運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女 作:レオ2
龍神学園、国内最高峰の学園。それ故に定期考査の難易度も普通の進学校より高く何人かは成績が足りなくて留年、又はどこかに転入して去る事は珍しい事ではない。
実際拓斗の中学時代にはちらほらといた。寧ろその逆で涼花のように転入してくることの方が珍しいのだ。
そしてその定期考査……中間考査が迫っていた。
この時期になると生徒達は大会が近い部活以外は勉学に励むものが多い。拓斗自身も最近はバイトを無しにして勉強する事が増えている。
拓斗は特待生維持の為に上位に入らなければならない。そうしなければ特待生を打ち切られ公立の高校に行かなければならない。
それはここで出会った親友達との別れを意味している。今、拓斗がテストの上位にいるのは家計の為というのとここでの出会いを消させないためだ。
「もう少しで中間考査だな」
大智がおかずを噛みしめ嫌そうな顔をしながら呟いた。その呟きは何時ものトリオで昼食を取っている拓也にも力也にも聞こえていた。
ついでに言うなら珍しく教室でお弁当を食べている涼花にも届いていた。淑女らしく丁寧に食べる姿は正にお嬢様だ。教室のあちこちから感嘆の声が聞こえる。それだけ様になっているのだ。
涼花はその中間考査を聞き拓斗を見る。最も拓斗自身は涼花に背を向けているのでその表情を伺う事は出来ない。
涼花は兄からある提案というか情報を貰っているので今回のテストで拓斗には点を取ってもらいたい。
今彼はどんな顔をしているのだろうか? それが涼花には気になり次の授業の準備を取りに行くと見せかけて覗いた
その拓斗の表情は
(マジで何で定期考査なんてあるんだ)
超面倒くさそうな顔をしていた。それも外野から見ても明らかなほどに。涼花がそれを見て一瞬イラっとした表情になった。
(──! 今なんか寒気がした)
実際拓斗からしたら定期考査は面倒くさいものだ。何故まとまった時間を使ってテストしなければならないのだ。
その為にバイトを休まなければならず(拓斗も体力お化けではない)その分給料が少なくなる。理解度を測るためのテストと言ってもそんなもの普段からしっかりと勉強している自分からしたら毎日コツコツと復習していけば定着しているしテストする意味が分からなかった。
テストしたからテスト以降もそれを出来る訳では無い。復習を忘れたらすぐに忘れるしそれではテストなんて意味はない……それが拓斗の持論だ。
涼花はロッカーから教科書を持って帰って来た時も拓斗はまだ面倒くさそうにしていた。
しかし涼花は知っている。拓斗はやればできる奴だと、何時ものテストの結果がそれを示している。それなのに面倒くさそうにしてる拓斗に対して苛立ちが溜まる。
そんな時、ガラガラと教室のドアが開かれクラスの視線がドアに向かう。涼花自身は別に興味なかったので椅子に座って準備をしようとしたがクラスメイトがざわついていると感じドアの方を見ると
「あ……」
涼花の視線の先では我が兄がいた。兄は自分に笑顔で手を上げクラスメイトの視線が涼花にも集まる。余り似ていないがこの二人は正真正銘兄妹でありこのクラスにもそれを知っている人は大半だ。
兄の目的は自分だと……というよりも1学年上の兄が1年のこの教室に来る目的は自分以外に考えられなかったからだ。……よく考えたらその可能性はないと分かるのだが。
実際、優輝は涼花に手を突き出し立ち上がろうとしていた涼花を止める
「すまない、氷火拓斗君はいるかな?」
「ぶっ!」
いきなりの指名に拓斗は口に頬張っていたおかずを吹きそうになり咄嗟に口に手を当てて阻止した。しかし下品な音は涼花にしっかりと届いており拓斗を嫌そうな眼で見ていた。
そんな涼花の視線を幸か不幸か見ることなく拓斗は優輝を見る
「俺ですが……」
ハンカチで口元を吹きながら答えた。優輝はまだ拓斗がお昼中なのを見て申し訳なさそうに言った
「すまない。お昼が終わったら生徒会室まで来てくれるかな?」
いきなりの生徒会招集命令にクラスがざわつく。生徒会長自らクラスに来てただの生徒(拓斗は特待生と明かしていないため)を呼ぶなんて何事だと思うのも無理はない。
拓斗はそれを煩わしそうに見ながら優輝を見据える。
(……凄い体格だな。 華奢な体の三月と正反対、この人を構成する圧力と密度が半端ない)
一見、物腰が柔らかく見えるし実際柔らかいだろう。それでも隠しきれていない圧力、それに拓斗は素直に「男らしい人だな」と思った。
それと同時に本当に涼花と兄妹なのか疑問に思ったのはしょうがない。それだけ似ていないのだ。……目元を見れば何となく似ていると思ったが
拓斗はそんな優輝がなんの用で自分を呼んだのか気になった
「分かりました。食べ終えたら行きます」
それに満足そうに頷き一回涼花を見た後に優輝は去った。
拓斗は親友達から何をやらかしたんだ? とか聞かれながらも自分は何もやっていないと弁解して急いで残りの弁当を口に頬張った。
待たせるのが罪悪感があるというのと昼休みも無限にある訳じゃないのでなるべく早く用事を終わらせようと思ったのだ。
そして弁当を食べ終えたら机を元に戻しさあ行こう! ……と思ってドアまで行くと何か視線を感じて後ろを見ると涼花が自分をガン見していた。
いやガン見というのは生温い。寧ろ睨んでる。超睨んでる。
(俺何もやってないぞ!?)
え、なにあの視線怖いなんてものじゃない。俺を殺せるんじゃないかと思う程睨んでる。まるで俺は獲物になってしまってあいつはトラにでもなったのかと思った。
取り合えず俺に出来る事
「じゃ……じゃあ行ってくるな」
気が付かなかったふりをして拓斗から見て手前の親友達にそう言ってナチュラルに脱出する事だった。親友達も拓斗の引きつった様相を見て何かを察したのか涼花の方を見ずに手を振り返した。
涼花は昼休み中正体不明の絶対零度を放っていたという。因みに睨んでいたのは拓斗が兄と何を話すのかが気になって意図せずに睨んでただけだ。
(あいつ何で俺を睨むんだ?)
涼花が自分を睨んできた理由が全く分からない。あの日直の日からまた涼花と関わる事はほぼ無くなった言ってもいい。
だから何か不快にさせる事はやっていないはずだ。あれからカードゲームも涼花がいない時に出したりしているから問題ない筈。
(全く分からねえ……は! まさか!)
何かに気が付いた拓斗は正に青天の霹靂と言った表情をした。それは涼花について一つ気が付いてしまった事があるからだ。
そう、それは……
「まさかあいつとんでもない程のブラコンじゃないのか?」
違う
「だから俺がお兄さんと話すのが気に食わないのか!?」
それも違う
「俺は……あいつに悪い事をしたな。大好きな兄貴が他の男と話す所なんて想像したくないだろうに」
何を言っているこの男
「……後でお詫びにオレンジストロベリーパイナップルジュースでも奢ってやるか」
素直にフルーツジュースと言え
一人で謎の葛藤をしながら拓斗は生徒会室に歩いて行った
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