運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女   作:レオ2

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貴方は本当にずるい

 来ないでという涼花の小さな願いは打ち砕かれ自室の先の扉から拓斗の姿が見えた瞬間、涼花の鼓動が一層早くなる。

 どういう訳か姿を現した彼は一瞬部屋を見回し直ぐに視線を涼花に固定し……赤面した

 

「ちょ……三月その格好……!?」

 

 何が可笑しいのだろうと涼花が早鐘を討つ心臓を抑えながらベッドの上にいる自分の姿を見て……拓斗と同じように耳まで真っ赤になった。

 何故なら今の涼花の恰好は先程まで誰も来ない事を良いことに夏らしい白色のネグリジェを着ていたのだがベッドの上で寝返りを打ちまくっていたからか胸元がはだけて涼花の暴力的までの魔力が宿っている白色の肌が見えていたのだ。

 

「み、見ないで!!」

 

 そう咄嗟に布団を被り拓斗の視線をシャットアウトしたが時既に遅く拓斗は涼花のあられもない姿を目に焼き付けてしまった。

 涼花は羞恥で顔を上げることが出来ず拓斗もまた先程のインパクトが強すぎた涼花に動けなくなった。

 

 その状態のまま1分、2人は石の如く動かなかった。どちらも顔を紅く染め何を言ったらいいのか分からなくなった。

 

 だけど……布団の中でネグリジェを着なおした涼花がそっと顔を布団から出して羞恥による弱々しい声で言った

 

「……何しに来たの?」

 

 ──何でこの状況でそんな冷たい声出せるんだよ

 

 という拓斗のツッコミは喉の奥に飲み込んだ。今日来たのは配布物を渡す目的もあるが涼花の本当の姿がどちらなのか調べる目的もある。

 

 花として自分と話してくれていた方が彼女本来の性格なのか

 

 涼花としてこの1年間触れ合ってきた方なのか

 

 どちらが仮面なのか、それが拓斗には知りたかった。だから拓斗は一歩踏み出す。彼女のベッドまで辿り着くと出来るだけ優しい声色で言った

 

「これ……今日の配布物。会長はパーティー? で帰るのが遅くなるから俺が代わりに来た」

 

「……ありがと。机の上に置いといて」

 

 それを聞いた拓斗は少しだけ紙の束を机に置いた。それを置いたらまた鞄をあさりまた紙の束を取り出した。

 涼花がそれが何か分からずベッドの上から拓斗を見上げる。

 

「これノートな。来てなかった分の。写しても良いけど先生達からはこれ張るだけでも良いよって言ってた」

 

 俺達にも普段からそんなに優しかったらいいのに、と苦笑いしながら続けた。だがそこで涼花は疑問を感じた。

 何故ならば龍神学園は1年生の時点から文理系の選択がある。最もまだ文理と分かれたと言ってもまだ授業は分かれていない部分もあるが分かれている授業もある。

 

 そして拓斗は理系、涼花は文系だ。つまり受ける授業は所々違うはず、それなのにどうして文系のノートまで持ってこれるのか気になった。

 

「どうして貴方が文系のノートを持ってこれ……」

 

 そこまで自分で言って気が付いた。拓斗には確かに文系のノートを取ることは出来ないだろう。だがそれは拓斗にはだ。つまり拓斗以外の誰かならノートを取れる。

 

 そしてその人物は力也か大智、ただ力也は拓斗と同じ理系なので消去法で大智のノートになる。

 しかしそれだと不安の事がある。偏見かもしれないが大智の書く字は汚さそうというものがある。

 それが顔にも出ていたのか拓斗が大智のノートを見せた

 

「あいつあんなんだけど字は普通に綺麗だからな。難点は黒板に書いてることしか書かない位だ」

 

 ノートを受け取り少し見たが確かに字は本当に綺麗だった。見本のような……とは行かないがただ見て移すだけなら何も問題は無かった。

 そのノートを見て再び拓斗の方を見る。そうしたら拓斗を立たせっぱなしにしていた事に気が付いた

 

 涼花にはここで二つの選択肢がある。このまま立たせて暗に早く帰れと伝えるか……椅子に座らせるか。

 後者を選んだとすればそれは……それは

 

 ──まるで私が貴方と一緒にいたいみたいじゃない! 

 

 その通りである。寧ろここまで来てそうじゃない理由が見当たらない。

 だがそれを認識すればするほど罪悪感もまた出てきてしまう。それを誤魔化す為に口を開いた

 

「ねえ……座ったら?」

 

 ──何で言っちゃうの私!? 

