運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女   作:レオ2

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いつも見てくれてありがとうございます!これからもよろしくお願いします。


お前らが親友で良かったよ

 テスト最終日、この学校の誰もがこの日を望んでた。

 拓斗のクラスの中間考査は文理にもよるが基本的に理系の方が科目数は多い。だがそれでもテストの時間割は一緒に終わるように計算されているので3日の内2日は拓斗も力也もとんでもなくハードスケジュールだったがそれも今日で終わりだと思えば解放感に満ち溢れている。

 

 だが解放感に満ちてもいい筈の拓斗の顔はどこか優れない。勿論親友2人も気が付いていたのでテスト期間特有の勉強の雰囲気の中でさらりと聞いた

 

「拓斗、そんなにテスト自信が無いのか?」

 

「いや、テストの方は自分で言うのもあれだが最高点は言ってると思う。涼花に勝っちゃうかもしれな……」

 

 そこで背後からギロリと効果音が付きそうな視線が突き刺さった。それを大智も力也も気が付き顔を引き攣らせていた。

 拓斗はいつもの様にそれで何かを察知して頭に手を置いて苦笑いした

 

「いやーどうかな! 涼花は本当にすごいからな。やっぱ負けちゃうかもしれないな―ッ!!」」

 

「それ、あとで言っても意味ないからね」

 

「……ですよねー」

 

 背後からの声に諦めの様に呟いた。しかしもう涼花は自分のテスト勉強に戻ったが……拓斗はそんな涼花だけに聞こえるように言った

 

「でも……本当に涼花は凄いよ」

 

「~~ッ!!」

 

 先程のふざけテンションではなく至極真剣な声色は涼花の胸に染みわたり羞恥の熱を生み出した。

 

(本当に……本当にもう!)

 

 自分がどんな気持ちで拓斗を突き放そうとしているのも知らないでそんな事を言う拓斗に涼花は心中で罵っておく。

 

 涼花は病弱のせいか余り褒められない人生を送って来た。どれだけ勉強を頑張っても兄と遠山以外は褒めてくれずそれが普通なんだと思っていた。他にも褒める人はいるにはいるがどれも上辺のものだったり嫌味だったりした。

 

 だから拓斗の様な意中の相手にそんな真剣な声色で褒められるだけで胸が熱くなるのだ。

 

「拓斗、何か言ったか?」

 

 涼花が胸の中の羞恥と戦っている間に拓斗は先程の呟きを聴き取れなかった2人に聞かれていたが拓斗はそれをいなしていた。

 涼花はそんな拓斗を教科書を見ながらチラリと見ると時々その顔に翳りが出ていた。それを見た涼花は胸を焦がすような熱さを抱えながらも拓斗を不思議そうな眼で見ていた。

 

「拓斗、今日顔暗いぞ?」

 

「あ、やっぱり今日のテスト自信が無いのか!?」

 

 と力也と大智も翳りに気が付き聞いて涼花は内心「ナイス」と思っていた。拓斗も別に隠すつもりは無かったのか自分の不安をそのまま言った

 

「今日は蒼葉も学校に行ってるんだけどさ……何か……胸騒ぎがするんだよ」

 

「蒼葉ちゃんが……?」

 

 親友2人は蒼葉にも会った事がある。少し体がふらふらしていても自分達をもてなそうとしていた光景は父性をくすぐる何かがあった。結局蒼葉はその日布団に入ったままだったが。

 

 涼花もそれを聞き少し不安になる。病弱な体の事は自分が一番よく分かっているからだ。

 

「今日も休んだらいいって言ったんだけど……大丈夫の一点張りだったし」

 

 そう言ってため息をつく。涼花も蒼葉の話が気になったがテストの時間が近づいてしまったため大智も力也も自分達の席に戻った。

 

 拓斗もテストを早く終わらせて蒼葉の迎えに行こうと気合を入れた。

 

 

 ★

 

 

 突然だった

 

 

