本棚さえあれば何処でもひとっとび!
「ちょっ!とまっ!ぐへっ……」
……どうも後ろから本棚に吸い込まれたらしい。
久し振りに
「家からでも来れんのかよ……」
そうなのだ俺はまた、あの不思議空間に来てしまっていた。
「つーか、着替え中だったから変態じみた格好に……はよ戻ろ」
現在時刻は二十時半、あの後戻って来て、諸々を済ませたらこの時間になってしまった。ふと、青木から明日は何も無いと聞いている事を思い出した時、俺の灰色の脳細胞が瞬時にある計画を導き出した。
そう、名付けて『
俺は気付いてしまったのだ。
あの場所、(呼びづらいので便宜上『童話の森』とする)は何度かの検証の結果、本の入った本棚さえあれば、何処からでも行くことが出来る。
つまりは、何時でも何処からでも本棚さえあれば行けるエスケープポイントだという事だ。
ああ、素晴らしきかな童話の森、此処を更に俺の過ごしやすい環境にするためなら俺は努力を惜しまない!
まず持っていくモノは保冷剤を入れたクーラーボックス(大型)飲み物まで入れると持てなくなりそうだから先に持っていっておこう。
「ふんぬっ!意外と、重い……」
次にブルーシート、そして布団、枕……次々に童話の森へ運び込んで行く。
「ふぃー、今日の所はこんなもんでいいかな」
クーラーボックスから取り出したマッ缶で喉を潤す。明日は小町を送り出した後にここから学校に行けば大分ショートカットになるな!その分朝はゆっくり出来そうだ。
「そういえばお兄ちゃん、昨日の夜なんかゴトゴト音してたけど何してたの?」
朝、朝食を小町と二人でとっていると小町に 昨日の夜の事を聞かれた
「あー、よくあるだろ?勉強してたら掃除してた、みたいな」
「お兄ちゃんが勉強とか珍しいよね。何かあったの?」
「何かも何もお前が昨日、抜き打ちが〜とか騒ぐから少しやっとくかって気になったんだよ……」
「ほーん、そなんだ。ごちそーさまー」
興味が無いのが丸わかりな返事だことで
「お兄ちゃーん、食器どうするー?」
「おーう、俺が後でやっとくから先行っていいぞー」
お兄ちゃんありがとー、と廊下の奥から響いてくる。取り敢えず小町が学校に行ったら昨日の続きをしようかね。朝のHR前に着けるようにすれば、多少遅れても俺にはショートカットがある。
洗い物を片付けて、しばらく居間でゆっくりしていると、「いってきまーす」と小町が登校して行った。
小町が居たために昨日は動かせなかった大型のものを今日は設置しようと思う。
玄関に鍵をかけ物置部屋に向かう。毎年使う季節物の扇風機や、この間片付けたばかりのこたつセットが取り出しやすい手前に纏めて置いてある。
「なんか急に面倒くさくなってきたな」
弱音がもれるが、やらないことには終わらないのでより快適な休息の為にと、それらを脇によせ、部屋の奥に行き壁際に立て掛けてあったモノを取り出す。大きいだけに出すだけでも一苦労だし、ぶつけて大きな音が響いてしまった。これを昨日動かしていたら小町も何事かと、様子を見に来ていただろう。
そんな苦労をしてでも運び込みたかったのが、このビーチパラソルだ。小さい頃に一回位使ったような曖昧な記憶しか無いが大きいので直ぐに見つかったコイツ。
布団の横に刺してやればいい日除けになる。穏やかで調度いい日差しなのだが、如何せん昼寝するのには明るすぎる。そこで思いついたのがコイツだ。
「あー、最高だなこりゃあ」
試しに寝転がってみたが、調度上半身が影に入る形であまりの心地良さに寝てしまいそうになる。もしも今この時間が登校前のちょっとした時間でなければ、俺はこのまま眠気に身を任せて数時間は起きない自信がある。
携帯の時計を確認してみたが、まだ少しだけ余裕がありそうだ。が、こういう時に寝ると寝過ごす事は予想に難くないので学校に向かうことにする。……寝てたい。
起き上がり、近場の本棚へ向かう。
図書室の事を思い浮かべながら本を動かすと本が光り出し、その光に吸い込まれる。
無事図書室に着いた。
もう慣れたもので初めての時のように転んだり、体勢を崩すような事はもうない。……たまにしか
バレない内にさっさと教室へ向かおう。図書室の扉に手をかけ……ガッ!
