黒き星と白き翼   作:吉良/飛鳥

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ライトロードは全て光属性だから、遊星に『A・O・Jカタストル』を作って貰えば楽勝な件についてByなのは      其れは、確かにその通りですねByクローゼ


Chapter39『激しい戦い~目覚める殺意と新たな鬼~』

リベールに攻め入ったライトロードだったが、なのはの的確な指示によりリベールの五大都市には防衛線が張られ、ライトロードは都市部に侵攻する事が出来ずにいたのだが、ロレント周辺は其れがより顕著だった。

リベールの新たな王であり魔王の血を引くなのはを確実に討つために王都方面に戦力を集中させ地方都市への戦力は必要最低限のモノにしたのだが、其れはライトロードには悪手だったとしか言いようがないだろう。

 

 

「おぉぉぉぉ……喰らいやがれぇ!!」

 

「遊びは終わりだ!泣け!叫べ!そして死ねぇぇぇ!!」

 

「其方から来てくれるとは探す手間が省けました……焼滅の力、存分に味わって頂きましょう。」

 

「Ha!弾切れを気にせず撃てるってのは最高だな?いい仕事してるぜ遊星!」

 

 

ロレントには軍の援軍は来ていないのだが、それでも王都に匹敵するだけの戦力が備わっておりライトロードの軍勢をミストヴァルト付近から一歩も先に進ませては居なかったのだ。

此れに関してはライトロードがロレントの戦力を過小評価していた事も原因だろうが、同時にライトロードが知っているロレントの戦力は十年前のモノであるので致し方ないとも言えるだろう。

十年前のロレントの主戦力はカシウスと柴舟、そして庵の父親と駆け出しの遊撃士だったシェラザード程度であり、その戦力の一つである柴舟を自らの手駒にした事でロレントは可成り弱体化したと考えていたのだが、今のロレントは十年前には子供だった京に八神姉妹、エステルにアインス、ヨシュアにBLAZEのメンバーが大人になってロレントの新たな戦力となり、更にエステルが連れて来たレンに、ヨシュアの姉のカリンと恋仲のレオンハルトも其処に加わっており、今の戦力は十年前とは天と地ほどの差があるのだ。

加えてライトロードにとって誤算だったのはなたねとネロがロレントに居た事だろう。

互いにライトロードに家族を殺され、復讐を誓ったなたねとネロだったが、ロレントを回って行く中で復讐の真の意味に気付き、復讐の刃は本当に復讐すべき相手にのみ振り下ろすモノだと理解した事で本来の力を遺憾なく発揮出来ており、其の力でライトロードを圧倒していたのだ。

 

 

「お前、不破士郎の娘の片割れか!十年前には逃したが、まさか此処で相見えるとは……姉共々父の元に送ってくれる!」

 

「残念ですがまだ父上に会いに行く訳には行きません……貴方達に復讐を果たした後に私にもやりたい事が出来ましたので。

 そしてこの戦いは単純に私達の復讐の戦いと言う訳でなく、私とネロに『全ての人間が魔族を忌み嫌っている訳ではない』と言う事を教えてくれたリベールを守る為の戦いでもあります。

 此処から先には何があっても進ませません!」

 

「そう言うこった……来いよクズ共!」

 

 

なたねの目にはなのはと再会した時の濁りは消え去り、代わりに純粋な闘気の炎が宿り、ネロも纏う雰囲気がスパーダの血筋に相応しい威風堂々としたモノとなっている。

だが、ライトロードも退く事はなく、『ドラゴンを呼ぶ笛』で呼び出したドラゴン達も投入して前線を引き上げようとする――この場に行き成りドラゴンが現れたのは、召喚士であるルミナスの召喚術によるモノだろう。

 

 

「ドラゴンか……今日の晩飯はドラゴンのカツ丼で決まりだな!」

 

「志緒先輩、ドラゴンをぶっ倒すだけじゃなくて料理するんすか……つか、ドラゴンって食えるのか?」

 

「リベリオンに居た時に、珍味の『ドラゴンの燻製』ってのを食べた事があるんだけど、意外と美味しかったよ洸君。歯応えの強い鶏肉みたいな感じだった。」

 

「いや、食った事あったのか璃音!」

 

 

そのドラゴンも大した脅威ではないらしく、志緒に至っては倒すだけでなく料理して食べる心算のようだ……ドラゴンですら食材に過ぎないと言うのはあまりにも凄まじいとしか言えないが。

