『佐々木民子は立派な死霊族になるために巫女少女をぶちころがします。(仮)』 作:ゼルダ・エルリッチ
【舞台のまち紹介】
<利那市 ひのきヶ丘町>
一級河川「利那川」の近くに広がる、閑静なベッドタウン。
坂が多く、高台からは景色が一望できる。
森や山など自然も豊かで、桜の名所も多い。
中央には駅や商店街、ショッピングモール「ひのきウォーク」などが並ぶ。
駅の近くには、民子とあやめの通う高校もある。
『前回のあらすじ』
「くっ……!!」
傷を押さえて、よろける巫女少女。手にした巫女スティックが吹き飛び、地面に突き刺さる。
「ふっふっふ、どうした巫女少女よ。それで終わりか?」
勝ち誇って、笑みを浮かべる。瞬間、私の身体に霊力の渦が巻き起こった。
もう少しだ……。もう少しで、この巫女少女の命運も尽きる。たましいのエネルギーをほとんど吸い尽くされ、もはや立っているのもやっとであろう、この宿敵の巫女少女……。
さあ、貴様のエナジーを全て、我に差し出すがいい!!
この死霊の王族、偉大なる大リッチである、ファントムエンプレス民子様にな!!
「ふっふっふ……」
「ふはーはっはっは!!」
…………。
……。
…。
その決戦から、一日……。
「おはよー民子!! 昨日は大敗北で残念だったね~!!」
学校への通学途中、そう言って後ろから肩をばしんと叩かれる。びくっ! となって振り返ったら、友香ちゃんでした。久々瑠ちゃんも一緒です。
「は、敗北って、なんのことですか? 確か、7-0くらいで私が圧倒したはず……」
そう、私は昨日、宿敵の巫女少女と名勝負を繰り広げた。『前回のあらすじ』での回想の通り、私の圧倒的な勝利で……、
「そんなことないよ~! 1-10くらいの鮮やかな負けっぷりだったよ~!」
友香ちゃんがあっはっは、と笑って私の頭をぽんぽんしてくる。反対側の手には、『前回のあらすじ』で使用した名勝負場面のフリップが……。
友香ちゃん、勝手にあらすじ場面に介入しないでください……。
で、でも、1-10。0点じゃなかった。嬉しい……。
「1点……。1点は入ってましたか……? 私、妄想に逃げなくてもいいですか……?」
「大丈夫大丈夫! そのうち勝てるようになるって! 自分を偽んな、民子!!」
な、涙が……。
「わ、私、友香ちゃんとお友達で良かったです……」
どばー!! 目汁決壊です……。
「民子ちゃん、ガンバだよー。よしよし」
久々瑠ちゃんもそう言って頭を撫でてくれました。
「なんか私、頑張れそうです……」
「その意気だっ」
「応援するよー」
友達って、いいな……。
♪ オープニングソングの歌詞は大体原作愛が凄い ♪
第三話『むらさきライザップ!!健全な霊力は健全な肉体に宿る!!』
「まずは、しっかり計画立てていかないとねー」
学校着いて、教室で友香ちゃんと一緒に巫女少女対策についての話し合いです。とにかく、ターゲットの巫女少女が天空級だということが分かったので、これからなんとか対策を立てていかないと……。
「はい。確かに昨日は色々と準備が足りずに惨敗しましたが、私とて死霊族のはしくれ。計画と対策をしっかり立てていけば、勝てない相手ではないはずです!!」
友香ちゃんと、机の上のごせんぞ箱に向かって決意表明。ちなみに、剥き出しではかわいそうなので、箱は今、巾着袋に入れてあります。お弁当箱用に使っていたやつで、サイズがピッタリでした。一応、ごせんぞの顔が出るように袋の口は開けて、顔だけ出してあります。
「まずは、死霊族としてパワーを上げるために特訓をします!! それと、不意打ちとかの計画も立てていきます!!」
「不意打ちはちょっとずるくない?」
うぐ……、それは、そうですけど……。
「それより、こっちの得意なジャンルでの戦いに持ち込むとか?」
「得意なジャンル……。それは、いいかもです」
さすがは友香ちゃんです。
「民子は、何か得意な戦いある?」
うーん、得意な戦いと言われても……。
「あ、シューティングゲームなら結構得意ですよ♪ グラディウスとか好きです♪」
「そんな戦いで勝っても、あんま意味無いんじゃ……」
むー、考えたけど、思いつかない。
何か、私にできそうなことは……。
「あ、思いつきました!」
「なになに?」
「むらさき巫女少女じゃなくてですね、もっと勝てそうな、弱い巫女少女を見付ければいいんじゃないかな!?」
これは名案じゃないですか!
