「はちまーん!もうそろそろ出ましょー!」
着替えを終え、出発までの時間つぶしに軽く本に読んでいたところ、階段の下から母ちゃんの俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
「わかったー!今行く!……母ちゃんを待ってたんだがなぁ……」
俺はもう少しだけ早く出発しようと言ったんだが、イマイチ髪がキマらないとか言って俺を待たせたのは母ちゃんなのだ。
まぁ、理不尽な事は今に始まったか事でもないし、特に俺に実害がある訳でも無いのでいいのだが……
「んー!やっぱりあたしと小町が選んだだけはあるね。キマッてるよ」
「おお、ありがと。母ちゃんも髪……キマッてるぞ」
どこら辺が変わったか分かんないけど……
「はいはい、お世辞でもありがとねぇ。じゃあ出発しようか」
「へいよ、じゃあ行ってくるわ」
玄関まで送りに来ていた小町に挨拶をして母ちゃんに続く。
「二人とも行ってらっしゃーい!お土産よろしくねー!」
「いやぁ、楽しみだねぇ」
「ほーん、母ちゃんがそんなに楽しみにするなんて……昔馴染みだったりするのか?」
「ん?いや、知り合ってからひと月も経ってないよ?」
「……は?めちゃくちゃ最近じゃねぇか……」
知り合ってひと月でそんなに仲良くなれるとか……コミュ力のバケモンかよ……まぁ母ちゃん気に入った奴にはガンガンいくしなぁ……
「まぁ、仲の良さに時間も年齢も関係なんてないのよ」
「……さいですか」
確かに種族すら超越して仲良い奴とかいるしな……
始めのうちはまだ偶然だろうと思えていた……
しかし、それが続けば疑問を抱かない筈がないだろう。
「……なぁ、母ちゃん何処で別れるんだよ?」
降りる駅まで一緒とか……時間に余裕があるからって俺に着いて来てるんじゃねぇだろうな……
「え?ここの駅って近くにデパートがあるんだし買い物するなら定番でしょ?」
……あ、そっか、目的地が一緒の可能性もあるのか。
「やーん、自意識過剰?はっずかしぃー」
……うぜぇ
「……悪かったよ。俺の自意識過剰でした」
「まっ、分かればいいのよ」
「……で?結局母ちゃんの待ち合わせ場所って何処なんだよ?」
それさえ分かればもう変な事何処で別れるのか、なんて、聞かなくて済むしな。
「あー、この駅の駅前広場」
一緒じゃねーか!
「……マジかよ」
何が悲しくてデートの待ち合わせを親同伴でしなきゃいけないんだよ……
「え?何一緒なの?やーんママ嬉しぃー」
「ママって柄じゃねぇだろ……つうか待ち合わせ場所に着いたら離れるからな」
「えぇー、そんな事しても無駄なのになぁー」
「……どういう事だよ?」
「んふふー♪着いてからなのお楽しみだねぇ」
母ちゃんはそう言って以降、マジで俺の話を全部無視してきやがった……
「お、待ち合わせ場所の定番なだけあって結構人いるねぇ……あ、もう答えるから話しかけていいよ?いやぁ、こんなに長い間、息子の事を無視し続けるのも心苦しかったのよねぇ」
「さっきからまだ二分も経ってないだろ……何言ってやがる」
「うわ息子がいけずだわぁ」
母ちゃんのだる絡みに辟易しながらもれいかの姿を探すと、木陰のベンチに腰掛け本を読んでいるれいかを見つけた。
「お、れいかだ。じゃあ母ちゃん俺は行く「おーい!れいかちゃーん!」か……ら?」
母ちゃんにれいかの所へ行くからと言おうとした時には既に、俺を押しのけて母ちゃんがれいかの所へと駆けて行きやがった……マジかよ……
「あ、お義母様!」
二人はそのまま抱き締め合うと楽しそうに談笑し始めた。……俺は置いてけぼりなんだが………ん?
