俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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最初に言っておくとこの章は日常メインなのでバトルはありません。


(4)

 デパートに着いた俺らは先ず、目的地を決めずに軽く見て回ることにした。

 

「んー、思ってたよりもいろんなモノが売ってるのねぇ」

 

 母ちゃんはちょくちょく気になる商品を見つけると手に取って眺めたりしている。この買い物……一番はしゃいでるのって母ちゃんなんじゃね?

 

「あれ?母ちゃんここに来たことねぇんだっけか?」

 

「そりゃそうでしょ、こっちに引っ越したって言ってもあたしと光明(みつあき)さんは基本的に都心のアパート暮しなんだから。そうそうこっちで買い物なんてしないわよ」

 

 そうか……そう言やぁ帰ってきて飯作ってくれる時も冷蔵庫にあるもので作るか、無い時は俺か小町が買い物に行ってたしなぁ。

 

「引越しに別居ですか……それで貴女の姿を見かける事がなかったのですね」

 

「そうなのぉ、あたしももっと早くこっちで買い物に出てれば静ちゃんに気づけたかもしれなかったのにねぇ。ざーんねん」

 

「私は気づいたとしても見なかった事にしていましたね」

 

「えぇ〜。れいかちゃーん、ママが意地悪するよぉ」

 

 母ちゃんは泣き真似をしながら俺の隣を歩いていたれいかに抱きつく。……おいこれ酒入ってねぇよな?なんか今日テンションが異様に高ぇぞ?

 

「大丈夫ですよ御霊お義母様、ああ見えてお母様も普段より楽しそうですから」

 

「ちょっとれいか!?」

 

「んふふ〜♪れいかちゃんは優しいなぁ。よし!ここからは二手に別れてデートしよっか」

 

「え?でもプレゼントが……」

 

「いいのいいの。あたし達は貴女達子供が、一生懸命選んでくれたプレゼントなら何でも嬉しいんだから八幡と選んできてね?その間あたし達もデートしてるからさ。行こ、静ちゃん」

 

「ちょっと御霊?きゃっ?!引っ張らないで下さい!貴女は本当に強引なんですから……」

 

 母ちゃんはれいかの母ちゃんの手を掴むと強引に連れて行ってしまった……

 

「……行ってしまわれましたね」

 

「ああ、なんか母ちゃんがすまんな……」

 

「いえ、お母様も楽しそうだったので本当に大丈夫ですよ。……それに、私も八幡君と二人きりになれて嬉しく思っていますもの」

 

 この顔だ。れいかにこうやって笑顔を向けられると何度だって頬が熱くなって赤面してしまっていることを実感する。

 

「そうか///それなら良いんだが」

 

「ええ、それでは私達もお母様達のプレゼントを探しに行きましょうか」

 

 そう言ってれいかは俺の手を取ると母ちゃん達が向かった方とは逆方向に歩き出した。

 

 

 

 

 

side:御霊

 

「あらあら手なんか繋いじゃって、仲良しねぇ」

 

 手を繋いで歩いて行く二人の背中を見送りる。

 

 本当に我が息子ながら良い()を見つけたわよねぇ。

 

 そのまま横に視線を向ければ、嬉しそうに二人の背中を見つめる我が親友。

 

「ふふっ……っ?!な、なんですか?じっとこっちを見て。見るならあの二人を見ていなさい///」

 

 やーん照れちゃってぇ、昔から変わらないんだから。

 

「べっつにー、それにもう二人とも見えないしねぇ」

 

「はぁ……比企谷さんはあんなにしっかりしているのに貴女という人は……」

 

「……それはちょっと違うかなぁ?」

 

「……?どういうことです?」

 

「……あの子、前はもっと暗くて人と関わろうなんてしない子だったから……」

 

 あたしはあの子にとって良い母親出来てたのかなぁ。どんどん濁っていく目に減っていく外出、家に友達なんて呼んだこともなかった。あたしと光明さんに出来たのは引っ越しという名の状況のリセットだけだった。

 

「それが今じゃあ……ねぇ?」

 

 どんなに望んでも変わらなかったものが、れいかちゃん――あたしの大親友だった静ちゃんの娘との出会いで変わってくれた。いえ、変えてくれた。

 

「これって、本当に運命みたいだよね」

 

「……御霊」

 

 溢れ出す涙が頬伝う。あの日……初めてれいかちゃんと話した日、部屋に戻って散々泣いた筈なのに……

 

「しょうがない人ですね、貴女は」

 

 泣き顔を隠すように、そっと抱きしめられる。

 

「……あり、がと」

 

「要領の良かった貴女でも子育ては苦労したのですね……」

 

「……うん」

 

「……久しぶりの再開なのですから、私達も楽しみましょう?もう憂う事は無くなったのですから」

 

「……うん!」

 

「でしたら涙を拭いてください。綺麗な顔が台無しですよ?」

 

 言いながらも、静ちゃんは手にしたハンカチで優しく私の目元を拭ってくれる。相変わらず静ちゃんは優しい。

 

「……ありがとねぇ、静ちゃん」

 

「私と貴女との仲なのですから、今更でしょう」

 

「やっぱり静ちゃん大親友」

 

 ……でも決まって静ちゃんはこう言う。

 

「友人です」

 

「友人です」……ってね?

