読んだらレトロゲームのディスク1がやりたくなる短編 作:peg
それだけ。
あの試験に合格してから、既に半年が経過していた。俺は今、とある国のレジスタンスに傭兵として貸し出され、国家転覆の片棒を担ごうとしていた。なぜ、そうなったのかを説明すると非常に長くなる。なんやかんやあった。
マギを辞めて食堂のおばちゃんになる夢を、俺はまだ諦めていない。しかし、いざ辞めようとしたときに、1つ大きな問題が沸き起こった。
それが分かったのは、試験後の卒業パーティーでの出来事だった。
でっぷりとした校長の絶望的に長い話が終わり、浮かれた空気が流れ出した。試験に落ちて明日ここを去る者もおり、受かって浮かれている者の中で少々浮いて見えた。
このパーティー以後は、皆各々思いで作りに励むのだが、この時期の訓練施設はカップルの穴場スポットとなっているらしい……。訓練所には、ティガレックスみたいなのが放し飼いで何匹か飼われて居るのだが、大丈夫なのだろうか……。
卒業パーティー後のマギ
「明日マギを辞める。食堂のおばちゃんに、俺はなる!」
しかし、いざ発言すると酒の臭いが漂う会場が一瞬静まり、爆笑の海に飲まれた。
「ぶほほほ! リンコさん、秘密裏に行動をすべきでしたね! 例えば、観測手を消すとか。ぶほほほほほ! 貴女に掛かった懸賞額は、1億Gです。ぶほほほほほ」
「い、1億Gの賞金首が……ぶほっ、よりにもよって食堂……ぶぶ」
「薄々思っていたんだが……優等生って、本当は馬鹿なのでは……?」
この時初めて、俺は魔女先生を殺そうと思った。校長は魔女先生の旦那だった。こんなやつを選んでしまった魔女先生と、こんな奴は殺そう。
しかし、この出来事があったからか、校長は弱小レジスタンスへの傭兵業斡旋をしてくれた。この依頼、卒業パーティーに紛れ込んだレジスタンスの女が酔った校長に直談判して受理されたものらしいが……。他に受ける人がいなかったのでは……? もしくは教員陣が、もう目立つことをするなと言っているだけなのかもしれなかったが……。
この弱小レジスタンス、最初こそレジスタンス活動の名の元に列車強盗や最新鋭強化服強奪などの犯罪まがいなことをしていたが、いつの間にか仲間にガイレル国の大佐の娘やらガイレル国の凄腕メカニック、ガイレル国の凄腕スナイパーが集まりまくった結果、魔女を暗殺する計画に至った。いや、何でだよ……。
目立たないようにドロップアウトするつもりだったのに、何で映画みたいな事になっているんですかね……?
「ちょっと! 聴いてるの? リンコ班長!」
「……あぁ。聞いているわん」
「わんて……。この人、授与式からかなりキャラがぶっ壊れてきましたね」
チビ先生の言葉で、この時間に戻ってきた。今、最終の打ち合わせをしているのだった。
チビ先生は、ボサボサショートヘアによく似合う、オレンジのワンピっぽい服を来ていた。そう言えばチビ先生は、いつの間にか先生じゃなくなっていた。心機一転、マギに戻ったんだと。今更呼び方を変えるのはアレなので、ずっとチビ先生で良いか。
そう言えば、この班にはポッターヴァレスがついてきた。革ジャンを着ており、雰囲気はお洒落しようとして何故かパンク系になっちゃった感じだ。丸黒縁の眼鏡は健在だ。シルバー足りてる? ポッターは、額を押さえて何かしら考え込んでいる。今やコイツも、お尋ね者となっていた。
作戦の概要は、凱旋パレードを行うガイレル国の魔女を、旧式の水車稼働門で閉じ込めて殺害することだった。
ガイレル国は、機械信奉の国じゃなかったかって? ガイレル大統領を生中継で暗殺した魔女が、何故かそのまま大統領ポジに収まってしまった。魔法の力ってすげー。
偶々その場に、レジスタンスの一人が言い出した人気アナウンサーのサインを貰いに来て居合わせてしまった俺達は、魔女に大統領暗殺の罪を着せられ、そのままお尋ね者コースを転げ落ちて今に至っている。なんでサイン貰いに来たら大統領死ぬんですかね。ガイレル国に掛けられた懸賞額1億Gが、3億Gになったが俺には金額がでかすぎて、もはやどうでもよくなってきていた。
