俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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最近芥〇製菓のカカオ70%板チョコにハマってます。ブラックチョコが好きなのでかなり好みに合致してるんですよねぇ

改めてまして誤字報告ありがとうございます。いつも大変助かっております。


(6)

 

side:れいか

 

 カードに挟まれ視界が真っ暗になったと思った瞬間……体が一瞬の浮遊感に包まれました。

 

「っ……あら?」

 

「何が……」

 

 どういうことでしょうか?何かされたようですがいったい……?

 

 

 カッ!

 

『……っ!?』

 

 突然目の前に強い光が差し咄嗟に手で目元を覆ってしまいす。

 

 カッ! カッ! カッ! カッ!

 

 真っ暗だった空間が次々に点灯するライトに照らされていきます。

 

 徐々に光に慣れてきた視界に映るのは、私達の居る円形の広い空間とそれを囲う様にある観戦席のようなもの……

 

「……コロッセオ、でしょうか?」

 

 なぜこんな所に私達は……

 

 

「レディース&ジェントルメン!!」

 

『っ?!』

 

 突然の大きな声に振り向くと先程の道化師がマイクを持って演説台の様な所に立っていました。

 

「先ずは自己紹介を、ワタシはジョーカー以後お見知り置きを」

 

「ジョーカー……」

 

「そんな事はどうでもいいのです!早く八幡君を!」

 

「んもう……せっかちさんなんですから。では!お待ちかねの豪華賞品登場です!!」

 

 ジョーカーの声と共に天井付近が一瞬歪み、そこから鎖に繋がれた檻がゆっくりと降りてきます。……そしてその檻の中が確認できる程に降りてきて、中が見え……!?

 

『八幡君!!』

 

 檻の中には縛られ、口を塞がれた八幡君が居ました。

 

「YES!!今回の賞品はなんと!みんな?大好き!比企谷八幡くんです!!はいっ!チラ見せ終わり!」

 

 ジョーカーがそう言うと八幡君は檻ごとジョーカーの手に持つカードに吸い込まれてしまいました。

 

「ジョーカー!!!」

 

「あよっと……いけませんねぇ?貴女の相手はあちらですよ?」

 

 もう一人の私がジョーカーへ攻撃を仕掛けますが軽くいなされてしまいました。

 

 

「それではルールを説明いたします。ルールはとっても簡単!ただ相手を倒すだけ!同じ者を欲する敵が居るのですから倒して自分の()にしないとですよねぇ!」

 

『ワアァァァアアア!!!』

 

「っ?!」

 

 突然の歓声に振り返ると先程まで誰も居なかった筈の観戦席はたくさんのジョーカー達で埋まっていました。そこからたくさんのヤジが飛んできます。

 

 

「んんー!!客席も盛り上がって来てますねぇ!」

 

「それではキュアビューティVSバッドエンドビューティの試合を開始します!正々堂々頑張って下さいねぇ!それではぁ……バンッ!!」

 

 その声と共にジョーカーはたくさんのカードになって消えてしまいました……

 

 そしてもう一人の私……いえ、バッドエンドビューティが此方に向き直ります。

 

「貴女を倒せば八幡君は私のモノに……」

 

 バッドエンドビューティは暗い瞳を私に向けて願望を口から垂れ流してます。

 

「…………貴女はどうしてそんなにも八幡君に執着しているのですか?」

 

 ずっと疑問に思っていた事をぶつけます。……そもそも彼女は私達の敵なのかすらまだ正確にはわかっていないのです。それなのに急に戦えと言われて、はいそうですかと素直に戦ってやる必要などありません。

 

「………っ!」

 

「きゃっ?!」

 

 しかし、彼女は私の問い掛けを無視する様に苛烈な攻撃を仕掛けてきます。

 

「答えて…下さい!」

 

 彼女の攻撃を捌きながら更に問い掛けます。……そもそもなぜ彼女があそこまで切実に八幡君の事を求めるのかが、わからないのです。

 

「……うるさい」

 

「貴女は自分からは一度も私達に攻撃を加えようとはしてこなかった!……何故ですか?」

 

