大乱闘スマッシュブラザーズ Abandon World   作:アヤ・ノア

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スマブラ最後のファイターは、誰も想像しなかったキャラだったりして……。
だって、ほら、おすワリだって、最後はアイツだったし。


第6話 荒地に咲く華

 そして、南に向かったスマブラ四天王はというと。

 

「ピーチ、どうか無事でいてくれ」

 女性陣を探すために走っていた。

「マリオ、ピーチの事が心配なのか?」

「ああ。いくらピーチが精神的に強いと言っても、ずっとこの状況で持つかどうかは分からない。

 だから、早めに助け出さなきゃな。これでもう、何回目だろうな……」

 ピーチは何度も攫われた事で有名である。

 そして、マリオはそんなピーチを何度も助けた事で有名である。

 それが起こりすぎて、最早何度行われたのか、マリオもピーチも覚えていないようだ。

「他にもピーチと一緒に戦ってる奴と言えば」

「ゼルダ、だな」

 リンクにとってゼルダは最も大事な人物であり、それはマリオに対するピーチのようなものだ。

「ゼルダ、絶対に無事でいろよ。死んだら、承知しないからな……!」

 

「あの~、僕と」

「俺はまだセリフがないんだが……」

 いつの間にか忘れられたカービィとピカチュウが、ぽつりとそう呟いた。

 

 その頃……。

「サムス、頼むわよ」

「ええ」

 スマブラメンバーの女性陣は、ゾンビやゾンビ犬と戦っていた。

 怪物との戦いに慣れているサムスを前に立たせ、

 ピーチ、ゼルダ、ロゼッタは後方からサムスを援護する態勢に入っている。

「それっ!」

 ピーチがどこからか野菜を引っこ抜いてゾンビに投げつける。

 荒れ地でも野菜を引っこ抜けるのは、ピーチが強い魔力を持っているからだ。

 さらに、ゼルダのディンの炎がゾンビを焼き尽くして灰にする。

「不死者には火や光が良く効くとはいえ、まさか一発で倒せるとはな」

「ロゼッタさん、私にこんな強い魔力が宿っているなんて……思っていませんでした」

「これでどう?」

 サムスがミサイルをゾンビ達に放ち、次々と爆発してゾンビを吹き飛ばす。

 さらにロゼッタのチコシュートがゾンビ犬にクリーンヒットして大ダメージを与える。

 ゾンビとゾンビ犬は反撃とばかりにピーチに噛みつき、

 攻撃と同時に彼女のドレスを食いちぎった。

「きゃぁぁぁぁ! 私のドレスがぁぁぁ! よくもやったわねぇぇぇぇぇ!!

 しかし、それでスイッチが入ったピーチは、フライパンを取り出し、ゾンビとゾンビ犬に振り下ろす。

 その一撃を受けたゾンビ犬は倒れ、ゾンビも怯む。

「ゼルダ! サムス! ロゼッタ! とっととこいつらを倒すわよ!」

 凄みのある表情のピーチの怒声を聞いたゼルダ、サムス、ロゼッタは無言で頷いた。

 スマブラメンバーの中で最も怒ると怖い人物、それがピーチなのである。

 

「な、なんだか必死な様子でしたね、ピーチ姫は」

「それだけ大事なものって事なのよ……」

 

 そんなピーチの様子に引きつつも、ゼルダのファントムアタック、サムスの体術、

 ロゼッタのギャラクシースマッシュでゾンビとゾンビ犬は全滅した。

「はぁ、はぁ、はぁ……ようやく全部倒せたわ」

 ピーチはフライパンを構えながら荒い息を立てる。

「思い知ったかしら? ドレスの恨み」

「も、もういいでしょう? それよりも、皆さんと合流するのが先ですよ」

「あらそうでしたわ。じゃあ行きますわよ!」

 ピーチを先頭に、ゼルダ、サムス、ロゼッタは歩いていった……が、数分歩いて立ち止まった。

「……どこに、マリオがいるの?」

「あ~……。ここは東西南北が見当たらないから、すぐに迷ってしまうのよね」

「ロゼッタさん、貴方の超能力で何とかならないのですか?」

「コンパス代わりにするのだな? ……まぁ、構わないのだが……」

 そう言うと、ロゼッタは精神を集中させた。

「北はこっちだ」

 どうやら、ロゼッタが向いている方向が、この世界での「北」らしい。

「では、これを参考にすれば、仲間が見つかるのですね」

「そういう事だ」

 

