『佐々木民子は立派な死霊族になるために巫女少女をぶちころがします。(仮)』 作:ゼルダ・エルリッチ
二鳥羽 友香(にとば ゆうか)
「誕生日」5月1日。
「趣味」ラクロス(部活)。あと、アウトドアなら任しとけ!
民子の同級生で、同じクラスのお友達。ノリは適当だけど面倒見は良い。
島崎 久々瑠(しまざき くくる)
「誕生日」12月14日。
「趣味」死霊術の実験。オカルト全般の悩みは、まずご相談を。
民子の同級生で、友香の友達。メガネっ子。クラスは違うが、よく教室に遊びに来ている。怪しげな霊媒実験を繰り返すマッドサイエンティスト。学園一の秀才でもあるが、その他が色々と残念。
『前回までのあらすじ』
夢で何か告げられた。
『そなたは死霊界の王族、リッチの血を引く者……。この町にいる巫女少女を倒し、一族の復興を遂げるのです……って、起ぎろゴルァ!!』
「危ない!!」
そして巫女少女、見つけちゃいました!!
「トラックがー!!」
そして助けられました!!
「これあげる」
……そして施されました。
「お、覚えてやがれ、巫女少女ーー!!」
うわーん!!
「…………」
目が覚めました。カオスな夢でした。
♪ オープニングソングはテンション上げる儀式 ♪
第二話『リベンジマッチ!!宿敵はA組在籍、美少女同級生!?』
鳥がちゅんちゅん鳴いてます。朝です。月曜です。げつあさです。
「行ってきまーす」
お母さんに挨拶してアパート出て、学校へ。また一週間、頑張りますよー!!
「いやー、昨日は変な一日だったなー。私が死霊の一族で、急に透けふわって巫女少女を探して倒せだなんて言われちゃって」
あはは。
こんなの夢だよねー、やっぱり。
ひとだまちゃんは、今日も元気そう。夢だから、こんなひとだま浮いてたって全然問題ないよね。
あはは。
やっぱひとだま浮いてる……。
夢じゃありませんでした。
と、ともあれ。お母さんの言うことには、私みたいな先祖がえりを起こしてる一族とかも他にいるみたいです。だからそんなに変じゃないんだって。
むー。本当にそうなのかな?
まあ、とにかく。学校行ってみんなの反応見てみます。それからです。
そんなに変なことじゃないと思うし。……多分。
「よー民子、おはよー!!」
後ろから声かけられました。お友達の友香ちゃんです。
「あ、友香ちゃん、おはようです」
ラクロスのラケット持ってる。友香ちゃんはスポーツ万能でうらやましいです。
「今日は早いんですね」
「うん、部活の大会近くてさ、しばらく朝練なんだー」
「友香ちゃんは運動できて凄いです」
一緒に並んでおしゃべりです。お友達はいいもんです。
「でさー、今度の大会なんだけど、相手校めっちゃ強くてさー、うちの顧問もライバル心燃やしちゃってて、結構大変なんだよー」
「へー」
「っていうかさー」
うん?
「……ごめん……なんか、透けてる? あと、ひとだま浮いてる?」
やっぱ私、変だった!!
学校着いて、D組の私の教室へ。私の身体の変化のことを聞いて、友香ちゃんと隣のクラスの久々瑠ちゃんとか、みんな集まってきました。ちょっとした人気者? なのかな? ちなみに、うちの学校は女子高です。
「へー、いきなり透けふわっちゃったんだー」
「このひとだま、かわいい」
わいわい♪ がやがや♪
なんかみんな楽しそう。もっと怖がられると思ったけど、そうでもないみたいです。
やっぱりそんなに変じゃないのかも。
「お恥ずかしいのだけど、うちの家、なんだか色々わけがあって……こんな姿になっちゃったら巫女少女を探してぶちころがさなくちゃいけない『さだめ』らしいんです。一族の封印を解くために、必要らしくて」
なんかこんなに注目されてると、ちょっと照れです。
ちなみに、ごせんぞ箱はちゃんと持ってきてます。いつ巫女少女とのバトルがあるかも分かりませんし、肌身離さずです。死霊族の心得です。
「へーそうなんだー。さだめいいよねー、かっこいいよねー」
「あ、ひとだま動いた。小動物みたいでかわいい」
やっぱりみんな反応軽いです。これって結構普通なんでしょうか?
