黒き星と白き翼   作:吉良/飛鳥

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ふむ、今回は出番無しかByなのは      偶にはそう言う事もありますよByクローゼ


Chapter68『邂逅せし悪意。されど揺るがぬ意思と力』

転移魔法によって強制的に転移させられたエスエル達が降り立ったのは、先程まで居た施設とあまり変わらない場所だった。

違うところと言えば、此の場所の方が照明が明るいと言う事だろうか?

 

 

「此処は……?」

 

「ふふ、無事に此処に来てくれたみたいだな?」

 

「テメェは、ミスX!!」

 

 

状況がよく呑み込めていない一行の前に前に現れたのは依頼主であるミスX。

仮面に隠された素顔は見えないが、其れでもエステル達をこの場に連れて来れた事に満足しているようだった――尤も其れは、教授とドクターからの任務を達成出来たからなのだが。

 

 

「テメェ、俺達をどうする心算だ?」

 

「生憎と、私はその問いに対する答えを持ち合わせていない――だが、其の答えを持っている人物の下に此れから案内するから、聞きたい事は直接聞くと良い。ついてこい、こっちだ。」

 

 

京の問いに答える事は無く、ミスXは一行をある場所へと案内する。

胡散臭い事この上ないが、此処が何処であるのかも分からず、自分達を此処に転移させた人物のもとに案内すると言われたら、一行は付いて行く以外の選択肢は存在していなかった――逆に言えば、付いて行った先で邂逅した人物に聞きたい事を全部聞いた上でぶちのめしてやると言うバイオレンスな思考も少しはあったのかも知れないが。

 

 

「私達をどうする心算かは貴女は知らなくても、此処が何処かは知っているんでしょう?せめてそれだけでも教えてくれない?」

 

「ふむ……妥当な意見だねエステル・ブライト。

 だが、『何処』と特定の場所を言う事は出来ないな?現在この方舟『グロリアス』はリベール王国の上空30kmを飛行中なのだから。」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

その道中でエステルがミスXに対して行った質問の答えはなんとも絶望的なモノだった。

高度30㎞と言うのは何の装備も無しに人間が生きていられる環境ではなく、飛行魔法や武空術を使ったところで即座に酸欠と低体温症に陥ってしまう場所であり、つまり一行はこの船からの脱出は不可能と言う事を知るに至ったのだ。

加えてミスXは『グロリアスの表面は特殊なステルス迷彩が展開されているから物理的に発見する事も、索敵魔法で発見する事も出来ない』と、ダメ押しの一言を言って来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒き星と白き翼 Chapter68

『邂逅せし悪意。されど揺るがぬ意思と力』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスXに案内されて到着したのは、ちょっとしたホールくらいの大きさの部屋であり、その部屋の奥には巨大なパイプオルガンが存在しており、何者かがそのパイプオルガンを演奏している。

そして奏者のすぐ隣には、白衣を纏った紫色の髪をした男の姿も。

 

 

「教授、ドクター、エステル・ブライト達を連れて来たぞ?」

 

「うむ、ご苦労だったミスX。」

 

 

一行が到着した事を聞くと、奏者は演奏を止めて紫髪の男と共に向き直り、その容姿が明らかになる。

パイプオルガンを演奏していたのは眼鏡を掛け、髪をオールバックにした男で、紫髪の方は金色の目が特徴的な男だった――何方も、その顔には隠そうともしない悪意が張り付いては居たが。

 

 

「テメェ等が教授とドクターか?……どっちが教授でどっちがドクターかは知らねぇけど。」

 

「ククク、ではまずは自己紹介と行こうか?

 私の名は『ゲオルグ・ワイスマン』。教授と呼ばれているよ。」

 

「そして私がドクターこと、『ジェイル・スカリエッティ』!ようこそ、我等の方舟に!君達を歓迎しよう!!」

 

「歓迎しようって、こっちは強制的に招かれたんだけどよ?」

 

「望まぬ招待では、歓迎されたとて素直に喜ぶ事は出来なさそうだ。」

 

 

ドクターことスカリエッティの『歓迎しよう』との言葉にノーヴェとアインスが少し棘を含んだ言い方で返したが、其れは一行の総意とも言えるだろう――京もエステルもヨシュアも『其の通りだ』と言わんばかりに頷いているのだから。

 

 

「此れは中々に手厳しい……だが、父親とも呼ぶべき相手に対してその態度は如何なモノかな?」

 

「父親、だと?誰が、誰のだ?」

 

「考えずとも分かるだろう?

