俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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長い一日もあと僅か……意外と名残惜しいですね

アンケートも実施中!こちらは暫く続けます。


(7)

 

「おー!ここが私たちの部屋だね!」

 

 部屋は廊下から一段高くなっており、部屋のすぐ外には靴箱がある。

 

 部屋の中は畳敷きになっていて部屋の角には布団が積まれて置かれている。

 

「……思ってたより狭いね」

 

「グループが四人~六人編成ですから、私たちは上限の人数という事ですしね」

 

「……あそこに布団が積んであるんやけど、この部屋にアレを六つも敷けるん?」

 

 部屋が思ってた以上に狭ぇ……取り敢えず荷物は押し入れ押し込んで置いたが……大丈夫か?

 

 

 

 

 って訳で布団を六人分敷いてみた。部屋を丁度六等分するような形で、六かけら分の板チョコを想像するとわかりやすいだろうか。

 

「……ぎっちぎちだな」

 

「うん、畳がもう見えないね」

 

「……まぁ敷けただけ良かったと思おうや」

 

「みんなはどこで寝る?ウチは特にこだわりはないんやけど……」

 

「では、私は左側の真ん中を、八幡くんは左側の奥側をいただいてもよろしいですか?」

 

「……え?」

 

「どうしました?」

 

「あ、いや、なんでもない……」

 

 なんか俺の寝る場所が速攻で決まったわ……

 

「……あはは、じゃあアタシは左側の手前側にしようかな」

 

「わたしは右の真ん中にする!そうすればどっちを向いてもみんながいるもん!」

 

 すげぇ星空らしい理由だな。

 

「……わたしは手前側にしようかな」

 

「じゃあウチが奥側やな」

 

 布団割り?も無事に終わり各自で荷物を押し入れから引っ張り出す。一度布団を敷くために無理矢理詰め込んだ為か奥の方にいってしまった星空の荷物が大分取り出しづらくなってしまったようだ。

 

「……そろそろお風呂の時間ですね。私はドライヤーを持ってきましたけど皆さんはどうですか?」

 

「……わたしは持ってきたよ。しっかりと乾かさないと変な癖が着いちゃうもん」

 

「あー、ウチは普段からそんな乾かしてへんしなぁ」

 

「れいか、アタシは借りていいかな?弟とか妹の事なら忘れないんだけど、どうにも自分の事になるとズボラになっちゃうんだよね」

 

 緑川も意外と抜けてるとことか多いよな……

 

「ええ、いいですよ。それでは一緒に使いましょう」

 

「ありがとれい」ガンッ!

 

「いったぁぁぁあああい!?」

 

 緑川の言葉を遮るように大きな物音と悲鳴が響き渡った。

 

  音のした方を見ると星空が上半身を押し入れの中へ入れたまま悶えていた……

 

「ちょっ?!大丈夫かみゆき!?」

 

 星空は日野に押入れから引きずり出された後も後頭部を抑え痛みに呻いている。

 

「みゆきちゃん?押し入れの中で何かあったの?」

 

 緑川の問いかけに、星空は首を横に振るとゆっくりと話し出した。

 

「あのね荷物が取り出しづらかったの。それでね力を入れようとしてつい……」

 

「……頭を上げたのか?」

 

「……うん」

 

「うわぁ、痛そう……」

 

 いや痛いでしょ……そりゃ……

 

「……はぁ。ちっと氷でも貰って来るから、大人しくしてろよ?」

 

「ありがと……比企谷くん」

 

 

 

 星空への介抱を皆に任せて適当な先生を探す。

 

「あら?比企谷くん、どうかしたのこんなところで?」

 

 そうして歩いていると運良く直ぐに佐々木先生を見つける事が出来た。

 

「ええ、実は星空が頭をぶつけましてね。冷やす為に氷が欲しいんですが……」

 

「頭を?!わかったわ。今準備するからその時の状況を教えてくれる?」

 

「わかりました。あの時は………」

 

 

 

 道すがら佐々木先生に説明しながら佐々木先生の泊まる部屋までやってきた。

 

「なるほどねぇ……それは星空さんらしいっていうかなんというか……」

 

 話を聞いて大きな事故では無い事に安心したのか佐々木先生自身も大分落ち着いてきた。部屋の奥からクーラーボックスを持ってくると中から店売りされている氷を取り出して袋を開けると、小さめのビニール袋に二重に入れて渡してくれた。

 

「はい氷、先生はもう少し他の子の部屋を回ってるわ。星空さんが悪くなりそうだったら直ぐ駆けつけるから言ってね」

 

「……わかりました。ありがとうございます」

 

 少し頭を下げて部屋を出る。やっぱり佐々木先生は結構親身になってくれる良い先生だな。………クーラーボックスから覗いていた晩酌用らしき、酒とつまみについては俺の胸の内にしまっておいてあげよう……

 

 

 

 

 コンコンッ「おーい、氷持ってきたけど大丈夫かー?」

 

 一応俺以外は全員女子なのでノックをして中からの返事を待つ。

 

