「まだ終わらんか、LAFI?」
<まだです、いかんせんシステムが古くてですね・・・>
「お前と比べればこの世界のシステムなんぞ全部骨董品クラスだろうが」
<まぁそうなんですが・・・>
あれから3日、鉄血の本部にて私たちは事件当時のデータをサルベージしていた
私は紙媒体を担当しLAFIは電子データを担当している
LAFIがシステムが古いと文句を言っているが、コイツに比べればこの世界のシステムなど全て骨董品である
紙媒体は当時のデータだけでも15畳の部屋の床から天井までを埋め尽くす膨大な枚数だ
3日かけてその内の15%程しか消化できていない
なので今は事件当日のモノだけに絞り込むためハイエンドの一部にも協力してもらっている
協力メンバーはエージェントとドリーマー、おまけにデストロイヤー
そういえば2日前に基地メンバーに
「そういえば、デストロイヤー、お前は破壊工作が得意だったな」
「そうだけど?」
「地下のN6通路は知っているな?」
「そこがどうしたの?」
私の発言にドリーマーが興味深そうな顔で質問してくる
それに答える形で図面を見せて、私は告げる
「この回路は新ソ連軍専用回路だ、コレを破壊してこい。N6通路床にあるC178通信回路だ、水色と赤色の2つだから見分けも付きやすい」
「他には?」
「切った先の通路から出口である地下倉庫側に向かう回路にコレを繋げておいてくれ、LAFIから軍へアクセスしてデータを盗んでやる」
そう言ってドリーマーに渡したのは特注の無線ネットワーク接続装置、LAFI専用品で通信速度は150Gbpsを叩き出す
「他に軍からの通信回線はない?」
「無いな、生きてるのはその回線のみだ。他の回線は軒並み死んでいる。物理的に遮断されているからな」
新ソ連軍からのアクセス回路を掴んだのは紙媒体の設計図面を入手できたのが大きい
設計段階から新ソ連政府との関係があるということは、設立時から新ソ連政府の後押しがあることの証左だ
それが意味するのは、鉄血が新ソ連政府の国策企業としての一面も持っていたという事になるが、そのような事はグリフィンにも言える事だから今更感がある
問題なのは今もその回線が生きていることにある、さっさと遮断してしまう方がいい。遮断ついでにデータを盗むためにタップを挟んでやろう
「その回線が生きているとは知りませんでした」
「だろうな、設計時からのものだから相当古い、速度もあまり速くはなかろう」
「貴女の基地も相当古いようですが?」
「なにせ地下は第三次大戦以前の代物だからな、回線の引き直しには相当骨を折ったよ。無駄に頑丈ではあったが設計した連中が無駄に優秀だったのか拡張性があって便利ではあるがね」
そう言いながらも紙媒体を整理して行く、そして一枚の書類に目が止まった
「これは・・・」
一枚の報告書、そこにはウィリアムという報告者の名前があった
研究内容はどうでもいいが、問題なのは・・・
「LAFI、データベースからウィリアムという研究員の情報を出せ、今も生きているはずの人物だ」
<モニターに出します、マスターの言う通り存命していますね>
「退職日は・・・事件の一ヶ月前か・・・やはり、研究内容はOGASに関連していたな」
研究内容はOGAS関連で偶然にもリコリス博士と同じものだ
「間違いない、蝶事件の黒幕はコイツだ」
その声に、エージェントがこちらを見て質問する
「何故、これだけの情報から断定できるのです?」
「報告書の書き方だよ、それからこの人間が利己的で自分が上で無いと我慢できないタイプなのはすぐに分かる」
そして、と一旦区切り、私は近くに置かれていたソファーに座り、告げる
「そういう人間は、自分より上のことをやっている人間を消すのに、何ら躊躇いはない」
「つっ・・・!?」
「そう、蝶事件はコイツが裏から手を回して実行した」
そもそも、本来の作戦はグリフィンと国家安全局の合同チームによるリコリス博士の拉致作戦だ
それに横槍を入れる形で介入し殺害を企てるなど、利己的かつ自己が上で無いと我慢できない性質の人間ならば平然とやってのける
目的が何であれ、そこには悪意しか無いと言える
そしてその悪意はスパイ人形として送り込まれたUMP45とUMP40へとんでもない悪影響をもたらし、UMP40は自身を破壊し、UMP45を存続させる選択しか・・・
「世界に役立つでもないクソ野郎の身勝手な欲望につきあわされた結果、とんでもない茶番に巻き込まれるとはな・・・実にくだらん!!」
怒りのあまり強い口調になるが、LAFIがモニターに出したデータを見て嗤いがこみ上げた
「LAFI、ARと404をベオグラードに向かわせろ、装備は高火力兵装と高範囲破壊装備を併用する形でな」
<なにか目的が?>
「ウィリアムの意表を突いてやるのさ、そしてそのプライドを木端微塵に粉砕してやる!!」
ウィリアムの性格は、LAFIが出したデータで知れた。ならばやつの取る行動はすぐに分かる、アイツはベオグラードでテロを起こす
それで新ソ連軍を混乱させながら、自身の手駒としている者達を上手く使い、多角戦術をやるだろう
目標となるのは新ソ連軍、グリフィン各基地、そして鉄血。だが、私の基地には切り札が山のようにある、突破などさせはしない
鉄血側に関してもそれは同じだ・・・だがひと押しが欲しい
「ビークという人形がいるんだったな、エージェント」
「えぇ、いますが・・・」
