黒き星と白き翼   作:吉良/飛鳥

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鬼か……最大奥義は弱P、弱P→弱K、強PだなByなのは     そのコマンドは瞬獄殺ですね♪Byクローゼ


Chapter4『鬼と鬼の子供達を仲間にしよう!』

ハーメル村を訪れたなのは達を取り囲んだ闘気と殺気……そして其処から斬りかかってきた少年、『織斑一夏』となのはは交戦状態になり、互角の戦いを行っているのだが、なのはと共に来たクローゼとレオナはなのはに加勢出来ずにいた。

『加勢しない』のではなく、『加勢出来ない。』のだ――襲撃を掛けて来たのは一夏一人だが、彼女達を取り囲む殺気と闘気は未だあるからだ。

 

 

「気を抜かないでクローゼ。何時仕掛けて来るか分からない。」

 

「分かっていますよレオナさん。」

 

 

だからクローゼもレオナも何時仕掛けられても良い様に、なのはには加勢せずに周囲の警戒を行っていた――まぁ、加勢しないのはなのはの実力を信じてるのと、なのはが本来の戦闘スタイルではない近距離戦で互角に戦ってるからだ。

なのはは本来、遠距離砲撃型なのだが、一夏とは近距離戦で互角に戦っているので、本気を出せば負ける事はないのだ――レイジングハートを『槍』とすれば、『槍に刀で挑むには三倍の実力が必要』と言われているので、一夏の実力もハンパなモノではないのだろうけどな。

 

 

「疾!!」

 

「!!!」

 

「ハァァァ!!!」

 

「……!!」

 

 

此処で新たな存在が茂みから現れてクローゼとレオナを強襲!

クローゼを強襲したのは蒼い髪と赤い目が特徴的な少女で、其の手にした槍で突きを放ち、レオナを強襲した少女は緑色の髪と褐色肌が特徴的な少女で、まるで鞭の如くしなる蹴りでレオナを強襲する。

 

が、クローゼは槍の一撃を咄嗟の『アースガード』でやり過ごすとレイピアを抜刀して槍を弾き、レオナも得意の手刀で蹴りを止める――レオナは兎も角、実戦経験皆無のクローゼが蒼髪の少女の一撃を捌いたと言うのは驚きだ。

実戦経験は無く、ここ数年は幽閉生活を送っていたクローゼではあるが、幽閉される前は親衛隊のユリアと剣の鍛錬を行っていたし、幽閉後も女王宮内であっても出来る鍛錬は続けていたからこそ咄嗟の対応が出来たのだろう。

 

其のままクローゼは青髪の少女と、レオナは緑髪の少女と交戦状態に。

クローゼはレイピアを使った剣術とアーツ、レオナは手刀をメインにした格闘術で夫々対応していく――レオナは、緑髪の少女に力では劣るモノの、素早さで勝るので互角の戦いをしているが、クローゼの方はアーツも使っているとは言え、槍に対してレイピアと言う圧倒的不利が付く武器を使っているせいで若干押され気味と言う感じに……如何に鍛錬を続けていたと言っても、武器による不利を覆すと言うのは簡単な事ではないのだろう。

このまま続けたら、クローゼの方が先にジリ貧になってしまうが……

 

 

 

――ドォォン!!

 

 

 

「きゃあ!!」

 

 

蒼髪の少女の足元でイキナリ爆発が起きた――なのはが遠隔操作した魔力弾と、レオナが放り投げたイヤリング型爆弾が着弾したのだ。なのはもレオナも戦い慣れているだけあって、己の相手と戦いながらもクローゼの方にも意識を割いていた訳である。

 

 

「刀奈!……クソ、何時の間に魔力弾を……!!」

 

「戦闘でのマルチタスクは基本中の基本だぞ少年。

 眼前の相手に集中しつつ、だが戦場全体の状況も把握出来なくては一流とは言えない。今回の様なマルチバトルでは必須となるスキルだ、身に付けておいた方が良い。自分の為にも、仲間の為にもな。」

