トウカイテイオーのおはなし   作:吉日_凪

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マヤノもかわいい\(๑╹◡╹๑)ノ♬


ゆめ

 気がつくと、部屋は明るくなっていた。目が覚めてから、どれだけ時間が経ったのかな? 身体を起こしたままだったから、少しだけ背中がハッテルかも……。

 

 ボクは、深く息をする。心臓のドキドキがやけにうるさい。この部屋は、今のボクには、ちょっとだけ静かすぎるかな。

 

 ハッとして、向かいのベットを確認した。大丈夫だ、マヤノの布団は丸くふくらんでる……なんというか、ひとりぼっちじゃないことに、ほんの少しだけ安心した。

 

 ボクは、おそるおそる脚の感触を確かめる。あのへんな違和感はなくて。やっと、さっきのデキゴトがただの夢だったんだと、そんな実感が湧いてくる。

 

「あ、あはは……汗で服がベッタベタだ」

 

 なんで、よりにもよって今日なんだろ……楽しみにしていた大切な約束があるっていうのにさ。……とりあえず、お風呂に入ろう。それ以上のことは、今は考えられないや。

 

 ボクはマヤノを起こさないように、そろりそろりと部屋を出た。

 

 

 気付けば、お風呂場の前に立っていた。そして、扉を開けようと手をかける……あれ。なんか、いつもとちょっと違うような?いったい、なんだろ……? 

 

 両方の手のひらを見る……その正体に気がついて、思わずトホホってなる。

 

「あはは。ボクってば、寝ぼけてるのかな? お風呂セット、もってないじゃん」

 

 部屋に戻って取って来なきゃ。お風呂場へ背を向けると、かってに、身体がブルッて震える。……そういえば、もう冬になったんだ。

 

 なんだろう? 来るときは何も思わなかったのに。まるで、水の中を歩くような抵抗を感じて、ちょっとだけイヤだなってキモチになる。

 

 やっとのことで階段をのぼっていると、マヤノに会った。マヤノは、こんなに早起きするタイプじゃないんだけど……ボクのせいで起きちゃったのかな? 

 

「あっ、おはよー! テイオーちゃん」

「う、うん!おはよう、マヤノ! ……もしかして起こしちゃった? ごめんね?」

「ゼーンゼン大丈夫だよー! たまには、マヤも朝のお風呂に入りたいなーって! ……テイオーちゃんも行くんだよね?」

 

 手には、ふたり分のバスタオルと部屋着を持ってる……マヤノってば、どこまで分かっちゃうんだろう。ときどき、ほんのちょっとだけ怖くなるかも? なんちゃって。

 

「あ、うん……じゃあさ、一緒に行こっか?」

「イイの、テイオーちゃん? ……わぁーいっ! ひさしぶりに洗いっこできるねー? うれしいなー! テイオーちゃんとおっふろ~! おっふろ~!」

「あ、あははっ! マヤノってば、あんまり騒ぐと寮長に怒られちゃうよ~?」

「ん~~。そんな時はね……一緒に怒られればイイよ! そんなことよりー、さっそくお風呂場へ向かってテイクオーーーフ!」

 

 マヤノといると、ボクも自然と元気になれそうだ……ありがとね、マヤノ。

 

 

 

 水に濡れたタオルから良い香りがする。身体もポッカポカで、なんか……しあわせだなって思った。

 

「ねぇねぇ、テイオーちゃん!」

「ん? どうしたのさ、マヤノ?」

「トレーナーちゃんとの約束まで、まだ少し時間があるんだよね?」

 

 マヤノに聞かれて、ボクは時計を見た。たしかに、授業を2つ分くらいの余裕がある。

 

「う~んと、そうだね。8時に待ち合わせだから……何して時間をつぶそうかな?」

「分かった! じゃあね、テイオーちゃん! これ付けてみて?」

「これは……アイマスクだっけ?」

「うんうん! マヤも愛用してるアイマスクなんだ! あったかくてキモチいいんだよー?」

 

 へぇ、あまり使わないから知らなかったけど、そんなモノまであるんだね。ボクは、マヤノにすすめられるままアイマスクをする。これは……ホントに、夜なんかより真っ暗だ。

 

「あのさ、マヤノ。ボク、何も見えないんだけど? それに、あんまりあったかくないよ?」

「大丈夫、大丈夫! 少しずつあったまるから! じゃあ、マヤが手を引いてあげるからねー」

 

 されるがままに、ボクは何か……いや、これはボクのベッドかな? そこに、寝かされる。んー……どういうこと? 

