朝のお布団ってどうしてこんなに魅力的なんでしょうか?
………やよいちゃんを不安になんてさせねぇ!
という事でどうぞ。
早速今日の放課後からリレーに向けての練習を開始した。日野も緑川も部活への参加を少しだけ遅らせてくれているので初日から五人揃っての練習を始めることが出来ている。
「先輩から聞いた話だが、この時期の運動部はかなりの人数が遅れての参加を相談するみたいで結構簡単に許可が降りるらしいな」
……勿論盗み聞いた話だ。俺が普通に話す事の出来る先輩なんてこの学校に存在しないしそれは後輩も然りだ。……ついでに言えば同級生すらクラスの奴ら以外とは怪しいまである。
「へえ、そうなのですね。弓道部も生徒会も今日はお休みなので気にしていませんでしたが明日はちゃんと遅れる旨を先に連絡しておかないとですね」
れいかは弓道部だけでなく生徒会にも所属しているのでリレーの練習に参加出来ない日もありそうだな……
「じゃあ、最初はバトンの受け渡しの練習から始めよっか!」
「はいはい!わたし!わたし最初にやりたい!」
「いや、これに最初も最後もないやろ……何本もバトンはあるんやし、二人一組で交互に受け渡す練習すればええやん」
「あそっかぁ!えへへぇ、じゃああかねちゃん一緒にやろぉ!」
「しゃーないなぁ」
そういえば星空と日野ってかなり仲いいよな……もしかして二人は………無いな。星空の天然だわ……
「二人が組むんならやよいちゃんはアタシと組もっか!れいかは余っちゃうし比企谷と組みなよ!……へへっ///」
「……なおちゃん……よだれ」 「おっと……」
「ええ、そうですね。……そういう事だそうなので八幡君、お願い出来ますか?」
一瞬緑川がすげぇ顔してた様な……っと今はれいかだな。
「ああ、協力を惜しむつもりは無ぇが……俺で大丈夫か?そんなに速くは走れないが……」
「勿論大丈夫です!そもそも受け渡しの練習なのでそれほど走るつもりはありませんから。そうですね……走ると言っても五から……七メートルくらいでしょうか?」
まぁそのくらいならあまり速さは関係ないか……
――なんて思っていた俺が浅はかだったようだ……
「ぜひゅう……ぜひゅう……少し……きゅうけっ、休憩して、いいか?……はひっ……」
れいかの前に四つん這いでうずくまってる変な奴が見えるか?……俺だよ……
「だ、大丈夫ですか?すみません……少し気合いが入りすぎてしまった様で……あ、今お水持ってきますね!」
そう言って走り出すれいかを見送りながら思い返すのは先程のバトンの受け渡し練習……
れいかの言うように確かに走る距離は少なかった……そう、距離は……だ。基本的にこの練習は、先ず受け手が先に走り出し、それを渡し手が追いかける様にして、走りながらでもバトンが上手く受け渡せる様にする事を目指した練習だ。
そしてこんな言葉がある……「練習は本番の様に、本番は練習の様に……」
まぁつまりはだ……本気で走るれいかを追っかけたり、逆に追っかけられてりしてれば俺の体力なんてものは速攻で底を尽くということだ。
少し休んでいると乱れていた息も段々と整ってくる。
『八幡くーん♡」
水筒を持ち、手を振りながら走ってくるのは……きょうか……だな、うん。
軽く手を挙げて応じる。
あまり出会ってからの日は経ってない筈だが、れいかときょうかの判断が着くようになってきた。……自分で言うのもなんだがこれって愛じゃね?
やっぱ一番の判断基準は声質なんだよな。れいかはなんというか澄んでる感じだな。きょうかは……まぁ……なんだ?
「んっ♡」
肩に軽く重みが掛かったので振り返る。きょうかはこうしたボディタッチが多いのだ。
「おう、ありがとん゛むぅぅ?!!!」
振り替えると直ぐに視界と唇が同時に塞がれる。口内に何かを流し込まれ、ただただ反射的に
「キャー?!なおちゃんが鼻血出して倒れた!だれかー!?」
『ぷはっ♡んふふ、八幡君どうです?美味しかったですか♡」
「えっ?は……え?」
突然過ぎるきょうかの行動に何も返せないでいると――
「なっ///な……///ナニをしているのですかぁぁぁ?!!」
今度はれいかの羞恥の叫びが響き渡った。
『ナニって……この前一緒に読んだ本に載っていたじゃないですか?それに今度二人で八幡君にしてみたいって言っていたのは貴女でしょう?」
「そうですけどぉ……まさかこんな公衆の面前でするとは思わないではないですか……」
『失礼な……私だって八幡君とのキスを見世物にする様な趣味はありません。見ていたのは……
「ダメじゃないですか!?……ああ、これからなおにどんな顔をして会えば……」
『別に良いではないですか……なおは
アレ?俺の存在忘れられてる?………まぁしかし目の前で二人?が言い合ってるの……なんか良いな。れいかの表情がコロコロ変わって……ずっと見てられる気がするわ。それにきょうかって結構周り見てるんだな。緑川は……もう少し擬態しようぜ?
