運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女 作:レオ2
蒼葉の恋愛相談から翌日、不安とドキドキを胸に抱えて拓斗はいつもより早く家を出た。昨日の夜蒼葉に花との事を話したりして結構スッキリとした。
ただ……蒼葉が「私も蒼葉叔母ちゃんか~」と言っていたのは全力で否定したいところだが。
(蒼葉を叔母ちゃんなんて呼ばせねえぞ!!)
あの天使な蒼葉を叔母ちゃんと呼ぶ奴は誰が相手でもぶっ飛ばしてやる!
などと少し意味分からない思考をしながら拓斗は教室に来た。あの日直の日と同じくらいの時間帯に来たから既に涼花がいると思っていたが涼花の姿は見えなかった。
おかげで普段涼花がしている教室の鍵を開けるという作業を拓斗がする羽目になった。少し重苦しい職員室の前で拓斗は面倒くせ~と思いながら扉を開けた。
そうするとやはり教員が慌ただしく動き回っており一瞬皆拓斗に視線を向けただけで直ぐに自分の作業に戻ってしまった。
幸い、拓斗は前涼花と来た時に鍵の場所は知っているのでそのまま回収し職員室を出た。そのまま真っすぐ教室まで向かい涼花を待つ
だけど涼花はその日から学校に来ることはなかった
★
彼の泣きそうな顔で出て行った背中を見送った私は今日だけで何度起きたか分からない罪悪感が胸を貫いてきた。
誰もいないのをいいことに私は泣いていた。もう涙を止める事なんて出来なかった。
──またやってしまった
彼は優しいから……自分に相応しくないから突き放した。でも……そうする事で傷つくのは私だけじゃなくて一番は彼なのだ。
3年前と同じように一方的に突き放した。
貴方との付き合いは交際ではないと言ってしまった。
そんな事はない。あの日々は涼花にとっても幸せな日々で……何度も拓斗に会いたいと思ったほど拓斗の事を考えていた。
なのに……
「う……ああ……」
こんなやり方でしか彼の幸せを祈れない自分が悔しく情けなくてただ涙を流すのみ。
拓斗の幸せを祈りたいのにきっと自分は他の女が拓斗の隣を歩いていたら泣いてしまう。でもそれがあの時拓斗を裏切った自分への罰。
でも……そんな自分が一瞬でも罰を無くそうとしたことに嫌気がさしてくる。自分で自分を責め続け負の感情しか今の彼女には見えてなかった
この日を境に涼花は体調不良が続いた
★
中間考査まであと2日と迫った頃、今日も涼花は休んでいた。休み過ぎたら出席回数の問題で留年となってしまう。
それを差し引いても拓斗は涼花の心配をしていた。もしかしたらあの日の出来事のせいで体調を崩したのかもしれないと思ったからだ。
花時代の事がそのまま涼花にも当てはまるとしたら涼花の身体は弱い筈。それに精神的疲労も合わされば症状が酷くなるのは目に見えていた。拓斗でさえ蒼葉のおかげで何とか持ちこたえたのだ。
だが拓斗にはどうしようもない。
「帰りのホームルーム始めるぞー」
担任の少しやる気の欠ける掛け声とともに生徒たちは着席していく。だが拓斗はホームルームはほぼ何も聞いていなかった。
何だか中間考査の後の話とかしていた気がするが今の拓斗の優先順位はそんな事ではなく涼花にどう声をかけようとかそんな事だった。
(ラブコメとかなら主人公が彼女の家に行く王道パターンがあるんだが……)
などと思っているが涼花に限ってそういう事はない。何故なら行く理由がないからだ。
よく小説やアニメの恋愛ものなら偶々彼女の家を知っている男子が行ってそこで色々あるのかもしれないがそんなものは所詮2次元の話、
(先ず、あれは色々可笑しいからな!)