れいかが腰掛けていたベンチにはれいかの陰になる様に座っていたからか先程まで見えなかった着物の女性が驚いた様な顔をして俺の方とれいかと母ちゃんの方を交互に見て固まっていた………いやあれ、れいかの母ちゃんだわ。
「と、いう訳でサプライズだーいせーいこーう」
「ふふ、大成功です♪」
楽しそうなのは良いんだけど……俺が何がサプライズなのかすらわかってねぇんだが……
「……はぁ、れいか、それと……
「もー、
つか、サプライズなんかよりも、なんか二人ともやけに親しげじゃん……もしかして知り合いなのか?
「お母様もお義母様と……コレでは紛らわしいですね。お母様も御霊お義母様と面識があったのですか?私は二人に面識を持ってもらう為に今日はお呼びしようと思ったのですが……」
「俺も知りてぇな、サプライズなんかよりも二人の会話の方がよっぽど驚いたぞ……」
「んー?でも静ちゃんがれいかちゃんのお母さんだって知ったのは今が初めてなのは確かなのよねぇ」
「ええ、私もれいかからは母の日の買い物を一緒にするという名目で来ていたので……れいかが御霊を母呼びしている姿を見て眩暈すら覚えましたよ」
「あっ……それは、申し訳ありませんでした。……ですが、あの、二人の関係をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
れいかはれいかの母ちゃんにじろりと見られて、たじろぎながらも俺が一番知りたいことを聞いてくれた。
「親友だよねぇ」
「友人ですね」
「えぇ、静ちゃん酷ぃ、あんなに仲良かったんだから親友でしょ?」
「あれは貴女がずっと構ってきていたのでしょう?……はぁ、それにしても貴女は、こんなにも大きな子供がいると言うのに当時から全く変わっていないではないですか」
……仲良いな。
「えぇ、でもでも静ちゃんも全然変わってないよねぇ?」
「私はこれでも変わっています。貴女と一緒にしないで下さい」
「んふー♪やっぱ変わってなーい。……でもあの時言ったことが本当になるなんて思ってもみなかったよねぇ」
「本当に………偶然にしても呆れますね」
懐かしいのは分かるんだが俺とれいか置いてけぼりなんですけど……
「あの、何が本当になったのですか?」
俺と同じく、れいかも疎外感を感じていたのか二人の間に入る様にして質問をしている。………ちょっと可愛い。
「んー、昔ねぇ二人に子供が出来て、性別が違ってたら結婚して欲しぃなぁって言ってたんだぁ」
「言っていたのは御霊だけですけどね。自分の子供にはすきに恋愛をして欲しいと思ってましたので。……それがまさか比企谷さんが御霊の息子だったとは……苗字が変わっていたので全く分かりませんでしたよ」
「……ですが、私と八幡君はそれでも出会って恋に落ちたわけですね……とってもロマンチックです」
そう聞くと運命的とか思っちまうよなぁ。親友だった二人の子供が意図しないで好き合ってるとか……もう物語レベルだろ。
「ロマンチックよねぇ、ほらほら、八幡もれいかちゃんがあんなに嬉しそうにしてるんだから、肩を抱くとかしてみないの?」
「いや、流石にそれは……」
恥ずいっつーか……やるにしてももう少し人目の無いとこでするわ
「……御霊、いい加減になさい」
「おっ?……」
絡んでくる母ちゃんから守るようにれいかの母ちゃんが俺を引き寄せてくれる。
「比企谷さんも御霊の言うことは気にしなくても良いですからね。貴方は自分のペースでゆっくりとれいかを愛してあげて下さい」
「……あ、ありがとうございます。頑張ります」
「ええ、よろしくお願い致します。……れいか、貴女も何時までも惚けていないで行きますよ」
「……あっ、はいお母様!」
「もぅ、置いてかないでよぉ。それより静ちゃん目的地わかってるの?」
「………いえ///」
あ、分からないで先導してたのか、かなり照れてるし……結構親しみやすいところもある人なんだな。
「んふー、じゃあ改めてデパートに向けて出発だねぇ」
八幡ママンの口調が安定しなくなってきた気がする。ダウナーキャラの筈なんだけどな……まぁ、久しぶりの親友との再開でテンション爆アゲってことで……