 

「言ってくれるぜ。」

 

 

とは言え、状況はなのは達の方が不利だろう。

数の面では、此の三人以外にもまだ姿を隠している者が居るのだから……残りの者が全員現れて攻撃してきたら、流石に拙いだろう。如何に、なのはの必殺砲撃魔法が一騎当千の破壊力があると言ってもだ。

 

 

「其処まで!!」

 

 

だが、この戦いは、突如響いた一喝によって強制的に停止させられた――一夏達が動きを止めたのは勿論として、なのは達も思わず動きを止めた。其れだけ迫力のある声だったのだ。

全員が声のした方に目を向けると、其処に居たのは全身を黒で固めた、左目の下に大きな切り傷痕のある黒目黒髪の男が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒き星と白き翼 Chapter4

『鬼と鬼の子供達を仲間にしよう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒いボトムズに黒いシャツ、そして背中に赤で大きく『天』と入った黒い上着……正に全身黒尽くめの男から発せられているオーラは凄まじく強く、ともすれば魔王に匹敵すると言っても過言ではなく、一般人なら此のオーラに当てられただけで気を失ってしまうだろう。……其れに当てられて、冷や汗を掻きながらも意識を保っているクローゼは、精神的に相当強いと言える訳だが。

 

 

「街に買い出しに行って戻って来たら戦いが起きているとは、一体何事だ?それと、彼女達は誰だ?」

 

「カヅさん……アイツ等、行き成り此処に現れてさ。武器を持ってたから俺達の事を殺しに来たのかと思ったんだ。――十年前に、ライトロードが来た時みたいに。」

 

「ふむ、其れで攻撃したと言う事か。

 だが、攻撃する前に彼女達の気を読むべきだったな?気を読めば、彼女達には敵対の意思がない事が分かっただろう――お前達と戦ってはいたが、しかし彼女達からは敵対の意思は感じられなかったからな。」

 

 

現れた男に問われ、一夏はなのは達を襲撃した理由を話す――如何にも、なのははレイジングハートを手にし、クローゼはレイピアを腰に差し、レオナは腰にナイフと手榴弾を搭載していたので、此のハーメル村跡地を襲いに来た相手だと思ったらしい。

其れでも『気を読むべきだった』と言われ、先走った行動だったと男に咎められてしまったが。

 

 

「隠れている者達も出て来い。彼女達に敵対の意思はない。」

 

 

男がそう言うと、茂みの中から五人の少女が姿を現す。

綺麗な銀髪をショートカットにした少女、クローゼを襲撃した少女と何処か似ている蒼髪で眼鏡の少女、一夏によく似た小柄な少女、ポニーテールにした蒼髪と蒼い目が特徴的な褐色肌の少女、長い茶髪を首の辺りで一本に纏めた眼鏡の少女だ。

 

 

「……俺の子供達が迷惑を掛けたようだな?先ずは其れを詫びよう。」

 

「いや、武器を手にしていた此方にも非はある。この村に生き残りが居ると考えた以上、少なくとも見える形で武器をもって来るべきではなかった――私達が、見た目には丸腰であったのならば、襲撃されなかったかも知れないからな。」

 

 

男は此度の襲撃について詫びるも、なのはも『自分達の方にも落ち度があった』と言い、相手の方が一方的に悪かったとは言わず、結果として『今回の事は、双方落ち度があった』と言う形で済ませる事にしたようで、男も『そう言う事ならば』と納得したようだ。

 

 

「だが、其れよりも――お前は『鬼』か?」

 

