黒き星と白き翼   作:吉良/飛鳥

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日常の裏では色々ある、かByなのは      表も裏も平和にとは、中々行かないモノですねByクローゼ


Chapter71『夫々の日常と日常の果ての因縁と』

エサーガ王国がリベール王国に攻め入る準備をしている中でもリベールは今日も今日とて平和だった。――そしてそんな平和な王都の一角では、ルミナスがユーリに召喚魔法の手解きをしていた。

ライトロードの召喚士として生きて来たルミナスの召喚術は見事なモノなのだが、自分よりも多大な魔力を有しているユーリならば自身が至れなかった『究極召喚』に至る事が出来るのではないかと想い、ユーリに持てる全ての技術を継承しているのである。

 

 

「召喚魔法は仲間を呼び寄せる事も可能だが、その真髄は己の魔力を糧にして自然界に存在している精霊を呼び出す事にある――そして、呼び出す精霊は己の魔力の属性と同じである事が好ましい。

 異なる属性の精霊を呼び出す事も可能ではあるが、その場合はより多くの魔力を消費する事になる上に、精霊の力を十全に引き出す事は出来ないからね――私は光属性なので光属性の精霊を呼び出すのが一番力を発揮出来るが、お前の魔力は闇属性なので闇属性の精霊を呼び出すのが一番力を発揮出来る、其れは分かるな?」

 

「はい、分かりましたルミナスさん!」

 

「ではまずは私がお手本を見せよう……光より出でよ我が僕よ――鎌首を上げろ、光龍!!」

 

『『『『『シャァァァァァァァァ!!』』』』』

 

 

先ずはお手本としてルミナスが五体の光の龍を召喚して見せた。

『ドラゴンを呼ぶ笛』で召喚されたドラゴンと比べるとその身体は魔力体であり、実体を持つドラゴンと比べれば脆いのだが、魔力体であるので召喚士の魔力がある限りは破壊されても即再生すると言う驚異的な打たれ強さを持っているのが魔力の龍なのだ。

 

 

「さぁ、同じようにやってみなさい。」

 

「はい!……私の魔力は闇属性……なら、深き深淵より現れよ我が僕!鎌首を上げろ、闇龍!!」

 

『『『『『『グオォォォォォォォォォ!!』』』』』』

 

 

ルミナスの真似をしてユーリも闇属性の精霊を召喚したのだが、現れたのはルミナスが召喚した光の龍を上回る力を持った闇の龍達だった――数に関してもルミナスが五体だったのに対してユーリは六体召喚したので、ユーリの方が魔力が大きいのは間違いないだろう。

とは言え、召喚魔法はまだまだ未熟であり、召喚した精霊を制御し切れなかったので、其処はルミナスがサポートしていたのだが、其れでもユーリが召喚士としても高い能力を持っていたと言うのはリベールにとっては嬉しい誤算だっただろう。其の力を制御出来るようになれば、其れはとても心強い戦力となるのだから。

古の魔導書に、拍翼、そして召喚魔法まで会得したとなったら、最早ユーリは敵なしの存在になるのかも知れない――尤も現在のリベールは、王であるなのはを筆頭に『コイツ一人で大体何とかなるんじゃないか?』と言いたくなる猛者が両手の指では足りない程居るので今更かも知れないが。

 

 

「シェン、彼女は本当に只の子供なのか?」

 

「知るかよそんな事……逆に俺が聞きてぇっての。」

 

 

取り敢えずユーリの秘めている力はトンデモないのは間違い無さそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒き星と白き翼 Chapter71

『夫々の日常と日常の果ての因縁と』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、なのははレイストン要塞に出向いて、リシャールやクラリッサと共にリベールが外国から攻撃された際にどう対処すべきかを話し合っていた――宣戦布告を受けたのならば未だしも、宣戦布告も無しに戦いを仕掛けられたら、其れこそ国を焼きかねないので、何時何処で戦火が上がっても其れに対応出来るようにしておく必要があったのだ。

 

とは言え、不動兄妹によって開発された超高性能レーダーがあれば、リベールに許可なく入ってこようとしている航空機も船も一発で分かるので、即対応も出来るのだが、其れもある程度のマニュアルに纏めているからこそ出来るモノなのだ。

 

 

「レーダーシステムが侵入者を感知してから軍が動くまでの時間が長いな……もっと速くする事は出来ないかリシャール?」

 

「現在のシステムでは此れが精一杯かと……レーダーが侵入者を感知すると同時に此方に何らかの連絡が入るような装置でもあれば話は別なのですが……此ればかりは簡単に如何にか出来る問題ではありませんので。」

 

「直結の連絡システムか……ならば改めて不動兄妹に頼むとしよう。

 最近少しばかり頼り過ぎている気がしなくもないが、彼等に任せておけば絶対に大丈夫だからな……私のレイジングハートも、メンテナンスを頼んだら、メンテナンスするだけではなく強化してくれたからな。」

 

 