「目標がポイントに到達するまで、後15分!」
「なんか、ワクワクしてきたね!」
「……」
「班長……めんどくさくなったからって、実地試験で撃った奴やめてくださいよ?」
このワクワクしているすっとこどっこい(死語)は、ガイレル国の大佐の娘だった。長い黒髪で青いヒラヒラした服を着ている。なんでこいつレジスタンスに入って、仮にもトップの首狙ってんだ……。
「ぼぼぼぼ、僕はできる僕はできる僕はできる……ぼぼぼぼ」
「……」
高速で振動しているコケシみたいな奴は、ガイレル国が誇る凄腕スナイパー、マキナだった。癖のある茶髪をポニテにしており、西部劇のガンマンみたいな格好をしていた。
毎回この溺れるボーちゃん状態から、完璧に神エイムしてくる信じがたい腕の持ち主だ。隣で見ていると死ぬほど不安なのだが……。
「A班行動開始しろ。B班所定位置にて待機。では、作業開始」
「その作業開始って言うやつ、スッゴいやる気無くなるよね」
「いいから、来なさい!」
ポッターヴァレスが、大佐の娘を引っ張っていった。大佐の装備ジャン○ーソンみたいな奴だったから、そいつに怪我させたらやべーぞ……。気をつけろ、ポッター。
チビ先生、ポッターヴァレス、大佐の娘は下水道を通って凱旋門の門を閉めて魔女を閉じ込めにいくA班だ。俺達はB班、マキナと影の薄いもう一人とだ。
もう一人は、金魚をあしらったミニ浴衣みたいなのを着た女だった。茶髪の外ハネヘッドをしており、優秀な忍者だった。1つ欠点があり、ギャンブル中毒という点だ。巷では、伝説のカモと呼ばれている。
狙撃を恐れて狙撃ポイント付近に設置されていた、トカゲ型化け物をバラして所定の位置に着いた。狙撃ポイントには、対超兵器用のマジカル対戦車ライフルが置いてあった。いや、何を倒すんですかね……。
「大きいでござる……」
「でかいなぁ……」
「も、持てない……」
いや持てないんかい。俺は慌ててマキナに強化魔法をかけた。マキナは、ガイレル国の出身だけあって魔法が一切使えなかった。普段は、強化服を着て銃に触るんだとか。
パレードは佳境を迎えていた。独特の音楽が流れ、沢山の半裸の女性とムキムキの男達が、凱旋車の回りでパフォーマンスをしていた。
「ぼぼぼぼ、……僕はできる僕はできる……」
「ほ、本当に大丈夫でござるか……?」
マキナのコケシ上下運動も佳境を迎えていた。銃の先がブレまくって、鉛筆曲がる奴みたいになってるんだけど、大丈夫なのだろうか……?
門が閉まった。
パレードの車が急停車し、驚いた魔女が立ち上がった。
「今だ!」
「……っ!」
爆音を轟かせて銃口が火を吹いた。強化した眼で弾を追うと魔女に当たる寸前で、顔だけを出した強化服を着たセイリアに真っ二つにされた。金髪のセイリアが、長剣を肩に担いでこちらに向き直った。
「なんでソコにいるの……」
「あれは、……クレイドルにいた問題児ではござらんか?」
「は、外したぁ……?」
マギになれずクレイドルを去ったはずのセイリアが、魔女に従う騎士のように側に佇んでいた。魔法とパワードスーツが合わさり最強に見える。実際に強い気がする。
「マキナ良くやった。後は任せろ」
「援護するでござる」
「え? ど、どうするの?」
長距離〈
「あ! 班長!!」
高台にある建物から飛んだ。続いて、伝説のカモが飛んだ草履の音が聞こえた。ここから、魔女の場所は5㎞程ある。あまり時間をかけると、脱出してしまうだろう。時間的に15秒無いくらいか……。300mの短距離〈
地面に激突する瞬間に〈
人の終端速度は、この世界でも193km/h程だ。先ほどの高台から落ちたことを考えれば、もう300mも落ちればその速度に達する。それでも秒速50m程なのだから、時間が足りなさ過ぎた。
「班長、飛ぶでござる! うおおおおおおお!」
「ファッ!?」
どうやってか、一瞬で追いついてきた伝説のカモの声が隣で聞こえた。伝説のカモの意図を察し、右足を掴むと地面に向かって空中でスイングバイされた。
地面に激突する寸前で、もう一度〈
