黒桐幹也の兄   作:taiyaok

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主人公の生い立ち。

もう一話書いて一応終わりです。その後は番外編書く予定。


今回も短いです。


黒桐幹也の兄 1982年

 『ハァ…ハァ…ここまでか…』

 

 『悪いがお兄ちゃん…ちょっと疲れたら休むことにしたわ…』

 

 『…ハァ…ッ悪いが俺はテメェに取り込まれねぇぞ。』

 

 『そんなモノはオレには通じないんでね…』

 

 『…英霊なんてモノに…ハァ…興味はないんでね…』

 

 『オレはここで終わらせてもらうぞ()()()。』

 

 

 

 『ッたく…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…』

 

 

 まぁ運がなかったということなのかもな

 

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

 時は1982年4月。

 数ある学校では新入生を迎える入学式が行われていた。

 

 「黒桐朝斗。」

 

 「はい!!」

 

 この日から黒桐朝斗の中学校生活が始まった。

 入学式が終わり新入生達はそれぞれ配属された教室に戻る。そこで担任の紹介や各々の自己紹介、連絡事項が行われた。自己紹介といっても小学校から変わらないメンバーなのでする必要が無いが担任の先生が朝斗達を知るということも兼ねてすることになった。

 因みに入学式で元気よく返事をした朝斗だが、自分の出番が来るまで寝ていた。理由は長すぎだとか。

 連絡事項が終わった所で終礼をし解散かと思いきや集合写真を撮ることになった。

 

 「何で写真なんて撮るんだよ。早く帰って遊びたい!」

 

 「大丈夫だよ朝斗君。遊びは逃げないから。」

 

 「分かってないな優香は。楽しい時間ってのはあっという間に過ぎるんだぞ!」

 

 一秒も無駄にしてたまるかと吠える朝斗にせっかちだねと優香はクスッと笑みを浮かべる。写真撮影が終わり親の車で帰る者もいれば友達同士で帰る者、極一部恋人同士で帰る者様々いるなか朝斗は東堂優香と帰り道を歩いていた。

 

 「ねえ朝斗君。小学校の卒業前に書いた将来の夢なににした?」

 

 「そんなの()()()()()()()に決まってんだろ!!」

 

 「まだ言ってるの…」

 

 「まだとはなんだよ!俺は本気だ!」

 

 絶対なってやる!と言う朝斗に優香は「絶対無理だよ」と辛辣な言葉を返す。

 

 「実際人の出来る事なんて限られてるんだから全部を助けるなんて無理だよ。それに助けるということはまず自分を大切に出来ないと誰かを助けるなんて出来ないよ。例え成れたとしても正義のヒーローなのに正義のヒーローじゃないみたいだよ。そういうのを矛盾っていうんだよ。」

 

 「?正義のヒーローなのに自分の事大事にしないといけないんだよ?それに俺は人間だから正義のヒーローになれる!」

 

 「…でたよ。朝斗君の何でも過程ふっとばし理論…かつ絶対成立しない適当な理由。」

 

 朝斗が出すとんでも理論に時折驚かされるもよくよく考えるとぶっ飛びすぎて「矛盾しすぎて成り立たない。」という言葉を忘れてしまう優香だが最初は特別な才能があるのかと思っていたが一緒に過ごしていく中で特に何かがずば抜けて優れてる所は無く、寧ろ凡人よりも遥かに劣る。酷い言い方かもしれないがこれでもかなり甘く評価したほうだ。しかし、そんな彼に誰も何も言わない。それどころか彼が同じ空間にいることさえ認識出来てない。

 だが、優香はそこに異常さを感じざるをえなかった。言い出すとキリがない。でもどこからどう見ても普通の人。朝斗と優香の両親だって彼を認識出来ている。過ごした時間によるかそれとも影が薄いのか。少なくとも後者は無いだろうと優香は思っている。何の確証も無いがそんな感じはしなかったというのが優香の考えである。

 

 「…じゃあ私は魔法使いかなぁ。」

 

 もう夢見る年じゃないと口酸っぱく言ってきた彼女からは考えられない言葉だとは朝斗は思わなかった。というか全く聞いてない。

 