 君達五人の中で血の繋がった親が存在しないのはアインス・ブライト、そしてノーヴェ、君達二人だけなのだから……そう、アインス・ブライトはプロフェッサーが、ノーヴェは私が過去に作り出した存在だったのだよ。」

 

 

だがそんな事はお構いなしにワイスマンとスカリエッティは特大の爆弾を投下して来た。

確かに現在アインスとノーヴェに血の繋がった親は存在していない――アインスは十年前にカシウスがブライト家に連れ帰って来てブライト家の一員になっており、ノーヴェは六年ほど前にロレントにふらりとやって来たストリートチルドレンで、教会で保護されて数年過ごした後に、現在はロレント郊外の『パーゼル農園』で住み込みで働きながら格闘技の修行をしているのだ。

だが其れ以上に一行を驚かせたのは、アインスはワイスマンに、ノーヴェはスカリエッティに作り出された存在だったと言う事だ。

 

 

「作り出された存在、ね……其れが何だってんだ?」

 

 

だがしかし、京は『だから何?』と言った感じでワイスマンとスカリエッティに返す。

 

 

「分からないかね草薙京君?

 彼女達は私達によって作られた存在……つまり普通の人間ではないのだよ!」

 

「普通の人間ではない、ね……なら逆に聞くがよ、普通の人間の定義ってのは何だよ?

 生憎とロレントにゃ普通の人間じゃない奴が多過ぎて、逆に普通の人間の定義が分からねぇんだよな?ジェニス王立学園を諸々の事情があって二ダブして卒業した俺にも分かるように説明してくれ。」

 

「そう言えば、ロレントって人外魔境と化してたよね……」

 

「そして其の筆頭がアタシの父さんなのよねぇ……あの親父、本当に人間なのか実の娘ながらとっても疑問だわ。」

 

「炎殺黒龍波を喰らう時点で最早人間じゃないんじゃなかろうか?」

 

「カシウスさんは、俺が大蛇薙→百八拾弐式→無式のコンボを叩き込んでも倒せる気がしねぇんだよなぁ……だけどまぁ、カシウスさんとは別の意味で人間じゃねぇのは八神だろ?」

 

「あ~~……其れは否定出来ねぇわな。うん。」

 

 

『普通の人間の定義とは何か?』と京に問われたワイスマンとスカリエッティは答えに窮した――普通の人間の定義が何であるかは、此の二人にも明確に答える事は出来なかったからだ。

 

 

「そんで、そんな事を伝える為に態々俺達を此処に連れて来たのかい?……だとしたら時間の無駄遣いも良い所だぜ。」

 

「ふむ……確かに君の言う通りだ。

 まぁ、彼女達が作られたと言うのは真実を教えて上げようと言う親心と言う奴だと思ってくれたまえ……そして君達全員が彼女達の事を知った訳だが、君達全員私達の同士になる気はないかね?」

 

 

そんな二人に対して少し挑発気味に京が言えば、ワイスマンも挑発には乗らずに本題を切り出して来た――其れは『自分達の同士にならないか?』との、まさかの勧誘であり、此れには此処に連れて来られた全員が驚く。

アインスとノーヴェだけならば、自分達が作り出した存在なので未だ分からなくもないが、京、エステル、ヨシュアの三人に関してはその意図が読めないと言った感じだろう。

 

 

「アタシ達がアンタ達の同士に、ですって?ゴメン、意味が分からない上にスッゴク嫌なんですけど。」

 

「京さんはアインスさんの恋人でノーヴェの師匠。エステルはアインスさんの妹で、僕はエステルの恋人……一応集められた人間はアインスさんとノーヴェに関係があるけど、其れならレンと真吾も居ないと中途半端なんじゃないかな?」

 

「レンは兎も角、真吾はKOFで成長したとは言えマダマダだろ?少なくとも何時か火が出せると思ってる内は。」

 

「真吾さんって気真面目過ぎんだよなぁ……」

 

「その愚直な気真面目さが彼の良い所でもあるんだが……其れよりも、私達を同士にしたとしてお前達の目的はなんだ?」

 

 

京、エステル、ヨシュアの共通点は分かったモノの、此の五人を同士にしたとして目的が全く見えないのもまた事実。

そもそも此の五人は高い実力を有しているとは言え、だからと言ってたった五人を同士にしたからと言って何か途轍もなく大きな事が出来るかと言えば其れは否だと言わざるを得ないだろう。

如何にアインスが超広域殲滅魔法を使用出来るとは言っても、其れだって限界があるのだから。

 

 

「目的か……では聞かせて上げよう!

