「ケーキを貰いましたし、この後八幡君のお家にお伺いしてもよろしいですか?」
物置小屋の前まで戻って来て液肥や台車、籠をしまったところで、れいかがそんな提案をしてきた。
「勿論構わないが、れいかの家の方がここから近いんじゃないか?」
学校からの距離で言えばれいかの家よりも俺の家の方が遠い事はれいかも分かっている筈だ。
「ええ、それはそうなのですが……うちだと今日は私の家族が全員家に居ますので、二人でお茶会をしようとしてもかなり生活音がしていそうで……少々恥ずかしいと言いますか……兄や母が部屋に入ってきそうで……」
「ああ……」
よく漫画とかとかでもあるやつな……お節介なのか知らなかったのか部屋に入ってきて気まづい雰囲気になるやつ……その点、家の小町ちゃんは敢えて部屋に入ってきて賑やかしてから部屋を出るっていうハイスペックな事を平然と出来る子だからな……まぁ、先ず部屋に入るなとは思うけどな……そこは小町だし……
「あ……」
「……?どうかしましたか?」
そういやまだ家に母ちゃんいるじゃん……
「いや……今思い出したんだが、今家に小町以外にも母ちゃんが居てだな……」
なんか久しぶりに帰ってきたからとかで、俺の修学旅行が終わってもこの週末は家に残るらしい……
「まぁ!八幡君のお母様が!?それならば是非に御挨拶に伺わないとですね!」
あ、これ自爆したわ……れいかは目をキラッキラ輝かせている。こりゃもう家に招待確定ですわ……
「あっ!ケーキ……先程中を見た時、私たちの分の二つしかありませんでしたし、八幡君のお母様に御挨拶するのに私たちの分だけ持っていくというのも失礼ですよね……」
「そんな気にするもんか?サッと顔合わせて俺の部屋に行っちまえばいいんじゃね?」
なぜか分からんがれいかと母ちゃんを長時間話させるたヤバい気がするんだよな……息が合いすぎる的な意味で……
「いけません!御挨拶に伺うのですからそれ相応の用意が必要です!」
「お、おう、そうか……」
「ええ!……と、言う訳ですので、このまま八幡君の家へ向かうつもりでしたが先にケーキ屋に向かいましょう」
まぁそうなるか……こりゃもう何を言っても無駄だね……ああ、嬉しい事なんだが……このどんどん外堀が埋まっていくのが実際に分かるってのは少し背筋が冷えるわなぁ……
「八幡君、ケーキを持たせてしまって本当に申し訳無いのですが、ほんの少し、後ちょっとだけお待ちくださいね」
現在地はれいかの家の門の前。まぁ、つまるところれいかのお着替えタイムだ。
今日の目的が花壇の世話だった為に俺もれいかも制服だった訳だが、先程のケーキ屋でスカートの縁が土で汚れてしまっているのを発見……すぐ様の着替えという感じだ。
一瞬そこまでの事か?なんて考えちまったが俺もれいかの家に初めて上がった時は身嗜みとか汚れがないかとか、めちゃくちゃチェックしたのを思い出して若干反省。素直にれいかの着替えが終わるのを待っている。
暫く待っていると玄関の開く音が聞こえてきたので門からチラッと顔を覗かせる。てっきりれいかだと思っていたのだが出てきたのはジャージ姿の青年だった。
「……おや?どうしたんだいこんな所で?家に何か用かな?」
見つからないように直ぐに首を引っ込めたのだが、青年は外に出ていこうとしていた様で門のところで鉢合わせてしまう。
まぁそりゃ自分の家の門の所に人が立ってたら声を掛けるか……
「……あ、いや、れい……青木さんの事を待っていて……」
この人れいかの兄ちゃんだろ?気まずい……
「ん?ああ……」
え何?何がああ……なんなんですか?!それにすっごいじっと見てくるんだけど!?
「君がれいかの………おっと、ごめんごめん。不躾な視線だったかな?まだれいかに紹介してもらえてないって事が寂しいけどその内紹介して貰えるよね。だからその時にゆっくり話そうか。僕はこれからランニングに行くから、また会おうね比企谷君!」
それだけ言うと、じゃ!っと手を挙げて走って行ってしまった。
「てか、なんで名前知ってるんですかねぇ……」
もしかして青木家で共有されちゃってる?
れいかの兄ちゃんが見えなくなってから少ししてれいかが家から出てきた。制服から私服に着替えていて前にも見たはずなのだがやはり新鮮さを感じる。
「お待たせして申し訳ありません。では一緒行きましょうか」
「……おう」
れいかの兄ちゃんの事は……言わなくていいかなんかまた地雷とか踏みそうで怖いし……
れいかと雑談しながら家に向かっていたがとうとう着いてしまったようだ……
「っと。着きましたね。八幡君のお母様……なんだか緊張してドキドキしてしまいます」
「れいかでもそんな緊張とかするんだな?」
れいかと話しながらもこっそり、母ちゃん少し早く帰ってたりしねーかなぁと一縷の望みにかけて駐車スペースを見てみるが、そこにはしっかりと我がお母様の愛車が鎮座していた。
「もう、私だって緊張くらいしますよ?」
「ははっ、そりゃそうか。じゃ、入るとしますかね」
「……ええ」
最後の望みは絶たれたので無駄な抵抗はやめ、潔くれいかを我が家へと招待する。
「たでーまー」
「おにーちゃんおかえり〜取り敢えず居間に来てくれる〜」
あいつだらけてるなぁ……まぁ、れいかが来てるって分かればシャキッとするだろ……
「お邪魔します」
「っ!?」 ガタン!
