「俺、この仕事辞めようと思ってるんだ」
トレーナーの口からそんな言葉が漏らされたのは今思えば彼なりの最後のSOSだったのだと思う。
私は彼に救いの手を差し出してあげるべきだった。
そんな彼からの最後のSOSを私は無神経にも突き放してしまった。
は?
面白くないんだけどそういう冗談。
なに?本気で言ってんの
勝手にすれば?
そう言い放ち私はその場を立ち去ってしまった。
そしてこれが私たちのウマ娘とトレーナーとしての関係の最後の会話になった。
次の日からトレーナーは私の前から、それどころかトレセン学園そのものに姿を見せなくなった。
最初は単に連絡のし忘れ、すなわち無断欠勤だと思っていた。
次に来た時にきつく言ってやる、その程度に考えていた。
だけどトレーナーはその次の日も、また次の日も学園に姿を現さなかった。
そうしてトレーナーが姿を現さなくなってから1週間が経とうという頃、私は理事長の方から直接呼び出された。
「トレーナー君から正式にこの学園を辞めると連絡が先ほど入った。」
は?何を言っているんだ。この人は
私のトレーナーが辞めたって言ったのか
「担当ウマ娘として何か彼の方から聞いていることはないか」
トレーナーが学園を辞めたという事実は私にとってあまりに大きな事実だった。私は理事長から告げられたその言葉をを受け入れることができなかった。
思い当たる節がないといえば嘘になる。彼と最後にあったあの時彼は確かに辞めるということをほのめかしていたと気づく。
まさか本当にあの後辞めてしまうとは思わなかった。
あの時のトレーナーの言葉は彼の本心だったのか。
なんで彼がそんなことを私に漏らしたかは定かではない。
けれどもしかしたら最後に、ほんとに最後の最後に私から引き留めてもらえると思って漏らした言葉だったかもしれない。
私はその最後の助けを求める声に気がつけなかったのだ。
そのあとのことはうろ覚えだ。
何も知らないと、そういうと今後のことについて説明があったと思うがよく覚えていない。
その後の彼がいない生活は退屈だった。
私を心配して励ましてくれる仲間もいた。
特にビワハヤヒデやウイニングチケットは特に気にかけてくれていたと思う
けれど私の生活は以前に比べて楽しいと思えなくなった。
それだけ私の中で彼と共に過ごしてきた日々がかけがえのないものとなっていたのだった。
失って初めてその毎日の大切さに気が付いた。
「どこにいるの?トレーナー」
そう自分の口からこぼれた言葉はとても弱弱しかった。