 「朝斗君聞いてた?」

 

 「?なんかいったか?」

 

 「別に何でもない。それじゃあ私こっちだから。」

 

 また明日と別れを告げる。

 がその前に

 

 「ねえ朝斗君…」

 

 「ん?」

 

 振り返って見た彼女の顔は氷よりも遥かに冷え切っていた。

 

 「最近、公園を通り過ぎた裏通りに困っている人がいるらしいよ。」

 

       

 

 

 

 

 

          だから

 

        

 

 

 

 

 

 

 

 

       出番だよ正義のヒーロー

 

 

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

 

 「…ただいま。」

 

 「で?ちゃんと言ってきたか?」

 

 一般家庭ではまず無いだろう出迎え。

 

 「……はい…」

 

 「そうか…では部屋で魔術の勉強でもしてなさい。」

 

 「……分かりました。」

 

 東堂優香は言いつけ通り自室に戻る。

 鞄を荒々しく投げ、朝斗とのやり取りを思い返す。

 

 『そうか。』

 

 東堂優香は魔術師の家庭だ。父親と母親両方とも魔術師であり六歳から教育を受けている。ただ、優香は魔術なんてものには興味は無い。だが両親は素質がいいだの才能があるだので無理矢理叩き込んだ。故に友達と遊ぶなどといった事をしてこなかった。

 小学校に入りやりたくもない魔術を覚えさせられる日々。もう嫌だと泣きながら家を抜け出した。その時母親から家に戻るまで誰にも認識されない魔術を掛けられてしまい誰かに助けを乞う事も出来なくなった。

 だが、そんな時に

 

 

 『大丈夫か?』

 

 

 彼が、黒桐朝斗が現れ自分に手を差し伸べてくれた。あんな純粋な目を向けられたのは初めてだった。

 

 両親は魔術師として誇りを持っており自分達を優秀だと称する程自信家である。それをただの一般人に破られた。両親はすぐさま彼を調べ始めた。だが、でてきたものはどれも普通どころかそれよりも遥かに劣る能力しか持ってない人間という事だけだ。特別優れているモノがあればまだ無理矢理納得できたかもしれない。

 しかし、全ての能力値が凡人より遥か下。そんな人間に自分達の魔術が破られたのだ。魔術師としての誇りをズタズタにされたと同時に恐怖を抱いた。

 二人は優香に朝斗と関係を築くように命じた。そして時が経つにつれて黒桐朝斗という人間を危険と見なし、優香に関係を断ち切るようにと言った。

 しかし、その言いつけを優香は守らなかった。それどころか関係をもっと深めていった。もっと話したい、もっと一緒にいたい。そんな思いを抱きながら今日まで過ごした。それももう終わる。

 

 別れ際に言った所に朝斗は絶対に行くだろう。そこで彼は終わりを告げる。

 そこでは不思議な事が起こるらしい。なんでもそこに行った者全員行方不明になるとのこと。神隠しの類と言われており主に子供が好奇心で近づいてはいなくなるとのこと。

 だが、実際はある魔術師の老人の仕業である。優香の両親はその老人を捕らえることはしなかった。その代わり黒桐朝斗を生贄にすることでその老人を見逃した。

 その老人は記憶の人体実験をしている。他人から記憶を盗り上げ魔力に変換し自分のモノにすることで膨大な魔力を得ている。その魔力を命とすることでたとえ心臓が潰されようとも魔力そのものが心臓の代わりを果たすようになるが膨大な魔力を常に消費し続けることになってしまう。

 故に老人は他人を攫ってはその記憶を奪い自身の魔力源としている。だが、ただ記憶を盗っても勿体無いとのことから、魔術で暗示を掛けあらゆる本を読ませ記憶の貯蔵を少しでも増やし得られる魔力を増やしている。ただその間に実験体が駄目になっては本末転倒なので生きれるだけの最低限の管理はしないといけない。

 老人は研究の末三年の単位が丁度良いことが分かった。そして研究は次の段階に移行している。それは平行世界を使って一人の人間に別世界の何人といる同一人物の記憶をその人間に与え、その量の記憶を魔力に変換し自分のモノにすること。 

