私は母の日はお母様に五千円を上げました。好みの花とかなんてわからないんや
(1)
五月、道端の桜の花びらも、既に姿が見えなくなり季節の移ろいを感じる月だ。先月はれいかの告白から始まり、修学旅行やれいかに母ちゃんを紹介したり、グラジオラスやダリアが芽を出したりとイベント尽くしの月だった。……アカンベェ関連は除いて……
そんな五月七日の金曜日、五月も今日で丁度一週間になる。だからどうと言う訳では無いのだが、そんな事でも考えないとやってられないこともあるのだ。
カサッ
ポケットに突っ込んだ手に
「……はぁ」
ため息を吐きつつ、
先輩へ
コレを読んでいるということは手紙は捨てずに受け取ってもらえたのだと思います。今日の放課後屋上で待ってます。伝えたい事があるので来てください。
コレだよ……
……告白?……イタズラ?どちらにも取れる。
告白ならNO一択だ。俺にはれいかがいるしな。イタズラだった場合は……そのまま帰ればいいか?…………よし、れいかに相談しよ。
「………これは……余り気分の良いものではありませんね」
「……そうか、えーと、行かない方がいいよな?」
悩んだ末にれいかの顔が浮かんだので早速休み時間に相談してみたのだが……現在後悔中だ。
あの時の俺はどうかしてたんだよ!怖いんだよ!体感温度が数度下がった気さえするわ……
「告白するつもりなのだとしたら良い度胸をしてますし、イタズラだったとしてもそれはそれで不愉快ですね」
ふぇぇ、怖いよぉ……
「行かないぞ?いい……よな?」
「……ふぅ、そうですね 。 決めました。八幡君は一度呼び出しに応じてもらいます」
「……え?」
「ですから、八幡君にはこの手紙の呼び出しに応じてもらおうと思います。あ、勿論私も屋上に待機していますので安心して下さい。本当に告白だった場合には行かないのは失礼ですからね」
「わ、わかった……」
待機って……ぶっちゃけ見張りじゃ……
「お願いしますね?」
「ひゃい!」
side:れいか
「どうしましょうか」
昼休み。普段ならば皆さんと昼食を取りながら、八幡君に甘えたりと、とても楽しい時間を過ごして居るのですが今日は生徒会の仕事があると言って抜け出して来てしまいました。
「はぁ……」
それに今日は数日前からお義母様と
「よしっ」
悩んでいても仕方ありませんね。手早くつまらない事は片付けて、八幡君をお誘いしましょう♪
sideout
放課後
「それでは八幡君、私は先に屋上で待っていますので安心して来てくださいね?」
俺を呼び出した人物が屋上に行く前に隠れる為に、れいかは帰りのHRが終わると直ぐに教室を出て行く。笑顔なのに一切笑っていない目のせいで俺はただ頷く事しかできなかったのだが……
「比企谷ー?」
「あ、あぁ緑川か、どうした?」
「どうしたじゃないよ。れいかの様子が何時もと違うけど何かあったの?」
流石緑川、れいかの事になると鋭い。……いや、星空もド下手な演技で日野と話しをしている振りをしながら聞き耳を立てているのでこのメンバーにはバレていたようだ……あ、日野に叩かれた……
「あー、この後直ぐに解決する予定だから終わったら話すわ」
「……そっか、じゃあみんなで待ってるから説明してよね?心配したんだからさ」
サラッとこういう事を言えるから緑川は同性からもモテるんじゃないだろうか?かくいう俺も少し嬉しかった。
「ああ、行ってくる」
緑川達に見送られながら俺も教室をあとにした。
屋上は休み時間や昼休みには結構人が居ることが多いが、放課後になると部活やら帰宅やらで殆ど人が寄り付かなくなる。相手もそれをわかっていて放課後に屋上に呼び出したのだろう。
屋上の扉を開け、外に出るとフェンスに寄りかかっている女子生徒が目に入った。彼女が俺を呼び出した相手だろうか?
