黒き星と白き翼   作:吉良/飛鳥

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私達は反逆者だ。Byなのは     理不尽と不条理への反逆ですねByクローディア


Chapter2『反逆者の拠点に舞い降りた白翼』

グランセル城からクローディアを連れ出したなのはは、クローディアを抱えたまま新月の、星明りしかない夜空を飛んでいた――デュナンが追跡命令を出してもなのはを見つける事は困難だっただろう。

なのはは黒いバリアジャケットを纏って、夜空に完全に同化していた訳だからな――クローディアは白を基調とした服を着ていたが、人一人分の大きさと言うのは、存外夜空では目立たないモノなのでこれまた見つかり辛いのだ。

なので、城を襲撃してから十分後には、なのはとクローディアは完全にリベールの領空から離脱していた。

 

 

「この姿勢、辛くはないかクローディア?」

 

「いえ、大丈夫です。

 辛いどころか、貴女に抱えられていると言う事に安心感を感じますよなのはさん。」

 

「そうか……ならば良かった。

 もう少しだけ、夜の空中散歩を楽しんでくれ――後二十分もあれば、私達の拠点に到着するからな。」

 

 

新月の夜なので月明りはないが、だからこそ逆に星の明かりが映える夜空をなのははクローディアを抱えて飛び、そしてなのはが組織したリベリオン・アナガスト・アンリゾナブルの拠点に向かって居るのだ。

月は無くとも、星が瞬く夜空と言うのも良いモノである。

 

 

「『私達』と言う事は、なのはさんは一人ではないのですか?」

 

「あぁ、私には仲間が居る。

 私と同じように、世界の理不尽、不条理に晒された者達がな……十年前のあの日、お前と会った事で私は私がなすべき本当の事を見付ける事が出来た。これから向かうのは、その始まりとなる場所さ。」

 

 

其れから程なくして、なのははリベリオン・アナガスト・アンリゾナブルの拠点に到着し、お姫様抱っこしていたクローディアも地面に下ろし、クローディアも周辺を確認して、何処に連れて来られたのかを把握しようとする。

 

 

「此処は、岩山?此処がなのはさん達の拠点……ですか?」

 

「こんな荒れた岩山が拠点と言うのは解せないか?

 だが、此れはそう見えているに過ぎん……其れにオカシイと思わないか?光源の一切ない新月であるのに、如何してお前は此処を『岩山』だと認識出来ている?」

 

「……そう言えば、何故でしょうか?光源はないのに、此処は明るい?」

 

「答えは、こう言う事だ。」

 

 

なのはが指を鳴らすと、山肌がグニャリと歪み、そして金属製の大きな扉が現れた――此れには、クローディアも驚き、思わず口に手を当てて固まってしまった。誰だって、目の前の景色が歪んだ次の瞬間に全く別の景色が現れたら驚くだろうがな。

 

 

「拠点の入り口付近には特殊な結界が張られていてね、外見的には只の岩肌にしか見えていないんだ。言うなれば『ステルス迷彩結界』かな。

 此処が明るかったのも、結界自体が一種の照明になっているからでね――しかもこの明かりは1m先までしか届かないから、遥か遠くから此処が見つかると言う事は先ずない。」

 

「登山客が此処に来る事もあるのではないのですか?」

 

「その点も問題はない。

 此の拠点の入り口があるのは断崖絶壁3000mの岩場の上だから……そしてこの山の岩肌は杭が打ち込めない程に硬い岩盤で出来ている上に、岩肌の表面は1mmの突起もない位につるつるだから、空を飛ぶ手段でもなければ此処に到達する事は出来ん。私は飛べるし、拠点には空陸両用車もあるから問題ないがな。」

 

 

リベリオン・アナガスト・アンリゾナブルの拠点は可成りトンデモない所にあったらしい……そして、車は空陸両用車って、可成りぶっ飛んでるな?昼間、璃音を連れて来た時も、途中からは実は空を飛んでいたと言う訳だ。

 

 

「改めてクローディア、ようこそ我がリベリオン・アナガスト・アンリゾナブルに。此処がお前の新たな生活の場だ。」

 