「比企谷くんありがとー!まだ痛いけど大分良くなったよー!」

 

 扉を開けて出てきたのは元気いっぱい……とまではいかないが相変わらず元気な星空だった。今も俺から受け取った氷を患部に当ててはしゃいでいる。

 

「んー!冷たくて気持ちいぃ!」

 

「みゆきちゃん、まだ痛みがあるんだったらもう少し落ち着いて……」

 

「……なお、みゆきにそんな事言うたって無駄や」

 

「みゆきちゃん……またぶつけちゃうよぅ」

 

 

 

 

 

「……意外と元気じゃん」

 

「……あはは……星空さんも始めは大分痛がっていたのですが、八幡君が氷を貰いに行ってから少ししたら大分痛みも収まってきたようでして」

 

「まぁ悪化してないなら良かったよ」

 

「……ふふっ♪ええ、そうですね」

 

「……どうしたよ?」

 

 急に笑いだしたれいかについ、胡乱(うろん)な目を向けてしまう。

 

「ふふっ、ごめんなさい。八幡君も素直になってきたなって思ったら、つい」

 

「なっ///べ、別に心配位は……する///」

 

 れいかに言葉にされ、最近の星空達への言動がふと、思い起こされて急に恥ずかしくなってきやがった///

 

 そのせいか、れいかの顔さえもなんだか直視出来なくなる。

 

「……もう、拗ねないで下さい。私は日々変わっていく貴方を見ることが出来て嬉しいんですよ?」

 

 そう言ってれいかは、後ろから腕をまわし抱きついてくる。

 

「なっ///れいか?!」

 

「ふふっ♪こうしていると貴方の温もりが伝わってくるようです」

 

 耳元で囁かれるれいかの甘い声……より強く抱きしめられ、先程よりも密着する身体に体がどんどん熱くなっている気さえする。

 

「八幡君の心臓……とってもドキドキしてます」

 

 れいかに指摘されて、初めて自分の心臓が早鐘を打つように響いていることに気づく。そして――

 

「私と……一緒ですね」

 

 ――その鼓動が自分のモノだけじゃないことにも……

 

「……れい……か?」 

 

 ()()を確かめる為、振り向こうとした時だった……

 

 

「ちょっと!もう部屋に残っているのはあなた達だけよ!星空さんは先生が見てるから、出来るだけ時間通りにお風呂……に……って………」

 

 扉を開けて固まっていたのは佐々木先生だった。他の生徒の見回りが終わったのか、俺たちへの注意ついでに星空の様子を見にきてくれた様だ。

 

「……はぁ。比企谷くん、突然来ちゃった先生も悪いけど、そういう事はもうちょっと遅くにしなさい……あと、後々に響くような事はまだ控えるのよ」

 

 それでいいのか?!もっとガミガミ言われるのかと思っていたんだが……つか、後々に響くって……

 

「………それに緑川さん」

 

「はい?」

 

「その手に持っているのは何?」

 

「……ビデオカメラですけど」 

 

「……………はぁ」

 

 どうも静かだと思っていたら他の四人は掛け布団を積んで壁の様にして隠れながら見ていたらしい。……ビデオカメラは分からないが……

 

「色々言いたいことはあるけどもう疲れちゃったからいいわ。でも最後に一つだけ……あまり拗らせ過ぎないようにね」

 

 佐々木先生はそれだけ言うと部屋から出ていってしまった。

 

「行ってしまわれましたね……ですがせっかくの雰囲気が台無しです……」

 

 佐々木先生の出ていった扉を見ながられいかがぽろりと零す。そうして頬をふくらませているれいかからは、先程までの淫靡な気配は微塵も無くなっていた。

 

「……てゆーかお前らもいたんだよな」

 

「いたわ!二人が急におっぱじめそうやから急いで隠れたんやろが!」

 

「それは……すまん」

 

「……でも凄かったね……夢に見ちゃいそう///」

 

「ねぇ、でもイイ所で終わっちゃったからアタシ的には少し不完全燃焼かな」

 

「そうですね。もう少しだったのですが……」

 

 何がもう少しだったんですかねぇ……

 

 

 

 全員の準備が出来たので部屋から出て、風呂に向かう。

 

「それじゃあお風呂だ!あ、でもごめんね私のせいで遅れちゃって……」

 

「かまへんかまへん!それにみゆきのせいだけやのうてあの二人がイチャついてたのも原因なんやし」

 

「そうですね。私も少しはしゃぎすぎてしまったかもしれません」

 

「えへへ、ありがとう。んふー、でもみんなでお風呂なんて楽しみだなぉ」

 

「……うぅ///でもわたしはちょっと恥ずかしいかも……」

 

「もー!やよいちゃん可愛い!」

 

「きゃー!?もう、みゆきちゃん!」

 

 少し騒がしいが、この騒がしさもなんだか悪く無い気がする。そんな考えが頭を過ぎった時、男湯と女湯の暖簾が見えてきた。

 