「案内してくれ、私が直接お願いしたいことがある」
そう言って案内されたのは地下格納庫、そこで暇そうにしていたのが案内を依頼したビークだ
「誰よその人間?」
「同盟を組んでいる基地の指揮官です、失礼はないように」
「こんなモヤシが?」
そういった瞬間、鉄拳を落としていた
「いったい!!なにすんだよ!?」
「分からせの時間だ、クソガキ」
指を鳴らしつつキレた声でそう言って、痣にはならないがかなり痛いパンチを数発叩き込むことにした
他人をナメきった態度を矯正してやろう
「止めないの?」
「分からせが必要でしょう」
「まぁたしかにそうね」
「いい機会です」
後ろでドリーマーとエージェントがそんな事を言っていた、ビークを助ける気は一ミリもないようである
「うぅ・・・痛い・・・」
「よし、話を聞く態度になれたな?ならば早速、仕事を与えてやろう。ここに敵が来るのは分かったがどの方角から来るかはまだ分かっていない、お前は単独で哨戒に出てこれを探れ」
「誰がッ・・・やりますぅ・・・」
私の指示に一瞬反抗しようとしたビークだが、握り拳を作りながら指を鳴らした瞬間に言うことを聞いた
分からせが身に沁みたようである
「敵を見つけたら報告を入れてすぐに引き返せ、交戦する必要な一切ない。お前の戦闘能力は分かっているが、無駄な犠牲は避けたいからな」
「了解、逃げるのが難しかったらどうすればいい?」
<その時は私から強力なジャミングを相手にかけて時間を稼ぎます>
「一応、指示には従うけど・・・さっきのはマジで辞めて・・・」
<最初からナメきった態度でいたからです。ナメるのは別に構いませんしその程度は私もマスターも可愛い程度にしか認識しませんが、程度がすぎると先程のようになりますよ?>
代表例は特に無いのだが、性格的に近いのは多分SOP2だろう
SOP2はナメているというより子犬のようにじゃれてくるといった所だ、疲れもするがそれ以上に癒やされるいい塩梅でもある。グロ系がなければ、の話ではあるが
「それじゃ、行ってくる」
「必ず帰ってこい、これは最優先の命令だ」
「了解」
そしてすぐにとある場所へ連絡する。それは以前から親交のある造船所だ
基地内にあった原子炉の製造したのが造船所と知り、分野違いなので一瞬唖然としたが今も存続しているのが確認できたので連絡すると倒産寸前と知った
なので基地の年間売上の60%をペーパーカンパニーを作って迂回融資する代わりに、ある目的で一隻建造を依頼している
「久しぶりだな社長、建造はどこまで進んでいるかな?」
「これはこれは、お久しぶりです!!建造の方はほぼ終わったも同然ですよ!!後は艦内に資材を搬入するだけです!!」
「流石だな、ここまで速く建造できるとは!!」
「いえいえ、貴女様から設計図を貰っていなければ今頃挫折していた代物です!!わが社の総力を上げて建造した自信作でもあります!!ところで、いつこちらに来られるので?」
受け取りのことを言っているのはすぐに分かる、私もそのことで連絡したのだし
「予想より早く終わったのならばすぐにでも受け取りをしたい、こちらはそろそろ基地の放棄に迫られていてな」
「軍の連中ですか?」
「どうやら、それだけではないようでな」
「なるほど・・・かしこまりました、いつでもいらっしゃって下さい、社員一同お待ちしております!!」
「ありがとう、ではまた、いずれ」
「えぇ、いずれ!!」
通信をそこで切り、一段落着く。これでこちらの用意はできた
「多角的にやっているのですね?」
「考えられるありとあらゆる敵の戦略行動を計算に入れた上で、戦術的撤退と次の反抗のための用意を行う。ただそれだけだよ、これもその一つさ」
そしてそこには鉄血のメンバーも迎え入れる予定だ
彼女達もきっと追い立てられる、その時に受け入れを行い、共闘すれば・・・ウィリアムの野望は砕け散る
「我々はここで戦います」
「専用端末だ、合流の合図はこれでやる」
「これは?」
渡したのはLAFIと同形状のデバイス、でも中身はないものだ
LAFIに比べれば性能などゴミに等しいが、それでもセキュリティは万全でそのレベルは新ソ連軍のジャミング下でも安定して通信が可能な代物である
性能説明も行い、テストも済ませる
「なんと・・・」
「君達を我々S13基地は受け入れる、これは私の方針だから誰も逆らわんと約束する」
「その時が着たら、どう行動されますか?」
その質問に、私は笑顔で答えた
「撤退の道は私が作り出す、君達はそこを駆け抜けてこい。かならず、逃げ出せるようにするからな!!」
自信を込めて、悪辣な笑顔を向けてそう答え、私は基地へ乗ってきたバイクで帰る
予め燃料は満タンにされており、予備タンクもいつの間にか2つに増えていた、近くでアルケミストが手を降っていたから彼女が追加搭載したのだろう
「アンタは信頼してやるよ、S13の指揮官」
「その信頼には必ず答えよう、アルケミスト」
そう言ってエンジンを掛けて発進する、もうここには二度と訪れないだろう。だがそれでも、鉄血との同盟の締結は成功した
そして新たな敵も・・・その正体も知れた
その首魁の性格も知れた、後は多面打ちして封殺してやるだけだ
ここでベオグラードに行かせたってことは?
ちなみに主人公のパンチの威力は一階と二階の間から自由落下させた1kgの鉄球と同等レベル。つまりクソ痛い。何なら戦術人形でも受けたらただじゃ済まない