「あの……私が言うのもなんだけど、みんな凄い適応力だね?」
試しに言ってみたら、
「この町、変な人多いしねー」
「ねー」
笑顔でさらりと言われました。
へん……。
ずーん……。
「やっぱ変なんだ……」
「あ!! ちがうよ!! 変じゃないよ!! 透けてる方がかくれんぼとか有利だよ!!」
「ひとだま明るいし、夜道とかも安心!!」
そんな機能、要りません……。
「正直、突然このような姿になってしまって、どうしたらいいのか途方に暮れてます」
お母さんは霊力を強めれば治るって言ってたけど、霊力ってどうやって鍛えればいいのでしょう。そもそも霊力って何?
「このひとだまで、荷物とか運べそうじゃない? ぷにぷにしてるし」
友香ちゃんが、ひとだまつっつきながら言ってきます。いや、どうしたらいいのかとは言ったけど、別に用途について悩んでるわけじゃなくてですね。
「ちょっとやってみようよ。袋とか持てたら、買い物も超便利!! 両腕空くし、そのまま肉まんも食べられるよ!!」
すっごい笑顔。なんか、私もそんな気になってきました。肉まんは、うましです。
「そ、そう言われてみれば、そうかも!! うましですね!!」
「そんじゃー、レッツトライ!! はいバッグ」
渡されたバッグをひとだまちゃんの炎っぽい所にかけてみたら……、持てました!! やってみるもんです!!
むー。バッグの重さが感覚的に伝わってきます。なんか私が力込めて踏ん張れば、ひとだまちゃんも踏ん張れるみたい。以心伝心です。
ちなみに、このひとだまは触っても熱くなくて、無害です。握ると、ぷにぷにしててちょっと癒される。
「次は2号ちゃんの方にもかけてみよう!!」
2号……。ひとだま二つありますから、1号、2号ってことみたいです。ってか、友香ちゃん、ノリノリです。
「もっと重いのでもいけそうだね!! じゃあこれ」
なんか、『メガ級 和英辞典』とか入った重い袋を、2号ちゃんにかけられました。
ぐぬぬぬ……!! さすがにこれは……。
普通に手で持つより全然重く感じる!! やっぱり霊力ってやつが足りないみたいです。 なんか、ふらふらしてきた。
「いけるいける!! 頑張れ民子!!」
「ぐぬぬぬ……!!」
踏ん張ったけど、
ぐりんっ!!
ひとだまちゃんと一緒に、私の頭が90度傾きました。
なんか、頭と連結してるっぽかった!!
「世界がめくれる……!!」
ほっぺたピシャピシャはたかれて、ようやく戻ってきました。……世界の裏側見ました。
さておき、
「とにかく、今は巫女少女見つけて、このごせんぞ箱にたましいミッチミチに詰め込んでやらなくては!」
ごせんぞ箱抱えて決意表明です!! やっちゃります!!
「なんかそれ、おべんと箱みたいだね。たましい弁当。たま弁?」
そうじゃないです。
「幸い、心当たりもありますから……。頑張って探すよ!!」
昨日の巫女少女。あれだけのお相手ですから、みなさんの噂にはなっているはずです。ご町内で聞き込みを続ければ、見つけられるはず。
うおー、なんか、燃えてきました!!
必ず見つけちゃります。
覚醒した死霊族の襲来を、戦々恐々と待ってるがいいですよ!! 巫女少女!!
「あ、そういえば巫女少女って、A組に一人いるよね」
「あー、いるよね。すっごい強い子」
「ほぇー、そうなんだ」
なるほど、A組ですね!! ふむふむ。
「……って、えぇ!?」
どうなってるのこの学校!!
ともかく、さっそく友香ちゃんと一緒に敵情視察です。善は急げです。
「稲田あやめさん。中学が一緒だったんだよ」
A組の入り口から覗いてみると、窓辺の席で本読んでる子がいました。長めの黒髪をそのまま降ろしてて、頭の上に変な髪飾りが付いてます。制服の上から黄色いカーディガン羽織ってました。
って、ん? あのフリーザー感、どこかで……
「ほあーーーー!! 昨日のむらさき巫女少女の君ではないですか!!」
「知り合い?」
「悔しいことに、色々お世話して頂きました!!」
えんがわデニッシュ、大変ごちそうさまでした!!
「なんでも昔、悪霊とか、ばっさばさやっつけてて、世界とかも救っちゃったらしいよ」
「世界規模!?」
そ、そんなワールドワイドな巫女少女様だったなんて……。
ご町内規模の死霊族である私が、そのような天空人なお方を果たしてころがせるでしょうか……?