「ん?」 ガッ!ガッ!…………
冷や汗が一気に吹き出てくる……
この学校は基本的に生徒たちが何とは言わないが、不純な事を行えないように教室の内側からは鍵が掛からないようになっている。掛けられないのだから開けられもしない訳で……
「やっべぇ、閉じ込められたわ」
閉じ込められたと言っても童話の森があるので家には帰る事は出来る。しかし家に帰るということは遅刻が確定する訳であり、それだけは絶対に避けたいのだ。なんと言っても注目を集めてしまう。それだけは嫌だ……
教室の中で先生に何故遅れたかを問いただされクラス中の視線を一身に受け止める。そんな気分が悪くなりそうな想像の中で一筋の光明が見えた……
「青木……」
彼女なら確実にこの時間には学校に来ているし、唯一連絡先も知っている。急いでメールを打ち、送信しようとして、指が止まる。
迷惑ではないだろうか、嫌われないだろうか。想像の中の青木が携帯を開いて、嫌なものでも見たかのような顔をして携帯を閉じる。青木はそんな奴ではないと分かっているのに嫌な想像が止まらない。
ピロッ
一瞬か数分かどれくらいの時間固まっていたのか分からないが、いつの間にかメールを送信していた。
激しい運動をした訳ではないというのに、どっと疲れが出てその場にへたり込んでしまう。
数分程たっただろうか、扉の向こうから大分歩調の速い足音が近づいてくる。そして扉の前で止まると直ぐに ガチャと鍵が開く音がして、扉が開けられ青木が入ってくる。
「比企谷君!大丈夫ですか?何があったのですか?」
肩を掴まれ、フワッと香ってきた甘い匂いに一瞬で意識が覚醒し、慌てて言い繕う。
「い、いや何かあった事にはあったんだが、取り敢えずHRも始まるし歩きながらでいいか?」
「あ、すみません……メールを見てから何かあったのではないかと、慌てて鍵を借りて来たもので……」
青木は俺の手を掴み立ちが上がるのを手伝ってくれる。二人で連れ立って図書室を出て教室へ向かう。
「さっきは助かった。入る時は鍵が掛かってなかったんだが、扉を閉めた時に掛かっちまったみたいでな」
青木に嘘をつくのは心苦しいが童話の森の事は言えない。
「そうだったのですか、私も急にこのようなメールが来るものですからびっくりしてしまって」
そう言い、見せてきた携帯には『図書室に閉じ込められた 助けてくれないか』という送った俺も、勘違いしそうな文面であった。
「ちょっと気が動転しててな、何はともあれ助かったわ。この借りは絶対返すから」
「借りだなんて、花壇の手入れを手伝って頂いているのですから、気になさらなくてもいいんですよ」
「いや、この件に関してはマジで助かったからな。何かあったら言ってくれ」
正直、青木に嘘をついているという罪悪感を慰める為に何かさせてくれと言っているようなものなのだが……
「……では、何かあったら頼らせて頂きますね」
青木も俺の雰囲気から何か察してくれたのか、それ以上遠慮する事はせずに受け入れてくれた。
「ああ、任せてくれ」
昨日の別れは妙にこそばゆかったので、これでプラマイ。いつも通りに青木と接していける……そんな事を自分に言い聞かせるようにしながら。青木と二人、まだHRの始まらない教室に入っていった。
ちょっと難産でした
もしかしたらこの先いつか編集するかも?
不穏な空気っぽいですが実際にはそんな事にはなりません
何故かって?
私がイチャイチャが見たいから!書きたいから!です