取り敢えず、ライトロードが最も戦力的に貧弱と考えていたロレントは実は王都並みに戦力が揃って居る場所であったのは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒き星と白き翼 Chapter39

『激しい戦い~目覚める殺意と新たな鬼~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴンが投入されてもライトロードが前線を押し上げる事にはならず、ミストヴァルト付近での戦闘は激化していたのだが、優勢なのはロレント側だった――ロレントの戦力はバランス型が多い中に特化型が良い感じに混じっているので正に隙が無いのだ。

特化型の中では特に志緒が驚異的で、体力とパワーと頑丈さが飛びぬけており、多少被弾した所で其れが如何したと言わんばかりに重戦車の如く突撃して力任せの一撃でライトロードの軍勢をブッ飛ばしているのだ。

 

 

「ったく此の程度かよ?大した事ねぇなオイ。」

 

「ふん、正義を騙り暴力を振るう輩など所詮この程度に過ぎんか……雑魚が。」

 

「貴様、我等の揮う力が暴力だと!」

 

「魔族を始めとした闇の眷属だけを狩ると言うのならば未だしも、敵対の意思のない者にまで振り下ろされる誇りなき力を暴力と言わずになんと言えと?

 ……俺は暴力が嫌いだ。見知らぬ誰かが如何なろうと知った事ではないが、戦う力を持たぬ者、争う意思のない者、敵対の意思がない者に対して揮われる腐り切った暴力は見過ごせん。

 故に、俺の前で暴力を揮った輩には相応の報いを受けさせねば気が済まん。」

 

「八神にしちゃ真面な意見じゃねぇか?……そう言えばお前、野良猫とかにはめっちゃ優しいよな?前に野良の子ネコにミルクやってるの見た事あるし。本当の事を言えば、子ネコ殺して喰うんじゃないかと思ったんだがな。」

 

「ネコは食うと呪われると言われるだろう?呪われたのはオロチの血だけで充分だ。」

 

 

更に庵はライトロードの行為を『暴力』と切り捨てる。

確かに、全く無関係の者にまで振り下ろされる力は暴力以外の何物でもないだろう。

 

 

「草薙京……お前が草薙家の現当主か。

 其の力は流石だと言っておこう……だが、コイツを前にしても其の力を奮う事が出来るかな?」

 

 

ドラゴンの力をもってしても前線を押し上げる事が出来なかったライトロードは、此処で新たなる戦力を投入して来た――エイリンが打ち倒して洗脳して手駒とした柴舟を投入して来たのだ。

服の形状は変わってないが、暗緑だった服は全体が白くなり、襟や袖口は金色になってライトロードのカラーリングになっている。

 

 

「親父?」

 

「洗脳し我等ライトロードの手駒となったのだソイツは……果たして、実の父親を殴れるかな?」

 

「殴れるけど?」

 

 

その柴舟を……京は迷わずにブッ飛ばした。いっそ清々しいまでにぶっ飛ばした。

 

 

「いやもう全然平気。」

 

 

ぶっ飛ばした後は、琴月 陽で追撃すると、奈落落とし→八拾八式→荒咬み→六槌→轢鉄→R.E.D.KicK→七拾五式・改→百八拾弐式のコンボを叩き込む!其処に一切の容赦も手加減も存在していない。

 

 

「また居なくなったと思ったら、ライトロードに洗脳されて手駒にされてんじゃねぇぞクソ親父。

 其れでも草薙家の前当主様かってんだ……親父がこんなヘタレ野郎だったとは息子としては情けなさ過ぎて泣く事も出来ねぇぜ。」

 

「あぁ、痛い痛い!って、鬼かお前は!!」

 

 

殴られっぱなしだった柴舟だったが、此処でカウンターをかまして京を吹き飛ばし、其処から鬼焼きを繰り出して反撃の狼煙を上げたのだが――

 

 

「やるじゃねぇか親父……だがよ、何か気が付かねぇか?」

 

「何?……ん?ん~~~?き、京が四人になっているだとぉ!?」

 

 

此処で京が柴舟に己のクローン三体を認識させた事で柴舟は一気に混乱状態になってしまった――一人息子であった筈の京が、イキナリ四人に増えたとなれば混乱するなってのが無理ってモノだろう。

 

 

「親父、テメェが行方不明になってる間によ……」

 

「一人息子が四人に増えちまったぜ!」

 

「流石に驚いたか?」

 

「其れともビビっちまったかぁ、親父殿ぉ!!」

 

「なんじゃとぉ!?」

 

 