「ほ、他に何か、参考情報はあるかな?」
ここはやっぱり、何か一つでもこちらに有利な情報を得ないことには……。
「んーー……、ずいぶん大人しい子だったから。あ、そういえば体力測定のときに、50メートル走3秒台で走って、周囲をザワつかせてたかな」
「3秒台!!?」
人類ですか!?
「あと、握力とかも、針振り切っちゃって、測れなかったって」
「そ、それは巫女少女じゃなくて、筋力サスケ少女の間違いなのでは!?」
ぐぬう……。
「私なんて1リットルのペットボトルですら重くて、学校に持ってくるのをあきらめているというのに」
「それは、もうちょっと頑張った方がいいね……」
ぐぬぬ、とにかく!! 運動能力だけが戦いの力ではありません。こういうのは気持ちが大切なのです!! やるのです!!
「じゃあ、頑張って行ってきます!!」
意気揚々と踏み出したら、
「そういえば隣のクラスの子に聞いたんだけど、稲田さんって、よくうちのガッコのトレーニングルーム使ってるらしくてさー。そんで、試しに殴ってもらったパンチングボール、一発で破壊しちゃったんだってよー。凄くないー?」
!!?
「それ喰らったら一発KOだろうから、気を付けろよー、民子」
「…………」
えーと……。
「友香ちゃん、そろそろホームルーム始まりますから、一旦帰ろっか」
にこやかに提案です。けど、
「まだ3分くらいあるから全然戦えるよー!! いけるいける!!」
ひとだま、つかまれて止められました。なんか、ひとだま握られると私も足止めっぽい。新たな弱点発覚!!
「ぐぬぬ……、仕方ありません。ここは、姿を隠して不意打ちを……」
と思ってたら、
「稲田さーん!! D組の死霊の一族の佐々木さんが用事だって~」
って、ほぉい!!
「きさま、うらぎるか!!」
むらさき巫女少女様が席を立って、こっちへやってきます。
はわわわ!!! 来ちゃいます!! 来ちゃいますよ!!
そのままゆっくりと私に近づいてきて……。
「え……、え……?」
えええぇ……?
で、でかい……!!
頭一個分くらい……。
昨日も会ったけど、こんなに大きかった? 改めて目の前にしてみると、圧が……!!
ぐぬぬぬ……。
「ほら民子、用事用事!!」
友香ちゃん、ちょっと気持ちを落ち着かせる時間を下さい!!
「……何?」
むらさき巫女少女が見下ろしてきます。
あ、圧が……!!」
「あ、あの、ですね……」
真っ青になって縮こまっていると、
「……あ、昨日の小さい子……」
ぷっくうーー!!!
小さい子ですとーー!!
ぷっしゅうーーー!!!
「むきーーー!! 小さこんにゃろにゃー!! まだ伸びざかりるらー!!」
「民子、気持ちに口が追いついてないよ!!」
「ごめん、悪気は全然なくて。ただ世間一般の水準から見て、小さかったから」
むらさき巫女少女の追い打ちです!!
ポコーー!!!
なにくそにゃー!!
「喧嘩の大バーゲンセールかー!! これで完全にやる気が出ました!!」
死霊の王族の力、思い知るがいいですよ!!
まずは相手の戦意をズタズタにくじかせる、決めゼリフ口撃からだ!!
「私はファンたみっ!!……」
「うん」
「ファントムエンプレス民子!!」
「うん」
「封印されし一族の復興と、死霊界のしゃはっ!!……、支配のため、」
ほぉーー……(息継ぎ)
「宿敵の巫女少女を、ぶちころがしに来ました!!」
「うん」
……ええと。
「………」
「そういうわけです……」
弾切れました……。
「うん、うん」
えーと。
次、どうしよう。
「……序盤中盤、噛んだ? 言い直す?」
そんな気遣い要りません!!
「あなたの合いの手がペースを乱しまくるんです!!」
「うわあああああん!!! かくごーーー!!!」
「いっけー!!」(友香ちゃん)
覚醒した死霊族の、たましいドレイン系、百烈パンチ!
受けてみるがいい! 巫女少女よ!!
おりゃーーー!!!