「はい、改めまして……此れから宜しくお願いします、なのはさん。」

 

 

なのははクローゼの手を取ると、荘厳な金属製の扉を開けて拠点の中に――黒き星と白き翼が、反逆者の拠点に揃った、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒き星と白き翼 Chapter2

『反逆者の拠点に舞い降りた白翼』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けた先にあったのは、広いロビーだった。

其処にはソファーと机が完備され、ラウンジを思わせるカウンターが存在し、ブロンズ像や絵画と言った調度品の他、グランドピアノまで揃えられている――しかも、其れ等はグランセル城にあるモノと遜色ないレベルの一流品だ。

 

 

「なのはさん、此れはドレも一級品の物では……?」

 

「私は、如何も凝り性な所があるみたいで、どうせやるならば徹底的にやらなくては気が済まんらしい……故に、これ等の物も一級品で揃える事になってしまったよ。

 岩山の洞窟を改造して造った拠点も、ライフラインを整えるだけじゃなくて、皆が快適に、そして楽しく過ごせるように家具や調理器具も徹底的に揃えていった結果として全て一級品になってね。

 まぁ、洞窟をこの様に造り変えるのは簡単ではなかったけれど、内装を如何しようかとか考えての作業は楽しかったかな。

 其れに、私と同じような理不尽で不条理な目に遭った者達の為と思えば、苦労も苦労ではなかったさ。……此の拠点を整備するのに消えたミラが十桁になったと言うのは、少し予想外だったが。」

 

「なのはさん……頑張ったのですね。」

 

「……あの時、お前と出会っていたからこそ出来た事だよクローディア。

 お前と出会わなかったら、私はどす黒い復讐心に身を焦がし、その衝動のままに力を求め、そして無差別に復讐と言う名の殺戮を行っていただろう……お前の優しさに触れた事で、その復讐の炎は大きく治まった――しかし完全に鎮火した訳ではなく、復讐すべき相手には復讐するがな。」

 

「己に理不尽で不条理な事をした相手に因果を応報させるのは、当然の権利ではないでしょうか?

 無差別な八つ当たりはダメですが、真に復讐すべき相手に復讐の牙を剥くと言うのは、決して間違ってはいないと思いますよ。」

 

 

ロビーで軽く言葉を交わしたなのはとクローディアだったが、この僅かな会話でなのはは益々クローディアに好感を抱いた。

十年前に『種族の違いが助けない理由にはならない』と言った少女が、『真に復讐すべき相手に復讐するのは間違いではない』と言ったのだ……世の中は綺麗事だけではやって行けないと言う事を理解しているのだ。

だが、其れも当然かもしれない……アリシア前女王が急逝してから、実に三年もの間、クローディアは不当な幽閉生活を強いられていたのだから、『人の醜さ』って言うのを知るには充分な時間だったのだろう――その『人の醜さ』を知る切っ掛けになったのが、血縁関係にある叔父だったと言うのは皮肉極まりないが。

 

 

「ふ……益々お前の事が好きになったよクローディア。

 先ずは仲間達を紹介しよう。此処に来る前に通信を入れておいたのでな、大広間に集まっている筈だ――若しかしたら、お前を歓迎する用意をしているかもな。」

 

「此のロビーでも驚きましたが、大広間もあるんですか?……此処は最早、岩山を改造して造られたお城ですよ。」

 

「言い得て妙だな。」

 

 

ロビーから大広間に向かう廊下も、岩肌はつるつるに磨き上げられ、壁には銀製の調度品が飾られ、天井には導力を使った照明が使われて廊下全体を明るく照らしているのだ……此処だけを切り取って見せたら、誰も此処が岩山の洞窟とは思うまい。

唯一、一般的な城と違うのは、一般的な城が最上階に王の間があるのに対し、リベリオン・アナガスト・アンリゾナブルの拠点は、最下階に主の間が存在していると言う事だろう。

 

ロビーから大広間に到着し、なのはが大広間の扉を開けると……

 

 

「おかえりなさいませなのは様。そして、ようこそいらっしゃいましたクローディア皇女殿下。」

 