 私とプロフェッサーの目的……それは、この手で超人を作り上げ、その超人によって世界を支配する事!そして、その前段階として君達のコピーを大量に作り上げて一大軍隊を作り、エサーガ国と共にリベールに攻め込むのだ!」

 

「そしてリベールを陥落させた暁には高町なのは君とクローゼ・リンツ君……神魔と聖女の血を使って最強の超人を量産し、人間界、魔界、天界、悪魔界の全てを支配するのだよ!!」

 

「……オイ、コイツ等頭ヤバくないかヨシュア?」

 

「うん、普通にヤバいと思う……そんな事出来る筈ないのに、誇大妄想も此処まで来るとある意味尊敬に値するかもしれない。」

 

 

それに対し、スカリエッティとワイスマンはこれまたトンデモナイ事を言って来てくれたが、京とヨシュアだけでなく、エステルとアインスとノーヴェも『何言ってんのコイツ等?』、『見た目が怪しいだけでなく脳味噌もイカレていたか。』、『大丈夫かこのおっさん達?』と言った顔になっていた。

だがワイスマンもスカリエッティも、決して誇大妄想ではなく本気で其れが可能だと信じてるのだ。

 

 

「誇大妄想か……確かに話だけを聞けばそうかも知れないが、以前リベール国内で二つの大きな戦いに私達が関わっていると言ったら如何かな?

 デュナン前国王に悪魔を宿し、帰天の方法と悪魔の召喚術を教え、十年前に『鬼』によって壊滅状態となったライトロードを再生させたのが私達だとしても、其れでも誇大妄想と斬り捨てるかね?」

 

「あ、あんですってー!?アレってアンタ等の仕業だったの!?

 其れが本当なら誇大妄想とは言えないかもだけど、今のを聞いて絶対にアンタ達の同士になんかならないって決めたわよ!何処の誰が自分の住んでる国を滅茶苦茶にしようとした挙げ句に、また闘い続ける心算でいる奴に力を貸すもんですか!!」

 

 

デュナンの一件とライトロードの一件に自分達が関わっていると言う事を話すが、其れによって逆にエステル達が同士になる可能性はゼロになったと言えるだろう。

尤も、その話がなくとも同士になる気などサラサラなかった訳だが。

 

 

「威勢の良い事だが、自分達の今の状況をよく考えて返事をするべきだねぇ?

 此のグロリアスは飛行魔法や武空術では到達出来ない高度を飛行中……そして艦内にはアインス君やノーヴェ君の『姉妹』も多数存在しており、彼女達は私達の命令一つで直ぐに動く事が出来る上に、後期開発型なので性能はアインス君とノーヴェ君よりも高い。

 君達には逃げ場はないのだよ!」

 

「普通ならそうなんだろうが……だとしたら俺達、ってかアインスを舐め過ぎだろお前等?

 どうやって俺達を此処まで連れて来たか忘れた訳じゃないよな?……転移魔法を仕込んだ魔法陣ってのは驚かされたが、その魔法陣は一度喰らった事で覚えちまってるんだぜ、アインスはな!」

 

「つまり、そう言う事だ……無論、魔法陣に仕込まれていた転移魔法諸共な!」

 

 

状況的に逃げられる状況では無かったのは確かだが、其れもアインスが居るなら話は別だ。

魔界の炎を従える炎殺黒龍波や、伝説の武術家が編み出したマッスル・スパーク等は会得する為に修行を必要とするアインスだが、魔法の類であれば略一度見れば完璧にマスター出来るので、先程自分達を此の艦まで転移させた、転移魔法を仕込んだオレイカルコスの結界も一度で会得してしまったのだ。

