封筒の中の紙に書いてあった住所は学園から遠く離れた北海道だった。
空港で当日発着の飛行機を急遽予約し、私は学園のある東京を後にしたのだった。
北海道で空港に到着してからはアプリの案内に従い、電車を乗り継いで住所にあった場所の近くに来た頃にはすっかり暗くなっていた。
詳細な住所の場所には明日行こうと思い、今日は近くのホテルで一夜を明かそうとスマホで近くのホテルを調べた。
しかし不運にも近隣のホテルはすでに満室で今日泊まれる部屋はないという事実がわかっただけだった。
「ほんと最悪」
悪態を漏らしたところで空いていないものはどうしようもない。
私としたことが迂闊だった。
最悪、今日はカラオケや漫画喫茶で過ごすしかないと思っていた。
長旅で正直疲れていたがお腹がすいたので開いている適当な飯屋で夜ご飯を済ますことにしたのだった。
適当に選んだ割に料理の方は中々おいしいものだった。
トレーナーと一緒によく外でご飯を食べたっけな
一人でご飯を食べながらふとそう思った。
偏食な私を気遣ってよくトレーナーの方からご飯に誘ってくれていた。
そんな彼の気遣いを当たり前だと思っていたけどこうして一人で食べるご飯よりも彼と一緒に食べていたあの時のことを一層思い出す。
けれどそれももうすぐ終わると信じて私はここまで来たのだ。
「もうすぐ会えるかな、トレーナー」
その日は結局、漫画喫茶で過ごすことにした。
慣れない場所ではあったが長旅の疲れもあってか意外にもすぐに眠気が来てそのまま身をゆだねたのだった。
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「誰だ?君は」
トレーナー!私だよ。ナリタタイシンだよ
「トレーナー?知らないな。それに君のこともわからない。
人違いではありませんか?
それでは 」
待ってよ、トレーナー
行かないで…
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「夢か…」
普段と違う環境のせいか変な夢を見てしまった。
私はトレーナーに会いたい。
会ってもう一度話がしたい。
けれどトレーナーの方は?
もう会いたくないから姿を消したのではないのか
そう思うと途端にトレーナーと再び会うことが怖い
けれど私はそれでも…
そのころトレーナーは何をしているのか
はるばる元担当ウマ娘が近くに来ているとはつゆほど思わず、
毎日を怠惰に過ごしていた。
トレーナー時代の貯金が十分にあったこと、
また実家にしばらく滞在する許可が親から降りたことが大きかっただろう。
はるばる東京に出ていった息子が北海道の実家に出戻ってきた際には親から驚かれはしたが、人間慣れるものであっという間にニートが生まれたのだった。
家にいても特にやることもないので近所を散歩でもしようかと思い立ち、家を出たのが昼前頃だった。
歩くのに少々疲れたので公園のベンチで休むことにしたのだった。
「着いた。」
私は住所にある場所の近くの公園まで来ていた。
住所にある場所はもう少し先だが、一旦ここらへんで現在の位置関係を整理してから目的地に向かおうと考えていた。
平日のちょうど昼頃なので公園にいる人は少なく、
小さな子供を連れた親子連れが数組いる程度だ。
だからこそベンチに腰を下ろしているトレーナーの姿を見つけるのは簡単だった。
「っ、見つけた」
私はそのままトレーナの近くまで移動した。
彼の目の前まで来てもトレーナは私に気づかない。
耳にイヤホンを差し、スマホの画面に夢中なようだ。
トレーナの方を軽くたたきこちらの存在をアピールする。
「ねえ、トレーナ。迎えに来たよ」
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最近は運動不足で少し歩いただけですぐ疲れてしまう。
なのでいつもの散歩コースの途中にある公園のベンチで少し休むことにした。
平日の昼前ということもあって、公園にいる人はだいぶ少ない。
これだったら、真昼間からベンチに佇む男がいたとしても人目につくこともないだろう。
ベンチに腰を下ろして音が周りに漏れないようにイヤホンを取り出して日課のソシャゲを楽しんでいる最中のことだった。
先ほど確認したときには自分の周りに人はいなかったはずだ。
少し離れた位置に親子連れがいた程度だったが、
どうやら自分の目の前だろうか、人が来ている気配を感じる。
何か自分に用があるのだろうか。
ただ目の前の存在を確認するのは少し勇気がいることだった。
どうしたものかと、スマホをいじりながら考えていると、
目の間のその存在が肩をたたいてきて、話しかけてきた。
「ねえトレーナ迎えに来たよ」
そこには本来ならばここにいるはずのない女の子が立っていたことに驚きを隠せなかった。
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トレーナがそこにいた。
やった!嬉しい
はやる気持ちを抑えてまずは平常心だ。
そこにいた彼は私の知っているトレーナ姿とほとんど変わっていなかった
「久しぶりだね。タイシン。急に目の前にいるからほんとに驚いたよ」
そう告げる彼は確かに驚いた表情をしていたが、
ただ私に向けられるその表情はかつてのものと一緒だった。
正直ホッとした。
私は嫌われてしまったからトレーナはいなくなってしまったのではないか。
そう考えてとても不安だった。
「ねえ、トレーナ。なんで急にいなくなったの?