 

其処にはクリザリッドをはじめとしたリベリオン・アナガスト・アンリゾナブルのメンバーが全員揃っており、テーブルの上には料理と飲み物が――なのはの予想通りにクローディアを歓迎する準備は出来ていたようだ。

 

 

「ふ、準備が良いなクリザリッド?」

 

「なのは様が、リベールの皇女殿下をお連れすると言うのならば、此れ位のもてなしはしなくてはなりますまい……蟹だけは準備段階でシェンの馬鹿野郎が全部喰い尽くしてくれやがりましたので無くなってしまいましたが。」

 

「あぁ?パーティ用だって言わねぇのが悪いんだろうが!良い感じに茹でられた蟹が目の前にあったら喰うだろ!蟹が『俺を喰ってくれ』って言ってたんだよ!!」

 

「喰わぬわ馬鹿者!其れと、都合の良い幻聴を聞くな!早々手に入らない高級食材を一人で食い尽くしよってからに!

 其れも充分に許せない事ではあるが、其れ以上に貴様の様なチンピラが、なのは様を呼び捨てするのが許せん!!」

 

「こちとらなのはとはガキ頃からの付き合いで、俺にとっちゃ妹みてぇなモンなんだよ!其れを呼び捨てにして何が悪いってんだ、このモケモケ野郎!!」

 

「モケモケとは、このコートの羽根飾りの事か?……貴様、死にたいようだな?良いだろう、我が力を目に焼き付けて死ぬが良い。」

 

「喧嘩上等だこら!!」

 

「……喧嘩はダメ。」

 

 

 

――ドッガーン!!

 

 

「何だとぉ!?」

 

「こんな筈はぁぁぁ!!」

 

「……任務完了。」

 

 

其処で、クリザリッドとシェンが不穏な空気になったが、其処にレオナがイヤリング型小型爆弾を投げ込んで、両者を仲良く(?)爆破した事で喧嘩にはならなかった。

そして、爆弾を喰らってKOはされても死んでないクリザリッドとシェンの頑丈さは大したモノだと言えるだろう。

 

 

「レオナ……今のは良い止め方だったぞ。」

 

「貴女がバスターでこの二人を止めるは何度も見ていたから。口で言って止まるシェンとクリザリッドではないから、物理的に止めるだけ。」

 

「其れはとっても正しいぞレオナ。シェンとクリザリッドは物理的に止めんと止まらないからな。」

 

 

この爆弾攻撃を喰らっても、数秒後にクリザリッドとシェンは復活し、そして改めてクローディアにリベリオン・アナガスト・アンリゾナブルのメンバーを紹介して、クローディアも自己紹介をして、その後は盛大な宴が始まり皆が心行くまで楽しんだ。

 

その宴の最中……

 

 

「クローディア、此れからお前は私達と共にある訳だが、此処で誓いを交わさないか?」

 

「誓いですか?」

 

「そうだ、此れから先何があっても私はお前を、お前は私を決して裏切らないと言う誓いだ。此れは、魔族の誓いの儀によって執り行う事で、その誓いに背くのは、其れ即ち『死』を意味するのだがな。」

 

 

なのはは、クローディアに魔族式の誓いを交わす事を提案する――其れは何があっても決してお互いを裏切らないと言う誓いだ。魔族式の誓いを破ったら、その先に待っているのは『死』と言う結果だ。

魔族は、『闇に生きる邪悪な種族』だと思われているが、実は『約束』と言う事に関しては人や神族よりも重要だと考えている所があり、約束を違えるのは、魔族に於ては最も唾棄する行為だとされているからね。

 

 

「互いに裏切る事だけは絶対にしない……その誓い、此処で交わしましょうなのはさん。」

 

「お前ならばそう言ってくれると思っていたよ――リベールでは二十歳未満の飲酒は厳禁だった筈だが、此処ではそんな物は関係ないからな。

 此の酒の入った杯を、お前に渡す。」

 

 