「それ、根本的に何か間違ってないかな……?」
うぐ……、そう言われると……。
「私もそう思う。それに私、結構弱い方の巫女少女だし。私より弱い巫女少女って、そんなに居ないと思う」
「そうなんですか……」
やっぱり、ここはきちんと修業を重ねてから再戦に臨むしか……。
「って、ぎゃああ!!! むらさき巫女少女が出たああ!!」
いつの間に!?
「結構前からいたよ」(友香ちゃん)
友香ちゃん、それ早く言って!!
「むらさき巫女少女!! 何しに来たですか!!」
思わず後ずさって、床にへたり込んでしまいました。不意打ちとは卑怯なり!! むらさき巫女少女!!
「うん、君がもっと透けちゃってないか、様子を見に来たんだよ。霊力の安定ができてない子は、下手するとそのまま、幽霊みたいになっちゃったりすることもあるから」
ゆ、幽霊!?
「幽霊!! 私、もっと透けふわっちゃうんですか!? 私、お化けはダメなのに……」
「死霊族なのに!?」(友香ちゃんツッコミ)
「見たとこ、とりあえずこれ以上不安定な状態になることはないみたい。でも君は、もっとちゃんとした特訓を受けた方がいいと思う」
「ちゃ、ちゃんとした特訓って何ですか?」
「うん。まあ、色々あるけど、それは追々」
まさか、いい加減なことを言って私を騙して、色々あんなことやこんなことをしちゃうつもりなのでは!? その手には乗りませんよ、むらさき巫女少女!!
「き、きさま、私を騙して色々優位に立っちゃいたいとか考えているな!? その手には乗らんぞ!! むらさき巫女少女!!」
「そんなこと考えてない。あと、そんなめんどくさい名前じゃなくていい。あやでいいよ」
「それで、君は……、ファンたみーちゃんだっけ?」
ポコーー!!
「違います!! 佐々木民子改め、ファンたみ!!……ファントムエンプレス民子です!!」
「やっぱりファンたみーちゃんかな?」くす。
「わ、笑うなぁぁ!!」
そんなファンタジーみたいな名前じゃない!!
「まあまあ、そんなにカッカすんな、ファみ子」
「勝手に命名しないでください!!」
むきー! 友香ちゃんまで!
「……ファみーちゃん」
「今なんと?」
「……なんでもない」
「おのれ、むらさき巫女少女!! 決闘だ!!」
「あやでいいよ」
「今日の放課後、校舎裏のポプラの木の下で、きさまを待ち受ける!!」
「告白!?」(友香ちゃん)
「違います!! 決闘です!! 」
むきー!! たましいイノセントにして待ってるがいいですよ!!
ぽがーーー!! ぽがーーー!!
「……あんまり気が進まないな。私もう、巫女少女は引退してるし」
ふふん、怖気づいたか!! むらさき巫女少女!!
「それに、ホントに今日でいいの? もうちょっと鍛えてからの方がいいんじゃない?」
「え?」
「ほら、昨日もあんな感じだったし。また戦うとしたら、もっと対策を練ってからの方が勝率も上がると思う」
「そ、それもそうですけど……」
うぐぐ、敵の方からそれを言われてしまいました。確かに、対策は必要かも……。
「じゃあ、放課後、私と一緒に対策を考えようか。霊力の鍛え方とか、色々教えてあげられると思う」
え? ホントですか。
って、違ーう!! 敵の倒し方、敵に聞いてどうするんですか!!
「そ、その手には乗らんぞ!! 私をだまくらかして、手懐けリッチにしちゃう気でしょう!」
「手懐けリッチにはしない。あと、だまくらかしもしない」
うぐぐ……。
「じゃ、じゃあ、何で敵である私にそんなことを……」
「そこは……、引っかからなくていい」
「とにかく、放課後来るから、教室で待ってて」
「あ、待て、むらさき巫女少女!!」
「あやでいいよ」
「そんじゃ稲田さん、また」(友香ちゃん)
「うん」
むらさき巫女少女が行ってしまいました。
むー、一体なんなんですか。
「友香ちゃん、これはひょっとして、罠なのでは……?」
やっぱり私を騙して、あんなことやこんなことを……。
「えー、そんなことないと思うよ。稲田さんはファみ子と違って、そんな姑息なことしないよー」
こ、姑息……。友香ちゃん、オブラートを……。
「結局、あの方はなにを望んでいるんでしょうか……? 気になります」
むー、なんだかもやもやします。宿敵とはいえ、妙に引っかかる相手だし……。
「でもさ、鍛え方とか色々教えてくれるみたいだし、ファみ子のためにもいいと思うよ。ちょうど、対策を考えてたとこだし」
「そ、そう言われれば、そうかもだけど……」
とにかく、今は私としてもパワーを高めたいところだし、ここは逆に、敵の力を利用してやるのもいいかも。
油断を誘って、色々あんなことやこんなことをしてしまえるかもしれません。これはやっぱり、チャンスです。
そうと決まれば、まずは放課後です。妙な情けをかけたことを後悔するがいい、巫女少女よ!