「……如何にも。

 俺は『鬼』。名を稼津斗と言うが……その名前は今や一夏達以外に呼ぶ者は居ない。俺が『鬼』となって以降、人々は俺の事を恐れ、強き鬼『豪鬼』と呼ぶようになったからな。

 まぁ、其れは良い……その問いを聞くに、如何やら俺に用があるらしいから、詳しい話を聞くとしようか?立ち話もなんだから、俺達の家に案内しよう。

 一夏、刀奈、家に戻ったら客人に茶を用意しろ。夏姫と簪は、菓子の用意を。」

 

「「「「は、はい!!」」」」

 

 

なのはの問いに、男――稼津斗は答え、己が『鬼』だと言う事を認め、詳しい話を聞く為に己が暮らす家になのは達を招く――一夏達に、『家に着いたら、茶と菓子を用意しろ』と指示を出すのも忘れずにな。

 

で、稼津斗の案内で到着したのは、ハーメル村の跡地で一際大きな建物――村がライトロードによって滅ぼされる前は、村長宅として使われていた建物だ。

此処で稼津斗達は暮らしているのだろう……村の跡地にある、修復がされた建物は、居住スペースではなく、別の目的で修復されたのかもしれないな――此れだけの大きな家ならば、九人でも充分に生活出来るだろうからね。

 

そんなこんなで、その家の応接室に招かれたなのは達の前には良い香りのする緑茶と羊羹が用意され、なのはもクローゼも、そしてレオナも迷わずに緑茶を一口飲んだ――先程まで戦っていた相手から出されたモノを迷わず飲んで見せる事で、未だ自分達に対して警戒感を露わにしている一夏達の警戒心を解こうとしたのだ。

そして、其れは効果があったらしく、一夏達の警戒心は薄くなったようだ……『あの人達、普通に飲んだわよ?』、『俺達が、一服盛った可能性もあるのに。』、『私達を油断させる為には見えない。』、『本当に、アタシ達には敵意がないみたいだな。』と言った会話が聞こえてしまったのは御愛嬌かも知れないが。

 

 

「では、改めて自己紹介をしようか?私の名は高町なのはだ。」

 

「クローゼ・リンツです。」

 

「……レオナ。」

 

 

茶を一口飲んだ所で、先ずはなのは達から自己紹介だ。名前だけを言って、此処に来た目的を言わないのは、一気に情報を出すべきではないと思ったからだろう。

 

 

「なのはに、クローゼに、レオナか。覚えたぞ。

 では、改めてこちらも……とは言っても、俺は既に名乗っているから、お前達も彼女達に名を名乗れ。相手が名乗ったのに、此方は名乗らないと言うのは無礼となってしまうからな。」

 

 

其れを聞いた稼津斗も、一夏達に名を名乗るように言う――一夏だけは、なのはに尋ねられて答えていたのだが、稼津斗に『もう一度名乗り直せ。』と言われ、もう一度名を名乗る事になったのは致し方ない事か。

 

 

「そんじゃ、改めて。俺は一夏。織斑一夏だ。」

 

「……マドカ。織斑マドカ。」

 

「私は、更識刀奈よ。宜しく。」

 

「更識簪。刀奈の妹……と言っても双子だけど。」

 

「ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーです。」

 

「グリフィン・レッドラムだよ。」

 

「蓮杖夏姫だ。」

 

 

一夏が改めて名乗ると、他のメンバーも己の名を名乗る。

クローゼを強襲した蒼髪で赤目の少女は『刀奈』、レオナを強襲した緑髪で褐色肌の少女は『ヴィシュヌ』、蒼髪で眼鏡を掛けた少女は『簪』、一夏によく似た小柄な少女は『マドカ』、蒼髪をポニーテールにした褐色肌の少女は『グリフィン』、長い茶髪を一本に纏めた少女は『夏姫』と夫々名乗った。

 

 

「私の名は、ロランツィーネ・ローランディフィルネィさ。以後お見知りおきを。」

 

 

最後に銀髪をショートカットにした少女が名乗ったのだが……

 

 

「「え?」」

 

「?」

 

 

