運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女   作:レオ2

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それを運命と名付けたい

 何かが終わるような……拓斗の心を表しているように夕日は徐々に沈んでいく。再び眠ってしまった涼花が起きるのを待っていた。

 保険医も一度戻ってきたが直ぐにどこかに行ってしまった。ただ涼花の様子を見に来ただけなのだろう。

 

 ただその時間が拓斗には有難かったのかもしれない。ただボーっとする時間が……今の拓斗には心地よかった。そうすることで現実から逃げようとしていたのかもしれない。

 

(だってそうだろ?)

 

 偶然自分がスタディーメモリーで涼花を見つけて会話をするようになって、LINEを交換して画面上の交際をして……離れてしまった。

 

(出来過ぎなんだよ)

 

 偶々涼花がこの学校、そして自分のクラスに転入してきて偶々拓斗と隣の席になった。何もかも出来過ぎなのだ。

 偶然で片付けていいものなのか……いやそんな訳ない。だが偶然で片付けられないのならこれは何と言うのだろうか? ただ一つだけ見つけた

 

「運命……か」

 

 ──自分で言ってて気持ち悪いと思った

 

 そんなべたな言い分が許されるのは中二までだ。自分はとっくに高校生になっている。恐らく妹が聞けば気持ち悪いと言われて兄の拓斗のライフゲージは根こそぎ持っていかれるだろう。間違いない。

 

 でも……

 

 拓斗はそっと寝ている涼花のおでこに自分の掌を乗せた。それに涼花が少し反応する。だけどもそれだけだ。

 

「そう思いたいじゃねえか」

 

 拓斗は涙声でそう呟いた。自分は諦めた。諦めることが出来たと思っていた。親友達のおかげで前を向けたと思っていた。

 いや、恐らくこうして目の前に現れていなければ諦めることが出来た。だけど……

 

「無理だろ……もう……」

 

 その眼から頬を伝い一筋の涙が涼花の顔に落ちた。

 

「ん……う」

 

 その涙に反応したのか涼花が目覚めの声を出す。拓斗は眼を大きく見開き彼女が起きるのを待った。

 

 拓斗の体内時計では最早30分以上経った気がするが本当は10秒も経っていない。ゆっくりと彼女の眼が開かれる。

それを見た拓斗は出来るだけいつも通り声をかけた

 

「……おはよう」

 

 その声は既に涙声になっていた。涼花もそれが分かっているのか瞳を揺らしていた。自分の意識が無くなる瞬間に思い出していた忘れようもないあの日は涼花の中にもしっかりと刻み込まれている。

 

 そしてもう花という名前にあれだけ反応してしまったのだ。もう誤魔化す事は出来ないだろう。だから……この高校に来た時の様に冷たい声を出した。せめて彼が自分の事を嫌いになるように

 

「何でまだいるの?」

 

 だけども……そんな声は出せなかった。それどころか涼花まで涙声になる始末。もう二人とも精神的に限界だった。

 

 拓斗は力ない笑みを浮かべた

 

「何でって……頼まれたから……かな」

 

「兄さんに?」

 

 涼花は拓斗と顔を合わそうとはしなかった。合わせてしまったらこの顔が決壊するのは目に見えていたから。

 

「ああ。……でも、俺なんかより彼氏の方に連絡した方が良いんじゃないか?」

 

 ──え? 

 

 拓斗の言った言葉に涼花の肩がビクッと震えた。どうしてそんな事を言うのか分からず涼花はとうとう拓斗の方角を見た。

 

 そうすればどうしてか……拓斗の顔は既に涙で埋まっていた。その見たこともない彼の顔に涼花の心に罪悪感が突き抜け……思い出した

 

 

 ──他に好きな人が出来ました。別れてください

 

(……あ)

 

 もしその事を今でも覚えていて……というよりも十中八九覚えているだろう。だから拓斗はその事を言っているのだ。

 

「……花?」

 

 既に拓斗の呼び方は昔の方に戻っていた。それが目の前の人が拓なのだと客観的に示している。

 涼花は再び早くなる鼓動を懸命に抑えた。そうしなければまた気絶してしまう。もうそんなダサいところを見せたくなかった。

 

 それに……これはチャンスだ。ここで彼氏がいるからと言えばきっと拓斗は自分の事を嫌いになれるだろう。

 

 あの自分の命を再び拾った時に涼花は誓った

 

『自分は誰とも付き合わないしそんな資格はない』

 

 それは……例え拓斗が相手でも変えるつもりは無い。何故なら自分の都合で……自分が絶望しただけで彼の気持ちを踏みにじった。

 一方的に繋がりを断ち切った。それがどれだけ彼の心を傷つけ暗くしたことを涼花は知っていた。

 

 だから……だから……だから……だから……だから……だから

 

 

 

 

 

「嘘」

 

 

 

 

 

 言えなかった

 分かっていたはずなのに……こんなことを言えば彼は自分と堂々と付き合える選択肢が出てくる。恐らく……いや確実に言ってくる。

 

 そうすれば彼にはまた辛い思いをさせるというのに……これ以上は嘘をつけなかった

 

 つける訳なかった。

 

 目の前に彼がいて……そんな泣き顔を見せられて……自分に彼氏がいると本気で信じていた彼に申し訳なくて……

 

「……え?」

 

 拓斗は信じられないような表情で涼花を見ていた。だけども涼花は気まずく顔を逸らした。もう既に涼花の仮面は無くなっていて今拓斗の方を向いたら何もかも吐き出す事になる。

 

 それだけは……それだけは絶対にダメなのだ。この3年間で被った氷の仮面だけは……外したらダメなんだと自分に言い聞かせた。

 

「どういう事?」

 

 ──ああ……貴方はそんな声だったんだな

 

 彼が拓と認識して改めて聞く声に涼花の中に感慨が宿った。でも今からでも遅くはない。自分と拓斗は付き合うべきじゃないし自分に下した裁きは自分の墓場まで持っていくと決めている。

 

 ここからはまた氷の仮面を被るのだ

 

「そのままの意味。私に彼氏なんかいた事ない」

 

 それは暗に拓斗との付き合いも交際に入っていないと言っていた。

 

 そうして拓斗との交際が本気でなかったことを示せば彼はきっと怒ってもう自分と関わらないようにしてくれるだろう。

 

 それが自分にとっても彼にとってもきっと最善なのだ。この胸に宿る痛みはきっとまだてんかんの影響があるだけで絶対に彼と本当の意味で決別する事の後悔ではない。

 

 ──あなたと私はきっと出会うべきじゃなかった

 

 そんな言葉を自分の胸の中で発した時、今度こそ自分の胸を罪悪感と後悔の弾丸が貫いた

 

 

 

 

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