まさかの事態に、柴舟は混乱すら通り越して完全に色々と思考が打っ飛んでしまったのだが、そんな柴舟に手加減をする京達ではなく……

 

 

「此れで目を覚ませ親父!受けろ、此のブロウ!コイツで、決めるぜ!!」

 

「おぉぉぉぉ……喰らいやがれぇ!!」

 

「見せてやる、草薙の拳を!」

 

「俺の拳が真っ赤に燃える!」

 

 

京は百八拾弐式、京-1は大蛇薙、京-2は無式、KUSANAGIは千九百九十九式・霧焔を放って柴舟を派手に燃やしてターンエンド――実の父親に対してマッタク持って情け容赦ない攻撃だったが、その効果は絶大で柴舟はライトロードの洗脳から解き放たれたのだから。

 

 

「う……くぅ……京、ワシは……!」

 

「目が覚めたか馬鹿親父?ったくライトロードの三下なんぞにやられてんじゃねぇよ。」

 

「うぅむ、何も言い返せんが……目を覚まさせてくれた事には礼を言うぞ京。おかげで活き恥を晒さずに済んだわい……にしても、改めて正気を取り戻してみてみると、我が息子ながら同じ顔が四つも並ぶとちと不気味だな?」

 

「お袋はそんな事も言わずに秒で慣れちまったけどな……んで、如何すんだ親父?此のままライトロードに舐められたままじゃ終われねぇよな?」

 

「一発ブチかましてやるに決まってるよなぁ、親父殿ぉ!」

 

「そうだな……酒が入っていたとは言い訳にもならんが、不覚を取ったままでは武道家の名折れ!復活ついでに汚名返上するとするわい!」

 

 

そして柴舟の洗脳が解けた事で、ロレントの戦力は更に増強される事に。

京に当主の座を譲り一線を退いた柴舟ではあるが、今もまだ鍛錬は続けており、実力面では京に追い抜かれたとは言えまだまだ現役で通じるだけの実力があり、戦力としては申し分ないのである。

 

 

「小娘が、先日の礼をたっぷりとさせて貰うぞ?」

 

「洗脳が解けたか……だが、ならばまた私の前にひれ伏させるだけの事!」

 

 

柴舟は以前自分を倒したエイリンと交戦状態になったが、以前とは異なり互角以上の戦いを演じている――戦いとなって即素面になったとは言え、矢張り酒が入っている状態では動きが異なると言う事なのだろう。完全素面の今は動きのキレに雲泥の差があるのだから。

 

 

「雑魚共が群れやがって!」

 

 

他の面々もライトロードの進行を完全に食い止めて、寧ろ前線を押し上げてライトロードを後退させて行く……手にした重剣の一撃で数体のライトロードのメンバーをぶっ飛ばしてしまう志緒のパワーには恐れ入ってしまうが。

 

 

「京、ツープラトンで行こう!」

 

「アインス……ソイツは良いアイディアだな!遊びは終わりだ!俺からは逃げられねぇんだよ!」

 

「はぁぁぁ……ビックバンイレイザー!」

 

 

更に京の天叢雲とアインスの極大魔力砲のビックバンイレイザーのツープラトンが炸裂してライトロードの軍勢を容赦なく粉砕!玉砕!!大喝采!!!――ロレント地方に関しては一切の問題はないと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、王都周辺はエルベ離宮を最終防衛ラインにして激しい戦いが繰り広げられていた。

ライトロードも王都に戦力を集中していたのだが、なのはもまた王都防衛の為に必要な戦力をこの場に集めていたので防衛ラインを突破される事はなかった――なのはが新たな王となった際に、王室親衛隊にはリベリオンのメンバーも加入しているのでアリシア女王時代よりも強化されているのだ。

何よりも王であるなのはと、そのパートナーであるクローゼも相応の戦闘力を備えていると言うのはアリシア女王時代にはなかった事だ――なのはは戦う王であり、クローゼも戦う姫騎士なのである。

王とそのパートナーが戦場に出て共に戦うと言うだけでも兵士達の士気は上がると言えるだろう。

 

 

「平和に暮らしてる人を殺そうとするとか、ふざけた事してんじゃねぇ!力ってのは、弱い者の為に揮うモンだろうが!力の意味を履き違えてんじゃねぇぞクソが!!」

 

 

そんな中で、喧嘩上等なシェンがその腕っぷしの強さを遺憾なく発揮してライトロードの軍勢を片っ端から殴り倒していた。

シェンは『本気で固めた俺の拳はダイヤモンドよりも硬い』と言っていたが、シェンの拳を喰らったライトロードの面々は例外なく顔面陥没しているので其れは決して誇張などではなかったのだろう。

