聖杯大戦に妖精國の面々が殴り込む話   作:ぴんころ

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とりあえずここまでは書いたのだ。感想とか評価くると嬉しいな


第二話

 今回の聖杯大戦に際してサーヴァントが用意してくれた拠点について、俺が今現在知っていることというのは無に等しい。

 お金に乏しい俺のルーマニアへの渡航手段は違法だったし、帰りの手段も違法になる。そういうわけで聖杯大戦が行われる土地への侵入そのものが今日初めて行ったことであり、ぶっちゃけて言えば場所を言われたってまるでわかる気はしない。

 当然、それは拠点の中だって同じことであり、つまり何が言いたいのかと言えば非常に単純なこと。

 

「ここは……いったい……」

 

 迷いました、はい。

 

 妙に厳かな感じを出してはみたけれど、そういうことなのである。

 正直、外観もよくわかっていない以上、ここが城なのかただの豪邸なのかも怪しい。普通の家ではないと思う。だって城主がバーサーカー……モルガンだから。彼女の拠点がすんごいものでなかったらそっちの方がびっくりだ。

 とは言え、そのせいで困っていることは事実であり、周囲を見渡してみても似たような石の壁が広がっているだけ。自分がどこにいるのかもよくわかってない。一応、モルガンのいた玉座っぽい場所までの道順は覚えているので、最悪戻って聞けばいいのだが。

 

「それをしちゃ負けだよな……」

 

 自分と同じタイミングでこの拠点に到着したモルガンが全てを理解しているのに、俺は理解していないというのは負けた気がする。何と戦っているのかと聞かれると困るが、何かに負けた気がするのは縁起が良くない。特に聖杯戦争という負けが死に直結してもおかしくない戦いなのだから。

 とにかく、適当にほっつき歩いてもいつかは人と、正確には自分のサーヴァントと出会うはずだ。なにせこの城には今現在六騎のサーヴァントがいる。誰かに合流できれば、そこから適当に案内をしてもらうことだって可能だろう。

 そんなことを考えながら歩いていると、石畳に反響して聞こえてきたのは何かの鳴き声と思しき音。キャスターか、あるいはバーサーカーあたりの使い魔だろうかとあたりをつけて振り返ろうとしたところで、今度の音は前方から。

 

「あー、ようやく見つけたぞ、マスター! 勝手にほっつき歩いたらダメじゃん。キャスターが一から工房にしたって話なんだから、罠に引っかかるかもって思わなかったー?」

 

「ハベにゃん!」

 

 正面から姿を見せたのは、うちのライダーのサーヴァント……ハベトロットことハベにゃん。うちの癒しである。

 つい思わず叫んで抱きあげたのはご愛嬌と笑ってほしい。さっきのオベにゃんとモルガンの会話が辛かったのだ。

 

「わー!? いきなりなんだよ!」

 

「いや、ごめんごめん。つい嬉しくて」

 

「再会に喜んでくれるのはこっちとしても嬉しいんだけど、とりあえず仕事を先にしてもいい?」

 

「あ、うん。お願い」

 

「よろしい、それじゃあついてきたまえー」

 

 ……ミノタウロスの迷宮のように、糸を地面に垂らして進んだりはしないらしい。ちょっとだけ期待してたので残念。まあ、道を知っているであろうハベにゃんがわざわざ糸を使う必要がないと言われるとそうなのだけれど。

 迷いもなく歩き始める小柄な少女の後ろに追従すれば、少し遅れて背後からにゃーにゃーと猫が合流し、彼女の周囲をちょろちょろとまとわりついて、糸車に絡まった糸の先端がふらふらと揺れるのに合わせてぴょんぴょんと跳んでいる。

 

「あ、ここ、ペット禁止じゃないんだ」

 

「うん、確かキャスターがそこらへんに倒れてた猫を使い魔にしたとかなんとか。アニマルセラピーだーって」

 

「なるほど」

 

 つまり俺はこの拠点の住人と認められるよりも前に拠点は、猫と和解せよを達成済みということ。今の家での立場は猫以下ということだ。悲しい。でもにゃーにゃー鳴いてハベにゃんに構って構ってやってるの可愛いので許しちゃう。

 ライダーが一緒だからか、先ほどまでとは比べ物にならないほど簡単に景色に変化が生まれる。逆説的に、合流前は魔術工房となった拠点の罠にどっぷりとはまってしまっていたということになるのだが、相手がキャスターならばしょうがないだろう。きっと先生だって許してくれる。

