運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女 作:レオ2
どうしてあんな事をしたのだろう?
涼花は拓斗の隣で文庫本を読むフリをしながら拓斗を覗き見た。彼は親友達の思いも背負っているように顔を引き締めカリカリとシャーペンを動かしている。
そんな拓斗を見ながら今日、拓斗が出て行った後のテスト監督の先生に大智と力也が談判してた時の事を考えていた。
最初は何も言わないつもりだった。理由には正直同情を禁じ得ないがテスト1科目位なら追試で拓斗の場合はどうにかなるだろう。
それだけ勉学に関しては涼花も拓斗の事を認めている。
病弱な妹……そのワードに何も思わなかった訳じゃない。寧ろ自分の事の様にあの時の拓斗の生気を失った顔を見るのは辛かった。
でも……テストが出来なかったからと言って死ぬわけじゃないと涼花は高をくくっていた。拓斗なら赤点回避で今回の分を取り戻すのも簡単だろうと思っていたからだ。
だが……大地と力也はそれでも拓斗のテストを受けさせてほしいと自分達のテストを懸けた。その理由が分からなかった。
最初は自分との勝負の事を気にしているのかと思ったが……後で聞いた所それとは関係ないらしい。
でも……必死に頼む2人の何かが自分の何かを動かしたかのように涼花は2人に助け船を出していた
★
「ありがとうございました」
拓斗は生徒会室を出た所で頭を下げた。涼花もそろって頭を下げた後扉を閉めた。だが涼花はその行動は殆ど無意識にしていた。どうしてなのか? それは涼花の頭がそれ所ではなかったからだ。
(もう兄さん──ッ!!)
心の中でテストが終わった後の事を思い出す。
テストが終われば外は既に暗くなっていた。それを見た優輝が涼花にとって爆弾を投げつけた
「外はもう暗いな……氷火、すまないが妹を送って行ってくれないか?」
「何言ってるの兄さん!?」
「俺はまだやる事があるしお前は病み上がりなんだから無理をするな」
そう言われても拓斗と2人きりなんて今の涼花の状態からすれば止めたい。別に拓斗の事が嫌なのではなく気持ちの整理がまだついていないから2人きりになるのは避けたかった。
しかし結局押し切られてしまい涼花は拓斗と共に学校を出た。隣を歩いている拓斗はスマフォで誰かとやり取りをしていた。
そしてふっと笑った後スマフォをポケットにしまった
「なにニヤニヤしているの?」
「大智に自転車の礼をしていただけだ。それに……なんだかんだあいつに助けられているからな」
「そう……」
そこで拓斗は思いだしたように一回足を止めた。
「そうだ、さっき言えなかったからな」
そう言って拓斗は涼花に頭を下げた。
「ありがとな……あいつらに加担してくれて」
「べ……別にあの2人の為じゃないわ。今回の事は私にも思う事があっただけだから」
とそこまで言って涼花は思ってしまった
──ってこれじゃあ私が拓君にデレてるみたいじゃない!!
いや客観的に見ればデレている。もう言い訳のしようもなくデレている。もう罪とか罪悪感とかどうでも良いから早くくっつけとどこからか声がするがきっと2人は気が付いていない。
そんな事実を認めたくなくて涼花は直ぐに繋げる
「と……兎に角これで貸し借りなしだから!」
あの時倒れた時の事を言ったのかもしれないがそもそも拓斗達はあれが貸しだとは全く思っていない。けれども本人がそう思っていたならしょうがないだろう。
それこそ彼女を傷つける事になるかもしれない。
拓斗は余りの剣幕に思わず頷く
「わ、分かった」
「……早く行きましょ」
そう言って涼花は拓斗を追い越し歩き始めた。拓斗も苦笑いしながら追いそのまま横に並んだ。そして丁度自分の顔一つ分程低い涼花の顔を覗く。
だが涼花は何も話すつもりがないのか無言で歩いていた……
と思っていたか!
(な……なに話せばいいの? 3年前の事なんか話しても気まずくなるだけだしかと言って世間話何て関係でもないし)
ツーンとしながらも涼花は本当は拓斗と会話をしたかった。しかし過去に自分がした事の後ろめたさや学校に来た時の自分の行動を振り返り自分で自分の退路を断っていた!