その名はとても長い上に、最後の方が非常に聞き取り辛かったのか、なのはとクローゼは思わず声が出てしまい、レオナは無表情のまま首を傾げる事態に……名前の長さならば、クローゼの本名も相当に長い十五文字だが、この少女は更に長い十八文字、しかも若干発音し辛い部分が有るので仕方ないかも知れないが。

 

 

「あぁ、私の名前は矢張り分かり辛いか……性のローランディフィルネィの時点で既に分かり辛いと言うのに、何故私の両親は更に長い名を付けたのか未だに理解が出来ないよ。

 とは言え、この名は今は亡き両親が付けてくれたモノだから気に入ってはいるさ……特徴的な名前の割に覚えて貰えないと言う哀しさはあるが。

 だが、私とてこの長い名を呼ぶのは大変だろうとは思っている――だから、私の事は『ロラン』と呼んでおくれ。一夏達も、私の事はロランと呼ぶからね。」

 

 

『ロランツィーネ』と名乗った少女は、芝居掛かった仕草で己の事は『ロラン』と呼んでくれと言って、お互いに自己紹介は終了だが、ロランの芝居掛かった仕草が実に見事だったので、なのはもクローゼもレオナも思わず拍手を送り、ロランもまた舞台俳優が拍手を送ってくれる観客にするように礼をしていた……数分前までガチで戦っていたとは思えない馴染み具合と言えるだろう。

 

 

「さて……お前達は何が目的で此処に来た?まさか、物見遊山ではないだろう?ライトロードによって滅ぼされた村に、見るべき所などないからな。」

 

「……私の目的はお前だよ稼津斗。そして、お前だけでなく『鬼の子供達』も此処に来た目的だ。」

 

「俺と、俺の子供達が目的、だと?」

 

「そうだ。

 回りくどいのは好きではないので単刀直入に言うが、お前達全員、私の仲間にならないか?」

 

 

自己紹介が終わった後、稼津斗はなのは達に『此処に来た目的はなんだ?』と聞いたが、なのはは其の答えとして行き成りド直球のストレートを投げ込んで来た。

なのはは『回りくどいのは好きではない』性格なのだが、それでも駆け引きとかそう言うモノを半ばガン無視してド直球を投げ込んで来る奴は早々居ないだろう。

逆に言うなら、だからこそ相手に響く物があるとも言えるのだが。

 

 

「俺達を仲間に、だと?」

 

「稼津斗よ、そして鬼の子達よ、此の世は理不尽と不条理に満ちているとは思わないか?

 戦争によって家族を喪った者、ライトロードによって家族を殺された者――そして、種族による差別と、余りにも理不尽で不条理な事が多過ぎるだろう?此のハーメル村も、理不尽に滅びてしまった場所だ。

 そして、私もまた神族と、魔王の座を狙っていた魔族によって母を殺され、ライトロードによって父と姉を殺された過去がある――故に、奴等への復讐心はあるし、復讐は必ず成し遂げるが、其れ以上に、私は理不尽と不条理に満ちた此の世界を変えたいと思っている。

 魔族も神族も人間も、種の違いなど関係なく平和に暮らせる世界を作りたいんだ。その為に、お前達の力を私に貸して欲しい。」

 

 

『自分達を仲間に』と言う提案を怪しむ稼津斗に対しても、嘘偽りのない本心を曝け出す――『魔族は嘘を吐けない』と言う特徴は、なのはにも受け継がれてるので、なのはの言っている事には一切の嘘偽りはないのだ。魔族にとって『嘘を吐く』と言うのは、死活問題だから。嘘がバレた魔族は、その瞬間に消滅してしまうのだからな。――二千年前にスパーダが制定した『魔族の法』は可成り厳しいみたいだ。

 

だが、このなのはの話に誰よりも反応したのは、稼津斗ではなく、一夏だった。

 

 