現在はレーダーが感知してから其れを軍が知るまでに大幅なタイムラグがあるのだが、其れも不動兄妹に頼めば即改修してくれるので大きな問題とはなりそうになかった。

其れからリシャールと緊急時の対応に関してツメを行い、最終的には王国軍のマニュアルの基礎を作るに至り、そしてなのははグランセル城に戻って来たのだが――

 

 

「冗談じゃねーくらいに疲れたの。」

 

「お疲れ様ですなのはさん。」

 

「なのはママ、お疲れ様!」

 

 

王の間に入った瞬間にベッドに突っ伏した。

嘗てはリベリオンと言う巨大組織のリーダーだった事もあり、なのはは人を引っ張って行く力があるのでリベールの新王としては相応しいと言えるのだが、私設組織のリーダーと一国の主では背負う責任の重さがハンパなモノではなく、苦手なデスクワークや会議なども行わねばならなかったので、なのはは時々口調が崩壊する位に疲れる事も少なかった。

其れでも一晩寝れば完全回復してしまうのが流石は神魔と言ったところだろうか。

 

 

「取り敢えず一息吐きましょうなのはさん?良い時間ですのでお茶にしませんか?今日はヴィヴィオが手作りのビスケットを焼いてくれたんですよ。」

 

「そうなのか?其れは楽しみだな。」

 

「クローゼママに習って作ったから味は保証するよ♪」

 

 

そんななのはを労うようにクローゼが『ティータイム』を提案し、なのはも其れを受け入れたので、空中庭園はあっと言う間に『午後のティータイム』の突入し、なのは、クローゼ、ヴィヴィオのカップには最高級の茶葉とパーゼル農園直送のミルクを使った『ミルクティー』が注がれ、バスケットにはヴィヴィオの手作りのビスケットが盛られていた。

ヴィヴィオ手作りのビスケットは大きさは不揃いで、何を模したのか分からない形のモノもあったが、一生懸命作ったと言う事は伝わる一品となっていた。

 

 

「動物を模ったのか?此れは……クマか?」

 

「なのはママ、其れはネコ。」

 

「えっと、此方は馬でしょうか?」

 

「其れはキリンだよクローゼママ。」

 

 

成型技術に関してはマダマダこれからではあるが、クローゼに習ったと言うだけあって味の方はやや甘めではあったが充分に及第点レベルであり、なのはが桃子の作った完璧とも言える菓子の味を知らなかったら満点評価をしていた事だろう。

 

 

「今回は動物の目を再現するためのトッピングとしてチョコチップを使ったのは良いアイディアだったな?チョコチップは初心者のトッピングとしても使い易いからね。

 だがビスケットのトッピングは無限にあるから生地の味との組み合わせでどんなモノでも作れるから覚えておくと良い。チョコチップやナッツの他に、薄く延ばした生地にゴマを付けて焼いても美味だ。

 更に、生地に砂糖の代わりに塩を入れる事でしょっぱいお菓子にする事も出来る――その場合はビスケットではなくクラッカーと呼ぶのだがな。」

 

「クラッカーって、ヒモ引っ張って『パーン!』って鳴る奴じゃないの?」

 

「……確かに、アレもクラッカーと言いましたね……」

 

 

午後のティータイムは政治やら何やらは一切話題にせずに、お菓子の事や格闘技、魔法なんかの話題で団欒の時を過ごした――ヴィヴィオ手作りのビスケットの中に『五個集めて一つのビスケットになるエクゾディアビスケット』を見付けた時には、なのはもクローゼも思わず吹き出してしまった。

集めて出来上がったエクゾディアが二頭身の超デフォルメされた姿だったのもツボに入った様だった。

 

こうして和やかなティータイムを過ごした後でなのははグランセルアリーナに向かい、親衛隊の訓練に顔を出したのだが、其処では予想外の光景が目に入って来た。

 

 

「滅!」

 

「此の短期間で殺意の波動を此処まで飼い馴らすとは驚くべき事よ……!」

 

 

殺意の波動に目覚めた一夏と殺意の波動を発動した稼津斗が略互角の勝負を行っていたのだ。

しかも一夏はギリギリのラインではあるが殺意の波動に飲まれずに理性を保っているのである……稼津斗ですら殺意の波動の殺戮衝動を抑え込んでその圧倒的な力のみを使えるようになったのに百年以上有した事を考えると、一夏が此の短期間に殺意の波動をある程度制御出来るようになったと言うのは驚異的な事だろう。

 

 

「滅殺……!」

 

「真の力、見せてみよ!」

 

 

その戦いのラストは互いに瞬獄殺を放ったのだが、此処は流石に技の練度で稼津斗が上を行って競り勝つ結果となり、一夏はKOされて殺意の波動が強制解除となっていた――が、一夏が殺意の波動をある程度使いこなせるようになったと言うのはリベールにとっては大きな事だろう。

其の後はなのはが親衛隊を相手に模擬戦を行ったのだが、その模擬戦は阿鼻叫喚の地獄絵図とも言って差支えないモノだった――既にトレーニングを終えていた親衛隊長のユリア、隊員のレオナ、刀奈、ロラン、ヴィシュヌ、グリフィン、夏姫、マドカ以外の親衛隊員は全員でなのはに掛かるも、誘導弾で翻弄された所で全員がバインドで拘束された上で(超手加減はしたが)SLBを叩き込まれてKOされてしまったのだから。