ほら、れいかの声が聞こえた瞬間何かが落ちる音がして……慌てた様子で居間から小町が出てきた。
「お、お義姉ちゃんも来てたんですね!小町びっくりしちゃいました!」
「いえ、私も連絡もなく突然お邪魔してしまってすみません」
「いえいえいえいえ!お義姉ちゃんなら何時でも大歓迎ですので!」
「まぁ、ありがとうございます小町さん」
「うへへへ///それほどでもないですぅ」
駄目だコイツ……れいかに撫でられて蕩けてやがる……
「ところで今日は小町さんのお母様もいらっしゃると聞いたのですが……」
「あ、いますいます!ささっ遠慮なく入ってきて下さい」
「あ、あらっ?」
れいかは俺の方を偶に振り返りながらも小町に手を引かれて居間へと連れ去られてしまった……
「……俺もいきますかね」
「お母さんお母さん!お義姉ちゃん!!……じゃなくて青木れいかさん!お兄ちゃんの彼女さん!」
今に入った時、丁度母ちゃんにれいかの紹介を小町がしているところだった。……つかその紹介はどうよ?
「おーおー興奮してるねぇ。あたしはみたま、漢字は御守りの御に幽霊の霊で御霊ね?」
「わかりました。私からも改めまして、青木れいかと申します。漢字は綺麗の麗に華やかの華で麗華と書きます。現在八幡君とお付き合いをさせて頂いております。よろしくお願い致します」
え?そこまで言うの?!……あ、御挨拶ってそういうもんか……ん?
「ささやかですがこちらケーキです。小町さんとお召になってください」
「あらあら、ありがとねぇ。あ、れいかちゃんって呼んでいい?」
「ええ、勿論です。その、私もお義母様と呼んでもよろしいですか?」
「うんうん、いいよいいよぉ。やぁんとっても可愛いじゃん八幡も良い子を見つけたねぇ」
「きゃっ!いえ、そんな///」
れいかが母ちゃんにおもいっきりハグされてるわ……れいかめちゃくちゃ気に入られてるじゃん。……地味に小町もれいかの後ろから抱きついてるのなんなん?
「んー!堪能堪能。れいかちゃん?これからもうちのひねくれ息子の事、頼んだよ?」
「ええ!勿論です!でも、私の方こそ八幡君にはお世話になってしまって居ますので二人で支え合って行きたいと思います!」
「んー!充電完了!小町買い物行ってきます!」
「おー、いってらー。そかそか、じゃあれいかちゃんはその調子で頼むよ。じゃあ次はそこの好色息子、ちょっと来な」
「誰が好色だよ……誰が」
「はいはい、あ、れいかちゃんは先に八幡の部屋に行ってて貰っていい?場所わかるよね?」
「あ、はい、では失礼します」
れいかも母ちゃんへの挨拶でかなり緊張していたのか、普段なら俺に一声掛けてから部屋に行くのだが母ちゃんに言われるがまま俺の部屋に向かって言ってしまった。
「八幡アンタ……近くで見たられいかちゃん、より一層可愛いじゃん?」
母ちゃんは肩を組んだ来てすげぇニヤニヤしながら聞いてくる。
「まぁ……俺にな勿体ないくらいだけどな」
「はいはい謙遜しないの。小町から聞いたけど、れいかちゃんの方から告って来たんでしょ?ならアンタは自分に自信を持たなきゃ、れいかちゃんに失礼だよ?」
「……まぁそうだが」
「だがじゃなくてそうなの。分かれよ」
「……うす」
怖っ……久しぶりに母ちゃんが一瞬キレたわ……
「……それに小町もれいかちゃんにかなり懐いてるじゃん。さっきの買い物も実はね、アンタが帰ってきてから行ってもらおうと思ってたやつなんだよねぇ」
だから帰ってきて最初に呼んだのかよ……
「ま、思ったよりも早くれいかちゃんと話せて良かったわ。良い子だってわかったしね。じゃ、もう行ってもいいわよ……あ、それとお昼ご飯カレーだかられいかちゃんにも食べて行って貰ってね。よろしくー」
言いたいことだけ言って後ろ手に手を振りながらキッチンの方へ戻って行く母ちゃん……
「え……マジで俺が昼飯誘うのか?」
聞き返したところで母ちゃんは既に飯の準備中なのか聞こえていない……それか聞こえてて敢えて無視してる……
「ただのお茶会だけの筈だったんだかなぁ……」
ため息混じりに一言零し、れいかが居るはずの自室へと向かう。
今回はれかちゃんとママンのターンでした。そして地味に出てきたのはれかちゃんにいに!……次に出てくるかは……あんま考えてません……まぁ出てきてもちょこっとでしょう!
では何故かママンへの御挨拶回になっていた今章も引き続きよろしくお願い致します!