 彼女はジョーカーにバッドエンドビューティと呼ばれていました。その名前からバッドエンド王国の仲間である可能性が高いです。……しかし不思議図書館にやって来た際も、理由や態度はともあれ基本的には協力をしようとしていた様に感じました。

 

「……黙って」

 

「バッドエンド王国の者なら人々のバッドエナジーや私達のデコルを狙ってくる筈です!それなのに貴女は八幡君だけに執着している……!」

 

 それこそが一番わからない点です。八幡君には特殊な力なんてありません、私の弱点(ウィークポイント)である事は事実ですがそれも、八幡君自身に執着する理由にはなりません。

 

「……やめて」

 

 キャンディの反応からメルヘンランドの者でもなく、かと言ってバッドエンド王国の者でもない……ならば……

 

「バッドエンドビューティ!貴女は何者なんですか!」

 

「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!!なんでそんな事が気になるんですか?!私が何者であろうと貴女には関係ないではないですか!?」

 

 バッドエンドビューティが叫びます。……攻撃の手すら止めて何かに怯えるように体を抱くと、私の事をキッと睨みつけてきます。

 

「貴女だけじゃない……八幡君だってそうです!私が何者かなんて愛があれば関係ないではないですか!?……私が何者?!そんなのは私が一番知りたいんですよ!?私は何者なんですか?!名前も無い!仲間も居ない!この姿すら貴女の写し身でしかない!……私の中にあるのはほんの少しの貴女(青木麗華)の記憶と八幡君への愛だけなんです!」

 

 それはバッドエンドビューティの心からの慟哭でした。

 

「貴女はたくさん持っているではないですか!仲間が!八幡君が!貴女の周りは何時でも温かい!……羨ましいんです!妬ましいんです!私には八幡君しかいないのに!……それすらも貴女のモノでしかない!それならもう…奪うしかないじゃないですか!?」

 

 その言葉と共にバッドエンドビューティが蹴りを放って来ますが、そこにはもう……先程の鋭さはありませんでした。蹴りをいなすように後ろに回り込み羽交い締めにします。

 

「くっ!」

 

「……先程は問い詰める様な事をして申し訳ありませんでした。その様な事情があったとは知らず、貴女を傷付けてしまったかもしれません」

 

「知った様な口を……!」

 

「ええ、私は貴女のことを知りません……ですから教えて下さい。私達の仲間になって八幡君と共に……」

 

「っ!?……なか……ま……?」

 

 私を振りほどこうとしていた動きが止まります。

 

「ええ、貴女自身は世界がバッドエンドに包まれたりピエーロの復活を望んでいる訳では無いのでしょう?」

 

「当たり前です!そんな事をしたら八幡君まで被害を受けてしまうではないですか!」

 

 本当に全て八幡君が基準なんですね……でしたら――

 

「でしたら私達は分かり合える筈です……貴女に八幡君を素直に渡したりはしませんけど……」

 

「それは……でも……」

 

 バッドエンドビューティを離しますが、もう私を攻撃しようとはしてきません。先程まで客席から飛んできていたヤジも今は止んでいました。

 

「本当に……私は……」

 

 バッドエンドビューティが恐る恐る此方に手を伸ばしてきた時でした。

 

 トスッ……

 

「…………えっ?」

 

 バッドエンドビューティの胸元に一枚のカードが突き刺さっていました。

 

 

 

 

sideout……

 

 

 

 

 ジョーカーのトランプの中に囚われていた時も外の様子は見せられ続けていた。俺が黒れいかと呼んでいた存在、バッドエンドビューティの慟哭を聞いた時には罪悪感で涙が零れた。初めに会った時に俺がもう少し違う対応をしていたら今のこの状況になっていなかったのかもしれないのだ。

 

 

 

 ジョーカーが動いたのはバッドエンドビューティがれいかに手を伸ばそうとした時だった。ジョーカーは俺を片手でトランプから引きずり出すともう片方の手でバッドエンドビューティに向けてカードを投げつけた。

