もう少し続くかもです。
「うん! またね~」
私は笑顔でそう言い、その場を後にした。
「ただいま〜」
自室に戻り、ベッドに飛び込む。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
枕に顔を埋めながら大きな声を出す。
「……好きかもしんない」
「あ、あ、あ、あーーーーーーーーーーーーーーーー」
顔が熱い。きっと今、鏡を見たら真っ赤な顔をしているのだろう。
「ど、どっ、ど、どうかしてるよ…こんなのあたしらしくもないし…」
心臓がどきどきしてうるさい。胸の鼓動が収まらない。
「こんなの……だめだって……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日。いつもより早く目が覚めた私は着替えを始める。
「……よし」
準備を終えると、私は寮を出て学園へと向かった。
「トレーナーさん。ちょっといいかな?」
朝練が終わり、教室へ向かう途中。セイウンスカイに声をかけられた。
「ん? なんだ?」
「まあ大したことじゃないんだけどさ。実は私、トレーナーさんに聞きたいことがあって」
「聞きたい事? ははーん。さては宿題でもやってなかったな?」
からかうようにそう言う。
「違うって。ホントに大事な用だから真面目に聞いてね? それで質問なんだけどさ、トレーナーさんって彼女っていたことあるの?」
突然のことに驚いてしまう。
「え、い、いないぞ?いたこともないぞ」
「いや、本当にいないの? 嘘ついてないよね?」
「噓だったらよかったんだけどな…」
「んー、いや特に理由はないけど。ほら、トレーナーさんも年頃の男の人だし、彼女がいたり、いたことがあってもおかしくないかなってセイちゃんは考えたわけですよ。」
「なるほどな…確かに理にかなってる」
「ちなみに聞きますけどトレーナーさんまさか…男の方に興味が…?」
「ちげぇよ! まったく」
「ふふっ。ごめんって。トレーナーさんって意外とモテそうなのにね」
「……言ってくれるじゃねえか」
「あはは」
ひとしきり笑ったあと、スカイは言った。
「まあトレーナーさんに彼女さんがいなかったならいいや」
「もういいのか。まあ聞かれても大した話もできないけどさ」
「いや…待って…じゃあもうひとつだけ。もしトレーナーに彼女ができても私をまだ担当してくれる?」
「……なんだよいきなり。そんなの当たり前だろ。お前が引退しても、ずっと俺はお前の担当だよ」
そう答えると、彼女はとても嬉しそうな表情を見せた。
「あはは。そっか。……ふふっ」
「……なんだよ。何か言いたそうだな」
「別に~。ただね…」
「はい?」
「あ、なんでもない。なんでもないから気にしないで」
「……そろそろ授業始まるから、私は行くね」
(なんだったんだ今の……)
そう思って俺は首を傾げた。
ーーーーーーーーーーーーーー
放課後。トレーニングルームへ来た。
「あ、きたね。待ってましたよ~」
「おう! スカイ。遅かったけど大丈夫だったか?」
「はい。すみませんね。少し野暮用がありまして…」
(野暮用?)