ふはーはっはっは! はーっはっ……、げ、げほげほっ!!
そんなこんなで、放課後。
「じゃ、行こうか」
「え? は、はい」
むらさき巫女少女がちゃんと来て、そして、なんか連れ出されました。なにごと?
何やら不穏だったし友香ちゃんにも来てもらおうと思ったけど、部活があるので来られないそうです。ちょっと心細い。本当に大丈夫かな……?
「じゃあ頑張れよー、ファみ子ー♪」
友香ちゃん、凄いテキトーな感じ出さないでください……。
そのまま学校を出て、巫女少女の後をついて歩く。足が速くて、ついていくのが大変です。
「あの……、それで、どこに行くんですか?」
ごせんぞ箱抱えながら、恐る恐る聞いてみます。
「うん、すぐそこだから。行けば分かるよ」
やっぱりこの方、捉えどころがありません。まさか、死霊族封印の結界とかに誘い込む気か!? その手には乗らんぞ! 逃げる用意はいつでも万端だ!!
「着いた、ここだよ」
ふぇ?
「……スポーツジム?」
「うん」
学校近くの商業施設で、スポーツジムの他にも、敷地内にウニクロとコンビニがある所でした。ここは知ってましたけど、来たのは初めてです。
「あの……、ここで何を? 霊力を鍛えるんじゃないんですか?」
筋力の聞き間違いではないはずでしたが。
「うん、霊力っていうのは、筋力とも深い縁があるから」
「そんなご縁、初耳ですけど!?」
「ちょっといい?」
「ふぇ?」
むらさき巫女少女が突然近づいてきて、私の頭の横を……、
「うりゃ」
ぽん! ぽん! 小突いてきました。
「な、何するです!!」
不意打ちとは卑怯な!
と思ってたら、
ざざざ……、ぽこんっ。
「あっ」
身体の透けふわが治りました! 前にお母さんがやった時と同じです。
「体が治りました!」
「やっぱり」
やっぱりとは?
「霊力っていうのは、エーテル体に深く結びついているんだけど、ファみ子の場合、そのエーテル体が身体にうまく定着できてない。だから霊力がぼやけて、体も透けふわっちゃってる」
よくわかりません。なんか、お母さんにもそんなこと言われたけど。
「エーテル体を体に定着させるには、強い肉体を作って保持するのが一番手っ取り早い。まずは、体幹づくりから行こう。体幹鍛えて、筋力をしっかりつけていけば、霊力もおのずと安定するよ」
そ、そんなもんなんですか……?
「でも私、体弱いし、運動ダメだし……」
筋力なんて、とても……。
「大丈夫、無理せずペースを守って、ちょっとずつ進めていけばいいから。だから、筋力をつけよう。それから、筋力をつけよう。そして筋力をつけよう」
筋力推しが凄い!
「あの……、もっと他に、霊力を鍛える方法ってないんですか?」
何というか、筋力とかは私のキャラではないような気がします……。
「う~ん、あとは精神面を鍛えていくって方法もあるけど、それだと時間もかかるし。私としては、筋肉面の方がおすすめかな」
「筋肉面って何ですか!?」
そんな暗黒面みたいな!
「とにかく、ファみ子の基礎体力から把握していきたいから、ジム行こう」
うう、なんか逃げられない雰囲気です……。やっぱり筋力を鍛えるしかないんでしょうか?
「って! ファみ子はやめてください!! 私はファンたみ!……ファントムエンプレス…」
「ファみ子の方が、私は好きかな」
「あ……、あなたの好みなんて、聞いてなくてですね……」
「ファみ子の方がかわいいよ。私のことも、あやでいい」にこっ。
うぐ……。なんか、そう言われちゃうと……。って、なんでそこで笑うんですか。
「し、しかたありません。特別に許可してやろう、むらさき巫女少……、えと、あやちゃん……」
「あやでいいよ」にこっ。
「……あや」
むぐぐぐ!! なんか、丸め込まれてる気がする……。
「一応、私の同伴ってことでビジター扱いにしてもらえるから。ファみ子が会員にならなくても大丈夫だよ。それと、利用料は私が出すから心配しないで」
なんか受付で言われましたけど、そういうわけにはいきません。
「だ、だめです! 敵に借りを作るわけにはいきません!!」
私に弱みを着せようという気か!? その手には乗らんぞ!