尤も顔面陥没しても、直ぐに治療されてしまうのだが。

 

 

「えい!えい!とりゃぁぁぁ!」

 

 

ユーリもシェンに付いて来て戦闘に参加しているのだが、その攻撃方法が中々にエグかった。

距離が離れていれば拍翼から魔力砲やら魔力弾が次から次へと飛んで来て、逆に距離を詰めれば拍翼を剣や槍に変形させて応戦したり、巨大な腕となった拍翼でライトロードの軍勢を掴んで地面に何度も叩き付けてから地面にグリグリ擦り付けた後に魚拓の様に地面に張り付けているのだから。

更に嬉しい誤算として、この付近を住処にしている魔獣のうち、水属性、火属性、地属性、風属性の魔獣が霊使い四姉妹の力で一時的な戦力となってくれた事があるだろう。

『霊術』と呼ばれる術を得意とする彼女達だが、その『霊術』の中には『己と同じ属性の相手を一時的に操る』モノもあるらしく、その術を駆使して魔獣達を操りライトロードとの戦いに参加させているのだ。

勿論彼女達自身も自らの得意とする属性の精霊魔法で攻撃しながら、己の使い魔の力も開放し、ヒータは大稲荷火を、アウスはデーモン・リーパーを、ウィンはラセンリュウを使役し、そしてエリアは憑依覚醒の更に上位の精霊解放である『アドバンス召喚』によってギゴバイトを最上級のゴギガ・ガガギゴにしたのだが、現れたゴギガ・ガガギゴは飛行能力を得た時から更に其の姿が大きく変わっていた。

両肩に新たに追加されたショルダーアーマーには巨大なレーザーキャノン『ネオンレーザーブラスター』が搭載され、強化された腰部アーマーには折り畳み式のリニアランチャー『TM-1』が搭載され、新たに追加された両手の装甲には近接戦闘用レーザークロー『マキュラ』が追加されているのだ……不動兄妹が更なる魔改造を施したのは間違いないのだが、この改造によりゴギガ・ガガギゴは新たな上位精霊となったのも間違いないだろう。

 

 

 

ゴギガ・ガガギゴFA:ATK3550

 

 

 

この強化により、ゴギガ・ガガギゴは距離を選ばずに戦う事が出来る最強レベルの精霊となり、その攻撃力はアシェルとバハムートを超えるまでになっていた――不動兄妹がドラゴン用の専用装備を開発したらまた逆転するかもしれないが。

 

これ等の戦力に加えて、ライトロードにとって最も脅威だったのは矢張り十年前に自分達を壊滅寸前にまで追い込んだ稼津斗の存在だろう。

殺意の波動を覚醒させて放たれる滅殺の拳は十年前よりも更に強力になり、『拳を極めし者』の名に恥じないモノになっていただけでなく、全ての技が一撃必殺ならぬ一撃滅殺!稼津斗の攻撃は喰らう事其の物が死を意味するモノなのである。

そして稼津斗だけでなく、彼に育てられた鬼の子供達も相当に強かった。

 

 

「その顔の傷……お前、十年前のあの時、無謀にも我等に挑んで来た小僧か!!」

 

「あぁ、其の時のガキだよ俺は……あん時はカヅさんが目覚めてくれなきゃ死んでた弱い存在だったが、あれから十年、俺はカヅさんに鍛えられて強くなった――千冬姉達の仇、討たせて貰うぜ!!」

 

 

電刃錬気で雷を纏った一夏が雪片弐型に雷の気を纏わせて地面に突き刺せば無数の雷の龍が天から降り注ぎ、刀奈が指を鳴らすと同時に水蒸気爆発が起き、ロランは風の気で竜巻を発生させて攻撃し、ヴィシュヌは得意の古式ボクシングでライトロードの軍勢を各個撃破し、グリフィンは豪快極まりない打撃と関節技でライトロードを粉砕していた……グリフィンの相手を上空に放り投げてから落ちて来た相手を己の方で受け止めて背骨折を喰らわせてから投げ捨てる『スーパーバックブリーカー』は強烈其の物だった。此れを喰らった相手は強烈な背骨折を喰らった後で地面に叩き付けられたところにグリフィンの追撃のエルボーが飛んで来るのだから堪ったモノではないだろう。

しかもグリフィンの追撃のエルボーは喉や鳩尾、金的と言った鍛えても鍛えようのない場所に降ってくるのだから恐ろしい事この上ない……喉に喰らえば声を失い、鳩尾に喰らえば胃袋が破け、金的に喰らえば男としての選手生命断絶と言うのは相当な威力と言えるだろう。

 

 

「如何したライトロード、貴様等の力は此の程度か?

