『いただきます』
昨日の夕飯は小町が作っていたので久しぶりの母ちゃんの手料理である。まぁ久しぶりの手料理がカレーってどうなん?とも思うが美味いことには変わりないのでせっせと口に運ぶ。
「おいしー!お母さんのカレー、久々に食べたけどやっぱり美味しいね!」
「んん!とっても美味しいです!流石お義母様ですね!」
れいかはお昼のお誘いに即断していたのだが、いざ家に連絡を入れると呆れ混じりの了承だったらしい。連絡を寄越すならもっと早くしてくれと言われたそうだ。………これ完全に俺が寝ちまったせいだよな……気をつけねぇと……
「んふふー、それほどでもあるかなぁ。このカレーは小町も八幡も大好きだからねぇ。……あ、突然なんだけどさ、れいかちゃんは携帯持ってる?」
「ええ、持っています」
おっと不吉な予感が……
「じゃあご飯食べた後に連絡先交換しようか。色々相談に乗るよぉ?それにあたしがこっち来れる日とか教えるから都合が着いたらおいでよ?あたしの秘伝レシピとかれいかちゃんになら教えてあげちゃうからさぁ」
「本当ですか!?是非にお願いします!」
……ほらさぁ、家に来るって話の筈なのにこの疎外感よ……
「あ、お義姉ちゃんずるい!小町も教えて貰った事無いのに!」
「あたしの秘伝レシピは愛のレシピだからねぇ。小町にも好きな人が出来たら教えてあげるよ?」
「えー?小町そんな人いないし急に現れるもんかなぁ」
「……そうですね。私も小町さんくらい幼かった時は私もそう思って居ましたが、ふとした瞬間に今までとは違って見える人がいるものですよ?私の場合はそれが八幡君だったんですけどね」
家族の前でこういう事話されるとめちゃくちゃ恥ずいな///
「れ、れいか?もうそういう話はその辺で……///」
「なーにいっちょまえに照れてんの?」
「んぶっ?!」
んな!いきなり母ちゃんが手で口を塞ぎやがった!
「ほらほられいかちゃん、コレの事は良いからもっと馴れ初めとかも話しちゃって?」
「小町も!お義姉ちゃん!小町も聞きたいです!」
「あらあら、お手柔らかにお願いしますね?」
口ではそう言ってはいるがれいかの表情は生き生きととしていて、とても愉しそうに話し始めるのを口を塞がれた俺はただ見ている事しか出来なかった………
「あれ?……お兄ちゃんがオシャレしてる?!」
昼食という名の辱めを受けて、ソファに座るれいかの膝枕でぐったりとしていると小町の素っ頓狂な声が聞こえてきた。
「……いきなりどうしたよ」
「どうしたじゃないよ!こっちがどうしたって聞きたいくらいだよ!」
かなり興奮しているようで小町にしては珍しく言葉が通じてない。
「小町さん、落ち着いてください。オシャレ……と言うと八幡君の
そう言い、れいかが手に取ったのは俺の首に掛かっていたネックレスだった。買ってからずっと身に着けてはいたが、ほとんどずっと服の下に入れていたので小町も気付かなかったのだろう。それが寝転んでいたからか知らぬ間に飛び出していたようだ。
「そうそれです!お兄ちゃんが何か着けるなんて珍しいからちょっと慌てちゃったかもです」
小町もれいかに諭されると直ぐに落ち着きを取り戻す。
「ふふっ、実はこれお揃いなんですよ。……ほら」
れいかは首元に手をやると服の下から俺とお揃いのネックレスを引っ張り出す。
あれかられいかもずっと身に付けていてくれたのかと思うと嬉しくなるな///
「わぁあ!それ良いです!なんて言えばいいか分からないですけど、凄い仲良いんだなぁって伝わってきます!」
「ですって、八幡君。とっても嬉しいですね♪そう見えて居るのならもっと、より深く
「……お、おう。まぁ……お手柔らかに頼む」
「……ふふっ、……嫌です♪」
「oh......」
「うっひょー!キタァァァ!」
……小町、落ち着いて?