 

『ふふふっ♪』

 

 

 

sideout……

 

 

 

 

 

 母ちゃん達と別れてから、れいかと一緒に何か良さげなものは無いかと見てまわっているが、なかなか見つからない。見ていた商品棚から顔を上げ、軽く周りに目を向けると店の隅の方に休憩用にかベンチと自販機が設置されているのが目に入った。

 

「れいか、彼処に休憩用のベンチがあるみたいだし少し休憩しないか?そこで少し話してある程度何を買うかを明確にしとけばもっと見つけやすいと思うんだが」

 

「そうですね。少し喉も乾いてきましたしそうしましょうか。それにこう闇雲に探してもなかなか良いものは見つかりませんものね」

 

 れいかもコレといった物は見つかっていなかったのか。持っていた商品を棚に戻し二人でベンチへと移動する。

 

 

 

 ベンチへと腰を下ろすと、隣にれいかもゆっくりと腰を下ろす。俺はお茶の入ったペットボトルを、れいかは水筒を持参してきていたので自販機で飲み物を買うことはなかった。

 

 ペットボトルに口をつけ軽く喉を潤してから口を開く。

 

「まずどんな物を送りたいかだよな」

 

「ええ、分類としてあげてみると決めやすいかもしれませんね」

 

「ああ、例えば食べ物、消耗品とかの消え物だな」

 

「他には母の日という事ですし、カーネーションやお母様達の好みのお花というのもありますね」

 

 カーネーション以外の花って言うのも、結構れいからしいのかもな。俺なんか母の日の花と言ったらカーネーションみたいに考えちまうしな。

 

「あとは実用品とかか?使ってもらえてるっていうのは贈る側……まぁ、今回は俺達だが嬉しいもんだからな」

 

 言いながら視線が向かうのはれいかのしている髪留めだ。初めての買い物の時に贈ってから、ずっとつけていてくれるそれはたまに目に止まると胸が暖かくなる。もちろん俺もれいかから貰ったハンカチは今も鞄の中に入っているし日常的に使っている。

 

「実用品というと日用雑貨などでしょうか?化粧品や箸……お母様がよく使うもので言えば、湯呑みなど良いかもしれませんね」

 

 湯呑みか……母ちゃんの場合、湯呑みとか使ってるとこ見た事ねぇな……どっちかって言うとコーヒーとか紅茶でコーヒーカップかティーカップか?

 

「コップ系はいいかもな、母ちゃんの場合は緑茶とか家に無いだろうし、コーヒーカップかティーカップの二択になるんだろうが……」

 

「そうですか?この前お邪魔した時には緑茶を美味しそうに飲んでいた覚えがありますけど……」

 

 そっか……あの時は確かに緑茶を飲んでたな。……つうかあの時れいかトリップしてたのによく覚えてんな……

 

「でもあの茶葉はれいかに貰ったやつで家にしか置いてないしな」

 

 わざわざ母ちゃんの分もくれとは流石に口が裂けてもいえねぇよ……

 

「そこは大丈夫だと思いますよ?あのお茶っ葉はお母様が取り寄せている物なのですが、あのお二人の仲の良さから見て、話を聞けばお母様の方から御霊お母様のお家へお届けしようとするはずですもの」

 

「……今日だけでだいぶれいかの母ちゃんの印象が変わったわ……」

 

 前に会った時は緊張し過ぎてろくに話も出来なかったしな……

 

「安心しても大丈夫ですよ?私も今日だけでお母様のイメージがかなり崩れましたので」

 

 そこは大丈夫くないね……母ちゃん暴れ過ぎだろ……

 

 

 

「んっ!じゃあ話を戻すけど母ちゃん達に贈るのは湯呑みって事でいいか?俺も話を聞いてたら気が変わったし」

 

「ええ、良いと思います。あんなに仲がいいんですもの、どうせならお揃いの湯呑みを贈りましょう」

 

「いいな、それ。確かに喜びそうだ」

 

 学生時代はかなり仲が良かったみたいだしな。

 

「よし、じゃあ贈るものも決まったしそろそろ探しに行くか」

 

「ええ!どんなものがあるか楽しみですね」

 

 

 




ママン回でした。今章は次回あたりで終わりですね。
八幡ママンはちゃんと八幡の事を愛しています。

そして唐突に出てくるパパン(名前だけ)
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