金冠集めってどうしてこう大変なんでしょうねぇ
「おいひ〜!」
中之島の名所を巡り巡って俺達は今、休憩がてら道頓堀のお好み焼き屋で食事を取っていた。緑川の提案で入った店だが、この調子だと朝に言ってた串カツ屋とたこ焼き屋にも本当に行きそうだな……そんなに何処に入ってるんだか……
「なぁ、なお〜ウチのお好み焼きとどっち美味い?」
「そんなの比べらんないよ〜」
緑川は日野のだいぶ意地の悪い質問もあっさりと躱し美味しそうにお好み焼きを口に運んでいく。
「あかねさんも他の店のお好み焼きを食べるんですね」
「そりゃそうや、父ちゃんのお好み焼きだけじゃなくても学ぶ事はいっぱいあるんや。これは勉強やで!」
「とてもいい事ですね。その熱意を学校の勉強にも分けていただきたいのですが……」
「………ひゅ、ひゅ〜」
口笛吹けてねーし……つか、口笛で誤魔化せると思ってんのか?
れいかと日野のやり取りを肴に口にお好み焼きを運んでいるとれいかの追及を何とか逃れようとしてなのか、日野の視線ががあちらこちらに飛び、最終的に俺の方を見て止まり日野の口角が上がった………ん?
「れいか?なんや、比企谷の箸の進みが遅いみたいやで?ちょっと行って見てあげた方がええんとちゃう?」
日野の奴、俺をエサにしやがった!
「えっ?!八幡君大丈夫ですか?どこか調子が悪かったりしますか?」
心配するれいかの背後では日野がニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「いやいや大丈夫だから、今のは日野がれいかの気を逸らすために言っただけだ」
圧が、圧が凄いって……
「…………確かにいつも通りの八幡君ですね。私、あかねさんに騙されてしまったんですね……」
日野に嘘をつかれて、落ち込む様に目を伏せるれいか。
「あ……、れいか違うんやで、そんな騙すなんて……」
「……もうこれは、帰ったらあかねさんに英語の宿題を出すしかありませんね」
「なっ?!」
「ぶふっ!」
顔を上げたれいかは笑顔で日野の苦手科目の宿題を出す事を宣言する。……やべぇ、面白すぎてお好み焼き吹き出しかけたわ。
「あーんれいかぁ!それだけは堪忍してぇな!ウチ英語だけはごっつ苦手やん!」
「駄目です。あかねさんにはしっかりと反省してもらいますからね」
日野に縋りつかれながらもれいかはこちらへウインクをしてくる。……やっぱれいかだけは怒らせない様にしよ……
「まいどおおきに!」
会計を済ませて店を出る。日野はあの後もれいかに謝り倒していたが結局は説得出来ずに肩を落としながらお好み焼きを食べていた。……その点俺は日野への意趣返しで気分を良くしたのか、やたらと「あ〜ん」をされて、自分の分のお好み焼きとれいかの分の半分程を食べてちょっとお腹が苦しい……
「めっちゃお腹いっぱーい!」
「めっちゃ美味しかったクルゥ!」
「うん!大阪と言ったらやっぱりお好み焼きだよね美味しかったぁ」
「あかねちゃん家のも美味しいけど、やっぱり本場のお好み焼きは……おいしいなぁ」
……京都の舞妓さんとかの喋り方混じってねぇか?……ここ大阪だぜ?