「アンタもライトロードに家族を殺されたってのか?……って事は、アンタが暮らしてた場所もハーメルと同じく壊滅したって事か?」

 

 

一夏はハーメル村の数少ない生き残りだが、『鬼の子供達』が生き残る事が出来たのは、実は一夏が妹のマドカと仲間を、稼津斗が封印されていた『鬼の祠』まで連れて来た事が大きく、もしも逃げる事が出来ていなかったら一夏達は間違いなくライトロードに殺されていただろう――それだけに、一夏はなのはもまたライトロードの被害者であった事に敏感に反応したのだろう。そして、暮らして居た場所も壊滅したのだろうと予想したのだ。

 

だが、なのはは一夏の問いに首を横に振って異を示すと……

 

 

「私が暮らしていた村は壊滅していないよ……その村の人間は、父が魔族だと知った瞬間にライトロードに加勢して、私達を殺す側に回ったのだ――其れまでは、父の事を慕っていたくせにな。」

 

「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」

 

 

一夏の予想以上の答えを返して来た。

なのはが暮らしていた村は、確かにライトロードの襲撃を受けたが、なのはの父である不破士郎が魔族であると言う事を知った村民は、此れまで好意的に接していた態度を一変させて、ライトロードと共になのは達を殺しに掛かったと言うのだ。

 

 

「なん、だよ其れ?魔族と分かった瞬間に手の平返しをしたって事か?ふざけんなよマジで!!」

 

「……下衆だな。」

 

「理不尽とか不条理って言うレベルではないわ……その村の住人は、心底性根が腐り切ってるとしか言いようがないわ!魔族だと知ったら殺すだなんて……!!」

 

「ライトロードは許せないけど、其れと同じ位その村の住民も許せない。」

 

「魔族は決して悪ではないと言う事は稼津斗さんが教えてくれました。封印される前に魔族の武人と戦い、闇の住人ではあるけれど誇り高き者達が多かったと……」

 

「魔族と悪魔は違うと言う事を、まだ多くの人が理解出来ていない……魔族とは基本的に誇り高き闇の住人であり、悪魔とは本能のままに破壊と殺戮を行う存在だからね?

 そうであるにも拘らず、魔族と知った瞬間にライトロードと共に殺す側に回るとは……その村の住民は、人の皮を被った醜悪な化け物だな。」

 

「或は、ライトロードに加勢せねば自分達も殺されると思ったのかもしれないが、自己の保身の為に他者を犠牲にするなど心底反吐が出る行為だ……同じ人間として恥ずかしいぞ……!」

 

「でも、やっぱり許せないのはライトロードだよ!『魔族排斥』って言ってるくせに、ハーメル村は私達を残して全滅させたんだもん!魔族だけじゃなくて、人も殺してるじゃん!なのはさんだって、ライトロードさえ来なければお父さんとお姉さんは死なずに済んだ訳だし……ライトロード許すまじ!!」

 

 

其れを聞いた一夏は、『信じられない』と言った顔をした次の瞬間には怒りを顕わにし、他の少女達も夫々の想いを口にしながらも怒りを顕わにする……業火の怒りに静かな怒り、抑えきれない怒りとタイプは様々だったが、自分達もライトロードによって奪われた側だからこそ、なのははある意味で自分達と同じか、其れ以上の経験をした事を感じ取ったのだろう。

 

 

「成程な……ライトロードによって父と姉を殺されたと言うのは分かったが、お前は神族と魔王の座を狙う魔族によって母を殺されたと言っていたな?其れは一体?」

 

「母は、神族の中でも特に強い力を持った『六大熾天使』の一人で、二十年以上前に起こった外界からやって来た侵略者との戦いの際に、父と共に種族の垣根と言うモノを越えて力を合わせて侵略者を退け、そしてその事が切っ掛けで父と愛し合うようになり、やがて結ばれた。

 だが、神族の連中は母の功績は一切考えずに『魔族と結ばれた』と言う理由で母を天界から追放した!