彼女はまだ俺が来たことに気が付いてはいないようでフェンスに寄りかかり空を見つめて居る。こうして見る限り、俺自身に彼女への見覚えはない。
声を掛けようか迷っていると俺の視線に気づいたのかチラッとこちらを見て、ビクッとされた……そんな驚かなくても……
「……先輩、来てたんですね」
「……いや、まぁ……な」
会話が続かない!
「ふーん……」
彼女はそれ以降何も話さずにズンズンとこちらへ近づいて来ると俺の周りを回りながらジロジロと観察してくる。
「……先輩」
「……なんだよ」
「あたし、青木先輩が好きなんです」
「おう、………おう?」
れいかが好き?え?じゃあなんで俺が呼び出されてんの?
「……マヌケそうな顔しないで下さい。あたし、入学してから何時も青木先輩の事見てたんですけど、すっっっごい!可愛い顔して笑うんですよ。……先輩の前でだけ」
「……ストーカー?」
「あ゛っ?」
「なんでもないです」
怖っわ……
「……話を戻します。つまり青木先輩はホントに先輩の事が好きなんだなって分かるくらいに態度に出てんですよ!」
めっちゃれいかの事好きじゃん……最後とかもう先輩への態度じゃねーもん。
「……つまり?」
「普通の青木先輩じゃなくて、不本意ながらも先輩の事が好きな青木先輩の事があたしは好きなんです」
「お、おう。……ありがとう?」
「は?なんでお礼言ってんですか?……じゃなくて、もっと青木先輩と先輩のカプをあたしが好これる様に自分を磨いて下さい」
「……すこ?」
「つまりもっと自分の身嗜みに気を使って下さいって事です!先輩顔は良いんですからもっとケアして下さい。今見ただけでも一個ニキビが出来かけてます。コレ、メンズの洗顔料です使って下さい」
そう言って彼女は未開封でまだ箱に入っている洗顔料を数個、ポイポイとこちらへ投げ渡してくる。
「おっとと?!」
「もう言いたいことは言ったので帰りますね。先輩、お先です」
「え?えぇ……」
バタンッとしまった扉の音が無情にも本当に彼女が帰っていったことを証明している。
そうして屋上に残されたのは洗顔料を落とさない様に抱えた俺と……
「……なかなか個性的な子でしたね」
彼女が来る前から隠れていたれいかだけだった。
「……個性的っつうか、れいかの熱狂的なファンじゃね?」
「…………そうとも言うかもしれませんね」
れいかはスっと目を逸らした。……こういう所も可愛いよな。
「んっ!しかし、そもそもラブレターでは無かった様ですね。八幡君の事が好きな私が好きだなんて……可愛い子もいるものですね。ふふっ♪」
そこは高評価なんだな……
「あ、そうです。八幡君の予定をお聞きしたかったのですが。明後日、五月九日の日曜日は何か予定が入っていたりしますか?」
「んん……いや、特になかった筈だ。何処か行くのか?」
「ええ、お買い物のお誘いです。予定が無いなら一緒に行っていただけますか?」
れいかの誘いを断るなんて選択肢は初めから無い。
「勿論だ。楽しみにしてるよ」
「ふふっ♪ありがとうございます。では時間などは追って連絡致しますね」
「ああ、よろしく頼む」
「お任せ下さい」
洗顔料を抱えてる為手が使え無いのでれいかに扉を開けてもらって屋上から校舎の中へ戻る。……と、そうだ。
「緑川達が教室で待っててくれてるみたいだぞ?」
「あら?……ああ、そういう事ですか。もしかして少し態度に出てしまっていましたか?」
「ちょっとだけな」
「そうでしたか……」
「この後俺も色々説明するつもりだし、その時に一緒に話せばいいだろ」
「ええ、そうですね。……ですけど本当に……」
「ん?」
「私達は良いお友達を持ちましたね」
「ああ、本当に……な」
この後俺達の話を聞いた緑川達が黄色い声をあげてはしゃぎだしたのは言うまでもないだろう……
今話に登場したれかちゃん大好きモブ子ちゃんは多分もう出ないでしょう。この事件をきっかけに八幡君はお肌のケアに取り組み始めるのであった……