「あ!アレもめっちゃ食べたいねんクぶっ!んー?!」
「いやー!嬢ちゃんらまた会うてもうたなー!」
間一髪だったぜ……星空の肩の上に居たキャンディの口を塞ぎ、急いで背負っている鞄に突っ込む。
「あ!さっきの……」
「親切なおばさん達……」
「こんなに会うなんてなんや不思議な縁でもありそやなぁ!」
「きっとあん二人の赤い糸の端っこにウチらが引っかかってまってるんや!」
『あははははははっ!』
相も変わらずパワフルだなぁ……
「先程はありがとうございました。船からの景色も綺麗でしたし、中之島も満喫出来ました」
「さよかさよか!楽しめたんなら言ったかいがあったわ!せや、この後はどこ行くん?知ってることあったらまた教えてあげるさかい」
「まぁ、ありがとうございます!実はこの後は天王寺動物園に行こうかと思っていまして……」
「ああ、ほならウチらもそっちの方行くから案内したるわ」
「えっ!いいんですか?」
「……私たちいっぱい教えてもらって……」
流石に悪いと思ったのか星空と黄瀬が戸惑っている。
「そんなん気にしない!」
「そやそや!」
「……うん、うん!」
「れいかちゃん……」
「ええ、ではまたよろしくお願いします」
無口なおばちゃんの全力肯定には若干驚いたがこうしておばちゃん三人組を交えて天王寺動物園へ向かうことになった。
前の方でおばちゃん達とみんなが喋ってる中で、少し抜け出し、星空の後ろに周りこむと星空の背負った鞄からキャンディがゆっくりと顔を出して来た。
「……八幡、さっきはびっくりしたクル……」
「悪ぃな、おばちゃん達が見えたから急いで隠したんだわ」
「それでももうちょっと優しくして欲しかったクル」
「悪かったよ……お詫びに今度お菓子でも買ってやるから許してくれ」
「お菓子クルゥ!」
キャンディは物で釣られてくれるから助かる。これが小町だったら何を要求されていたことか……
「ああ、だからもうちょいこのまま鞄の中で静かにしててくれよな」
「……わかったクル」
頷いてキャンディはゆっくりと鞄の中へと戻っていく……井戸の霊かナニカかな?
「あんちゃん何処行ってたん!今あんちゃんの話で盛り上がってたんやで!」
戻るとおばちゃんに速攻で絡まれる。
「いや、ちょっと靴紐が緩んで……」
「あ、そうなん?まぁそれはええねん。聞いたであんちゃん!えらいかっこええ事しはったらしいやん」
え、何?俺何を言われたの?れいかは何かを伝えようとしてるのか、しきりにウインクしてくるが全く意味が伝わらない……くっそ可愛いなぁおい!
「でもあんましそうは見えへんけどなぁ?」
「バカやなぁ、そう見えるけどって言うギャップがかっこええんやん!ギャップ萌って言う奴や」
「……実際、比企谷はやる時はやる男なんですよ」
おお!緑川!
「まぁ、やる時以外はそうでもないですけどね……」
おい……緑川ぁ……
「あはははははっ!あんちゃん言われ放題やな!」
ポンポン「強く生きな」
無口なおばちゃんにまで慰められたぜ……
「んっ」
無口なおばちゃんが何かくれたので受け取る。
「飴……ですか?」
結構な量なんだが……鷲掴みでくれたぞ……
「あー!せやったわ。ほら、嬢ちゃん達にもどうぞ!」
「わっ!ありがとうございます!何味かなぁ!」
「今話題の納豆餃子飴!さっき買うたんよ」
「納豆?」
「……餃子飴?」
うおっ?!かなりやべぇ
「ありがとうございます。こんなに何度もいただいてしまって……あら?」
れいかがおばちゃん達にお礼を言っていると急に辺りが重苦しい雰囲気に包まれた。空を見上げると蜘蛛の巣が張り巡らされている。
「マジョリーナか……」
「あーもうっ!なんでアイツらはこっちの方にまで来てるんや」
「前向きに捉えましょう。私達が居る時に起こったからこそ対処が出来るのだと」
さっきまでニコニコ笑っていたおばちゃん達も皆一様に項垂れ、座りこんでしまっている。
「改めて見ても胸糞悪い光景やな」
「……さっきまであんなに楽しそうに喋ってたのに」
「キャンディ!マジョリーナは何処にいるの?」
「こっちからバットエンドの気配がするクル!」
キャンディの案内で辿り着いた場所は、さっきおばちゃん達と合流した通りだった。
『アーカンベェ!』
そこに居たのは箒に跨って宙に浮いているマジョリーナと巨大なカニのアカンベェだった。
「ああっ?!カニの看板無くなっとる!?」
日野に言われて見てみると大阪の某有名なカニの看板が取り外されたかのように無くなっていた。
「てことは……あのアカンベェ……」
まぁ……日野の予想通りだろうなぁ。
「ん?なんでこんな所にプリキュアがいるだわさ!」
「それはこっちの台詞だよ!」
「プリキュアがいようがいまいがもう関係無いだわさ!納豆餃子飴の怨み!晴らさせて貰うだわさ!」
………は?
次回はバトルからスタートです!
大阪編は次でラストになる予定ですね。長かった修学旅行編も次で終わりまた日常回に戻ります。修学旅行で変化した二人の装いやキスマーク等も今後所々で活躍させられたらなと思っています