 魔王であった私の父を殺したのだ、まさかこの程度とは言うまい?私の父を殺したと言うのならばもっと其の力を見せろ!全力の貴様等を葬らなければ何の意味もないのだからな!」

 

「貴方達ではリベールを落とす事は出来ません……大人しく退く事をお勧めします。」

 

 

なのはの圧倒的な砲撃魔法と、クローゼの超上級アーツの破壊力も凄まじく、ライトロードの軍勢は即時治療が施されるとは言っても相当に追い込まれていた……其れほどまでにリベールの防衛線は強固で強力だったのだ。

 

 

「誰が、誰が退くモノかぁぁぁ!!」

 

 

だが、此処でライトロードの軍勢は召喚士であるルミナスを除いて全員がその身に新たに宿した殺意の波動を覚醒させて一気に其の力を底上げして来た……光の力に闇の力である殺意の波動を加えたライトロードは、カオスロードであると言っても良いだろう。

 

 

「(!?……なんだ今の感覚?全身が粟立つような……殺意の波動に恐れたって事じゃないよな?殺意の波動ならカヅさんで慣れてる訳だし……今のは一体?

  俺の中の何かが殺意の波動に反応したのか?)」

 

 

殺意の波動を開放したライトロードに対し、一夏は全身を駆け巡る奇妙な感覚を感じていた。

殺意の波動に恐れた訳ではないが、何とも表現し辛い感覚であり、同時に己の中の何かがライトロードの殺意の波動に反応したのではないかとも思っていた―が、其れは其れとして殺意の波動に目覚めた事でライトロードは其の力を大きく増したのは間違いないだろう。

 

 

「此の力、殺意の波動を宿したか……俺に壊滅状態にさせられた事で、俺と同じ力を其の身に宿すとは愚かな。

 俺とて殺意の波動を完全に己の力とするには、殺意の波動を宿してから三百年を必要としたのだ……僅か十年程度で殺意の波動を完全に己の力とする事など不可能よ……真なる滅殺の拳の前に散れ!!」

 

 

其れに対し、稼津斗も殺意の波動を完全開放して赤かった髪が金色に変化する――『豪鬼』の異名を持つ稼津斗だが、殺意の波動を完全開放したその姿は『真・豪鬼』と言っても良いだろう。

此れで稼津斗は殺意の波動に目覚めたライトロードをも圧倒するに至ったのだが、なのは達は此れで漸く互角になったと言った感じだった。

 

 

「セスから殺意の波動を宿したとは聞いていたが……正義を自称し、神族を絶対の存在としているライトロードが闇の力である殺意の波動に手を出すとは、十年前にハーメルで稼津斗に壊滅状態に追い込まれた事が効いていると見える。

 だが、使いこなせていない力で私を倒そうなどとは片腹痛い!簪、殺意の波動に目覚めたライトロードの最高戦闘力はドレ位だ?」

 

『殺意の波動に目覚めたライトロードの最高戦闘力は、ミカエルとミネルバの四十万だよなのはさん。』

 

「四十万か……可成り高い戦闘力であるのは間違いないが、お前達が倒さんとしている私の戦闘力を教えてやる。

 私の戦闘力は、五十三万だ!そして、遊星が開発してくれたカートリッジを使えば最大戦闘力は百五十九万まで上昇する……纏めて塵に帰してくれる!」

 

「リベールは、絶対に落とさせません!」

 

「なのはママとクローゼママの敵は私の敵!ライトロードは全員纏めてぶっ殺す!」

 

 

其れでもなのはは怯む事なく、クローゼもリベールを守る意志を再度固め、ヴィヴィオは若干物騒ではあるがライトロードを殲滅す気満々だ――実際にカートリッジを使ったなのはの魔砲とクローゼの属性混合最上級アーツ、ヴィヴィオの格闘と魔法と親衛隊の訓練で覚えた鬼の子供達の技は殺意の波動に目覚めたライトロードをも圧倒していたのだ。

そして其れはなのは達だけではなく、王室親衛隊のメンバーもだ。

ライトロードが殺意の波動に目覚めた事で互角になったとは言え、越えられたのでなければ幾らでも対処が可能であり前線が下がる事だけはなかった。

 

 

「ふっ!は!せいやぁ!電刃波動拳!」

 

 

その中でピカ一の活躍を見せていたのが一夏だった。

ライトロードの攻撃をブロッキングで捌くと、其処からジャブとアッパーのコンビネーションを叩き込み、更に雷光の踏み込みから強烈な横蹴りを喰らわせて電刃波動拳をブチかます!