 2限目のテストが終わり残り1科目となった時、拓斗のスマートフォンが振動を始めた。拓斗はその時スマフォの単語アプリで復習していた。

 大智も力也も涼花も最後のテストに気合を入れて勉強に励んでいた時だ。

 

「どうしたの?」

 

 涼花が拓斗の変化に気が付き意識せず拓斗に問いかけた。

 涼花も自分が意識せず問いかけたことに恥ずかしさが出てくるがもう既に遅かった。

 

「いや……何か知らない所から電話がかかって来た」

 

 そう言った拓斗は涼花に自分のスマフォを向けた。涼花も何時もなら不審に思っただろう。

 しかし涼花はそこの電話番号に見覚えがあった。

 

「それ……龍神病院の電話番号じゃない?」

 

「え……?」

 

 どうして病院から電話が来るのか分からなかった。しかしそこで朝の胸騒ぎの事が脳裏に宿る。

 拓斗が固まっているのを見て涼花は不思議そうに言った

 

「出たら?」

 

「お……おう」

 

 そう言って拓斗は通話ボタンを押して耳に当てた。

 拓斗の様子に気が付いたのか大智も力也も拓斗の様子を見た

 

「もしもし」

 

『申し訳ございません、こちら龍神病院受付でございます。氷火蒼葉ちゃんのお兄様でよろしいですか?』

 

「……蒼葉に何かあったんですか?」

 

 それは同時に自分が兄であると認める返しでもあった。拓斗の声が低くなったのを見て拓斗以外の3人は顔を傾ける。

 

 向こうからの返事は……

 

『蒼葉ちゃんが学校で倒れて緊急搬送されました』

 

 

 

 

 ──は? 

 

 

 

 

 何を言っているのだこの人は。蒼葉が倒れて緊急搬送……? そもそも何故百恵の所ではなく自分の所に連絡が来るのだ。緊急連絡先は百恵の所にしているはずだ。

 そうだ、だからきっとこれは冗談だ

 

 そうだと言ってくれ

 

「はは……冗談ですよね?」

 

 だが電話の人物は答えなかった。

 

「うそ……だろ?」

 

 その声は絶望に浸っていてそれは拓斗と1年の付き合いの涼花にも直ぐに分かった。拓斗は自失しているように蒼白になっていく。

 脱力したようにスマフォを手に腕をぶら下げた

 

「どうした拓斗?」

 

 力也が心配気な声と表情で聞いたが拓斗は反応しなかった。それで更に心配した大智が拓斗の肩を揺さぶった

 

「拓斗!」

 

 それでようやく気が付いたのか拓斗の眼に焦点が戻る。しかし直ぐに瞳の光が揺れる。そしてポツポツと口を開いた

 

「蒼葉が……倒れて……病院に」

 

「「——ッ!?」」

 

 だがそこで拓斗は苦虫を噛みしめたような表情になる。本当は今すぐにでも妹の所に飛んでいきたい。

 だがそうすれば次のテストは全て無回答で問答無用の0点、学年順位はガクッと下がるだろう。特待生の称号は剥奪で拓斗は公立に転校せざるを得ない。

 

 ……涼花にも折角会えたのに……また離れてしまう

 

 しかし妹を責められない。寧ろ朝強引でも止めるべきだった。そうすればきっとこんな事にならなかった。最近涼花の事で頭がいっぱいで妹の事をちゃんと見れていなかった

 

(全部……俺のせいだ)

 

 拓斗がそう顔を暗くした時、また肩が大きく揺さぶられた。

 

「——!」

 

 目の前の大智は凄い剣幕で彼の怒っている顔なんて拓斗は初めて見た。

 

「何やってんだ! 早く行ってやれよ!」

 

 彼がこうなっている理由は拓斗には分かる。家族が病院行きにもなったのにも関わらず全く動こうとしなかったからだろう。

 だが拓斗は……家族も目の前の2人も……涼花の事も大事なのだ。

 

 ──俺こんなに弱かったんだな

 

 前なら迷うことなく行けたかもしれない。だが、今は涼花の事もある。あの時とは状況が違う。違い過ぎる。妹か涼花と親友達か……

 

 そんなの……

 