そもそも年頃の男を弱っている女性の所に行かせるなんてナンセンスだ! そんなもの思春期の男子には目に毒過ぎる。
体調不良と言う事はそれなりに弱っていると言う事、そんな姿を女性は普通見せたくないだろう。多少なりとも交際していた人には勿論のことだ。
(配布物にしてもそうだ、涼花が一人っ子ならこのクラスの誰かに頼まれていたかもしれないが涼花には兄貴がいる。配布物が回ってくることはない)
拓斗としては心配だから見に行きたいのは山々だが……
──俺が行っても追い返されそうな気がする
そうなのだ。涼花が休む原因になったのが拓斗だとすると本人には会いたくないに決まっている。
それが例え涼花からしたらクラスの使者だとしても。
「はぁ……」
先生の言葉を右から左に流しつつため息をついた。現状では何もできない自分がもどかしく悔しかった。
涼花に会いたい
そんな想いは日に日に強くなっていった。
そんな時だった。ホームルームももう少しで終わるという時に教室の前方のドアがノックされた。
拓斗も普段ドアをノックする人なんていないから気になり何となく見た。
ガラガラという音共に入って来たのは……
「あ」
「失礼します」
その巨体に似合わないかしこまった声と共に入って来たのは涼花の兄、優輝だった。拓斗は一気に疑問符を全開にした顔となる
それもそのはずで何故まだ授業時間内である優輝がここにいるのか分からなかったからだ。
彼は一瞬拓斗の方を見て次に担任の方を向いた
「授業中に申し訳ない。今日私の方に予定が出来てしまいまして涼花の配布物を受け取れない旨を報告に来ました」
「それは構わないが泊りがけの予定なのか?」
「いえ、恐らく帰るのがとても遅く涼花が寝ている可能性があるだけです。全く、こんな時期にパーティーなんて止めてほしいんですがね」
そう言いながら再びちらりと拓斗の方を見る。
忘れていたが優輝も所謂おぼっちゃまなのでそういうパーティーの招待などよくある事なのだろう。
ただそれが中間考査が間近に迫っているこのタイミングであるのは確かに止めてほしいと思うのは分かる。
「誰か代わりに涼花に届けてくれるなら良いんだがなぁ?」
そう言って再びちらりと拓斗を見る
(あざとすぎだろ! 何、このラブコメの一歩先を行っている展開!?)
もっとも拓斗自身はラブコメなんて大智に貸してもらったのを読んだ程度だがこんな展開はなかった(母数が少ないだけ)
「涼花と多少仲が良い奴が行ってくれたら涼花も喜ぶだろうなぁ?」
(何度チラ見するんだよ現生徒会長!?)
だがこれははっきり言ってチャンスだ。これに乗せられるのは正直癪な部分もあるし借りを作るようで嫌だが元々拓斗はある事はもうやる事を決めているので直ぐに返せる貸しだろう。
そう思ったが吉日、拓斗はゆっくりと手を上げた。
何事だとクラスの面々は見るが拓斗は若干優輝を睨みながら聞いた
「じゃあ俺が行っても良いですか?」
それに少しどよめきが起こる。この前の事と言い一応今は敵対しているのではないのかと誰もが思っている。
なのに拓斗はどちらかというと涼花を助けている。前のお弁当の時も何があったのか分からないが拓斗含む3人が涼花を助けた。
クラスの好奇心が涼花と拓斗、ついでにトライフォースに向くのはもはや必然だった。因みにこの前の冷静な判断をしていた大智を見ていたクラスの女子は少し大智にときめいていた。
閑話休題
そういう訳でクラスの面々は拓斗を好奇心の眼で見ていたが拓斗はそんなものは無視していた。
じっと見つめるのは優輝、優輝はその言葉を待っていたと言わんばかりにニヤリと笑った
──あ、俺早まったかもしれない
などと拓斗は思った。何故ならこのクラスで涼花と一番話していたのは誰が見ても拓斗だろう。つまりそれを知っている先生はほっといても自分を指名すると思った。
いらない所で借りを作ってしまった。
──待て待て、まだ会長が許可を出さなければ……
「そうか、氷火なら安心だな。では先生、今日の配布物は氷火に渡しておいてください」
出しちゃったよ
いやもう行く気ではあったから良いけど何だか色んな意味で負けた気がする。優輝は教室を出る瞬間、全く似合わないウインクをして出て行ってしまった。
これにて拓斗の涼花の家行きが決定してしまった
──あ、お土産とかどうしたらいいんだろ
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