一夏は稼津斗が最も目を掛けていた事もあり、鬼の子供達の中でもピカ一の実力の持ち主でもあるのだ。

そして一夏の持ち味は稼津斗仕込みの格闘技と気功波だけでなく刀を使った鋭い剣技も忘れてはいけない――生前の姉の剣技を見様見真似で鍛えた我流の剣技ではあるが、我流故に決まった型に嵌っていない為太刀筋が読み辛いと言う特徴もあるのだ。

何よりも厄介なのは魔法や気と言った『エネルギー体』を問答無用で無効化してしまう『零落白夜』だろう。如何に強力な魔法も気弾も、零落白夜の前には霧散してしまうのだから。

物理攻撃が主でない者では一夏にダメージを与える事すら難しいのだ。

 

勿論親衛隊隊長のユリアも隊長として部隊を指揮しながらも見事な剣技と王室親衛隊隊長に代々受け継がれて来た奥義を駆使してライトロードを押し返し、ヴァリアス、アシェル、バハムートの三体のドラゴンはライトロードが従えているドラゴンを圧倒!

戦局はリベール軍有利の状況だが、何が起きるか分からないのが戦場だ。

 

 

「高町なのは……正義の矢で貫かれるが良い!」

 

 

エルベ離宮付近の戦場から遥かに離れた場所にはライトロードの射手であるフェリスが陣取っており、戦場から目視出来ない場所からなのはに狙いを定め、殺意の波動の力を上乗せした混沌の力の宿った矢を放った。

この矢には『飛行魔法』と『ターゲットロック』の効果も付与しているので距離による威力の減衰も飛行力の減退もなく、確実にターゲットに到達するようになっているのだが、此処でフェリスも予想していない事態が起きた。

矢の射線上に刀奈が入って来たのだ。

如何にターゲットロックの効果を付与しているとは言え、射線上の障害物を避ける事は出来ないので、放たれた矢はそのまま刀奈に向かって行き……

 

 

――ドスゥ!!

 

 

「え?……あ、あれ……」

 

 

其の胸に突き刺さった。

不幸中の幸いか、矢が刺さったのは右胸だったので即死は免れたが致命傷レベルのダメージだった事は間違いないだろう――胸からは鮮血が溢れ、口からも血が流れ出ているのだから。

刀奈は糸が切れたマリネットの様に倒れ伏し、意識を失ってしまった。

 

 

「遠方から私を狙っていた?その射線上に刀奈が居たと言うのか?と言う事は刀奈は私の身代わりになってしまったと言う事か……クローゼ、刀奈に治癒アーツを!

 絶対に死なせるな!」

 

「分かっています!」

 

「コソコソとアウトレンジから狙うとは……私の仲間を傷付けた報いを受けろ!ハイペリオンスマッシャー!!」

 

 

倒れた刀奈に、なのははクローゼに治癒アーツを指示し、自身は矢が飛んで来た方向に向けて超火力の直射砲撃を放って射手であるフェリスを一撃で葬ったのだが、刀奈が貫かれて倒れたのを見た一夏はその光景に一瞬思考が停止し……

 

 

「(刀奈が討たれた?そんな、嘘だろ?……俺はまた守れないのか?カヅさんに鍛えて貰って、其れでも俺は愛する人を守る事すら守れないってのかよ……そんなのは嫌だ、俺はもう誰も失いたくない!)」

 

 

次の瞬間には『もう誰も失いたくない』と言う思いと共に『力への渇望』が溢れ出し……そして其れに呼応するかのように一夏の周囲に闇色のオーラが溢れ出した。

 

 

「ぐぅぅぅ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

そして獣の如き咆哮と同時に闇色のオーラが弾けたが、闇色のオーラから現れた一夏は殺意の波動を開放した時の稼津斗と同様に肌が浅黒く染まり、髪と目も紅くなっていた。

 

 

「我が名は一夏、殺意の波動に目覚めし者なり!ライトロード、我が怒りは貴様等の命を持ってしか静まる術を知らぬ!!滅殺!!」

 

 

稼津斗ですら気付いていなかった一夏の中に眠っていた殺意の波動が目覚め、稼津斗に続いて二人目となる『鬼』が降臨したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 


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