 

 何故か言おうと思っていた事と違う事を口走ってしまい頬を紅く染めた。それを隠すようにまた布団を被った。

 拓斗はそんな涼花の心の葛藤などつゆ知らず首を傾けながら「ありがとう」と言って涼花の机の椅子を引いてストンと座った。

 

 ──ああ拓君が私の椅子に座ってる……

 

 チラリと布団の隙間から拓斗を見ると拓斗は馴染まないのか何回か座りなおしていた。だがそれも5秒ほどで収まり布団を被ったままの涼花を見ていた。

 

 因みに涼花の部屋はそれなりに広く最早涼花の部屋だけで拓斗の家がすっぽりと収まる。そして初めての女の子の部屋と言う事で少し周りを見渡してしまうのはしょうがないだろう。

 しかし涼花からしたら恥ずかしいものだ

 

「余り見ないで」

 

「は、はい」

 

 有無を言わさない声に反射的に答えてしまった。だがそうすると目の前の布団を被っている涼花を見るしかなくなる。

 しかし涼花は布団をずっと被っているのでその顔をうかがい知ることが出来ない。しかし涼花もこの布団をどかすわけには行かない。

 どかしたが最後、この胸の高鳴りによって緩んでいるんだろう自分の間抜けな表情を晒す事になると分かっているから。

 

 ──どうしてこんな気持ちになっちゃうの

 

 自分にかけた戒めがあるというのにもう自分はその戒めをなきものしようとしてしまっている。

 あの時誓った事は決して嘘ではない。現に拓斗が拓だと気が付いて無い時でも少し胸がざわついたことはあったが恋愛対象として見たことはなかった。

 

 だけども拓斗が拓だと認識した瞬間から胸の高鳴りと罪悪感の不協和音が涼花の中で奏でられている。

 

 涼花が自分の気持ちと布団の中という人類の絶対防御ラインの中で悶々と向き合っている中、拓斗が口を開いた

 

「この前の事だけどさ……」

 

 どの事なのかは直ぐに分かった。自分が拓斗ですら彼氏ではなかったと言った時の事だろう。その時の事は思い出すだけでも胸が苦しく嫌になる。

 だけども言ったこと自体は後悔していない……筈だ。後悔してはいけないのだ。そう自分に決めたのだ。

 

 だから……だから……

 

 自分でも分からない思いと共に布団の中からそっと顔を出した。そこには拓斗が思いつめた顔で涼花の事を見つめていてその顔に涼花は何を言うのか気になった。

 

「三月……涼花にとってそうじゃなくても俺はその気だった。それが画面越しでも……俺は自分の気持ちが嘘だとは思ってない」

 

 そうだろうなと涼花は思った。色々あったあの日から考えると拓斗が涼花の事を想っていた証拠は幾つもある。

 その一つが神社の事だ。3年前から好きな人の幸せ……つまり涼花の幸せを祈り続けていた。それは生半可な気持ちでは成しえない事だと涼花も知っている。

 

 それだけ自分の事を想ってくれる拓斗に申し訳ない気持ちも涼花にはある。何故なら自分はまたいつ病気になるか分からない。

 心臓由来の病気は今では殆どないと言ってもいいかもしれないがてんかんなどの脳の病気はまた違う。

 

「だから……だから……」

 

 言葉を探して拓斗が真っすぐな眼で言った言葉は

 

 

 

 

「俺は今までもこれからも涼花を諦めたくない。花としての涼花も涼花としての花も……俺はどちらのお前も好きだ。いや、きっとまた好きになる」

 

(……そんなのずるいよ)

 

 

 

 

 それが精一杯涼花の心の中で思った言葉だ。

 

 ──そんなの……もう私を隠せない

 

 どちらの涼花も好きならばもう涼花に他のキャラクターとしての涼花はいない。もう逃げることは出来ない。

 

「だから……また涼花が俺の事を好きになるように頑張るから……見ててほしい」

 

 涼花は拓斗の言葉が胸に染み渡りもう爆発寸前だった。だから布団から出していた顔をまたすっぽりと覆って出した言葉は

 

「……勝手にすれば?」

 

 それが涼花が最後の抵抗として自分の気力の全てを使って発した言葉だった。これ以上は涼花の身体が……精神が……胸が熱くなってきっと耐えられなくなる。

 

 それを拓斗が感じた訳じゃないが拓斗は立ち上がった。

 

「じゃあ……俺は帰るな。妹も待ってるし」

 

 本当は妹の事に反応したかったがこれ以上は体がもつ自信が無かった。だからもう無言で拓斗が出るのを待つことにした。

 そして実際、扉が開く音がした。後は閉まる音がすればいい……筈なのだがどういう訳か聞こえない。

 涼花は気になってまた布団の隙間から覗いたら拓斗は何やら迷っている様子だったが少ししたら意を決したように涼花の方を向いて……

 

 

「その……さっきの涼花も綺麗だった」

 

「~~~ッ!!?」

 

 

 拓斗はそう言えば直ぐに扉の先に出て行ってしまった。残された涼花はもんどり返って顔を布団から出してそのただでさえ白い肌を紅く染め、羞恥を解放するように足をバタバタとさせて布団を蹴り落とす勢いで動かす。

 

 だけども手はちゃんと布団を強く握りしめて

 

「ほんと……本当にズルいよバカぁぁ」

 

 それが涼花が彼に出来るせめてもの抵抗だった

 

 

 

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