不穏な最後と新たな戦いの気配が忍び寄る
「よし、これで最後だな」
「えぇ、コレが最後です。参加してくれた各部隊への報奨金などの精算は完了です」
「やれやれ、流石に財布に響いたな」
「私はそれでも富豪を余裕で名乗れるマスターの財力に驚きですよ」
日本から帰還して数日後、最後の精算を終えた
私の個人資産からほぼ大半の部隊への報奨金の支払いなどを行い、最後の確認として帳簿を再確認する作業をいま終えたのだ
「なに、そこで贅沢に緑茶を啜っている義姉に比べれば普通のレベルだよ」
「あら、このお茶美味しいわね・・・日本のお茶はどれも美味しいわ」
「おいこら、人の住処勝手に漁って贅沢するな。支払わすぞ?」
「良いわよ?無限に出すわ」
「どうせ無限に寄越せとか抜かすんだろうが!!」
「分かってるじゃない」
いつの間にか顔パスで入り込むようになった義姉に呆れつつもとりあえず最後の一杯として宇治茶を馳走する
「LAFI、あとどれくらい残っている?」
「マスターだけが飲むなら余裕で1年分はあるかと」
「他に出したら?」
「3ヶ月も持たないですね」
「ガッ・・・デム!!」
最悪だ、何としても取り上げねばならない!!
「おい、今すぐ現金で返せ」
「はいどうぞ」
「用意済みか!?」
「当たり前でしょ、私よ?」
ぐうの音も出ない言い方だった。この人物、少し会話しただけで相手の思考を予測するハイレベルの心理戦特化型の人間である
私のように動き回るタイプではないため非常に厄介な性質だ
「それに、本社こっちに移していいと言ったの貴女よ?」
「くっそう過去の私め、酒に酔わされると分かってたのに!!」
戻って来てすぐ、飲みに誘われた。その席で酔わされたのだ
そして本社機能を移すことに同意してしまった。酔いが冷めてから青ざめたのは言うまでもない
だが、利点もある。というかその利点がとてつもなくデカい。なにせ新ソ連国内の鉄鋼王手の筆頭株主であり、代表権も保有するガチのやり手経営者だ、味方につければ最高品質の鉄鋼材を最優先で入手可能だからだ
あとはその加工機材も手に入れやすくなると、まさしく一石二鳥といえる
問題は・・・このクッソハチャメチャな人物の掌の上で転がされるということだろう
「で、早速本社の建設に移っているわけだけど・・・やけに早くないかしら?」
「日系企業の請負だからな・・・爆速でハイクオリティーな建築が売りだ」
「かなぁり、早くないかしら?」
「それでいて建築基準は日本仕様で非常に厳しい。日本の建築基準は知ってるか?」
「えぇ、それなりには」
そう、たった1週間ちょっとで既に基礎の鉄骨構造の6割が出来ていた。これを仮に他の日系でない企業にやらせれば、まだ土台のドの字も出来ていないだろう
この企業は土台の構築準備をおよそ2日で終わらせ、安定した堅固な地盤へのアンカー打ち込みと同時進行で土台とその上の基礎構造物の構築を行っていたのだ
しかもそれでいてしっかりと日本クオリティの建築基準を守っているのだから驚きである
少々値は張ったがそれだけの品質と安全性は保証されているのだから惜しむことはないだろう
「で、そっちに来た男の人達はどこに?」
「建築現場でアルバイト」
「ありゃりゃ・・・災難ねぇ」
「こっちじゃ週2日くらいしか出番がないからな・・・それならばと乗り気になった藍澤と、引きづられる形で森谷が運ばれていった
「それはそれは・・・で、貴女から見てどう?」
「ノーコメント」
おそらく藍澤のことを言っているのだろうがノーコメントと返して黙らせようとする、しかし
「そう言っても、気にはなるんでしょ?」
「・・・ならないはずがないだろう」
それが私の答えだった、親としての責務から逃げた私だが・・・それでもやはり気にはなる・・・本人には悟らせないようにしているが
「似た者同士ねぇ・・・親子だから似るのかな?」
「茶化すな、それに私は」
「親じゃない、なんて言葉は言わせないわよ?」