だがそこで涼花は気が付いた
(別に私から声をかける必要ないじゃない! 拓君の方から声をかけてくれたら……)
そこまで考えた時、涼花の心に少し影が差した。何故ならこんな状況にしたのは紛れもなく自分なのにまだ拓斗に頼ろうとしていることに嫌気がさした。
そんな涼花の心を読んだわけじゃないが拓斗が声をかけた
「あのさ……結局勝負どうするんだ?」
中間考査前のドタバタで拓斗が今言う前は勝負の話題は出る事は無かった。それを今出したのは拓斗なりにこの沈黙が気まずくなったのだろう。そして拓斗なりのやさしさと言う事も分かっていた。
涼花は少しだけ笑って
「あら、貴方の自信がないのなら撤回してあげても良いわよ?」
──もう私にとってもどっちでもいいしね
この中間考査の期間中、嫌でも拓斗達トライフォースの”絆”を目の当たりにした。まだ完全にそれを信じたわけではない。
だが……躍起になって否定するのものではないと思い始めたのは確かだ。前までは”友達”なんて単語を聞いただけでも反吐が出たのに今はそんな事はない……と思っている。
「涼花の方こそ、不安ならやめてもいいんだぜ?」
涼花は倒れた日から大分学校を休んでいた。予習などはやっていたがそれでも体調不良と言うのは大分ハンデとなっている。前のようにいくとは拓斗も思っていなかった。
しかし涼花は不安を感じさせない、寧ろ余裕を感じさせる笑みだ
「そこまで言うなら……個人的に勝負しましょ?」
それの意味がよく分からず拓斗は首をかしげる……事が出来たのはそこまでで上目遣いで見る彼女にドキッとするのは避けられなかった。
(お前ワザとなのか!? ワザとだろッ! 可愛すぎるんだよチクショー!!」
「かわッ!?」
「え?」
隣を見ると拓斗の発言にどういう訳か涼花の頬が赤く染まっていた。ここで拓斗の脳内シンキングタイム!
(え……何でこんな上目遣いで見ているの? 俺を萌え殺す気?)
とそこまで反射的に思った時、涼花が少し胸の前で腕を組んだまま聞いた
「貴方……この前家に来た時から思ってたけどたらしなの? 私以外にもそんな事言ってるの?」
「……もしかして途中で声出てた?」
それに涼花は羞恥の表情のまま頷いた。
それにより拓斗も自分の心の声が出ていた事に耳まで赤くするがもうやぶれかぶれで続けた
「じゃあ俺が勝ったらデート……とか?」
もはや涼花の顔がボフン! と音が出る程に顔を紅くした。そして何を言えば良いのか分からなくなり少し口をパクパクしてから出た言葉は
「本当に何を言ってるの!?」
「だって……好きな女とはしたいものだろ? それに……」
そこまで言葉を区切り……そこには懐かしさや悔しさが混じった郷愁を感じさせる表情は涼花にもどこか悲しさを感じるしかなかった。
だが直ぐにその郷愁を振りほどくように一気に言った
「あの時は出来なかったから……今度こそしたい」
「あ……」
「ダメ……かな?」
伺うように涼花の顔を覗いた。その拓斗の黒い瞳は一見闇の様に黒いが……それが逆に彼の中の光が涼花を照らしたように感じた。
そして出来なかった事は涼花が新たな病気を患い、それに絶望し拓斗を傷つけないために、彼を傷つけるという矛盾を起こしながら彼女は拓斗と別れて出来なかったデート。
だが現実として涼花は度重なる奇跡によってその命は繋がり拓斗の隣にいる。
それに涼花も本当にあの時のデートの予定は楽しみで生きる希望になっていたのは間違いない。それが希望だったから新たな病気で死ぬかもしれないというより深い絶望に叩き落された。
そして……またそんな希望を感じた出来事をしようと拓斗が言ってくれた
──そんなの……ダメなんて言えない
ここ何度も罪悪感にかられるがそれ以上に拓斗と一緒にいたかった。
「じゃあ私が勝ったら……荷物持ちとしてショッピングね」
「え……?」
それに拓斗は流石に足を止めた。今の言い方では涼花自身も拓斗と一緒にいたい事になる。涼花もそれは自覚しているのかはにかんだ。
その姿に拓斗も心臓の鼓動が脈を打つ。
「な……何よ。悪い?」
「いや……全然」
そう言って2人はまた歩き始めた……のだが
(ああああ私何言ってるの!?)
涼花は最近は矛盾だらけの自分の行動に顔から火を噴くほどに赤くなって内心で悶えた。
(言っちゃった……遠回しに貴方といたいって言っちゃった)
ここに枕があればその枕を強く抱きしめその後ベッドに何度も叩きつけたこと間違いない!