「はーい、ケーキ盛り付けて来たよぉ」
小町が発狂して数分……食器の片付けが終わったあともキッチンでゴソゴソしてた母ちゃんが、皿にケーキを盛り付けて持ってきた。
「……おお、忘れてたわ」
そういえば元々は家でれいかとケーキを食べながらお茶会する予定だったんだよな……
「なんか凄い良いお茶っ葉があったからさぁ、使っちゃったけど、あれどうしたの?」
言いながら今度は人数分の湯呑みをお盆にのせ持って来た。お盆をテーブルの上に置くと小町の隣に腰を下ろす。
「あれはねえお義姉ちゃんが偶に持って来てくれるの。お兄ちゃんがマッ缶ばっかり飲んでるって言ったらそればっかりは良くないって。……いいお嫁さんだよねぇ」
……否定はしねぇけどな
「うっそマジ……?ほんとにいいお嫁さんじゃん……合鍵要る?」
「ふふっ、ありがとうございます♪そう言っていただけるだけで励みになります。…合鍵についてはもう小町さんに頂いているので大丈夫です」
そういやぁれいか、合鍵持ってたんだったな……すっかり忘れてたわ。
「合鍵はもう持ってるかぁ……小町?」
「んにゃ?」
「ナイスだよ。良い目持ってるじゃん」
「えへへ///それほどでもぉ」
「よーしこれなら比企谷家も安泰だね。ほれ、息子!あたしは孫はいつ頃見れる予定なんだ?」
「ぶふっ!?おまっ!じゃねー、母ちゃん!?そりゃ早すぎだろ!」
何考えてやがる!?れいかとはまだキスすらしてねーってのに……飛躍し過ぎだろ……
「八幡君との子供……はぁん///いいですねぇ……まずは女の子がいいですよね。しっかりとお姉ちゃん出来るように教えて……。次の子は男の子でしょうか?お姉ちゃんに甘えながらでものびのびと育って欲しいです」
「お兄ちゃん?お義姉ちゃんが帰って来ないよ?」
小町に言われ、ハッとしてれいかの方を見るとブツブツと何か呟きながらトリップしていた……
「……れいか?……れいか!」
「……………はっ?!あ、八幡君、あの///せめて安定期に入ってからで///」
「……ん?」
「……え?……あ!いえ///なんでもないです!」
「そ、そうか?……ま///まぁゆくゆくはそういう事を考えるとしてもだ。……流石に気が早すぎるだろ?」
心を落ち着けて母ちゃんに言い返すが、母ちゃんはニヤニヤしながら俺とれいかに交互に視線を送っている。
「んー……れいかちゃんはいいねぇ合格も合格、花丸ものだよ。それにひきかえこのヘタレは……男ならもうちょっとガツガツいかないと……首元にキスマークなんか付けてる癖に何も無いわけないでしょ?」
「……え?キスマーク?」
首元っていったら修学旅行時に出来た虫刺されしか……これか?その痕に触れ、れいかの方を見るとスイっと目を逸らされた……いつの間に……
「なぁんだ……やった訳じゃなかったのねぇ。……でもその独占欲はやっぱりいいわぁ……ねぇ今日コイツのこと押し倒してみない?」
「なっ?!」
おい!?
「ええ、それはとっても魅力的な提案なのですが、今日は遠慮させていただきます。私ももう少し雰囲気も大事にしたいと思っておりますので……その時になったなら遠慮なく押し倒させていただきます♪」
「本人の前でする話じゃねぇ……」
「……でもお兄ちゃん嬉しそうじゃん?ちょっと口角上がってるよ?」
「っ!?」
小町に指摘され慌てて口元を抑える。そしてやってしまってから気付く、三人からの生暖かい目……計られたわ……
そりゃ嬉しくない筈が無いのだ。だって本当に好きな人から良い雰囲気になったら押し倒すと宣言されているようなものなのだから……
「本人の了承も取れたみたいだし、これからはれいかちゃんもあたしの娘みたいなもんだねぇ。よっし、ごちそーさま。あたしは部屋に戻ってるから帰る時は声掛けてねーばいばーい」
……いつの間にかケーキ食いきってるしよぉ。母ちゃんは言いたいことだけ言って部屋に戻っていきやがった。
「小町もごちそーさま!小町も部屋に戻ってるからお母さんと同じでお義姉ちゃんが帰る時に声掛けてねー!」
小町までもが逃げるように部屋に戻っていく。隣に目を向ければ笑顔のれいか……
「あら?八幡君はまだ全然ケーキを食べてないんですね。ふふっ、食べさせてあげましょうか♪」
ああ……今日は終始心臓がバクバクしっぱなしだったわ……俺がれいかに勝てる日なんて来んのかねぇ……
「はい、あーん」
「……んむ」
………甘い
はい、コレで今章は終わりになります次回から母の日編に入りますのでよろしくお願い致します。
蛇足
八幡はそのまま待ってれば夜のバトルには勝てるので勝つ日は来ます。