだした。

 

「キャンディ?どうかしたの?」

 

「……みゆき、実はキャンディはメルヘンランドのお姫様だったクル。お迎えが来たから帰らなきゃ行けないクル」

 

 ……あ、かぐや姫の真似してたんか。メルヘンランドとか言い出したから一瞬分からなかったわ。

 

「そんな……キャンディ!帰らないでわたしと一緒に居てよ!」

 

「……みゆき。みゆきがそこまで言うなら帰らないクル!」

 

「キャンディ!」 「みゆきー!」

 

 お互いに駆け寄ると二人はヒシッと抱き合う。………俺はなんの茶番を見せられてるんだよ……

 

「なんなん……この茶番」

 

「昔話とドラマが混じっているみたいですね」

 

「……あ、そろそろ移動しないと集合時間に間に合わないよ?」

 

 げっ?!もうそんなに経っちまってたのか……

 

「みゆきちゃん!キャンディ!時間ないからもう行くよ!」

 

「わかったー!行くよ、キャンディ!」

 

「待ってクルー!」

 

 

 

 

 

 

 俺達はギリギリ集合時間に間に合い、ホテルに向かうバスに乗り込んだ。移動時間があったからかホテルに着く頃には日も沈み、辺りは暗くなってきていた。

 

「修学旅行だからってはしゃぎすぎてホテルの方に迷惑をかけないように!分かりましたか?」

 

『はい!』

 

 相も変わらず佐々木先生が挨拶と諸注意を押し付けられていた。若いと色々押し付けられるって何処かで聞いたことがあるが、こういうのを見るとあながち間違いでもないのだと実感する。

 

「最後に!星空さん、比企谷くん、……さん、……くん、……さん、……くん!今呼ばれた六人はこの後私の所まで来てちょうだい!それじゃ、解散!各グループごとに部屋の鍵を教頭先生から受け取るように!」

 

 ……俺か?

 

「わたし達呼ばれたね?」

 

「どうしたんでしょうか?」

 

「なぜ呼ばれたかは分からんが、行ってみれば分かるだろ」

 

「アタシ達は待ってるから行ってきな」

 

「うん、ちょっと行ってくるね!」

 

 

 

 

 

 俺達が最後だったようで、佐々木先生の元には他に呼ばれた四人の生徒が既に揃っていた。

 

「全員揃ったようね。今あなた達を呼んだ理由(わけ)なのだけどあなた達の共通点ってわかる?」

 

「…………」

 

「あ、流石に分からないわよね。実はあなた達は男子が一人だけのグループの班長とその男子なのよね」

 

 そういう事か。そういえば昨日、流石に女子と男子が同じ部屋にうんぬんってんで、他にも二人同じ境遇の子がいるから一緒の部屋で良いか?って、佐々木先生に言われてたな……

 

「お、理解出来たみたいね。昨日も言ったのだけどあなた達三人には同じ部屋に泊まってもらう……筈だったんだけどねぇ……引率の先生が一人体調を崩しちゃって……あなた達が泊まる予定だった部屋を隔離部屋として使う事になっちゃったのよね」

 

 ……つまりどういうわけだ?

 

「……という訳でね。ごめんなさい、やっぱりあなた達はグループの子と一緒に泊まってくれる?どうしても嫌って言うなら私も手を尽くすけど……」

 

 佐々木先生は頭を抑え、吐き出すように口にした。

 

「ん?別に大丈夫ですよ?比企谷くんの家でグループの皆も一緒にお泊まりした事もありましたし!」

 

『……え?』 「……ん?」

 

 おま……普通それここで言う?

 

「……あー、なんか更に頭痛くなってきた気がするわ。私は今のは聞かなかったことにするから……星空さんのグループは大丈夫そうだしもう戻っていいわよ」

 

「はい!失礼します!」 「……あー、失礼します」

 

 

 

 

 

「……と、言うわけで比企谷くんも一緒の部屋でお泊まりする事になりましたー!」

 

「……まぁ、そういう訳なんだ。よろしく頼む」

 

「一回比企谷の家に泊まったこともあるし、ウチは別にええで」

 

「うん、わたしも比企谷くんなら大丈夫だと思うし」

 

「まぁ比企谷はれいか一筋だからねぇ……だよね?」

 

 ……そうだよ。つか怖ぇよ……

 

「私は嬉しいですよ。離れてしまうと思っていたので引率の先生には悪いですが僥倖(ぎょうこう)でしたね」

 

「じゃーみんなおっけーって事でお部屋にレッツゴー!」

 

「あ、鍵は受け取ってあるから大丈夫だよ」

 

 いまいち俺自身の理解が追いついてないが、まぁ何とかなるだろう。

 

「さぁ!八幡君、行きましょう」

 

 振り返る彼女の笑顔を見れば、先程まで感じていた不安はもう無くなっていた。

 

 

 

 

 




みゆきちゃんのテンションは原作よりも下がっていません。
大凶パワーを感じてはいますがキャンディが優しい事とみんなが助けてくれてるので立ち直ってます。

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