 

「それじゃ、髪もかるく結んじゃうね? ……うわ~、テイオーちゃんの髪の毛、あいかわらずサラサラだー! マヤのは、ちょっとだけくせ毛だから、うらやましいかも~!」

「ちょ、ちょっと待ってよマヤノ? とりあえず、まずは説明してよ? 時間があるって言っても準備とかしなきゃだし。それに、ボクは眠くなんて——」

「テイオーちゃんはね。今からいっぱい、寝らなきゃいけないの」

 

 その声は、大人な落ち着いたトーンで。顔が見えなくても真剣なんだなって分かった。

 

「ごめんね、テイオーちゃん。マヤね、実は見てたんだ。テイオーちゃんが『イヤだイヤだ』って……うずくまってるところ」

「え? ……あ、あはは。そんなこと言ってたんだね、ボク。はずかしーなぁ」

「はずかしくなんてないよ? ほんの少しだけ、ビックリはしちゃったかもだけど」

 

 マヤノは、ボクの髪から手を放す。でも、物音はしなくて。離れていくわけではないみたいだ。ボクのことを心配してくれてるのかな? 

 

「テイオーちゃんが、今日のおでかけをすっごく楽しみにしてたの、マヤは分かってるから。だから、全力で楽しんできて欲しいんだ。準備ならマヤがやっておくから、ね?」

「そんな、わるいよマヤノ。ボクなら全然だいじょーぶだからさ」

「んーん。わるくなんてないよ……えーと、そうだ! これは、オ・レ・イなんだよ、テイオーちゃん!」

「オレイ? ……オレイってなんのこと?」

 

 んー? なんのことだろ? ……この前、学食のプリンをあげたこととか? 

 

「それはね~、メイクデビューだよ! 4コーナーからビュンッて抜け出して、そこから突き放してゴール! 昨日のテイオーちゃんの走りは、ホントにキラキラしてたんだ~……って大きな声だしてごめんね。思い出したら、ついつい熱くなっちゃって……えへへ~」

「そ、そ~なんだ……あはは、なんだか照れちゃうな~」

「うん、とってもワクワクしたんだ。マヤもあんな風に走りたいなーって。だから、これはそのお礼なんだよ、テイオーちゃん」

 

 あいかわらずの真っ暗ヤミで。僕には、マヤノがどんな顔をしているかなんて分からない。でも、聞いて欲しい? ……知って欲しいのかな? ……たぶん、マヤノなら分かってくれると思ったんだ。

 

「……マヤノ、メイワクついでなんだけどさ、聞いてくれる? ……少しおかしな話なんだけど」

「うんうん、もちろんイイよ」

「ありがとう、マヤノ。……ボクが少しだけ、ほんのちょっとだけ寝不足なのは……イヤな夢を見ちゃったからなんだ」

「イヤな夢?」

 

 ホントに忘れてしまいたい夢……とっても怖い夢だった。

 

「うん、それがね。ボクが走らなきゃいけないレースをさ……ボクしかいない部屋で、ベッドに座って見てるんだ」

「うん」

「なんのレースだとか、なぜそう思うのかは分からないんだけどね? ……そのレースに出られないのが、どうしようもなく悲しくて……なんでボクは、そこにいないんだろって」

「……うん」

「泣いても泣いても……涙が止まらなくなちゃってさ。イヤだイヤだって……夢だからかな? 声には出せてないんだけど……ただの子どもみたいに叫んでたんだ」

 