 決められないと拓斗は思おうとした。しかしそれは出来なかった。何故なら頬に強烈な痛みが走りそんな事を思考できる状態ではなかったからだ。

 

 拓斗がそれを認識した時、自分が少し吹っ飛んでいることに気が付いたのと同時に痛みが頬と背後にぶつかった机による痛みが襲ってきてようやく自分は大智に殴られたのだと気が付いた

 

 大智は拳を振りぬいた格好のまま鬼の形相で周りの目も気にせず言った

 

「何悩んでるのか知らねえが家族以上に大事なことがあるのかよ!」

 

 恐らく大智はテストの事で悩んでいるのだろうと思っている。大智は喧嘩の原因となった成績がある。

 そして拓斗は大見え切って涼花を越えると言った。それが枷になっているのではないかと思ったのだ。

 

 正確にはそれが拓斗が躊躇った全ての理由ではない。特待生の事は2人にすら打ち明けていないからだ。

 

 だけども……それで拓斗は目を覚ました。

 

 拓斗は熱を持った頬を抑えながら立ち上がる。

 

「早く行けッ! 行かないんだったら絶交だ!」

 

 その真剣な顔に拓斗は大智がどういう人物なのか再認識した。

 

 ──お前はそんな奴だったな

 

 いつも真っすぐで考え知らずで馬鹿、そのくせ友達思いでどこか憎めない男。拓斗は頷いた後、鞄を取り走り出そうとした……が一歩踏み出して止まって背中を見せたまま二人に聞いた

 

「……俺が転校せざるを得なくなったらお前達どうする?」

 

 本当はそんな時間がないのだがこれだけは知りたかった。今回の事で特待生が無くなったら問答無用で公立に転校せざるを得なくなる。

 それを知った時……親友達はどうするのか。だが力也が聞いた瞬間に迷うそぶりもなく答えた

 

「俺達も拓斗と一緒に転校する」

 

 それに大智が同調する。あの日のような輝かしい笑顔で言った

 

「トライフォースは一蓮托生だろ!」

 

 そう迷わず言える事に拓斗は涙腺が緩んだ。

 正直涼花の事がなければ迷わず行けたかもしれない。それは親友達だけが留まる理由にはならなかったからだ。

 最近の拓斗の優先順位は家族・涼花>親友となっていた。そう思ってた愚かな自分に苛立ちが募った。

 

「拓斗!」

 

 大智が拓斗を呼び止め何かを投げた。拓斗はそれを涙腺が緩んでいる眼を向けずノールックでキャッチした。自分の思ったところに投げてくれるという一種の信頼がなせる業だった。

 最早超人の技をさらりと披露する拓斗だが、流石に投げられたものは分からなかったので掌を開いた

 

「——!」

 

 そこにあったのは野球のグローブのストラップが付いた自転車の鍵だった。確認した拓斗を見た大智と力也が叫ぶ

 

「何時もの所に止めてる!」

 

「自転車に着いたらスマフォをセットしろ! マップ情報を送る、拓斗は何も気にせず走れ!」

 

 大智の自転車にはスマフォを固定する器具が付いている。それの事を言った。拓斗は親友2人に向き直りただ一言、

 

「ありがとな、お前ら」

 

 それに2人は頼もしい笑みで答えた。拓斗は次にその後ろにいる涼花を見ると彼女も不安気な表情で拓斗を見ていた。

 拓斗はそれで最近の彼女との絡みの全てを思い出し……自虐気味に思った

 

 ──色々あったけど……なんだかんだ楽しかったぜ、涼花

 

 それを見た涼花は普段彼女が見せない顔をしていた。心配気なのか不安なのか……彼の事を想っている顔なのか。

 

 だがそこで拓斗はまた親友達を見て拳を突き出した。それを見た二人も拳を突き出しそれを見拓斗はもう振り返らずに走り始めた。

 先生に呼び止められようが走るなと注意されようがすべて無視で走った。

 

(待ってろよ、蒼葉!)

 

 彼はその足で地面を蹴った

 

 

 

 

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