 

 そんなことを考えている間にハベにゃんがとある扉の前で足を止めたのに気がつかず、通り過ぎそうになってしまった。

 

「おーい、キャスター。マスターが到着したみたいだぞー」

 

「っと、ここ?」

 

「そう、ここがキャスターの部屋」

 

 マスターも覚えておくといいぜー、なんてハベにゃんが言った直後、どったんばったんと部屋の中ですごい音がしたかと思えばガチャリと扉が開いて、出てきたのは一張羅を着ている最中の春の記憶をエミュレートしているアルトリア・アヴァロン。

 ちらりと見えた部屋の中は魔術師としての観点で見れば片付いているとは言いがたく、けれど一般人の視点で見れば十分片付いていると言えるレベル。魔術の触媒が変な反応を起こさないようにするため、地味に魔術師は片付けスキルが必要なのだ。エルメロイⅡ世の自室は汚くとも、時計塔の方は片付いているのはそういう面もあるといえばあると聞いたことがある。

 

「ハーベーにゃーん! マスターが来るときは先に言ってって言ったじゃん!」

 

「うわわわっ、いきなりだったんだからしょうがないだろー! というかマスターも見てるってばー!」

 

「……こほん。いらっしゃい、マスター。散らかりも整理整頓もされてない部屋だけど、ゆっくりしていってね」

 

「あ、うん。とりあえずハベにゃん放してあげて……?」

 

 ぐてーっとしてるハベにゃんはアルトリアの手から救出された。よかった、モルガンに見られなくて。

 

 

 

 

 

 俺が時計塔に在籍していたのは、正確にいえばロード・エルメロイⅡ世から魔術を習っていたのはそう長い期間ではない。

 それは、あの先生に拾われた理由が令呪が一聖杯戦争分、ルーラーよりも多い二十一画刻まれていたことに由来するからである。

 令呪が出て来るのがまず、聖杯戦争が近づいて来た時期。そして俺はそれ以前にはまるで魔術というものを知らなかったのだから、あの人から魔術を習った期間が魔術師歴と等号で結ばれる。

 

 よって、魔術師としては半人前以下。なぜかサーヴァント七騎を維持できるだけの魔力量を持つというのが今の俺なわけなのだが。聖杯大戦中はマスターゆえに魔力タンクとして狙われることは少なくとも、それ以降はどうなのかはわからない。

 

「キャスター、魔術教えてー」

 

「えっと、いきなりどうしたの?」

 

 そういうわけで、案内が終わってから数時間後のこと。俺はキャスターの部屋を再度訪れ、そんな言葉を開口一番口にしたのだった。

 

 聖杯戦争に役に立つのかといえば答えはノー。サーヴァント相手に付け焼き刃の魔術が通用するとは思えないし、そもそも付け焼き刃の魔術を行使しなければならない時点で俺はとっくに負けている。

 ただ、役に立たないのは聖杯戦争に関してだけだ。両親の遺品のトランクの開錠にはきっと役立つだろうし、これからの人生では言うに及ばずだろう。

 聖杯戦争の勝利のみを求めるならキャスターには拠点の工房化や、魔術の触媒の用意などを進めることに注視してもらうべきなのだろうけど、俺もまあ、できることなら生き残りたいので。

 

「しょうがないなぁ……マーリンに色々と聞いてみるけど、そんなに期待しないでね」

 

「やったぜ」

 

 そんなことをつまびらかにすれば、呆れながらも了承をもらえて思わずガッツポーズ。

 なんとなく杖でボコボコ叩かれながら魔術をせがまれるオベロンを幻視したが、まあそんなことにはならないだろう多分。

 

「でもなんで私だったの? モルガン……あ、バーサーカーって言ったほうがいいんだっけ。あっちでも魔術は教えられると思うんだけど」

 

「いやあ、それも考えないわけではなかったんだけど」

 

 あっちは神域の天才なので教えるのが下手そうなイメージがある。ついでに言えば、今はアキレウス用に神造兵装なロンゴミニアドの用意を続けているので、さすがにそれを邪魔する気にはなれない。間に合わなかったら死ぬし。

 たとえ魔術を習うにしても、それを利用する機会がやってこないのであれば意味がない。習う理由が生き残るためなのだから、大前提として聖杯戦争の勝利に必須となる作業を担うモルガンにそんなことを頼むのはどうかと思う。

 

 後ついでに言えば、あっちに習うのはちょっと怖いし。

 

