運命?なにそれ?と言わんばかりにデレない美しき巫女 作:レオ2
学校を出て電車を少し乗り継ぎバイト先に向かう。学校と自宅の中間点にある駅で降り駅の近くにあるビルを見上げる。
その二階部分には「カードショップ・タッチ」という看板がある。拓斗のバイト先だ。今のカードゲームを始めた拓斗にとって始まりの場所である。
ビルに入ると階段とエレベーターがある。選んだのは階段。たった一階上るだけだし運動も兼ねている。
二階に着くとガラス張りのドアがあり開ける
「いらっしゃませーって拓斗君か」
「お疲れ様です、店長」
拓斗に店長と呼ばれたのは少しぼさぼさの髪に眼鏡、いかにも優男と思われる風貌を持った20代半ばの男性だった。
優男には見えるがこの歳でカードショップを経営するほどの手腕を持っている。拓斗がカードゲームを始めるにあたりルールを教えてくれた人でもある。
バイトしようと決めるにあたって真っ先に浮かんだのはなんだかんだでずっと通い続けたこの場所だった
「あー! 拓斗兄ちゃんだーっ!」
と小学校低学年の子供が拓斗を見ると顔をパーッと輝かせて近づく。それに気が付いた他の子どもも駆け寄って来る。
「勝負してー!」
「私もーっ!」
「俺が先ー!」
とあの手この手が拓斗を囲む。拓斗は苦笑いしながら答える
「分かった分かった! 宿題を終わらせた奴から相手してやるよ」
拓斗の一言に「えーっ!」という顔になる。
「うー分かった!」
そう言って最初に拓斗に近づいてきた少年がばっと離れてランドセルから今日の宿題を取り出す。それを見た他の子どももランドセルに駆け出す。
「ははは、人気だね拓斗君」
店長が言った通り拓斗は割と人気者だ。
何故なら拓斗がやっているカードゲームにおいて拓斗は人気者だったりする。数多のカードショップの大会で優勝し全国大会にも出たことがある。おまけに頭もよく面倒見もいいともきている。
だから拓斗は人気者なのだ。若干客寄せパンダにもなっている。
「店長のおかげですよ」
拓斗はそう言って店奥に引っ込み、鞄を置きブレザーも脱ぎ代わりにオレンジ色のエプロンを付ける。このエプロンがバイト先のユニフォームなのだ。
自分の仕事道具でもあるカードケースを持ってレジまで行く。店長はもう少しで子供の日があるのでその為に鯉のぼりを作っている。
「あ、拓斗さんお願いします」
「はーい!」
拓斗は出てすぐにレジに入りパックを購入する常連の相手をする。
まだバイトを初めて一カ月も経っていないが既に慣れたもので仕事をこなしていく。何ならずっと店長の動きを見ていたのもあって飲み込みは早い。
パックを結構なまとめ買いをした客がテーブルに移動したのを見届けたら勉強スペースにいるガキどもが拓斗にSOSをよこす
「どうした?」
「ここ分からない」
「……ああ、ここはあの公式を使ってな」
所でカードショップに勉強スペース? と思った人がいるかもしれないが本当にこの場所はそう名付けられている。
このカードショップはこの子供達や勉強が出来ずに現実逃避して遊び(逃げて)来た人もいる。それを放っておいたら中学生以降は兎も角小学生の親がクレームをしてくる可能性がある。というよりも拓斗がバイトを始める前に来たことがあるらしい。
「お兄ちゃんありがとう!」
「ああ、もう少しだ。頑張れ」
本来、それはサボって来た本人達が悪いのでありタッチに関しては全くと言っていい程悪くはないのだが店長はそこで止まる事はしなかった。
今子供たちがいる場所を課題や宿題をする勉強スペースとして開放、店員、即ち拓斗や店長に言えば極力勉強を教えてくれるというシステムになった。
売り上げがこのシステムによって極端に上がった訳では無いが巷では「勉強も教えてくれるカードショップ」という言葉で割とレビューが高くなっている。
子供たちに勉強を教えた後、拓斗はショーケースを磨く。そんな拓斗の隣に店長が来る
「いやー、拓斗君が来てから勉強スペースの方も活気が出てるね~」
「俺が店長にしてもらった事を繋いでるだけですよ」
「でも、あの龍神学園の特待生を取ったのは君の実力だよ。誇っていい」
店長の言葉に少し恥ずかし気に顔を下げる。
自分が特待生なんて言うTHE・優等生みたいな称号というより事実を持っていることに未だに慣れないのだ。
そう、拓斗は周りに言ってないが中学受験の際、入学試験で高得点を叩き出しそのまま給付制の奨学金を受け取れる立場の特待生として学校に通っている。
勿論テストや普段の態度が悪かったらそんなものは剥奪される。だから普段は兎も角テストに関してはなんだかんだいつも上位にいる。
「って、店長は俺の所のOBじゃないですか」
と、拓斗が言った通り店長も実は龍神学園に嘗て通って卒業した。だから拓斗にとっては色んな意味で先輩である。
あの勉強スペースが出来る前の拓斗に偶に勉強を教えていたのは店長だ。
(改めて考えてみたら店長面倒見良すぎないか?)
と今更のように思った。並みの人間なら惚れる。
そこで再び来店のベルがなり2人が見るとそこには龍神学園の生徒とは違う制服を着た女子高生2人組がいた
「あ、氷火君、ちょっと教えてほしいところあるんだけど」
「……一応ここはカードショップなんだが」
偶に勉強を教えてくれる場所と勘違いしてくる人もいる。まあ、そんな人達も邪険にしないから今日の人気があるのかもしれないのだが。
拓斗は苦笑いしながら二人が持ってきた分からない箇所を見て軽いヒントをあげる。
普通の業務をしながら家庭教師ならぬお店教師をし偶に客とカードゲームで戦う、これが拓斗のバイトルーティーンだ。
拓斗、人気者
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