なんで連絡しても無視したの?
なんで私を置いて行っちゃったの?」
嫌われていないのならどうしてトレーナはいなくなったのか
いきなりこんなに詰められて迷惑だ、ということはわかってる。
けれどどうしてもそれが気になってしまった。
「連絡?あー…。俺スマホ落としちゃってさ。
連絡先も消えちゃって、、
連絡の方は確認できてなくてな。ごめんな」
いやいやいや
私がどんな思いでここまで来たと思っているんだこの人は
けど、、、だったら…
トレーナーと二人でまたあの頃に戻ることだってできるのではないか
「ねえ、トレーナー。
帰ろう?トレセン学園に。
それでまた私にいろいろ教えてよ
私と一緒にまた一緒に頑張ろうよ」
「タイシンは強いな。
それにGIレース見たよ。
俺がいなくなった後も頑張ってるんだな
すごいよタイシンは」
「だったら!」
「けど、俺はトレーナーを辞めたんだ。それはもう聞いてるんだろ?
だからトレセン学園には帰らない。
それに俺の都合で急に辞めたんだ、学園や君にもだいぶ迷惑が掛かったと思う。」
「そんなことは…
それに理事長だって戻って来いって言ってるし」
「へ~。理事長は優しいな
こんな俺にすらまた戻ってこいだなんて。
けどそんなこと理事長や君が許可しても周りが許さないよ」
「それは…」
「君とのトレーナーとウマ娘としての関係を途中で投げ出した無責任な俺のことはもう忘れてほしい。
君はこれからもトレセン学園で新しいトレーナーと一緒に頑張って欲しい
陰ながら応援しているよ。」
そう言って彼はベンチを立ち上がった。
「じゃあねタイシン」
彼は私に別れを告げそのままその場を離れようと歩き出した。
待って!
待ってよ!
今、彼をこのまま行かせてしまったらもう二度と彼と離れ離れになってしまうような
私はここに何のために来たのか
何のために…
トレーナーとまた担当ウマ娘としての日々を取り戻すため?
違う!と言ったらウソになるが、本質は違う気がする
何のために学園の授業やトレーニングを投げ出してここまで来たのか
なぜ毎日が楽しくなくなったのか
なぜレースに勝っても毎日が退屈になったのか
私は…
「…たいの」
私の口から搾り出たそれは紛れもない私の本心だった。
「一緒にいたいの…」
私は歩き出した彼を追いかけそして後ろから抱きついた
「タイシン?!どうした?!」
「行かないで…トレーナー」
「だからな、俺はもうトレーナーの仕事はやらないって…」
「違う、私はもうトレーナーと離れたくない
トレーナーがもうトレセン学園に戻らないって言うんだったら私がここに残る!
私はあなたともう離れたくない!!」
「おいおいおい…
トレセン学園にもう戻らないって、それはだめだ!
タイシンは俺と違ってこんなところにいていいウマ娘じゃないだろ!
君には才能がある!素質がある!これからもまだまだウマ娘として活躍していくはずだ!
一番近くで見てきたから分かる。
そんな君がこんなところでましてや俺なんかを理由に残るだなんて…」
それくらいは私だって理解はしてる
けどねトレーナーそうじゃないんだ
「ねえ、トレーナー。
私ねあなたがいなくなった後も結構頑張ったんだ
GIレースだって勝ったし、けどねそれでもあなたとの毎日の方が楽しかった。
充実していた
満たされていた」
「いなくなって初めて私はあなたの大切さに気が付いた。
私はトレセン学園で勉強するより、トレーニングするより、友達といるよりも、
そしてレースで勝つよりも、
あなたが欲しい」、
「あなたと一緒にいたいの!これ以上言わさないでよ馬鹿…」
「タイシン…君は…」
「あなたは私のこと嫌い?」
「そんなことはない!がしかし…」
「だったらもう決めたから、あなたのこともう離さないから観念して」
「いやいやいやいやそういう訳にはいかないでしょ」
「なに?私じゃ不満ってこと?」
「そういう話ではなくて…」
「私はあなたと一緒にいるためだったら他には何もいらない。
もう向こうには帰らないから」
「一旦俺のうちで話そうか…タイシン」
「別に話したって結果は変わらないと思うけど…
家に案内してくれるって言うんだったらついてく」
「分かった。おいでタイシン。
それとそろそろ後ろに抱きついてるこの状況が恥ずかしいので、一旦離れようか」
「わかった」
そう言って私は抱きつくのをやめ、そのまま彼の空いている手を握った
「早く案内してよ」
もう彼のことを決して逃がさない。
彼を絶対にものにしてみせる。
だって私は追い込みに関しては誰にだって負けないんだから。
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「という脚本で出版社に持ち込もうと考えているのですが、どうですかトレーナーさん」
「早く映画化してどうぞ」
「タイシンさんとトレーナーさんの物語ヒットすると思うんだけどなあ」
「間違いない」
今日もアグネスデジタルの妄想は止まらない