(最近の私絶対に可笑しいよぉ……)
涼花が内心で今までの拓斗とのやり取りに悶えていたので2人はそのまま無言だった。
その後、2人は電車に乗り涼花の最寄り駅まで乗っていた。流石にこの時間帯は帰宅ラッシュや晩御飯時と重なっているのでそれなりに人が多く拓斗は辟易した……が運よく直ぐに2人分の席が空いたので並んで座った
(拓君が……こんな近くに)
席は隣だがそれなりに離しているので電車程密着したのは今回が初めてだ。肩と肩が偶に触れ合う。
普段なら肩が隣の人と触れ合う事なんかない。だが今日の涼花はどこか力が抜けて拓斗と触れ合ってしまう。
それではまるで……
(私が拓君と触れ合いたいみたいじゃない!!)
実際問題もう触れているから既に遅い。
しかし涼花はそのままだとまた頭が可笑しくなってしまいそうなので無理やり話題を振った
「蒼葉ちゃんは大丈夫なの?」
「ああ、麻疹だった」
「そう……しばらくはお家に帰れないわね」
麻疹は何事もなければ7~8日で治る。ただ免疫力も弱くなるので他の病気が同時に起こる可能性もある。
涼花自身もなったことあるので麻疹の辛さは分かる。
「貴方は大丈夫だったの?」
麻疹ウイルスは空気感染によって感染する。蒼葉の近くにいた拓斗がなっていても可笑しくはない。拓斗は涼花を安心させるように首を振った
「俺は大丈夫だった。母さんも」
「そう……お父さんは?」
涼花は流れで聞いただけに過ぎない。妹、拓斗、母親と来れば父親の安否が気になるのも当然だった。
だが拓斗からの返事がなく涼花は何となく拓斗の方を見て……訝し気になった。何故なら拓斗の顔が険しく先程まで汗が無かったはずなのに今は一筋の汗が垂れてきていたからだ。
「さあな。俺達3人暮らしだし」
その顔がこれ以上踏み込んではいけないと語っていた。涼花はそれ以上会話を続けることが出来ずただ時間が過ぎるのを待った
★
駅から降り、また少し歩いて2人は涼花の家の前まで来た。拓斗は内心「やっぱでけえなおい」と思っていたがそれを顔には出さず門を開けた涼花が振り向くのを見ていた
「じゃあ……送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね」
もう家を知られた中だからか前よりも砕けた感じになってくれたのが拓斗には嬉しかった。
「ああ。涼花も良く寝ろよ」
「貴方こそ、妹ちゃんの事が心配で寝れなかったなんて止めてよね」
「善処する。……あ、そうだ」
そこで拓斗は何か思い出したように空を見て少しだけ頬を染めながら涼花に近づいた。涼花は最初疑問符を浮かべていたが徐々に近づいてくるのを見て焦り始める
「その……さっきの涼花の質問だけどさ」
──さっき? 質問? 何のこと?
そう咄嗟に思い出せず頭の上に? を沢山浮かばせるが拓斗の中で何を言うのかは決まっているのか迷いなく近づいた
──拓君が目の前に……!?
涼花が余りの事に動けずにいると拓斗が涼花の耳元で
「涼花にしか言わないよ」
そうボソッと呟かれた甘美の言葉が涼花の耳から脳に伝わった時、全身に電流が流れる感覚が走った。ドーパミンが脳内で溢れ出して変な性癖を身に着けてしまう所だった(既に遅い)
──そ……それはズルい!
そこまで悶えた時、拓斗が言った質問の意味を思い出した
それは確か拓斗の心の声が漏れ出て涼花の事を可愛いと言った時の涼花の反応が
『貴方……この前家に来た時から思ってたけどたらしなの? 私以外にもそんな事言ってるの?』
──確かにあの時の答えは聞いてなかった……聞いてなかったけど……
「ば」
「ば?」
涼花は火照った顔のまま息を吸い込んだ。拓斗はそれが何の言葉なのか分からなかったので思わず耳を涼花に近づけ……それが間違いだと気が付いた
「馬鹿ああああぁぁ!!! 」
そう言って耳まで真っ赤にしながら踵を返してその姿をあっという間に豪邸の中に消した
拓斗は耳元で叫ばれ直ぐには動けなかった。三半規管が少し麻痺した。
「あんな大声で……言わなくても」
ようやく口に出せたのはそれだった。しかし同時に嬉しくも思った。涼花が感情的になった姿を見ることが出来たから。
「……帰ろう」
涼花の新たな姿を見た拓斗は満足げに駅までの道を歩いたのだった
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