「なるほどなるほど……そういうことでしたか」

 

「そういうことなんですよ」

 

 ……なんか機嫌が良さげな気がする。いや、まあ機嫌がいいに越したことはないんだけど。

 

「まあ、教えられるのは聖杯大戦の合間だけですけど」

 

「そこはちゃんと分けて考えるよ。魔術習うのに集中しすぎたせいで負けちゃいました、は洒落にならないからね。……というか、まずはオベロンが帰ってこないことには聖杯大戦の参戦者なのかすらわからないんだけど」

 

「オベロンがルーラーの元に向かってからすでに数時間でしたっけ? そろそろ帰ってきてもいいとは思うんだけど……」

 

「“赤”のランサーはルーラーを付け狙ってるし、“黒”のセイバーはそれを止めようとしてるから、オベロンがそれに巻き込まれたかどうか、かなぁ。一応逃げられる人選をしたけれど」

 

「だいたいのセイバーは宝具でビーム撃ってきますからね、ビーム。バゲ子もそんな感じだし、剣士のくせに必殺技が剣技じゃなくて遠距離攻撃ってどうなんですか」

 

「剣士ってなると、剣技もそうだけどだいたいは特別な武器を持ってるからなぁ……」

 

 そんな会話をしている最中のことだ。こんこんと扉をノックする音がしたのは。

 

「キャスター。マスターはこちらにいるか?」

 

「げぇっ、バゲ子! ……いるけど、なに? 大した用事じゃないならとっとと帰って」

 

「残念ながら大した用事だ。女王陛下が言うところのクソ虫、プリテンダーが帰還した。プリテンダーから、というのが少しばかり不安だが、それでも得てきた情報を共有しないわけにはいかん。急を要する内容でなければ先に玉座に来て欲しい。もちろん、大事であればそう伝えておくが……」

 

「大丈夫。今、こっちの話も終わったからすぐに行くよ。……じゃあ、そういうことでよろしく、キャスター」

 

「……わかった。期待しててね。びっくりするようなすんごいの、用意して待ってるから!」

 

 廊下に出れば、そこには騎士甲冑に身を包んだセイバーのサーヴァント、妖精騎士ガウェインことバーゲストの姿。

 こちらの姿を認めると先導するように歩き始め、玉座の間ことモルガンと一緒に転移して来た地点へとこちらを案内してくれる。正直、まだ覚えきれてないところもあると思うから迷わないようにと案内してくれるのは非常に助かった。

 

「気は進まないんだけどなぁ……」

 

「確かに、陛下はプリテンダーを嫌っている。おそらく玉座の間は冷え切っていることだろう」

 

「だよなぁ……一応聞くけど、アーチャーは?」

 

「トリスタンはおそらく部屋だ。妖精國ならばともかく、さすがにあの残虐性を汎人類史で放置しておくわけにはいかない。下手なことをすればルーラーからの敵対行動もあり得るからな」

 

 たどり着いた玉座の間の扉。その奥からは非常に大きなプレッシャーが漂ってくる。

 開けたくないなぁ……でも開けないとどうしようもないんだよなぁ……。憂鬱だ。

 

「プリテンダーが帰って来たって聞いたけどー?」

 

「そこに」

 

「やあ、マスター。ルーラーと顔合わせをして来たけど、どうやら僕らは”黄”の陣営らしいよ」

 

「ああ、妖精國の空の色……」

 

 正確には黄昏の空だったけれど。

 

「かもね。まあ、そこは考えても仕方のないことさ。重要なのは聖杯大戦の一員だってわかったってことさ。そうだろう?」

 

「そうだな」

 

 視線を、絶対零度の殺意をオベロンに向けるモルガンへと。ひぇっ、と思ったけれど、一応はマスターなのだ。大枠の指示くらいはしなければただのお飾りになってしまう。

 まずは何をしなければいけないのかもこれで明確になった。しないといけないのは、先に準備をしておかなければ倒せない相手がいつ攻め込んで来てもいいようにしておくこと。

 

 つまり。

 

「モルガン。ロンゴミニアドの用意をしておいて」

 

「……ええ、いいでしょう、聖杯大戦に勝利した暁には、これでクソ虫を消し飛ばします」

 

「怖いなぁ女王陛下は……やれるもんならやってみなよ」

 

 神性持ちがいない以上、神造兵装が撃破に必須なアキレウスである。




続きはなんか思いついたら書くわね
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