「それより、早速始めましょうよ~」
「おう!任せとけ!じゃあまずはストレッチから始めるか」
「はーい」
二人並んで柔軟体操を行う。
「よーし、スカイ。脚を開いてくれ」
「はーい」
俺の指示通り、脚を開くセイウンスカイ。彼女の足は、小柄で華奢な見た目からは想像できないほどに筋肉がついていることがわかる。
「あれ? スカイって意外とガタイがいい?」
「…そりゃ女の子だって鍛えますし」
「それもそうか。よし、次は前屈するぞ」
「はいはい」
……しかし、いくらやらせてみても全く曲がらない。
「あれ? おかしいですね。こんなに硬いはずがないんですが」
「こっちのセリフだよ。もう少し頑張ってくれ」
「むーりー」
そういって顔をこちらに向けてくる。
「そんなこと言われてもな……うーーん」
困っていると、スカイが悪戯っぽい表情を浮かべる。
「ねーねー、トレーナーさん。私に触ってみたくない?」
「は?」
「ちなみにこの体勢だと、私のお尻が見えちゃいますからね〜」
「……」
「どうしたの? トレーナーさん」
いたずらっぽく笑う彼女は…
「何馬鹿なこと言ってるないで早く続きやるぞ~」
「あはは、顔真っ赤ですよ〜」
「うるさい! ほら! 早く立て! そして構えて! ダッシュしてこい! 今日はこのメニューを五セットだ!!」
「えー、勘弁してくださいよ~」
「ダメだ!! 文句言わずに走って来い!!!」
「わかりましたよ~」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
計測したデータを確認する
「あっ! トレーナーさん。この前よりも速くなってますね~」
「そうだな! スカイの走り込みの成果が出てきたのかもな!」
「うん。それは私も何となく感じてたかも。もしかすると、次のレースでも勝っちゃうかもね~」
「調子が良いみたいだな。でも油断大敵だぞ」
「ってことで追加であと10本行こうか」
「おっといけない」
なんやかんやでそのまましばらく走ると、すっかり日が暮れていた。
「よし、じゃあここらへんで今日は終わりにしようか」
「はいはい。セイちゃん疲れちゃいました〜」
「ははは。今日も良く頑張ったよスカイは」
「ふぅ……」
セイウンスカイは座って一息ついた後、おもむろに口を開いた。
「ねえトレーナーさん。今って時間ある?」
「ん? まあ今日は特に予定はないけど」
「じゃあさ、ちょっと話さない?」
「……?」
それから他愛もない話をいくつかした後、突然彼女が言った。
「トレーナーさんってさ、今幸せ?」
「え、それを聞くか今、普通」
「聞きたいなぁ。教えてくれないなら、もう二度と質問には答えないよ?」
「そんなに面白い話でもないと思うんだけどなぁ...」
「ごくり」
「はぁ、わかったよ。じゃあ言うけど、俺は……」
「……俺は?」
「俺は、今幸せ…だと思う。」
「毎日はそれなりに充実しているし、担当ウマ娘にも恵まれた。」
「こんな事いうのは少し恥ずかしいけど、スカイのトレーナーになれて毎日が楽しいからかな?…な~んて」
「ふふっ。そっか。じゃあ私も幸せ者だね」
「……というと」
「私はさ、こう見えても昔は結構悩んでたんだよねぇ。自分の将来とか、これからのことを」
「……それで?」
「もちろん今は全然そんなことないよ!むしろ私は、すごく恵まれていると思っている。」
「……? よくわからないな」
「うーん、まあ簡単に言えば、私はずっと逃げてきたんだよね。いろんなことから。」
「ずっと……?」
「そそ。私ってこんな性格だからね。だけどトレーナーさんと出会って、私は変われた。
……いや、違うか。トレーナーさんと出会ってから、私は本気で向き合うことができるようになったんだ。」
「だから、本当に感謝してる。ありがとねトレーナー。」
そういってスカイは頭を下げた。
「いや、別にお礼なんていらないよ。やったことはトレーナーとして当然なことだし」
「でも、それだけじゃないでしょ?」
「……」
「あの時、私を見捨てることなく救ってくれたこと。それが一番嬉しいな」
「救っただなんて大袈裟な…俺は君が思ってるような、そんな大した人間じゃ無いよ。」
「またそういうこと言う。ほんと素直じゃないな〜。」
「そんな素直じゃないトレーナーさんに私から一つ意地悪です」
彼女は、急に真剣な表情になって俺の方を見た。
そして、ゆっくりと口を開く。
「トレーナーさん、大好き! 付き合ってください!」
「……!?」
「な~んて♪ドキドキしちゃいました?」
「……はぁ~~~~………
勘弁してくれ…心臓が止まるかと思ったぞ…」
「意地悪ってこれか~。本当…マジで…まだ心臓が戻らん」
「にゃはは~効果てきめんってね」
「…帰るか」
「そうだねトレーナーさん♪」
デジタル「トレーニングルームでのストレッチ時に開脚はできたのに前屈はできない…
妙だな……」
デジトレ「それ以上はいけません」
デジタル「前日にトレーナーさんに彼女がいないことを聞いているのにわざわざ次の日にもう一回確認している…妙だな…」
デジトレ「妙だな…」
デジタル「君のような勘の悪いガキは嫌いだよ」
デジトレ「!?」
デジトレ「スカイの言っていた「あの時見捨てることなく救ってくれた」っていったい…?」
デジタル「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」
デジトレ「!?」