「じゃあ比企谷、お風呂から出たら部屋に戻っててね」

 

「……おう、流石に女性陣よりは遅くならない筈だ」

 

 緑川に風呂上がりの確認をして、男湯の暖簾を潜る。

 

 

 

 

 誰も居ない脱衣所で服を脱ぎ、浴場へ入るとまだ人が結構残っていた。大分遅れてきたからか、入った時には視線が集まったがそれも段々と散っていった。

 

 体を洗って流したら湯船に浸かる。

 

「ふぃ〜、一日だけでも相当濃かったな……あと二日もあるのか………楽しみだ」

 

 最後に学校行事がこんなに楽しいと感じたのは何時だっただろうか……

 

 

 

 風呂から上がり、タオルで体を拭いたらジャージに着替え、部屋に戻る。まだれいか達は戻って来てはいないようで部屋の電気は消えていた。

 

「夕飯まではまだあるし、写真の確認でもするか……」

 

 鞄からカメラを出し今日撮った写真を確認していく。渡月橋での写真以降もこのカメラでの撮影は行っていた。大半がれいか単体やれいかとの写真だが日野や黄瀬、緑川に振り向きざまに撮った星空とキャンディの写真等もある。

 

 星空に関しては何度か撮った結果、星空自身が撮られていることを意識していなければ、大凶パワーもなりをひそめているようだ。明日も大凶パワーが続くようならもう少し撮ってやるかな……星空も昨日からすげぇ楽しみにしてたしな。

 

 

 

 

「出たでー!おー、やっぱ比企谷は先に出てたんやな」

 

「あかねちゃんまってよー!あ、比企谷くん。れいかちゃんはもうすぐ出てくると思うよ!」

 

「……おう、了解」

 

 やっぱりこいつらがいると急に騒がしくなった様に感じるな……まぁ、悪くない騒がしさって言えばいいのか……前は一人の静かな時間の方が好きだったが……れいかの言うように俺も変わってきているらしい……

 

 

 

「……八幡君?」

 

「……ん?れいかか、いつの間にか戻って来てたんだな」

 

「声は掛けたんですよ?……ですが何か考え中の様で壁の方をじっと見つめたままでしたので、こうして近くでもう一度声を掛けさせていただきました」

 

 れいかの声に反応出来ないなんて相当ぼーっとしてたみたいだな……

 

「あら?八幡君、お髪が湿っていますけど乾かしていないんですか?」

 

「あー、特に気にしてなかったな。ほっとけば乾くし……」

 

「いけませんよ。自然乾燥は髪を傷めてしまうんです。私が乾かしますからこちらに来てください」

 

 

 

 ゴォォォォ!

 

「こうしていると分かるのですが、八幡君は髪が綺麗ですね」

 

「……そうか?」

 

「ええ」

 

 こうしてれいかに髪を乾かしてもらうのはイレカワールの時以来か……あの時はれいかの体で髪を乾かしてもらってたんだよな……

 

 

 

「これくらいですかね?」

 

 れいかは俺の髪を手櫛で()かしながら呟いた。

 

「ありがとな」

 

 振り返ってお礼を言うとれいかは俺にドライヤーを差し出してくる。

 

「次は私の髪を八幡君が乾かしてください♪」

 

「……え?ええぇ……」

 

 結局押し切られる形でれいかの髪を乾かすことになった。

 

 

 れいかの髪を手櫛で梳かしながらおっかなびっくりドライヤーの風を当てれいかの長い髪を乾かしていく。

 

「……どうだ?ちゃんと出来てるか?」

 

 万が一にもれいかの綺麗な髪を傷めてしまってはいけないとれいかに聞きながら行う。

 

「ええ、とっても……気持ちいいですよ。もしかしたら八幡君は才能があるのかもしれませんね……」

 

「……そんなにか?」

 

「ええ♪……でも他の女性にはしないでくださいね。したとしても小町さんまでです。……もしもしてしまったら……嫉妬してしまうかもしれません」

 

「ははっ、そんな相手はれいか以外に居ないから安心してくれ」

 

 怖ぇぇ……今一瞬背筋がゾクッとしたぞ……

 

 

 

「ほら、終わったぞ」

 

「ふふっ、ありがとうございます。とっても気持ちよかったですよ。……出来ればまた明日も///していただけますか?」

 

「おう……大丈夫だ」

 

 少しだけ頬を赤らめたれいかの顔が、何処か艶めかしく……直視が出来そうにない。

 

 

 

「あー!もうすぐご飯の時間だよ!みんな!早く行こ行こ!」

 

「夕飯かーどんな美味いもんが出てくるんやろな?」

 

「ね、とっても楽しみ!」

 

「アタシもお腹ペコペコだよー」

 

「あら、もうそんな時間だったんですね。八幡君、私達も行きましょう」

 

「……ああ」

 

 俺とれいかは星空達に急かされるようにして食堂へ向かった。

 

 

 

 

 




佐々木先生は理解ある先生です。……不憫ですが……

次回から漸く二日目に突入出来そうですね!
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