シンボリルドルフとトレーナーの話です。
僕と担当ウマ娘は幼馴染だった。
幼馴染といっても歳は10歳ほど離れているので実際には近所の高校生とそれを慕ってくれる女の子といった関係だったと思う。
女の子はウマ娘だった。
それでも小学生低学年だった女の子に足の速さで負けたのは少しショックだったのを覚えている。
その時何か約束をしていたような気がするが詳しい内容まではさすがに覚えていない。
そんな女の子との関係も僕が大学への進学を機に疎遠になっていた。
そのため、その女の子が自身が務めるトレセン学園に入学してきたときは驚いた。
遠目で見た彼女はずいぶんと大人びて見え、女の子というよりは彼女という表現の方が適切だった。
そんな彼女の成長を喜ばしく思う反面で向こうは僕のことなど覚えていないものだと思い少し寂しくもあった。
だからこそ彼女が自分のことを覚えていてくれたことは嬉しかったし、それどころか担当のトレーナーとして向こうから指名されてしまったときはとても驚いた。
正直彼女の実力と自分では釣り合っていないように思えたがこれも何かの縁だと思い、彼女と二人三脚で頑張ってきたつもりだ。
そんな彼女との挑戦もURAファイナル決勝での優勝をもって一旦区切りがついたのがほんの一か月前のこと。そんなある日の出来事だった。
「トレーナー君、今日の夜話したいことがあるのだが時間はあるだろうか。」
僕の担当ウマ娘であるシンボリルドルフからそんなことを聞かれたのは、彼女がURAファイナル決勝を制しおおよそ一か月ほど立った日のことだった。
「ああ。今日は特に予定は入っていないから大丈夫だ」
今日に限らず基本的には夜は家にいるので予定はない。
「それならよかった。21時ごろトレーナー君の部屋に行くから待っていてくれないだろうか。ぜひ顔を合わせて話したいことがあるんだ」
わざわざ僕の部屋に来て話したいことか。夜遅くに成人男性の部屋に年頃の娘が来るっていうのは世間体的にはだいぶ怪しい気もするが…。
しかしメディアへの露出の多いルドルフであればそこのところくらいは理解しているだろうし、いったい何の話だろうか。
「話したいことか。僕としては大丈夫だけど、ルドルフ的には門限とかは大丈夫なのか?なんならここでその話を聞いても問題なさそうなら話してくれてもいいぞ」
「そこの件だが心配無用だ、トレーナー君。すでに外泊の許可は取ってあるんだ。それにあまり他のウマ娘や他の人に聞かれるのは少し恥ずかしい話でね。できればトレーナー君の部屋でじっくり話したいのだがやはり迷惑だっただろうか」
外泊?聞き間違いだろうか。外泊?外出?の許可までとっているのか。
手を回すのが早いのはさすがルドルフといった感じだがいささか早すぎなような気がする。
今日僕が予定があったらどうする気だったのだろうか。
まあ、そこに関しては深く考えても仕方がないか。
「いや、そういう訳だったら大丈夫だ。今日の21時に僕の部屋だな。準備して待っておくよ」
「ありがとう、トレーナー君。一日千秋の思いで待ってくれると嬉しいぞ」
「ハハッ、首を長くして待っておくよ」
とりあえず今日この後にルドルフが来ることが確定したので部屋の片付けでもして綺麗にしておくか。
そういえばルドルフとじっくり話をするのも久々な気がする。思えばお互いに最近は忙しかったし、久々に彼女とゆっくり話すのも楽しみだ。