 ロゼッタの導きに従い、ピーチ達が歩いていると、遠くに四つの人影が見えた。

「あっ、あれは! もしかしてマリオじゃない?」

「リンクの姿も見えますね……行きましょう」

 ピーチ達がその人影に向かって歩くと、無事にスマブラ四天王と出会った。

「マリオ!」

「リンク!」

「「無事でしたか!」」

 ピーチとゼルダ、二人の姫がそれぞれの大切な人のところに行く。

「ああ、俺達は大丈夫だぜ」

「でもピーチ、なんでドレスが破けてるんだ?」

「言わないで……。とにかく、休める場所に行って休みましょう」

「これ以上戦うのはきついからね」

「わ、分かったよ」

 

 スマブラ四天王と合流したピーチ、ゼルダ、サムス、ロゼッタは、

 ゾンビや蛆の塊と出会いながらもそれを軽くあしらった。

 そして、ラストホープに到着した時は、既にマルス達が戻ってきていた頃だった。

「お帰りなさい、皆様」

「ただいま~! それよりも早く、このドレスを直してちょうだい!」

 ピーチは真っ先にアスティマがいるところへと向かった。

 アスティマはピーチの言葉に頷いて杖をピーチのドレスに向け、光を放つ。

 すると、破れたピーチのドレスは、見る見るうちに元に戻った。

「ありがとう! あなたにこんな不思議な力があるなんて信じられないわ!」

「お前だって十分不思議じゃないか」

 ピーチの言葉に突っ込みを入れるピカチュウ。

「それよりも、この方は一体誰なのですか?」

「彼女はアスティマといって、このラストホープを治めているんだ」

「私はピーチ・トードストゥールよ」

「ゼルダです」

「私はサムス・アラン」

「ロゼッタだ」

「よろしくお願いしますね」

 アスティマは自己紹介をしたピーチ達に向けてお辞儀した。

「随分と上品なのね、アスティマって」

「親近感が沸くな、チコ」

「ぴぃぴぃ」

 気品に溢れるアスティマの容姿と仕草に、ロゼッタは親近感を抱いたようだ。

 ピーチとゼルダも彼女なら信頼できそうだと頷く。

 

「ねえねえアス姉ー、次の仲間はどこなの? テレパシーで探してよー」

「……あ、あの、精神集中を何度も使いましたし、もう使う力は残っていませんよ……」

「えー、それじゃあ仲間が探せないじゃない! お願い、探してー!」

 駄々をこねるカービィを、ゼルダはひょいと持ち上げた。

「カービィさん、彼女に無理はさせないでください」

「やだやだ~お願い~離して~!」

「アスティマさん、ゆっくり休んでくださいね。私達も後でゆっくり休みますから」

「ええ。おやすみなさい」

 そう言い、アスティマは杖を振り下ろして夜の帳を作り出した。

 夜の帳が作られた後でゼルダはカービィを下す。

 

「……というわけですので、仲間探しは明日にしましょう」

「でも、僕はみんなが心配で……」

「確かにこの危険な世界では、このラストホープ以外では生き残れないでしょう。

 ですが、無理に外に出て体力を切らし、全滅するよりはマシでしょう?」

「……だけど」

「困っている人を助けるのはいい事です。

 ですが、結果的に自分の命を失えば、もう二度と美味しいものが食べられなくなり、

 自らの手で仲間を助ける事はできなくなります。

 それでも、カービィさんは外に出るのですか?」

「そ、そんなの嫌だ! 嫌だよぉ!!

 生きて美味しいものもっと食べたいし、みんなでわいわい騒ぎたいよぉ!!」

 ゼルダの説得を聞いたカービィは、ようやく納得したようで落ち着く。

「……ですので、今日はゆっくり休みましょうね」

「分かったよ……」

 カービィは、ぐっすり眠っているリンクとピカチュウの間に入り、眠りにつくのだった。

 

「……ふふ、カービィさんは本当に素直で分かりやすい子ですね」

 そして、ゼルダもまた、眠りにつくのであった。




次回は宇宙組を救出します。

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