「もう!少し頭を冷やしてきますぅ!」
遂にれいかのキャパを超えてしまったらしく俺に手に持っていた水筒を押し付けると、顔を真っ赤にして走って行ってしまった。
「……れいかには悪いが、ああいうれいかも新鮮で良いな……」
れいかから受け取った水筒に口をつけ、喉を潤して呟くが……
「あっ、これお茶だったんだな……」
れいかがいなくなり少し落ち着き、漸くきょうかが口移しで飲ませてくれたのがお茶だったと認識したのだった。
「れいかちゃん!」
「はい!」
俺の前で星空かられいかにバトンが渡され、れいかが走り出す。
トラックの向こう側では黄瀬が待機していて、れいかからのバトンを待っている。
鼻血を出してぶっ倒れたらしい緑川と落ち着きを取り戻したれいかが戻って来たので、今日の最後の練習として本番と同じコース、順番で走ってみて色々な確認をする様だ。
黄瀬に綺麗にバトンが渡り、次は緑川だ。黄瀬の走りも特に気になる様な点も無く、緑川へバトンが渡る。
「うお、速ぇ……」
ついらポロッと口から零れてしまう程、緑川の走りは圧巻だった。途中、陸上部所属の選手が日野や黄瀬が走っている時に隣を追い抜いていく場面もあったが、そんなものは目じゃない位衝撃的だった。
「なおちゃんすっごく速かったよね!」
「せや!ウチもなおに頼り切りにならない様に頑張るで!」
「ええ、そうですね」
「…………」
練習を終えた俺達は帰宅の途についていた。
みんな和やかな雰囲気だが黄瀬だけが少し表情が曇っているように見える。
「……黄瀬は無理してないか?大丈夫か?」
つい、口にしてしまいみんなの視線が一斉に黄瀬に集まる。
「え?!……う、うん、無理はして無いけど……本当にわたしでいいのかなって……わたし、足遅いし……」
まぁ幾ら周りが気にして無いと言っても自分は気になってしまうものなのだろう……
「そっか……ごめんねやよいちゃん、アタシの我儘で勝手に決めちゃって……でもね、アタシは足の速さとか勝ち負けじゃなくて、この五人で走りたいんだ」
「……わたしで良いの?」
「やよいちゃんで良いんじゃないよ。やよいちゃんが良いの!アタシはこの五人だからいいんだ!」
「……そっか。えへへ、じゃあ……頑張るね!」
そう答えた黄瀬の顔には先程の陰りは既に無く、改めて俺はこの五人の仲の良さを実感するのだった……
「やよいちゃん!なおちゃーん!」
「きゃ!?」
「わっ!もうみゆきちゃん、飛びつかないの」
二人の会話を黙って聞いていた星空が堪えきれなくなったのか二人に抱き着いていた。……良い仲だよなぁ
「なーに外様みたいな顔しとんねん!比企谷もコッチ来なや!」
「そうですよ、八幡君も、さぁこっちへ」
「お?おお、おぉ?!」
日野とれいかに手を引かれて俺も三人が団子になっているところに入れられる。
「あー!みんなずるいクル!キャンディも一緒クル!」
「うん!みんな一緒!」
「あははっ!なんだか楽しくなってきちゃうね!来週はこの五人……いや、比企谷とキャンディも入れて七人で頑張ろうね!」
『うん!』(せや!)(ええ!)(おう!)(クル!)
『私も忘れないで欲しいのですけど?」
「あー?!勿論きょうかも一緒だよ!?八人!八人で頑張ろうね!ね!?」
『うふふ、ええ、頑張りましょうね」
ちょっとはっちゃけ過ぎましたかね?
きょかちゃんとれかちゃんは家で八幡くんとの蜜月の予習としてちょっと過激な少女漫画や小説を読むのが最近の日課です。
なおちゃんはれかちゃん大好きなので、れかちゃんの半身であるきょかちゃんの事もかなり気にかけてます。なので八幡くんは気付いていませんでしたが、実はなおちゃんの事もきょかちゃんは気に入っています。