一つだけ言わせて貰うのであれば、親衛隊の隊員は決して弱くなく、寧ろ国王直属の部隊故に選りすぐりのエリートで構成されているのだが、其れを相手にしてなおなのはは滅茶苦茶強かったと言うだけなのである――尤も、一般人ならなトラウマ植え付けられて二度と戦えなくなるであろう攻撃を喰らっても、挫けずに立ち上がって来たのだから親衛隊員は戦闘力だけでなくメンタルも相当に強いと言って間違いないだろう。

 

 

「バインドを使えば逃げられる事もないから、いっその事チャージ時間を長くして更に威力を高めても良いかも知れんな?ユリア、お前は如何思う?」

 

「発射までに時間が掛かると言う短所を無視して圧倒的な破壊力をと言う長所を伸ばすのはアリだとは思いますが、其のバインドが悪魔将軍でも破れないモノである事を確認してからの方が良いかと。」

 

「ならば問題はない。

 私がバインド魔法を覚えたのは魔界を去る直前の時だったが、試しに将軍殿に使わせて貰ったのだが、将軍殿がフルパワーを発揮しても破るのに五分かかったからな――そして今の私のバインドは十年の時を経て更に強化され、今ならば将軍殿を十分拘束する事も可能だと思っているよ。」

 

「其れならば、問題は無さそうですね。」

 

 

短所を直す暇があったら長所を伸ばせとは士郎の教えだが、その教えを忠実に守って来た結果、なのはは素早さを犠牲に防御力と砲撃能力を徹底的に鍛え、更にはある程度の近接戦闘も出来る『単騎で戦える砲撃型』となったのだが、継続的な高速移動は出来ずとも、一瞬の高速移動は可能で、その一瞬ならばフェイトやレヴィをも上回っているのだから、正に得意分野に徹底的に特化したと言えるだろう。

本日の親衛隊の訓練は、一夏となのはが強化されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

――エサーガ王国・某研究所

 

 

ワイスマンとスカリエッティの研究所では、大きな培養ポッド内にて新たな存在が誕生していた――背は少し低めだが、銀色のメッシュが入った髪と、何処か京を連想させる顔が特徴的だった。

 

 

「ソロソロ完成かなドクター?」

 

「僅かな遺伝子サンプルでは能力の一部を再現するのが精一杯だったが、其れでも可成りの性能を持たせる事は出来た――だが、此れは草薙京ではない……故に『ネームレス』と呼ぶ事にしよう!」

 

「草薙京君になれなかった名無しか……中々に良い名前だ。」

 

 

其れは僅かに手に入れた京の遺伝子サンプルから作り出した存在なのだが、サンプルの量が圧倒的に少なかったが故に『草薙の炎』の一部を再現するのが精一杯だったが、其れでも馬鹿に出来ない戦闘力を持たせる事は出来たらしい。

 

 

「………」

 

 

そしてポッドの中で、ネームレスと呼ばれた存在は静かに目を開けるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――場所は再びリベールに戻り、ルーアンの郊外

 

 

此の日、ダンテは依頼受けて魔獣の駆除に向かっていたのだが、此れはなんとも歯応えの無い依頼であり、此れならば自分が出張らずにネロとなたねに任せるべきだった思っていた――ジェニス学園付近に極稀に現れると言う『極悪パンダ』ですらダンテの前では塵芥に過ぎないのだから。

あまりにも退屈な仕事だったので、パンドラで魔獣を滅殺して戻ろうかとダンテは考えていたのだが――

 

 

 

――シュン!

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 

 

「来たか……少しじゃないレベルの遅刻じゃないのか?」

 

「…………」

 

 

強大な魔力と共に現れたのは嘗てネロの前に現れた黒騎士だった。

その漆黒のマスクの奥の素顔は分からないが、其れでもダンテは黒騎士――ネロ・アンジェロが己の前に現れたと言う事に笑みを浮かべていた。

 

 

「お前さんの望みは、俺が持ってる閻魔刀だろ?

 だが、俺はコイツを渡してやる心算はねぇ……欲しけりゃ奪ってみな――お互いに面倒な事は御免だ、そうだろバージル!!最高の兄弟喧嘩と行こうじゃねぇか!」

 

「……!」

 

 

言うが早いかダンテはネロ・アンジェロにスティンガーを繰り出し、そしてネロ・アンジェロは其れを手にした大剣でガードして捌いて、ダンテと距離を取る。

そして距離が離れたダンテとネロ・アンジェロは暫し気組みの状態になったのだった――そして、此の気組みが解かれたその時こそ、史上最大と言える兄弟喧嘩の本編開幕と言っても過言ではないだろう。

双子として生まれながらも人として生きる道を選んだダンテと、悪魔として生きる事を選んだバージルの道は、今此処に交わったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 

 


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