 そして天界を追放された母は、私達と共に魔界で暮らしていたが、父が不在の時に魔王の座を狙う野心家の魔族が寄越した暗殺者によって殺されたんだ……あの程度の相手、母が本気を出せば返り討ちに出来ただろうが、まだ幼かった私と妹を守る為に母は己を盾にして、そして暗殺者を道連れにして死んだ。

 母を殺した暗殺者を送り込んだ野心家の魔族は、父によって粛清されたが、そもそもにして神族が母を追放しなければ母が殺される事はなかった……そして、父によって粛清された魔族は、粛清されはしたが未だ生きているのでな……奴等は纏めて私が何れ断罪してやるがな。」

 

 

そして稼津斗の質問に答える形でなのはの口から語られたのは、更なる衝撃の事実だった……其れは、此の世界では知らぬ者は居ないであろう、魔王・不破士郎と、六大熾天使・高町桃子のラブロマンスであり、そして多くの人が知らないであろうその悲劇の結末だったのだから。

 

 

「俺が思っていた以上に、重い過去がある様だ……其れこそ、お前の心は憎しみで満ちていてもオカシク無いだろう。

 だが、お前は確かに復讐心を持っているにも拘らず、復讐をして終わりではなく、理不尽のない世界を作りたいと言う復讐の先を見据えているのは何故だ?どうしてお前は、復讐心に心を蝕まれていない?」

 

「……其れは彼女、クローゼのおかげだよ。

 十年前、行き倒れかけていた私に、クローゼは手を差し伸べてくれた。回復系のアーツで私を癒し、食べ物と金を渡してくれた……魔族の証の一つの『黒い翼』を持っていたにも拘らずだ。

 私は、クローゼの真なる『慈悲の心』に触れた事で、復讐心に蝕まれずに済んだ……もしもクローゼと出会ってなければ、私は復讐心に突き動かされるままに、無差別の殺戮を行う破壊者になっていたかも知れん。」

 

 

更に、己が『復讐心に蝕まれていない』理由も話す。仲間にしようと思っている相手には一切の隠し事は無しと言う事なのだろう。

 

だが、だからこそなのはの言う事は『鬼の子供達』には響いた。

 

 

「アンタも俺達と同じ目に遇っても、復讐だけじゃ終わらないのか……良いぜ、俺はアンタの提案を受ける!理不尽のない世界の実現に協力してやろうじゃねぇか!」

 

「……私も、やる。」

 

「そうね……私達みたいな思いをする人達が此れ以上出ないためにも!」

 

「貴女の理想には共感出来る所が多いから、私達も協力する。」

 

「魔王と六大熾天使の血を引く者と共に世界に変革をもたらすもまた一興……私達の力で良ければぜひ使っておくれ!!」

 

「全ての理不尽と不条理を排除して、平和な世界と言うのは、とても良い事だと思いますから。」

 

「その理想を実現する為になら、幾らでも力を貸すよ!!」

 

「全ての種が偏見や差別がなく暮らせる世界か……普通ならば『夢物語』と笑い飛ばす所だが、貴女ならば其れを夢物語で終わらせる事はないと感じた――私達の力で良ければ存分に使え。」

 

 

一夏をはじめとした全員が協力の意を示したのだ。

幼くして全てをライトロードによって奪われた一夏達だからこそなのはの想いと理想に共感出来たのだろう――理不尽と不条理による偏見さえなければ、一夏達も此の様な目には遭っていなかったのだからな。

 

 

「なのはさん……!」

 

「仲間が増えた。」

 

「あぁ、『鬼の子供達』は仲間になってくれるらしいな。」

 

 

一夏達は、なのはに協力の意を示すと、なのはは満足そうな顔をし、そして稼津斗を見やる。稼津斗だけは、己の意を示して居ないので当然と言えば当然の事かもしれないが。

 

 

「さて、『鬼の子』は私に力を貸してくれるようだが、お前は如何する稼津斗?」

 

「お前の理想、確かに素晴らしきモノだとは思うが、逆に言うのならば理想だけを掲げた弱者の戯言の可能性も否定は出来ん……だから、お前の力を先ずは見極めさせて貰うぞ?