そして、其れを即座に発動し、先程はエステル達を捕らえた魔法陣が、今度はエステル達を逃がす為に発動する。

 

流石に此れは予想していなかったのか、転移を止めるべくワイスマンとスカリエッティはアインスとノーヴェの『姉妹』を呼び出して、エステル達を捕えようとするが、オレイカルコスの結界に入ろうとした途端に見えない壁に弾かれてしまった。

 

 

「遊星のエース、スターダスト・ドラゴンの絶対防御障壁『ヴィクティム・サンクチュアリ』……龍の技を会得するのは大変だったが、会得した甲斐はあったな。」

 

「折角だから王様から借りたドラゴンを呼ぶ笛も使ってみようかしら?さて、どんなドラゴンが来てくれるのか楽しみだわ♪」

 

 

まさかの遊星のエース精霊の能力までもアインスは身に付けていた。

更に此処でエステルがなのはから『もしもの時の為に』と渡されたドラゴンを呼ぶ笛を吹く――艦内で吹いたにも拘らず、その音色はドラゴンに届いたようで……

 

 

――バッガァァァァァァン!!

 

 

『ショォォォォォォォォォ!!』

ライト・エンド・ドラゴン:ATK2600

 

 

グロリアスの外壁をブチ破って現れたのは純白の身体を持つ光属性のドラゴンだった――ドラゴンを呼ぶ笛によって呼び出されたドラゴンはオレイカルコスの結界内部に入り込んだのを見るに、アインスが味方だと判断した相手は出入りが自由なのだろう。

 

 

「そんじゃ、エステルが頼もしい仲間を召喚した所でお暇するぜ?……このドラゴンが艦体に風穴ブチ開けちまったが、まぁ精々墜落しないようにな?……お前等がどうなろうと知ったこっちゃないが、お前等から聞いた事は確りと王様に報告させて貰うからな?

 テメェ等としちゃ、絶対に逃げられない状況に俺達を追いこんで無理矢理同士にする心算だったんだろうが、少しばかり読みが甘かったな……リベールに戦争を吹っかけたいなら好きにしな。

 だが、攻めて来るって事を事前に知ってるならリベールの王様は完璧な迎撃態勢を整えるだろうからその心算でいろ――そして、あの王様は敵に対しては絶対に容赦しねぇからな!そんじゃ、あばよ!!」

 

 

そして次の瞬間に転移魔法が発動してエステル達はその場から消え去ったのだった――ワイスマンとスカリエッティの思惑はアッサリと敗れ去った訳だが、其れでも二人の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

「同士には出来なかったが、パーソナルデータは充分に採れた……此れならば彼等其の物ではなくともコピーは可能だろう。」

 

「劣化品になるのは避けられないが、劣る部分は幾らでも補えるから問題無しだ……其れでは、早速取り掛かるとしよう!」

 

 

如何やら最低限の目的は達成出来たらしく、次なる作業に取り掛かる様だった――そう遠くない未来にリベールに新たな戦火が巻き起こるのは略間違いないと言っても過言ではないようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でオレイカルコスの結界によってグロリアスから転移したエステル達は、何処か霧深い場所に転移していた――アインスも覚えたばかりの魔法だったので細かい場所は指定出来ず『リベールの何処か』に転移したのである。

 

 

「この濃霧……此処って若しかして『霜降り渓谷』?」

 

「八神の奴がめっちゃ喜びそうな場所だな其れは?レアで焼くのがお勧めですってか?」

 

「ゴメン、普通に間違えた……霧降渓谷よね此処?……全然視界利かないけど、ここまでくれば空を飛ぶ事が出来るから問題ないわよね!……行きましょう、グランセル城に!

 アイツ等のトンデモナイ企みを王様に伝えないとだから!」

 

「うん、そうだね!」

 

 

其処は一年中深い霧に包まれた『霧降渓谷』と言う場所だったのだが、霧が深かろうと空を飛ぶ事が出来る場所まで来たのならば問題はなく、一行はエステルが呼んだドラゴンに乗って一路グランセル城に向かうのだった――ワイスマンとスカリエッティの企みをなのはとクローゼに伝える為に。

ロレントの遊撃士協会に舞い込んだ一件の依頼は、リベール全土を巻き込む事態に発展して行くのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 

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