そう言ってなのはから渡された杯を持ったクローディアは驚いた――渡された杯は、長く持って居られない程に熱かったから……そして其れは、杯に注がれている酒がそれ程までに熱せられていると言う事だから。

『此れを飲めと言うのか?』と言う思いがクローディアの中に湧き上がるが、だがしかしその想いを押し留めて彼女は火のように熱くなった酒を一気に煽った。熱い酒を冷ましてから飲むと言う野暮な事は出来なかったから。

そして、そんなクローディアを見たなのはも、口元に笑みを浮かべると火の様な熱い酒を一気に飲み干す。

 

 

「ふぅ……父が、他の魔王であるアーナス、ルガール、悪魔将軍と同盟を結ぶ時にやっていたのを真似してみたが、これ程までに熱した酒と言うのは一種の凶器ではないだろうか?喉が焼けると思ったぞ……」

 

「此れは、キツイですね……ですが、だからこそ此の誓いは破る事は出来ないのかもしれません。」

 

「かもな……こんな思いをしてまで誓った事を破ったら、其れこそ殺されても文句は言えないだろうからな……だが、此れで契約はなった。私は、何があってもお前の事だけは、絶対に裏切らないよクローディア。」

 

「其れは、私もですなのはさん。」

 

 

その後も盛大な宴は続き、クローディアはリベリオン・アナガスト・アンリゾナブルに迎え入れられた。

宴の最中に、リベリオン・アナガスト・アンリゾナブルの主要メンバーである、クリザリッド、シェン、サイファー、アルーシェ、レオナ、そして本日加入した璃音との顔合わせを行い、宴は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、なのははクローディアを、拠点内にある『散髪からパーマまで引き受けるサロン』に連れて来ていた――幽閉生活を強いられていた影響で、真面な手入れが出来ていなかったのか、大分傷んでいたのでクローディア本来の髪の美しさを取り戻そうとなのはは考えたのだろう。

因みにサロンで働いている美容師も、『腕の良さを先輩美容師に妬まれて、有りもしない罪をでっち上げられて解雇されて行き場のなくなった者』、『新しく出来た店に嫌がらせをされた挙げ句に事実無根の悪評を流されて店が潰れて路頭に迷って居た者』、『性的マイノリティーを理由に何処にも雇って貰えなかった者』等、これまた理不尽な理由で職を失った者達なのだが、そんな彼・彼女達をなのはが連れて来たのだ。

 

 

「いらっしゃいませなのは様、本日はどのような御用件で?」

 

「彼女の髪を手入れしてやって欲しい。長い幽閉生活で碌に手入れが出来ていなかったのか、大分傷んでいるのでね……彼女本来の美しい髪に戻してくれるか?」

 

「勿論。髪は女性の命ですから、精魂込めて調髪させて頂きます。」

 

「よ、宜しくお願いしますね?」

 

「では此方に。

 なのはさまも、宜しければ髪の手入れをして行きませんか?」

 

「いや、私はまだ良い。最近は髪が傷む様な事もしていないからな――其れよりも、彼女の方に集中してやってくれ。私は、部屋の外で待たせて貰うよ。」

 

「畏まりました。」

 

 

美容師に用件を伝えると、なのははサロンの外で待つ事に……ただ待っているのも暇なので、読書をする事に。

読むのは『Legendary Dark Knight SPADA』――二千年前に起きたとされている、人と悪魔の戦いを描いた壮大な物語であり、悪魔スパーダが人の優しさを知って正義の心に目覚め、逆に悪魔の軍勢に人と共に立ち向かい、悪魔の軍勢を打ち倒し、そして魔帝をも滅ぼして人の世を守り、そして悪魔の世界を平定して、現在の『魔界』の礎を造ったと言うモノだ――今現在の魔族が、破壊と殺戮を好む悪魔とは異なる闇の住人となったのは、スパーダが魔界を作り、其処に法を作り、知恵のある悪魔に『正義の心』を教えたからだと。

 

なのははこの物語が好きだった……邪悪な存在である悪魔のスパーダが、人の優しさに触れて正義の心に目覚めると言うのが、人の優しさを知って道を誤らなかった自分に重なっているのかも知れない。