 此の俺が力を貸すに値するか否か……其れを見させてもらう。」

 

「……言ってくれるじゃないか。良いだろう、お前の提案を受けてやる。」

 

 

だが、稼津斗はすんなりと仲間になる気はないらしく、なのはに『力を貸すに値する相手かどうかを見せて貰う』と来た。

普通なら『挑発されている』、舐められていると思うモノだが、なのはは稼津斗の提案をアッサリと受け入れた――封印されていた『鬼』を仲間にするのは、そう簡単な事ではないと考えていたので、此れ位の事は予想していたのだろう。

 

稼津斗の家から外に出ると、開けた場所まで移動し、其処でなのはと稼津斗は向き合い、なのははレイジングハートを構え、稼津斗も左手を腰に、右手を顔の下辺りに置いた構えを取り(イメージはストリートファイターZEROシリーズの豪鬼のニュートラル。)何時でも戦える状態だ。

 

 

「高町なのは、お前の最も得意とする技を俺に打って来い。その一撃を持ってして、俺が力を貸すに値する相手かを見極めさせて貰うぞ。」

 

「私の得意技をか……最強の技と言わない所にお前の真意を感じるぞ稼津斗よ――最強の技が強いのは当然の事だからな。最強技よりも得意技が如何程かと言う事の方が相手の実力を見極める事が出来るからね。

 だが、そう言う事ならば出し惜しみなく行かせて貰う――レイジングハート!」

 

『All right.Master.』

 

 

稼津斗の言葉の真意を理解したなのはは、レイジングハートを稼津斗に向けて魔力を集中し、レイジングハートの先端には桜色の魔力球が形成されて行く……此れぞなのはの得意技である直射魔力砲『ディバインバスター』だ。

己の目的を果たす為には、まず強くならねばならないと思ったなのはは、レイジングハートを手に入れたその日から徹底的に魔法の鍛錬を積み、自分が『遠距離の砲撃型』だと分かってからは、徹底的にその才能を伸ばす事に勉め、砲撃と射撃の能力を高めると共に自身の防御力を高め、一瞬の高速移動を磨く事で『前衛が居なくとも単騎で戦える遠距離砲撃型』と言うトンデモナイ戦闘スタイルを確立し、其の中で生まれたのがこの技であり、なのはが絶対の自信を持つ得意技なのだ。

 

 

「此の一撃、お前に受けられるか稼津斗よ?行くぞ!ディバイィィィィン……バスタァァァァァァァァァァ!!」

 

『Divine Buster.』

 

 

「滅殺……!!」

 

 

レイジングハートの先端から桜色の砲撃が放たれて稼津斗に向かい、稼津斗も両手に気を集中すると内に眠る『殺意の波動』を発動して強烈な気功波を放つ――殺意の波動を発動した稼津斗は、髪と目が赤くなって目からは黒目が消え、肌も浅黒くなって『鬼』と言える姿に成っていたが。

 

ぶつかった魔力砲と気功波は何方かが押し込むと言う展開にはならずに完全に拮抗した状態となった……なのはは魔力を、稼津斗は気を更に送り込むが、それでもこの拮抗状態は変わらず、二つの異なるエネルギーがぶつかっている場所では火花放電が起き、余波で地面が抉られている。それだけで、なのはと稼津斗がドレだけの力を持っているのかが分かると言うモノだ。

 

 

 

――バガァァァァァン!!