 

「ちょっと簡単に絆され過ぎじゃないですかねェ?」

 

「……ジョーカーっ!!」

 

「貴女の名前はバッドエンドビューティ。仲間は……ワタシ達ですかねぇ?それに貴女が偽物だとしてもそこの本物が居なくなれば貴女こそが本物ですよ?まだ理由が必要でしたら……ほらっ」

 

「んぐっ……!」

 

 ジョーカーに持ち上げられ揺さぶられる。

 

「この賞品が貴女の物になるんですよ?欲しいんでしょう?比企谷八幡が……」

 

「うっ?!くぅっ……!」

 

 ジョーカーの問い掛けと同時に刺さっていたカードがズブズブと飲み込まれていく。

 

「彼女に何をしているんですか!?やめなさい!」

 

「貴女も何をそんなに同情しているんです?彼女は貴女のバッドエナジーとキュアデコルからワタシが作った存在……つまり貴女達がいつも倒しているアカンベェとそう大して変わらないんですよ?」

 

『なっ?!』

 

 れいかのバッドエナジーが元になっていたかられいかと同じ姿だったのか……

 

「違います!私は彼女と言葉を交わしました!例え彼女が貴方に作られた存在だとしても、そこに確かに彼女の個としての意志を感じました!」

 

 そうだ、俺もバッドエンドビューティの愛欲に染まった瞳と安らかな寝息を覚えている。例え彼女が作られた存在だとしても彼女は自分で考え、悶え、行動していたのだ。

 

「ふーん……まっそんな事どうでもいいですけどね♪彼女、最初から不具合を抱えてたみたいですから今調整してるところなんですよ。ほら」

 

「いやぁぁあああああ!!」

 

 ジョーカーが(ゆび)()した時、苦しそうにしていたバッドエンドビューティが悲鳴を上げ、倒れ込む。

 

「むぅうう゛う゛っ!」

 

「ああっ?!」

 

 咄嗟にキュアビューティが抱きとめる。

 

「大丈夫ですか?!……っ!ジョーカーっ!彼女に一体何をしたんですか!?」

 

「それなら直ぐに分かりますよ?」

 

「えっ?きゃあっ!」

 

 突然、支えられていたバッドエンドビューティがキュアビューティを蹴り飛ばしたのだ……そのままビューティは壁に激突し砂埃に包まれる。

 

『FOOOOOOO!!』

 

 観客席のジョーカー達が沸き立つ。

 

「むぅううう!!」

 

「おや?そういえば口を塞いでいたんでしたねぇ。もう取って上げますから一緒に応援しましょうね。フレッフレッキュアビューティ♪ガンバレガンバレバッドエンドビューティ♪」

 

 ふざけやがって……!

 

「離せっ!」

 

「ええ、どうぞ」

 

 隙を突いて暴れると驚くほどあっさりと手を離された。

 

「もう別に(とら)えておく必要も無いですしねぇ」

 

 ジョーカーが何を考えているか分からないが、今は必死に脚を動かしてバッドエンドビューティの元へ駆け寄る。

 

「どうしたんだ?!さっきまでビューティに手を伸ばそうとしてたじゃねぇか!ジョーカーのトランプが原因なのか?!」

 

 バッドエンドビューティは俺に執着していた。それなら俺が近くに行けば何か変わるんじゃないかと思ったのだ。

 

「っ……?!」

 

 しかしその考えはバッドエンドビューティが顔を上げた瞬間に吹き飛んだ。

 

「ぐぁっ!?」

 

 バッドエンドビューティの右腕になぎ払われて吹き飛ばされる。

 

 吹き飛んだ先で顔を上げて、もう一度よく確かめる……しかし、何度見ても変わらなかった。

 

 バッドエンドビューティの顔の左半面を覆い隠す様にアカンベェの顔の仮面がつけられていたのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 




黒れかちゃんピンチ?
どことなく漂うテンプレ臭……

案の定道化師野郎がしゃしゃって来ましたねぇ

次回で今章は完結予定です…………あくまで予定です。
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