運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女   作:レオ2

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生徒会長の頼み事

 これは涼花が起きる前の話になる。

 

 涼花が倒れ、大智の力を借りて保健室に運んだあと昼休みももう直ぐ終わるというのに涼花の兄である優輝が保健室に飛び込んできた。

 

 息も切れ切れに優輝は涼花の顔色を覗き一つ安堵の息をついた。

 

「お兄さんなら知ってると思いますがてんかんでした。今は落ち着いていますが……学校には言っておいた方が良かったんじゃないですか?」

 

 涼花が寝ているベッドを前に拓斗は優輝に言った。大智や力也は既に教室に戻って拓斗が少し遅れる旨と涼花が発作で倒れたことを伝えてもらった。

 

 今言ったのは涼花がてんかんを持っていた事についてだ。去年の夏からはそんな様子を見せてなかったので拓斗ですら今日の事で初めて知ったがてんかんは自分一人では正直どうしようもない。

 もし自分の妹も自分のいない所でなったらと思うと気が気でない。

 

「ああ。中2からなりひそめていたから油断していた……が」

 

 そこで若干拓斗を睨み聞いてきた。

 

「何の理由もなしに涼花が倒れるとは思えん。氷火、お前屋上で何をした?」

 

 大の男が人を睨むとこんなにも迫力があるのかと拓斗は思った。しかし今回に関しては拓斗は悪くないと思っている。

 だからこそありのままに話す……前に聞いた

 

「その前に俺も一つ聞いても良いですか?」

 

「……何だ?」

 

「三月の……涼花のLINEアカウントの名前は……『花』」

 

 拓斗は涼花を複雑な顔で見ながら呟いた。既に優輝の方を向いてはいない。見ていたのは過去の自分と過去にベッドの上で自分とやり取りをしていた涼花だった。

 

「違いますか?」

 

 その時の彼の瞳がどんな色をしていたのか、それは彼を見ていた優輝にしか分からないだろう。そして優輝はそれを誰にも語るつもりもない。

 

 男の顔だ。何を言っているのだと思うかもしれないが拓斗は今そんな顔をしていた。だがだからこそ……答えを自分から引き出そうとしている彼にいたずらしたのかもしれない。

 

「答えは涼花自身から聞くと良い」

 

 そう言って遠回しに涼花の事を見とけという言葉と共に優輝は扉に手をかけた。しかし拓斗は納得いかなくてその背中に問いかけた

 

「どうして何も聞かないんですか?」

 

 その言葉に優輝は立ち止まる。

 確かに優輝からすれば拓斗は優輝の答えを言っていないし何故拓斗が涼花のLINEアカウントの名前を知っているのか気になるはずだ。

 それなのに何も聞かないことに不気味に感じた。

 

「……これだけは言っておこう。この前、俺は君の事を調べたといったな」

 

 そうだった。それにビビったのを覚えている。一瞬裏の情報機関でも使ったのかと思ったが優輝自身は表の世界だと言っていた。本当かどうかは分からないが本人がそう言っている以上信じるしかない。

 

 だけども……そもそも何故自分の事を調べる必要があったのかが気になった。本当に生徒会に入れる為だけなのか、そしてそれが本当だとして何故そこまでして拓斗を入れたがるのかが分からなかった。

 

 拓斗は成績は良いが特別何か一つに優れている訳では無い。言わば汎用性が高いが特徴的な何かがある訳では無い。

 

 そしたら再びどうして生徒会に入れる為にそこまでする必要が……

 

 しかしそこで拓斗の脳裏に稲妻が走った。某推理漫画のように何かをひらめいた時に起こるあれが現実で起こった。

 

 確かにただ生徒会に入れたいだけなら可笑しい話だ。だけど……理由が生徒会だけじゃないのなら調べる価値があったのかもしれない

 

(違う……まさかこの人が俺の事を調べたのは生徒会とは別件で……!?)

 

 それを拓斗は気が付いた。気が付いてしまった。もしかしたら……自分の今後を左右するような……大事なことが。

 

 そこで優輝はふっと笑った。

 

「どうやら気が付いたようだな」

 

 そこには本気で感心したように頷いていた。少ないヒントで気が付いたのは素直に称賛するべきものだと思ったのだろう。

 ただし

 

「しかし内容までは流石に分かっていないようだな」

 

「……当たり前ですよ。これ以上手札がないのにどう推理しろというんですか」

 

「それもそうだ」

 

 肩を竦めしょうがないと言いたげに顔を綻ばせた。だけれども次の瞬間にはあの真剣な顔へと変貌した。

 それは三月家の長男として、そして涼花の兄としての言葉だった

 

「もし君が涼花の本当(……)の彼氏になった時、教えてあげよう」

 

「——ッ!」

 

 その優輝の意味ありげな顔に拓斗の顔は止まってしまった。止まるしかなかった。

 

 前を向こうと決めた過去が……諦めてしまった未来が……それを戻せるかもしれない唯一にして最後のチャンスが現在(いま)だと……気が付いてしまったから。

 

 眼を見開いたまま止まってしまった拓斗を見て最後に言った

 

「ただ……君が涼花の彼氏になってもならなくても……君と我が家の関係は恐らく消える事はない」

 

「……それはどういう?」

 

 流石に今度こそ意味が分からなかった。どう考えても拓斗が涼花と付き合うとかそういう話にならない限り三月家と氷火家は関係がないだろう。

 だけど優輝は関係があると言ってきた。どういうことなのか学年5、6位キープの拓斗でも分からなかった。

 

「君が涼花の彼氏にならない限り教えるつもりは無い」

 

 ますます意味が分からなかった。そもそも何故彼氏になる事が前提なのだ。もし……もしも涼花が拓斗の考えている人ならそもそも彼氏がいる筈だ。

 だから……自分はどうしようもない。涼花本人が助けを求めない限り自分から動くのは傲慢というものだ。

 

 拓斗もそれが分かっていて顔を気まずげに下に向く。だが保健室を出かけていた男が自分の方を向いているのを感じてそこを向いた。

 

 そこでは優輝が真剣な眼差しで拓斗を見ていた。その瞳はとても涼花と似ていて不思議と感慨深いものがあった。

 

 ただその感慨も直ぐに止まる事になる。なぜなら現生徒会長が頭を勢いよく下げて来たからだ。

 

「あ……あの」

 

「妹を助けてやってほしい、これは……君にしか出来ない事だ」

 

 その光景だけが不思議と拓斗の脳裏に刻み込まれたのだった

 

 

 

 

 

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