後はひたすら、魔女まで転移で飛んだ。伝説のカモのお陰で、〈
檻のようになっている門を越え、凱旋車の上部へと跳んだ。
「よう……待ってたぜ。優等生!」
「セイリア……魔女の騎士気取りか」
「気取りじゃなくて、魔女の騎士様そのものだぜ!」
俺を持ち構えていたセイリアに斬りかかられた。パワードスーツに基礎身体能力が押し上げられているのか、異様な速度と攻撃の重さをしていた。展開した無強化の槍斧で、セイリアの長剣を弾いた。無強化の斧が軋み、受け流していなければ折れていただろう事が判った。
「ハハッ! 甘ぇ!」
「くッ……!」
弾いた長剣が、慣性を無視して急速に戻ってきた。同時に、長剣から別れてワイヤーで繋がった鉈が、俺の背部から襲い掛かってきた。正面から襲い掛かる長剣を石突で撃ち落として、殆ど勘だけで躱した鉈は、セイリアに当たる寸前で巻き取られ、一本の長剣へと戻った。俺は避けた勢いで、反転して体勢を立て直した。強化魔法を節くれ立った機械式の槍斧へと掛けた。
「へぇ、中々いい勘してるじゃねぇか、優等生。私はなぁ、優等生。クレイドルの魔法一遍主義を常々疑問視してたんだ。そこで、偉大な魔女様に拾ってもらったんだ」
「御託はいいんだよ、出来損ない」
ごちゃごちゃと語りそうになったセイリアを止めた。お前は敵。それでいい。壇上の魔女が、豪奢な椅子に再び腰かけてゆっくりと闘いを覗いていた。
「へへっ。いいぜぇ、良いなお前。お前を倒せば、さぞ気持ちいいだろうよ」
「倒せればな」
「はっ!――」
セイリアの笑い声と共に、再び切り結んだ。互いに持っているのは、長物と長剣だがセイリアの長剣はギミックが施されており、通常のセオリーは通用しなかった。
弧を描くように打ち出された長剣が、生き物がうねる様に迫ってきた。斜に構えた槍斧を、膝を支点に打ち上げて長剣を上空に弾いた。長剣のワイヤーが切れた。槍斧へ掛かった回転を殺さずに上げた足で踏み込み、セイリアへ突き込んだ。
セイリアは、いつの間にか両手に握られた鉈とサーベルで迎え撃った。鉈で突きが弾かれ、サーベルで斬りかかられた。弾かれた勢いで、加速した槍斧の石突をセイリアのサーベルに合わせた。
金属の打ち合う音が聞こえ、セイリアのサーベルが折れた。強化服に出力を取られている分、強化魔法がおざなりになっている様だった。
「ちっ! うわっ」
「遅い!」
逆さになった顎を蹴飛ばした。意識を失ったセイリアが、力なくバウンドして街宣車から落ちていった。次から顔も覆っておけよ……。
「ちっ。余計な力使わせやがって……」
「お前が……伝説のマギか……」
「は?」
魔女は、やおらに立ち上がって、紫色をしたカタツムリ状のヘンテコバイザーを取った。俺のことを伝説のマギとか抜かしたが、俺の将来は食堂のおばちゃんでFAだ。絶対誰かと勘違いしている。
黒く長い髪が広がった。魔女は鼻梁の通った顔をしており、紫色の肩だしドレスが映えていた。冷たい目が、俺のことを探るように見ていた。
「ここで消しておいた方が、後々のために良いか……」
「お前何を言って……」
槍斧を構える俺の前で、魔女が片手を上へと上げた。魔女の魔力が可視できるほど集まり、一本の氷柱を完成させた。
俺には、例え高速で打ち出されても回避できる自信があった。
「お前には、絶望をくれてやろう」
「言ってろ! ……えっ?」
魔女がそういうと、俺に掛かっていた強化魔法が全て消え去った。その瞬間、街宣車の四隅から放たれた鎖が、俺の両手両足を空中で縛り付けた。
「がっ」
「死ね」
魔女の上空で完成していた氷柱の魔法が、徐々に迫って来ていた。構えることもできず、ただ自分の身体に刺さる瞬間を見る事しかできなかった。衝撃で鎖が外れ、冷たい目の魔女がこちらを見下ろすのが見えた。撃たれた衝撃で凱旋車の角まで下がった俺は、ゆっくりと仰向けに落ちた。
いつの間にか来たポッターヴァレスが、落ちていく俺に手を伸ばしていた。いや、お前いつヒロインポジになったの……。最後に思ったのはそれだった。
他の連載が遅れちゃった てへぺろ☆