 しかし、何度かやってはみたが案の定実験体が耐え切れないという結果に終わった。そこで優香の両親は老人に黒桐朝斗を差し出すことにしたのだ。自分達の手を汚すことなく始末できるということで。

 

 優香には何も出来ない。それでも一つの可能性を信じ

 

 『…じゃあ私は魔法使いかなぁ。』

 

 あの一言を言った。恐らく耳には入ってはいるだろう。朝斗に常識やら非常識がなんて言っても通用しないのは分かっている。正確には分からされた。

 優香の起源は『真実』。簡単に言えば人が言っていることの真偽が分かるというモノだが、驚異的なのは他人の起源を視ることが可能なこと。その力をある時朝斗に使った時のことだ。

 結果だけいうと視えたのは四つ。有り得ないその言葉が脳の中を占めた。

 

 視えたモノは『矛盾』『干渉』『有無』『破壊』。

 優香は有り得ないという事をおいて仮説を建てることにした。

 まず朝斗が認識されないのは『黒桐朝斗は存在している』という事象に『干渉』しないという事。だが、彼の家族や自分は何故彼を認識出来ているのか。

 起源とはあらゆる存在が原初の始まりの際に与えられる方向づけ、無生・有生問わず全ての物事は抗えない宿命として、何らかの方向性を与えられて存在している。言ってしまえば絶対命令のようなモノ。

 ならば特定の人間には『干渉』は働かないというのは有り得るのか。そもそも『干渉』の意味する事とは何だとどうしてもそこに着地してしまう。

 

 次は『有無』。あるかないかということだがこれを黒桐朝斗に当てはめると「能力がないにもかかわらず結果は出せる。」ということになるがこれでは意味が通らない。黒桐朝斗風に言えば「結果さえ出れば過程なんてどうでもいい。」というがそもそも矛盾している。

 例えばどんな人間でも100以上の能力が無いと成しえない事を黒桐朝斗はその半分いや、もしかしたら二桁にも満たない能力値で成すという事だ。

 

 他にもあらゆる仮設を建てたが結局矛盾に辿り着く。考えていくうちに『黒桐朝斗』という存在に疑問が生じる。だが、そんな疑問も『矛盾』という壁がある限り砕かれてしまう。そもそも『黒桐朝斗』について考える事が無駄なのかもしれないと思い始めた優香は『黒桐朝斗はただの一般人』と自身を納得させた。

 

 それでも朝斗と過ごした日々はとても楽しかった。何故かは分からないが一緒にいると居心地がとても良かった。

 

 

 

 「…ごめんなさい…」

 

 黒桐朝斗は超が付くほどのお人好し故に…

 

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「?おじいさん。そこで何してるの?」

 

 「!?」

 

 朝斗は優香が言っていた裏通りに行った。朝斗が目にしたのは老人が数人の子供を何処かに運び込もうとしている所だった。

 

 「ねえ、何しt」

 

 朝斗が言葉を言い切る前に老人は朝斗を気絶させた。

 

 「全く結界を張ってたはずなんじゃが…本当に破りおったわい。まぁ良い実験体が手に入った事から良しとするかのぅ。」

 

 老人はこれから待っている楽しみに心を躍らせながら朝斗を連れていく。

 

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 次の日、黒桐朝斗は行方不明扱いとなった。

 

 

 

 




黒桐朝斗
起源:『矛盾』『干渉』『有無』『破壊』
何故か起源を四つ持っていて謎が多い。


東堂優香
起源:『真実』
優秀な魔術師の両親の間で生まれた一人娘。両親からは魔術の素質があるぐらいの認識。本人も分かっているようで両親を親とは思ってない。
朝斗を心の拠り所としているが男として好きかは不明。
朝斗の『正義のヒーロー』にはいつも無理だと言っているが、本当はそんなモノになってほしくないとのこと。否定し続ければいつかは諦めてくれるという思いから。


優香の両親
優香を優秀な魔術師に育てる事しか考えてない。朝斗を何とか排除しようと考えとある老人に差し出した。


老人
神隠しと呼ばれていた正体。朝斗を捕らえある実験を行おうしている。


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