 

 

 

だが、余りにも大きな力がぶつかり合った結果、エネルギーが飽和状態になり、遂にはエネルギーの衝突地点が限界を迎えて爆発を起こして周囲に粉塵が舞う結果に……だが、粉塵が晴れるとなのはも稼津斗も無傷だった。

 

 

「ふ……」

 

「ふむ……」

 

 

なのはも稼津斗も、其の顔に浮かぶのは笑みだ。

 

 

「今の一撃、申し分ない!俺の滅殺剛波動と拮抗する一撃を放てる相手は、お前が初めてだ!」

 

「其れは私もだ。私のディバインバスターを真正面から相殺したのはお前が初めてだよ稼津斗……して、私の力はお前の眼鏡に適ったかな?」

 

「無論だ……お前ならば、その理想を必ず実現出来るだろう!その理想を実現する為に俺の力が必要だと言うのならば、存分に使え!」

 

 

この全力のぶつかり合いで、稼津斗はなのはの力を認め、己の力を貸す事を決め、そして此れによってなのはは目的であった『鬼』と『鬼の子供達』を仲間とする事が出来た訳だ。

 

 

「頼もしい仲間が増えましたね、なのはさん?」

 

「あぁ、此れで理想を果たす為に一歩前進したよ。」

 

 

此れにより、リベリオンの戦力は増強され、なのはとクローゼの理想を実現する為に一歩前進したと言えるだろう――その後、一行はリベリオンの拠点に向かった。

空を飛ぶ手段がなければ辿り着けないリベリオンの拠点なのだが、稼津斗達は全員が気を操って空を飛ぶ術を会得していたので問題はなかった。……そして、拠点では、クリザリッドとシェンが模擬戦と言う名の喧嘩をしていたので、なのはがバスターをぶち込んで強制的に終わらせた。

 

その後で、稼津斗達の紹介になったのだが、全員がリベリオンの新た仲間として受け入れらた……リベリオンのメンバーは来る者拒まずなのだ。

そしてその夜は、新たな仲間を歓迎する宴が行われ、反逆者達の拠点は大いに盛り上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

・リベール王国ツァイス地方、レイストン要塞

 

 

リベール王国の軍事施設としては最大規模のこの要塞には、デュナンからの通信が入っていた。

 

 

『ええい!クローディアを城から連れ出した賊の行方は未だ掴めんのかリシャール!!』

 

「情報部の総力を結集して探していますが、未だにその足掛かりは掴めておりません……クローディア殿下が攫われた時間帯が夜だと言うのも厄介でして、夜の闇に紛れてしまい、その詳細が掴めないのです。」

 

 

デュナンからの通信に、レイストン要塞の最高指揮官である『アラン・リシャール』は今現在の状況を伝えると『引き続き調査を続行します』と言うと通信を切り、溜め息を一つ吐く。

 

 

「陛下は、随分と焦っておられるようですね大佐?」

 

「あぁ、相当に焦っているみたいだよクラリッサ君……デュナン陛下にとって最も恐れる相手はクローディア殿下だったからね――故に幽閉していたのだが、其の殿下が幽閉状態から解き放たれたと言うのは、陛下にとっては脅威以外の何物でもないさ。

 クローディア殿下の人気は絶大だからね……殿下が、己を解き放ってくれた女性と共に戦力を整えてリベールに攻め込んできたら、民衆の多くは殿下の味方になる筈だから。」

 

「成程、納得です。」

 

 

リシャールの側近の眼帯の女性、『クラリッサ・ハルフォーフ』とそんな会話を交わしながらも、リシャールはこの先に待っている事態を予想していた。と、同時にその時が来たら、クローゼに加勢する事をリシャールは決めていた。

 

そう、リシャールは秘密裏にデュナンを倒してクローゼを王にする計画があったのだ――そう言う意味では、クローゼがなのはによって女王宮から連れ出されたと言うのはリシャールにとっても好都合だったと言えるだろう。

 

なんにしても、なのはが反逆の牙を研いでいる時に、リベールでは水面下での動きが加速しているのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 

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