 

そして待つ事三十分。

 

 

「お待たせしました、なのはさん。」

 

「終わったか。」

 

 

髪の手入れが終わったクローディアがサロンから出て来たのだが、髪の手入れが終わったクローディアに、なのはは思わず目を奪われた。

背中まであった長い髪は、ショートカットになっているのだが、其れが逆にクローディアの魅力を引き立てている――ショートカットと言うのは、ボーイッシュな印象を与えるモノだが、クローディアの場合はボーイッシュにはならず、寧ろ女性としての魅力を際立たせているのだ。

 

 

「此れは、随分と大胆な事をしたモノだな?」

 

「毛先が大分傷んでいたとの事なので、思い切ってバッサリ行ってみました。

 其れに、髪型も変われば印象も大分変るので、私がグランセルから居なくなったクローディアだとバレる可能性も低くなりますから――それと、髪型を変えるだけではなく、私は此れから『クローゼ』と名乗る事にします。クローディアと言う名前のままでは正体がバレてしまいますので。」

 

「成程、確かにな……クローゼか、良い名だな。」

 

「『クロ』ーディア・フォン・アウスレ『ーゼ』の最初と最後を繋げて、クローゼです。親衛隊のユリアさんが付けてくれた愛称ですが、ユリアさん以外に私をその名で呼ぶ人は居ないので、早々バレる事はないと思います。」

 

「ふむ……だが、そうなるとアウスレーゼとは別の性も必要になるか――では、『リンツ』と言うのは如何だ?『クローゼ・リンツ』と言うのは語感も良いと思うが。」

 

「良いですね。其れでは、私は本日よりクローゼ・リンツと名乗る事にしましょう。」

 

 

大胆に髪型を変えただけでなく、己の素性がバレるのを防ぐために名を変えると言う事までしてくれた――クローディア改め、クローゼは割と大胆な部分もある様だ。

でもって、髪を整えた後は服も幽閉生活を送っていた時の物から、白と菫色を基調とした物に着替えた……なのはが、クローゼを幽閉生活から解放した時を見越して用意したモノだったが、此れがサイズもバッチリでクローゼに良く似合っているのだ。

 

 

「良く似合っているよクローゼ。私の見立ては中々だった様だな。」

 

「はい、サイズもピッタリなので驚きましたが、其れ以上になのはさんのセンスの良さに驚きです。――王族のドレスの華やかさと、動き易さの両方を兼ね備えた此の服は見事ですよ。」

 

「気に入って貰えたのならば良かった。

 そして、最後に……」

 

 

なのはは着替えたクローゼの髪にティアラを、胸元にブローチを飾ると、金と黒で彩られた鞘に入った、金色のグリップのレイピアを渡す。

 

 

「なのはさん、此れは?」

 

「ティアラは魔法攻撃から、ブローチは物理攻撃からお前を守ってくれるバリアアイテムだ――そしてレイピアは、お前はただ守られているだけの姫ではないだろう、クローゼ?

 レイピアだけでなく、戦術オーブメントとクォーツも用意してある……私と共に、此の世の理不尽と不条理に反逆してくれないか?」

 

「……是非もありません。此の世の不条理と理不尽への反逆、喜んで参加させて頂きますよなのはさん。」

 

「お前ならばそう言ってくれると思ったよクローゼ。

 ありとあらゆる理不尽と不条理に反逆し、そして魔族も神族も人も、種族の違いなど関係なく、誰もが平穏に暮らせる世界を作ろう――もう二度と、私と同じ思いをする者が出ない為にもな。」

 

「そうですね……全ての種が平和に暮らせる世界と言うのはお祖母様の理想でもありましたから。お祖母様の理想と、なのはさんの目指す世界は同じ物です――であるのならば、私が力を貸さない理由はありません。」

 

「……ありがとう。」

 

 

目指す世界はなのはもクローゼも同じだ――故に、其処を目指して共に歩む事に迷いはなく、白き翼は黒き星と共にこの世の理不尽と不条理に徹底的に反逆すると言う道を選んだのだ。