「しょうがない。じゃあ、1時間分でいいよ。1000円ある?」
せ、せ、せ、せんえ~ん!!?
そ、そんな大金、私にはとても……。
「じゅ、十五回払いでお願いじまず……」
な、涙が……。
「あ、いいよ! 1000円要らないよ! 泣かなくていいよ!」
「これは目汁だ!!」
目汁が決壊しました……。
それから、なんか特訓みたいなのが始まりました。
「まずは体幹づくりから。そして、筋力をつけていこう」
やっぱり筋力……。
「はい、準備運動~。靭帯伸ばして伸ばして~」
「は、はい」
「かかと上げちゃだめ。もっとゆっくり~」
「は、はい」
「はい、スクワット~。ゆっくりでいいから」
「は、はい」
「次はダンベル使ってみよう。何キロにする?」
「……500グラムで……」
ぜはー。ぜはー。
……つ、つらい。
なんで私、こんな所で敵と一緒にサスケ修業してるんだろう……。
本当にこんなので、霊力なんて鍛えられるんでしょうか……。
気が付けば、もう二時間も経ってるし……。
「あ、あの……、あや」
「ん? どうかした?」
って、50キロのダンベル、片手で軽く使いこなさないでください……。
「こ、これはいつまで続くんでしょうか……? 私、もうへとへとなんです……」
何か、精根尽き果てた感じです。このまま幽霊になりそう……。
「あ……、ごめん。ファみ子が頑張ってるから、つい私も、調子に乗っちゃったかも……」
なんか謝られます。そ、そう言われてしまうと、こっちも返す言葉が無くなる。
「じゃあ、今日はこのくらいにしておこうか。頑張ったね、ファみ子」にこっ。
「……あ、ありがとうございます」
うぐぐ……。敵のくせに、妙な優しさを見せるな! やりづらい。
「ファみ子、ちょっと、筋力ポーズつけてみて」
「へ?」
なんですか筋力ポーズって。
「なんでもいいから、それっぽいポーズ取ってみて。霊力、見たいから」
なんかよく分かりませんけど……。とりあえず、マッスル的なポーズを取ってみます。
「ぐぬぬぬ……、こ、こうですか……?」
両腕に力込めて、踏ん張ります。そうしたら、
「あっ」
ぽこんっ! なんか変な音がして、身体の透けふわ感が無くなりました。
鏡を見たら、私の姿が普通に写ってる! 透けてません! ふわふわもしない!
ひとだまは消えてませんでしたけど。
「凄いです! 私、透けてません!」
思わず飛び上がって喜びます。
「うん、体幹と筋力を絞ったから、霊力が安定してきたんだよ。でも今は多分、一時的なものだから。これからもっと鍛えていけば、霊力も定着すると思う」
これからもっと鍛える……。それはちょっとあれですけど……。
で、でも、これで霊力レベルが上がったのは確かです。感謝です。
「あやのおかげだよ。私、頑張れそうです!!」
「うん」
えへへへ。
って……、あ、あれ?
なんか、凄い違和感を感じるんですが……。
「とにかく、この感じを忘れないようにしていこう。ファみ子はもっと頑張れるよ」
「う、うん」
ま、まあ、今は受け入れておいてやるです。そのうち、ほえ面かかせてやりますよ!! 巫女…、あや!
「じゃあ、最後に軽く走って終わろうか」
「……え? 走る?」
「初心者でもペース守れば三キロくらいは走れるから。じゃ、ついてきて」
「え? ええ?」
なんか、ランニング始まりました。
「はい、息整えて~。はい、姿勢正して~、ペース守って~」
ぜはー。ぜはー。つ、つらい……。
こ、こんなの聞いてないです!
お、お、覚えてやがれ、あやーーー!!!
「……行く川の流れは絶えずして……しかももとのみずにあらず……」
なんか、桃源郷が見えました……。
『頑張れファみ子!! 新たな友と一緒に、明日へ向かって走るんだ!!』
♪ エンディングソングは大抵オープニングソングと別CDで発売 ♪
次回予告
「佐々木ファみ子です。って、ちがーう! 私はファントムエンプレス……」
「ファみ子の方がかわいいよ」にこっ。
「って、あや、勝手に予告スペースに出てこないでください!
次回は私が、巫女少女を倒すための武器を探します!」
「これなんてどう? 金属バット」
「みぎゃー! そんな物騒なものダメです!」
「それよりファミ子、お腹空かない?」
「さては貴様、私の経済力を奪おうとしているな……?」
次回 第四話
『ショッピングモールの甘い罠!!巫女と一緒にフードコート!!』お楽しみに!!