 どうして、こんな夢を見てしまったんだろ。思い出すだけで、なんだか泣きたくなってきた……あははは。アイマスクを付けててよかったね。

 

「それでね。誰でも良いから、人に会いたくなって歩こうとしたんだ。でも、それはできなかった……気付いたら、ボクの足にギプスが巻かれててね。どうやら大きな怪我をしていたみたいなんだよ、ボク。もちろん、夢の中でだけどね?」

「……」

「それでさ。うわぁーっ! ってなって目が覚めたんだ。まだ部屋は暗かったんだけど、眠れなくて。気が付いたら朝になっててね? だからさ……。だからボク、今は……眠るのが少しだけコワかったんだ」

 

 話終えて、胸のイガイガがとれた気がした……あれ? マヤノから反応がない。

 

 少し考えて、ハッとした。そ、そうだよね! いきなり、こんな話をされても困っちゃうよね! 

 

 ボクは勢いよく身体を起こして、アイマスクを外す。うっ、朝陽がとっても眩しくて、目がしばしばする。

 

「あ~、あははっ! ねっ、ねっ? ホントに変な夢だったでしょ? マヤノもそう思うよねっ! なんだか、暗い話しちゃってごめんっ! こんなの、ボクらしくなかったよ! うんうんっ、話せてなんだかスッキリした! だから、マヤノが言ってくれた通り気にせず寝なくちゃ——わひゃっ!?」

 

 あっ! あばばばばばばばばっ!? これってもしかしなくてもマヤノに抱きしめられちゃってるーっ!? 

 

「な、なななっ! なにやってるのさマヤノ!? ちょっ! ダイジョウブだからっ! あくまで、夢の話なんだって——」

「ありがと、テイオーちゃん……」

「……へ?」

 

 その「ありがと」の意味もよく分からない……けれど、それよりマヤノの声が絞り出すような、湿っぽい声で。ボクの方が、どうしたのかって不安になりそうだ。

 

「ど、どうしたのさマヤノ? そりゃ、起きた時はボクも泣きそうだったけどさ? ホント、ただの夢の話なんだよ? ここは、笑うところだよ、あははははっ! ってさ?」

「……んーん。マヤは笑わないよ。テイオーちゃんの走りたいってキモチ、マヤは分かってるから」

「な、なんだよマヤノ? らしくないよ? ……でも、ありがと」

「え、えへへっ! マヤの方こそ話してくれてありがとーって感じだよ! テイオーちゃんのこと、また少しだけ分かれて、マヤはとってもうれしいんだっー!」

「……も、もぉー! 分かったから、とりあえず離してよっ! こんなんじゃ、寝れるものも寝れなくなっちゃうよー!」

 

 あの夢が怖いのは変わらない。それでも、さっきまで歩くのすらイヤにだったのに。今は、寝ちゃうのが惜しいくらいワクワクしてる。

 

 ボクを抱きしめていた腕はほどけて、マヤノはベッドから下りた。ボクは、そのまま倒れ込む。

 

「あのさ、マヤノ」

「ん? どうしたの、テイオーちゃん」

「ボクも、マヤノのメイクデビュー楽しみにしてるからっ! おやすみなさい!」

「……うんっ! ありがとー! おやすみなさい!」

 

 アイマスクを付ける、同じように目を閉じているのに、さっきよりも少し明るい気がする。ボクも恩返しをできるように……いつか、マヤノに何かあったら必ず力にならなきゃ。

 

 ボクはそんな、特撮映画のような妄想をしながら目を閉じた。

 

——マヤノ。ボクは、ヒーローになってみせるからね。

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  • どけ!!!俺はモルモットくんだぞ!!!
  • どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!
  • どけ!!!俺は商店街だぞ!!!
  • どけ!!!俺は水族館だぞ!!!
  • どけ!!!俺は赤ちゃんだぞ!!!
  • どけ!!!俺はたわけだぞ!!!
  • どけ!!!俺はお父さんだぞ!!!
  • 俺の愛馬がァアアアア‼(いない)
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