「・・・」
一瞬、スゥッ・・・と眼が細められた、キレかけている時の動きだ
「親の責任から逃げたんだぞ?」
「で?だから?」
「・・・」
「そういう正直になれない所が似てないと良いけどねぇ?」
「・・・!!」
今度はこっちが叱責する目で見ると、ニヤニヤと笑いながら言ってきた
「ま、あとは時間の問題かしら?」
「私もあの子も、他人からスタートだからな・・・分かり合うまではそれなりに時間を要するだろう」
「でも、似ているところが多い以上、そうかからないと思うわよ?」
「同族嫌悪って、知ってるか?」
「アナタと森谷くんの関係?」
「言った私が馬鹿だったわ」
心底呆れながら言い返し、私は告げる
「全くやれやれ・・・仕方ない」
キィ・・・と椅子を揺らしながら一旦立ち上がり、ソファーに座る
従姉妹の淹れてくれた紅茶を飲み、一息つく
「で、どうしてココにいる?」
「暇だから」
「顔パス廃止していいか?」
「冗談よ、私の情報網で怪しい動きをしている地域があるとの情報を得たわ」
「地域だと?」
「えぇ、もっと具体的に言えばとうの昔に廃棄された軍事基地よ」
ふむ・・・それを言ってきたということは・・・
「軍事行動か?」
「えぇ、やってるのはパラデウス。行動は・・・」
「・・・私のコピーか?」
「えぇ。私から見て、間違いなく貴女のコピーと思うわ」
そう言って出されたタブレット端末を受け取り、動画を流す
部隊の動き方や微細な変化、すべてが焼き写しと言ってレベルに達していた
「非常に考えにくいんだけど、相手は貴女の・・・」
「クローンだろうな、おそらく。そして、過去の交戦記録から対策を具体的に練り始めたと・・・非常に遅い判断だが、効果的だ」
「それじゃあ・・・」
「撃滅する。過去の私が相手だろうと・・・な」
タブレット端末を返し、場所を確認する
LAFIが駆け込んできたのはその直後だった
「マスター!!」
「なんだ?」
「ウクライナ方面で謎の電波が放出され始めました!!非常に強いものです!!」
「ウクライナだと・・・?」
「この映像もウクライナのとある都市だけど・・・」
同時に動いていた、電波を監視するコマンドルームに入り、ヘッドセットを受け取り音を聞く
「なんだ・・・このパルスは?」
「アリス、貸せ」
その瞬間、掛けていたヘッドセットを取られた
一瞬で奪っていった相手である森谷を睨もうとしたが、その顔が過去見たこともないほど緊張していたため何もできなくなる
「この独特のパルス・・・この施設はこちらの世界線基準で1世紀以上前に放棄された場所だぞ!?」
「どこだ!?」
「ウクライナ、ゴーメル・・・旧ソ連軍事レーダー施設・・・!!」
「まさか・・・ドゥーガ3か!?」
「あぁ、この独特のパルス周期、パタパタ音は聞き覚えがある、間違いねぇ!!」
LAFIが解析を終えたのかこちらに振り向いてくる、話すように促すと森谷を少し見てから言ってきた
「解析を行った結果ですが、森谷さんの言う通りの場所、ドゥーガ3で確定です」
「そうか・・・しかしなぜ今更、レーダーを復旧させた・・・?」
「挑発か、あるいは別の目的か・・・今は分からんが対処したほうが良い・・・なにせ近くには!!」
「分かっている、チェルノブイリ原発跡だろう?アソコにはまだ、事故の残留物・・・超高濃度放射性物質が山のようにある。それこそ汚い爆弾を何千と作れるほどにな!!」
そう、森谷の懸念はそれだった
もし、その施設から核物質を持ち出していたら・・・
「地獄を作り出されるぞ・・・!!」
新たな戦いが始まる・・・地獄を生み出さないための戦いが・・・
その戦いが過去史上最も厳しい戦いになると、この時はまだ予測できなかった
やっと終わったコラボ、参加の皆様お疲れ様でした
こっからは一気に加速していきます
今度の戦場はドゥーガ3、過去最悪の凄惨な戦いになります
そしてLAFI様が進化を果たします