運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女   作:レオ2

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愛しています

 3年前の夏、涼花が拓……いや拓斗とメッセージでやり取りをして3カ月が過ぎ季節は夏へ移っていた。

 

 涼花は未だに入院していた。だが涼花はいつ拓斗に会えるのかワクワクとドキドキしていた。それだけ拓斗と会えるのが楽しみだったのだ。

 

 会った事もない、顔も見たこともない彼の事を想うだけで涼花は今日を生きられる……そんな気がしていた。

 

 そして実際何回かはどこで会うか、どこに行くのか、それを2人で話し合って涼花の退院予定日に併せて会おうという話には実はなっていたのだ。

 

 夏休みと同時に退院する予定だった。あの大嫌いな継父がいる家に帰らなければならない事は正直うんざりしているがそれを差し引いても拓斗と会うのはおつりが何倍もくる。

 

「楽しみだなぁ」

 

 彼女は今からでは考えられない程とても顔を綻ばせていた。彼の事を考えるだけで胸がぽかぽかしてこの勉強以外何をするものでもない入院生活も色が付いていた。

 それは今まで孤独だった涼花からしたら考えられないもので……嬉しいものだった。

 

 ──会えたら何をしよう? 

 

 ──どんなこと話そう? 

 

 ──抱き着いても……良いのかな? 

 

 彼と会う想像するたびに心臓がドキドキして退院予定日が近づいてくる度に胸が高鳴っている。顔は見たことないが本人の評価は中と上の中間位と聞いている。

 最も涼花の中で男性の顔なんてほとんど覚えていない。寧ろ拓斗以外は男性恐怖症に近いものがあったから男性の顔を覚えようとはした事もない。だけど……拓斗の顔は覚えると誓っていた。

 

 月が病室を照らす中で涼花は自分の整った唇にそっと触れた。頬を赤く染めて恋焦がれながら思った。

 

 ──キス……しても良いのかな? 

 

 そんな事を考えた時にはベッドの上で転びまわり悶絶していく日々を送っていた。だがそんな日々はそれ以上来なかった

 

 

 

 突然だった

 

 

 

 退院も迫っていた夏休み前、涼花の病状が悪化した。いや、悪化というよりも新たな病気が発生した。

 

 それは「突発性心筋症」という病気で原因不明の心臓の病気の事を総称としてそう言う。

 

 元々心臓は血を送るポンプの役割を果たしている。それが病気になればどれだけ辛いか想像に難くない。

 

 そしてその中には更に二つの病気に分かれる。

 

 一つは肥満型心筋症と言って筋肉の壁が厚くなり拡張する事が困難になるものだ。心筋の熱くなる場所によっては心室内に血圧の上昇が生じより心臓に負担がかかることがある。

 

 もう一つは拡張型心筋症、これは肥満型と違って筋肉の壁が薄くなり、収縮する力が落ちる病気。

 

 今回涼花がなってしまったのは後者、拡張型心筋症だ。

 この病気になる原因は殆どの場合不明で重症の場合は心不全を繰り返す。

 心不全は心臓がくたびれ果てた状態の事で充分に血液を全身に送ることが出来ない。血液が送れない言う事は全身思うように動けないし最悪呼吸困難にもなる。というよりも涼花は一回目の発作で呼吸困難に陥り死にかけた。

 

 そして……そんな新たな病気が出てしまった涼花の退院予定日は伸びてしまった。それどころか今度はいつ退院出来るのかすら分からなくなった。

 ……そもそも自分の墓場はここになるかもしれない。

 

 思い出すだけでも吐き気がする程苦しく、死を覚悟した。あんな症状が何度も……何度も来たら耐えられる自信がない。

 それだけ苦しく涼花の心を折ったのだ

 

「どうして……どうして……」

 

 ただそれだけを呟いていた。何度も……何百回も。枕に自分の顔を埋めて嗚咽を漏らした。

 

 

 ──どうして私だけこんな目にあうの? 

 

 

 いつあの症状が起こるか分からない恐怖、こんな状態になっても兄以外は顔を出しすらしない。

 

 兄は拓斗の触れ合いの中で段々と昔のような距離に戻った。ただ涼花がベッドの上にいる事が多いからかシスコンになっているけれども。

 

 あの継父は逆に来てほしくないが自分を生んだ母すら遠山伝手に一旦の無事を聞いただけで向こうからは何もアクションを起こさない。

 

「久々に思い出した……人間ってこんなに自分勝手なんだな」

 

 この3カ月の拓斗との触れ合いで暫く忘れていた事を最悪な形で再認識した。そして再び絶望した。

 周りの環境に対してもそうだが自分の身体についても……

 

「もう次は……生きてないかもしれない」

 

 そんなネガティブな……だが現実として死にかけ……次は耐えられる自信は無かった。それほど苦しくもがけばもがくほど逆に生気が無くなっていたのを自分でも覚えすぎている。

 

 そんな今まで以上の絶望を感じながらも涼花はその日は夜まで拓斗に連絡する事も出来なかった。

 

 怖かった。この病気の……その日にあった事を話せば会う事は勿論今度こそ見捨てられるかもしれないと思ったからだ。

 

 そうやって友達だと思ってきた人達は離れて行った。今回はそれ以上に重い病気、そしてその病気の事を拓斗が知ったら……

 

(ダメ……妹ちゃんの事もあるのに私のまで考えさせるなんて)

 

 最悪死ぬ病気……涼花自身は次は生きられるとは思ってない。治療法は薬物などであるが涼花のものは重症のものと言う事も分かっていた。

 

 だからこそ……見捨てられる可能性も逆に自分の事を心配させまくりもし自分が死んだ時の事を考えた

 

「私なら……絶対耐えられない」

 

 今思えばもっと信じるべきだったのかもしれない。頼るべきだったのかもしれない。……助けてって言うべきだったのかもしれない。

 

 だけど……再び暗闇の世界に身を投じてしまった涼花にはこれ以外の選択肢が無かった。眼にハイライトを無くしながら涼花はスマフォを手に取った。

 

 そうすると拓斗からメッセージが入っていた。いつも2人は空いている時間か夜にやり取りする事が多かった。

 昨日までなら心躍る時間だった。しかし……涼花はその退院した後の事を文字しか出ていないのに楽しみと感情が溢れているような文面を送ってくれた彼に咄嗟に考えた理由を話した

 

 ──貴方は……私じゃもったいない人だから

 

 最後に彼の事を想って微笑んだのはこの時だろう。天使のような……しかし同時に懺悔しているような表情だ

 

 ──だから……私の事なんて忘れて

 

 画面をなぞるその指は震えて何度も打とうとする文面を間違える。そんな事実はない真っ赤な嘘。

 

 ──こんなうそつきなわたしを好きになってくれてありがとう

 

 たった2文の文字を入力し終わった時には涼花の眼には涙が溢れていた。それは止まる事を知らず頬を伝いスマフォ、そしてベッドの上に落ちていく。

 

 ──だから……だから……

 

 その自分で入力した分を30分程見てようやくその送信ボタンを押そうとする。だが震え、上手く送信ボタンに触れられない。それは彼女が心の底ではそれを押すのを拒んでいるように見え……

 

「さようなら……拓君」

 

 ──幸せになってください

 

 その言葉と共に今度こそ震えている指を送信ボタンに添えた。そして今までで一番長い時間をかけて送信ボタンを押した

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──愛しています

 

 

 

 

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