運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女 作:レオ2
──質素なお弁当
それが拓斗の弁当を見て思った感想だ。まるで昨日の残ったおかず詰め込んだだけのような弁当(正解)だ。
涼花のお弁当は自分と兄の分を涼花自身で作ったお弁当だ。食材に関しては他の人に買ってもらっていたものだがお弁当の中にある卵焼きやらミニハンバーグやらは涼花の手作りだ。それに比べて拓斗の弁当は彩りがないというか……ぱっと見では美味しそうとは思わない
だけども……
(……美味しそうに食べてる)
と自分のおかずを口にお行儀よく入れながらそう思った。拓斗は涼花と視線を合わせるのが怖いのかはたまた単純にお弁当に夢中になっているのか涼花に視線を向けていない。
だが景色には興味があるのか屋上から見える街の景色をさっきから見ている。
(……何よ、私より景色の方が綺麗なの?)
それが涼花には気に食わなかった。涼花は自分の容姿に自信を持っている。中学三年の時から思ったが拓斗は自分と話す事はするがそれは別に容姿が綺麗だから……とかそんな理由ではない。
ただ拓斗としては一人のクラスメイトとして涼花に話しかけているだけだと。
『好きな女の幸せを願う位、別に良いだろ?』
不意に昨日の拓斗の言葉を思い出す。思い出すと胸が締め付けられる、そんな感覚に陥る。心臓がズキズキと痛む。
(好きな人がいるから私の事なんてどうでも良いって思ってる訳!?)
そんな事は無い。拓斗が涼花に視線を向けないのはただ気まずいだけだ。それもその筈で何か話があるからここに連れて来たのに何も話し出さないから若干気まずいのだ。
(……絶対意識させてやる)
自分の病弱な身体の事を知らない学校の面々は涼花を完璧な人として見る。実際涼花は身体のこと以外は完璧と言ってもいい。
容姿端麗才色兼備を字で行く優等生。それを涼花自身も誇りに思っておりそれに反応しない拓斗を振り向かせたくなるのは決して拓斗の事が好きだからではない。……そもそもろくに話したことない人を何故好きにならなければならないのか。
(そうよ、反応しない氷火君がいけないのよ!)
最近の彼女は何かあれば全部拓斗に責任転嫁しているが本人は悪いとは思っていない。こんな気持ちにさせる拓斗が悪いと思っている。
お弁当を半分程食べ終えとうとう涼花は気になった事を聞いた
「……この前、兄さんと何話してたの?」
それを聞いた拓斗は……
(や……やっぱりブラコンだったのか──―ッ!?)
何故そうなった
拓斗は涼花の質問に一瞬箸を止めた。内心では涼花はやはりブラコンなのか気になったがこれを聞いたら何となく斬撃を仕掛けてきそうなので済んでの所で止まった。
さっき自分に対してふざけは良いと言ってたのに今言ったら斬撃どころか砲撃が飛んできそうだ。
とは言え正直に言おうかどうかも悩んだ。
(というか三月は聞いて無いのか?)
拓斗が観察した限り涼花は拓斗の生徒会勧誘については聞かされていないように感じる。聞いているのなら拓斗に聞く必要がないからだ。
少し考えた。優輝が拓斗の生徒会勧誘について妹に話していないのは何故かが分からない。結局同じクラスだから話すと思ったのか……普通に忘れていたのか。
優輝の意志を確認せずに本人が言っていいものなのか悩んだ……が放っておいたらいつの間にか涼花の眼が怖くなっていたので諦めた。
拓斗は涼花ではなく屋上から見える街の風景を見ながら言った
「……生徒会に来ないか? って誘われた」
拓斗がその言葉を発した時から何秒経っただろうか、少なくとも拓斗はそう考えた。そして涼花は余りの衝撃発言に口を少し開けたままでようやく出た言葉が……
「え……?」
だった。
そして拓斗の言葉を理解したと同時に徐々に罪悪感が溢れ出してきた。それを認めたくなくて驚愕の表情のまま聞き返した
「それ……本当?」
「ああ。返事は保留にしてもらっているけど遅くても中間考査が終わる頃には返事しないとな」
(嘘……じゃあ私があんなに怒った意味ないじゃない)
友達はいらない、その思いは変わっていないがわざわざあんな大衆の眼がある場所でやる価値のない喧嘩をした。その事に涼花は眩暈した。一瞬兄がグッドポーズをしているのが見えて頭の中の兄を八つ裂きにしておいた。哀れなり。
涼花が拓斗に良い成績を取らせたいのは拓斗に生徒会へ入らせやすくする為だ。その本人の拓斗が生徒会に勧誘されているのなら前の喧嘩はいらない喧嘩だった。
今更クラスでの自分の心象なんてどうでも良いが……拓斗には嫌われたくなかった。
だが……今更謝るのなんて涼花のプライドが許さなかった。
(今謝ったら私が負けたみたいなものじゃない!)
実際はもう殆ど負けのようなものだが涼花はそれを認めなかった。認めたくなかった。それを認めてしまったら一緒に”友達”も”絆”なんていうなんの形もないものを認める事になる。
(そもそもどうしてそんなもの信じてるのよ)
それが涼花には分からなかった。
過去に何度も裏切って来た”友達”達を頭の中で切り刻んでそう思った。
拓斗だって前親友2人に自分を売られたではないか、何故そんなに”親友”なんて言いきれるのだ。所詮そんなものは無形なもの、この眼で見る事が出来ないのにどうしてそこまで言い切れるのだ。
「……ねえ」
涼花が食べ終わった弁当箱に蓋しながら拓斗に声をかけた。拓斗も同じく弁当箱に蓋しながら涼花を見る
「何で……あの二人を親友って言いきれるの?」
それ涼花には知りたかった。自分にないものを持っている拓斗の事を知りたかった。
その真剣な眼差しに拓斗は一瞬ドキッとした。いつもとはどこか違うその眼は拓斗の心を熱くした。
それに……その話をしてくれて意外だったのと同時に嬉しかった。
「……3年前なんだけどさ」
だから涼花が聞いてきた理由も詮索せずただ語りだした
お疲れ様です。早くも20話を越え突入しました。結構小分けにしているので直ぐに出しやすいという筆者にとってもよい感じです。
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