闇属性のなのはと、聖属性のクローゼが手を結んだと言うのは、此の世界にとっての起爆剤になるかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

クローゼが、リベリオン・アナガスト・アンリゾナブルの拠点で決意を固めていた頃……

 

 

・ロレント市郊外、ブライト家

 

 

リベールの片田舎であるロレントの郊外にあるブライト家の庭では、一組の男女が激しい組手を行っていた。

男の方の名は『草薙京』。炎を操り、千八百年前に邪神『八岐大蛇』を封じた『草薙一族』の末裔であり、草薙家の現当主である青年だ――己の実力に絶対の自信を持ち、不遜な態度を崩さないが、実は誰よりも努力家で強くなる為の研鑽は怠らないストイックさを併せ持っている。

 

女の方の名は『アインス・ブライト』――ブライト家の面々とは血は繋がっていないが、ブライト家の長女である女性で、多彩な魔法とキレのある体術の二本柱で凄まじい戦闘力を誇る戦士だ。

 

 

「おぉぉぉ……喰らいやがれ!!」

 

「穿て……ナイトメアハウル!!」

 

 

その組手も、京が『裏百八式・大蛇薙』を、アインスが『ナイトメアハウル』を放ち、そして其れが相殺して終わりを告げる事に――こんだけガンガン遣り合ってるが、京とアインスは現在交際中だったりするのだ。――交際中でありながら、ガチバトルとか大分バイオレンスなカップルだな。

 

 

「ち、引き分けか。」

 

「通常の大蛇薙ではなく、秘奥義の方の大蛇薙だったらお前が勝っていたかもな。」

 

「八神の馬鹿ならいず知らず、テメェの彼女にスパーリングとは言え、ガチの炎を浴びせる事は出来ねぇよ……武闘家としては甘いかも知れないけどな。」

 

「ふふ、私はそうは思わないぞ京。その優しさは、お前の強さでもあると私は思って居るからな。」

 

「……恥ずかしい事言うなっての。」

 

 

手加減ではないが、京がガチの大蛇薙を使わなかった事でドローだったらしい……其れはまぁ、テメェの彼女にガチの炎を浴びせる事は出来んわな。下手したら、火傷で一生物の傷を負わせる事になるからな。

京もアインスも、スパーリング後の良い感じの空気だったのだが――

 

 

「あんですってーーー!?」

 

 

其れは、家の中から聞こえて来た絶叫によって霧散してしまった。

 

 

「そんな大声を出して、品が無いわよエステル?」

 

「そ、其れはそうかも知れないけど、この記事には叫ばずには居られないわよレン!」

 

 

声の主は、ブライト家の次女である『エステル・ブライト』だ――エステルだけは、ブライト三姉妹で唯一両親と血が繋がって居るのだ。エステルに『品がない』って事を言ってくれたレンは、ブライト家の三女で元々は死神の系譜であり、エステルの純粋な魂を狩ろうとしたのだが、エステルに負けて魂を狩る事を断念して、エステルの妹としてブライト家の一員になった少女だ。

 

だがしかし、エステルが大声を出した記事と言うのは、確かにトンでもないモノだった。

記事が掲載されているのは『リベール通信』と言う、リベール王国全土で広く読まれている雑誌なのだが、エステルが目にした記事には、写真付きで『クローディア皇女が誘拐されたかもしれない』と言う事が書かれていたのだからね。

 

 

「此れが本当だったら、とんでもない事になるわよ、間違いなく。」

 

「えぇ、確実に一波乱あるでしょうね。」

 

 

そして、其れを読んだエステルは、そう遠くない未来に、確実に『何か』が起きるであろう事を感じ取っていた――と同時に、京とアインスもその記事を読み、『近い内に何かが起こる』事を予想ししたらしい。

 

 

「一波乱でも二波乱でも上等だ。全て俺の炎で焼き尽くしてやるぜ。」

 

「ふ、頼もしいな京。」

 

 

其れが何時になるのか分からないが、しかし決して年単位で遠い未来ではないだろう――反逆の狼煙は、少しずつ、しかし確実に上っている様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 

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