「おりゃおりゃおりゃおりゃ!! おりゃおりゃおりゃおりゃ!!」
「おりゃおりゃおりゃおりゃ!! おりゃおりゃおりゃおりゃ!!」
「おりゃおりゃおりゃおりゃ!! おりゃおりゃおりゃおりゃ!!」
「おーりゃおりゃおりゃ! おりゃおりゃ、おりゃおりゃ……」
「おりゃ……、ほへぇ……、ほへぇ……。おりゃ……、ほへ……、ぇ……」
「…………ほへぇ……」
はぁ……、はぁ……、はぁ……。
「エ……エナジー全部、持って行かれました……」
「逆ドレイン!?」(友香ちゃんツッコミ)
「大丈夫?」
むらさき巫女少女が平然と聞いてくる。
こ、これだけ叩いたのに、ダメージ無いなんて。
はぐれ鋼鉄系ですか、この人。
「……死霊族の攻撃を受けているのに、変身もしないし……。大体貴方、なんで避けないです!! 私がスゴわざ死霊族なら、エナジー吸い尽くされてロストしちゃうかもしれないのですよ!!」
そんなスゴわざスキル無いですけど、一応はったりかけます。
「え……、いや、霊力無いのは見れば分かるし……。それに、物理的にも避ける必要性を感じなかったから……」
そうでした。この方、天空人級サスケパワーでした。
「最初のミッションがこんなに天空だなんて……。やっぱり、ちゃんとごはん食べた後で来ればよかった……」
「そういう問題かな?」(友香ちゃんツッコミ)
「お腹空いてるの? ししゃもデニッシュならあるけど」
え♪ ししゃもは好物です♪
って、ちがーう!!
「これ以上施されたら泣くからやめて!!」
「んーと……、ちょっといい?」
「え?」
「立てる?」
え? え? 何をする気ですか、むらさき巫女少女!?
恐る恐る立ち上がったら、
「ひぇっ!!」
腕をつかまれた!! ま、まさか……。
しぼられる!? ボロ雑巾のように!?
(想像)『必殺!!!! 死霊しぼりじゃー!!!!』
(想像)『わぎゃーーーん!!』
せめて最期に、ししゃもデニッシュ食べておきたかった……。
「ご、ご、……」
「ごべんなざいでじた……!!」
大量の涙と一緒にハートが折れました……。
むらさき巫女少女に腕を掴まれています。そしてハートが折れています。
ほ、ほああぁ!!
しぼられる!!
「……拳の握り方が、少し変」
「ほぇぶ?」
拳?
「手はちゃんと握らないと、指を痛めるよ。それと、腕の力だけで打ってたから、体回して、体重乗せて、こう」
え? え?
「狙うのは急所。鼻とか、あごとか、胃。それで相手が怯むから、畳みかける」
え? え?
何か講座的なものが始まりました。
「私はいいけど、相手が女の子だと顔はかわいそうかもだから、まずは胃かな。やってみて」
「あ、は、はい」
何だか分からんけど、
「てやさーー!!!」
ぽちーーーーん!
なにやらさっきよりいい音が!!
「ちょっと手が痛いけど、どうですか!!」
これはなかなかのダメージのはず!!
敵に塩を送るとは、愚かなり! 巫女少女!!
「…………」
なぜ黙る?
「ええと……、うん、いや、その……」
「君は、接近戦より……、遠隔攻撃の練習した方がいいかも……」
「!!!」
……ダメ押されました……。そしてこの方、ノーダメージでした。
あ……、だめ……、涙が……。
「お……、お……」
「覚えてやがれ、巫女少女ーーー!!」
うわああぁあん!!
ズダタタタタ!!!! とりあえず、手に湿布張るので保健室でもらってきます!!
「じゃ、稲田さん、また」(友香ちゃん)
「あ……うん」
『頑張れ民子!! 格闘技のセンスと体幹を鍛えて、強い死霊族になるんだ!!』
♪ エンディングソングは明日への活力 ♪
次回予告
「佐々木民子です!! ファンたみっ!!……『ファントムエンプレス民子』という名前で死霊族活動開始です!!
……でもここって、次回予告をする所ですよね……?」
「民子、次回はしっかり準備運動をしよう!」
「うあ!! むらさき巫女少女がグイグイ来ます!!」
「しっかり体幹を鍛えて、筋力をつけよう。そして筋力をつけよう。そして走ろう」
「……なぜ走るのですか……?」
次回 第三話
『むらさきライザップ!!健全な霊力は健全な肉体に宿る!!』 お楽しみに!!